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「告白」湊かなえ

2010年04月22日 23時26分42秒 | 読書(小説/日本)

「告白」湊かなえ(双葉文庫)

ずっと気になっていた作品。
文庫本になったのを機に読んだ。
(これが著者のデビュー作)
短編の集まった連作長編だけど、1編1編の完成度が高い。
物語は女教師の告白から始まる。
「このクラスに我が子を殺した犯人がいる」、と。
モノローグだけで進行するのに、とてつもない吸引力で引き込まれる。
第一章だけでも、充分すぐれたドラマになっていて完成されている。
しかし、それは単なる序曲に過ぎなかった、ってのがすごい。
悲劇の連鎖が始まり、誰1人救われない物語が動き出す。
緻密且つ重厚な構成で事件と人間が表現される。

第一章・・・担任教師・森口悠子の語り
第二章・・・クラス委員長・美月の語り
第三章・・・犯人の姉の語り→その母の日記による語り
第四章・・・犯人自身の語り
第五章・・・もう1人の犯人の語り
第六章・・・再び森口悠子の語り

最後の章を読み終わって、何ともやるせない気分になる。
何の希望もなく、誰1人救われないエンディング。
(このエンディング物議を醸した)

PS1
物議を醸した、と言えば「バトル・ロワイアル」を思い出す。
こちらも、「告白」同様、少年少女多数出演。
かなり世間を騒がせた作品であった。
(でも、まだしも救いと希望がある)


PS2
もう一冊思い出した。
宮木あや子さんの「花宵道中」である。
こちらも、デビュー作で完成度が高い。
語り手が変わっていく、って構成も似ている。
それにより、「事件」の全貌が明らかになる(あるいは曖昧になる)、ってのも似ている。
「学校」と「花街」という違いはあっても、閉鎖社会が舞台。
でも、「告白」の方がはるかにヒットした。
現代、学校、いじめ、少年犯罪、と身近な事象だから。
(江戸、吉原、遊女ではマニア向けか?)
でも、完成度の高さでは負けていない、と思う。


PS3
さらに、もうひとつ思い出した。
桐野夏生さんの傑作「グロテスク」だ。
こちらも、語り手が変わりながら物語が進行する。
(ユリコの姉、ユリコ、ユリコを殺した中国人、和恵、高校時代の生物教師)
語り手たちは、誰もが微妙に嘘をついている。
物語が進むにしたがい、狂気の度合いが高まってくる。
巧妙にして高度なテクニックが駆使されている。
ミステリでありながら、反人生案内小説にもなっている。
ベテランの味、である。


【ネット上の紹介】
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。
語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!
“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。

「告白」公式サイト