この間、久しぶりにデトロイトの空港を利用しました。
初めてアメリカ(本土)に来た時は、ノース ウエスト航空という飛行機会社を使いました。日系の航空会社を除くと太平洋航路が強い航空会社は当時はノース ウエストで、そのハブになっていたのがデトロイト空港でした。なので、当時はアメリカの東海岸に行こうとすると、デトロイトでの乗り換えることが多かったのでしたが、ノース ウエストは2010年にデルタ航空に吸収合併され、消滅しました。その後デルタは利用客の減少、空港利用上の問題などで、日米間の便数を減らし、大韓航空との共同事業を機に、アジアのハブを東京から仁川に移したこともあって、私も、デルタ(旧ノース ウエスト路線)を使うことはなくなくなりました。代わりにユナイテッド航空やアメリカン航空、JALなどを使うようになったので、乗り換え空港も、ニューヨークやシカゴなどといろいろとなり、デトロイトを使うことはなくなりました。
今回は久しぶりのデルタで、デトロイト空港を利用したのは多分10年以上ぶりです。この空港ターミナルは横に長く広々としており、ターミナル内を電車が走っています。かつては日本とアメリカ東海岸をつなぐポータルであったこともあって、日本語の表示や日本名のレストランなどが多く残り、豊かだった頃の日本を思い出させます。コロナ後ということもあるのでしょうが、今は、店もいくつかは閉まっていて、多少寂しい感じを受けます。昔の賑わいを思い出しながら、Nostalgicな気分になって乗り換えの飛行機を待っていると、時の流れと無常さををひしひしと感じます。
思えば、私が子供の頃、世界の空を制していたのはPan Amでした。飛行機旅行がまだまだとても贅沢な時代、Pan Amで旅行することはステータスで、旅行するともらえる青いパンナム バッグはそのシンボルでした。しかし、その殿様商売が仇をなし、90年代に入るまでに旅客航路としてのPan Amはほぼ消滅、太平洋路線はユナイテッドに引き継がれました。
どれほどの栄華を誇っても、結局は一時のものにしか過ぎません。このデトロイトの空港も、20年前には大勢の日本人旅行者でごった返していたのだと思います。それも今は昔。綺麗にメインテナンスはされているものの、この広い空港の少し寂れた感じは私は嫌いではありません。
同じく、私にも若く、エネルギーあふれ、野心と希望に満ちた時代がありました。同時にそれは、失望と挫折と苦しみの日々でもありました。その生きる苦しみを、日々の些末時で紛らわせている間に、そんな青春の日々はあっという間に時間の砂漠に埋もれ去り、今やどこにいってしまったのか、よく思い出せません。ちょっと寂しい気もしますが、同時にホッともしています。
若い頃、この空港は、希望とチャンスに満ちた新大陸への玄関口でしたが、今はそのころを懐かしく思い出すだけの場所となりました。花に嵐の喩えのように、さよならだけが人生で、散った花弁を愛しむ、そんな穏やかな日々です。