すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

発酵か腐敗か、この読書は…

2020年12月11日 | 読書
 雪が降らないせいか、ぴりつとしないところもある。
 まあそのうちと…のんびりしながら読書、これらは軽いものとして…

『鬼刑事 米田耕作』(矢島正雄  文春文庫)

 脚本家、漫画原作者としての矢島正雄には注目していて、書店で見つけると手にとってしまう。小説は以前も読んだが、今一つかなあと思いつつ寝床読書にはいいと購読した。「刑事モノ」は、名作漫画『人間交差点』シリーズでも多い内容だし、女性刑事の活躍する『PS~羅生門』も好きな作品だ。これはどうかと…。

 かつて名刑事だった男が今は資料室的な部署にいて、実は現警視総監とも盟友で、そして現代風の若手刑事を相棒にしながら…というような、ドラマではありがちな設定だ。いや、こういったパターンはもしかしたら矢島が作り出したのかもしれない。内容は普通だがTVドラマなら見るだろうな…調べたら、BS再放送枠でやっていて…
 https://www.bsfuji.tv/yonedakousaku/pub/index.html
 少しイメージの違う配役にがっかりというオチでした。


『あつあつを召し上がれ』(小川糸  新潮文庫)

 この作家もドラマ原作のイメージが強い。代表作で映画になった『食堂かたつむり』は見ていないが、NHKで放送した『つるかめ助産院』『ツバキ文具店』はとてもいいドラマだった。脚本や演出もあろうが、醸し出す雰囲気が柔らかく、落ち着いた気持ちで視聴できた。そういう印象を持ちながらこの短編集を読む。

 題名も示すように7編全て「」の場面が取り上げられ、その描写が上手だ。当たり前だが登場人物の心の機微と重なっている。くだらないグルメ番組より、こうした物語のドラマ化の方が「食」の素晴らしさを感じ取ることができるのではないか。7編の設定はそれぞれ読みどころがあり、振れ幅も大きいので楽しめた。

 認知症になった祖母が登場する冒頭の作品で、何気なく語られたことがある。齢をとっていく意味の比喩としては最上級だなあと感心した。

「腐敗することと発酵することは、似ているけど違うんだよ」
「バーバは今この瞬間も、甘く発酵し続けているのだ」


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