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話題の場所で多様性を聴く

2024年09月17日 | 雑記帳
 「話題」とは、「全国最年少市長誕生」ということ。むろん、といって半月も経ずに何かが変わるわけはない。街を見れば、以前感じた「ここも隣市と同じシャッター通りが続くなあ」という表現はそのまま当てはまる。ただ市民が託したい何かが、その場所の空気を少し揺るがすかなと、かなり文学的な想いは浮かんだ。




 ところで訪れた9月15日は、名優樹木希林の七回忌。目的の図書館主催講演会で、講師のドリアン助川氏が語った。小説『あん』の作者で、映画化されたことで深く付き合うようになったという。それまで映画祭などに興味を示さなかった樹木希林とともに、カンヌやウクライナに出向いた時の写真が興味深かった。


 今回は、彼の朗読が聴ける機会であり非常に楽しみにしていた。結果的に、取り上げられた最新作『確かなリスの不確かさ』(全21話)中の1話のみで終わり、少し残念。ただ、さすがに鍛えられた声、緩急の表現法は見事だった。講話時の発声とは明らかに違い、物語世界へ聴者を呼び込む空間は非常に心地よかった。


 講話のテーマは「組み合わせから始まる多様性」。自身の子ども時代から現在に至るまでの、特に仕事上のエピソードを入れ込みながら「わたしは鈍い、受身の人間である」しかし「組み合わせからの創造に活路を見出してきた」と語った。平凡な言葉ゆえに意味は深い。また汎用性も広い。老化する頭に刺激となる。


 教えている学生らに訊くと一様に「社会で役に立つ人間になりたい」と返答があると語った。人間原理、生命原理という思想によって、その矮小性を指摘していた。論理は難しかったが、真っ当であり模範的な返答は、自己存在をあまりに社会との関係で意味づけるよう教育された結果ではないか、と哀しくなった。


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