【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「漂砂のうたう」木内昇

2010年10月24日 12時29分33秒 | 読書(小説/日本)
巧い!見事なできばえである。
非常にレベルが高い。
明治初期の空気が伝わってくる感覚。

主人公は元御家人次男坊・定九郎で、明治維新により、生活が一変する。
時代についていけず、武士として生きることも出来ない。
家を出て、出自を隠して遊郭の下働き。
未来への希望もなく、なんとなく生きている。
そんな定九郎を中心に、その周囲の人たち、時代を描いている。

さて、本作品は遊郭を舞台にしている。
(但し、吉原ではなく根津遊郭が舞台)
その雰囲気をよく描いている。
ミステリ仕立てになっており、最後まで緊迫したストーリー構成。
特に10章から最終章まで息詰まる展開。
もし難を言うなら、陰のヒロイン花魁・小野菊の心理描写が薄いこと。
もう少し突っ込んで描いてもよかった、と思う。
それにしても、登場人物たちの今後が気になる。
彼ら(彼女たち)は明治をどう生きたのか?
スピンオフで『その後』を描いて欲しい。(特に、小野菊が気になる)

【ネット上の紹介】
明治10年。根津遊廓に生きた人々を描く長編 ご一新から十年。御家人の次男坊だった定九郎は、出自を隠し根津遊郭で働いている。花魁、遣手、男衆たち…変わりゆく時代に翻弄されながら、谷底で生きる男と女を描く長編小説。

遊郭と言えば、上記二作
「吉原手引草」「花宵道中」を思い出す。特に、「花宵道中」は傑作。

「華恵、山に行く。」華恵

2010年10月24日 08時41分50秒 | 読書(山関係)
「山と渓谷」に連載されていたエッセイ+書き下ろし、である。
先日、「小学生日記」を紹介した。
この本と同著者である。
つまり、hanae*=華恵さんである。
(ペンネームを変えただけ)
「小学生日記」の文章が良かったので読んでみた。
山に関しては初心者なので、一般文章ほどの「サエ」はないけど、それでも読みやすく楽しめた。
上手く、山の楽しみを表現している。
例えば、次のような文章。
(以下、転載)

頂上をめざすだけが山の楽しみじゃない。登りも下りも、ふもとにも山頂にも、いろんな表情がある、ということにも気づかされました。
ひとに出会ったときのように、好きになると、何度でも会いたくなる。季節によって、天気によって変わる表情も見たい。今は眠っている動物たちも、時季が変われば姿を現すかもしれない。何度でも来たい。そんなふうに思える登山は、ほんとうに楽しい。

[要旨]
クライミング、低山、雪山、そして富士山へ。『山と溪谷』の好評連載に書き下ろしを加えたエッセイスト華恵が綴る山の話。
[目次]
山の先生は今井さん―山梨県扇山;アイゼン、ピッケル、オクホタカ―長野・岐阜県奥穂高岳;インドアクライミング―都内クライミングジム;だから岩はやめられない―埼玉県日和田山・男岩西面;はじめの一歩―東京都高尾山;初めてのスノーシュー―長野県しらびそ小屋(北八ヶ岳);登山のためのクライミング―神奈川県丹沢・広沢寺岩場;都会のオアシスで―東京都皇居;羅臼岳から―北海道羅臼岳;私はどこにいる?―東京都御岳山〔ほか〕