goo blog サービス終了のお知らせ 

tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

万博も開幕し、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

TPP賛成に大義なし!

2011年11月06日 | 意見

間違いだらけのTPP 日本は食い物にされる (朝日新書)
東谷暁
朝日新聞出版

TPPに関する理解も少しずつ深まってきたようで、ここへきて、やっと反対意見が目立つようになってきた。昨夜のNHKニュースによると《自民党の谷垣総裁は仙台市での集会で、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)について、野田総理大臣がAPEC(アジア太平洋経済協力会議)までに交渉参加を表明することに反対し、国会決議も検討する考えを示しました》《TPPについて「政府の情報開示が不十分で、農業などへの対策が十分ではないまま交渉に参加するのは乱暴だ」と述べました。そのうえで出席者からTPPに対する自民党の見解を問われたのに対し、谷垣総裁は「ここ数日で交渉参加を決めるのは反対で、場合によっては国会で決議しなければならない」と述べ、野田総理大臣が今月12日からのAPECまでに交渉参加を表明することに反対し、国会決議も検討する考えを示しました》。

もっとカゲキなのが田中真紀子である。産経新聞(11/5付)の見出しは《真紀子節”炸裂 「TPPは飛び込んだら入水自殺」「小泉改革の二の舞だ」 首相も「野田なんとか」呼ばわり》だった。《「TPPに日本が飛び込んだら入水自殺だ」-。民主党の田中真紀子元外相は4日、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を慎重に考える会」(会長・山田正彦元農水相)で講演し、歯に衣(きぬ)着せぬ“真紀子節”を久々に炸裂させた》。

《田中氏は「TPP参加で公的医療保険制度が根本から崩れる。小泉純一郎元首相の郵政民営化の二の舞いになる」と強調。「野田佳彦首相は『国論が二分して決められない』とはっきり言うべきだ。米国は大人だから日本がノーと言っても圧力をかけない」と断じた。首相についても「党員資格停止中だったので野田なんとかさんに投票せずに済んだ」と酷評。返す刀で慎重派議員も「頭は良いが、知恵がない。議論ばかりしてどうするのかが分からない。地元や支持団体の意向で賛成、反対を決めるなら県議や市議だ」と切り捨てた》。田中真紀子のような人が、このようにハッキリとTTPのデメリットをズバリ言い切ってくれると、国民にもストレートに伝わるで、とても有り難いことである。

先日私は、当ブログに「TTPなんて、とんでもない!」という記事を書いたが、その後、藤村清彦さんから《中野剛志氏の著作を紹介されてTPPの恐ろしさを啓蒙された勇気に感動しました。中野氏と共にTPPの本質を訴え続けておられる三橋貴明氏のブログの10月31日版をお目通しください》というコメントをいただいた。

「TPP開国論」のウソ 平成の黒船は泥舟だった
東谷暁, 三橋貴明, 中野剛志
飛鳥新社

この三橋氏のブログは、とても興味深く拝読した。三橋氏は「TPP交渉参加に反対する街頭演説会&デモ行進」というブログ記事で《最近、経済産業省のTPP推進派に目の敵にされているトップスリーが、東谷暁氏、中野剛志氏、三橋貴明の3名だそうです。これは、これは、大変光栄なことで》。さらにTPP推進派で、内閣府でTPPによる経済効果を算定した野村証券金融経済研究所・主席研究員の川崎研一氏が《関税撤廃による経済効果は10年間で2・4~3・2兆円で、1年間なら国内総生産(GDP)の0.1%に満たない》(10/19付産経新聞)と発言していたことも紹介している。さまざまなリスクを覚悟でTPPに参加し、しかも推進派の試算でも、1年間に2700億円の経済効果ならGDPの0.054%に過ぎないのだ、やれやれ。

「週刊金融財政事情」(発行所:一般社団法人 金融財政事情研究会)という金融専門誌に、ボストンコンサルティンググループ シニア・アドバイザーのM氏(元日銀理事、クレディ・スイス証券 元会長)が、「TPP反対に大義なし」という巻頭言を書かれていた。この文章には、推進派がよく口にする「理論」が整然と現れている。あまりにも分かりやすい話なので、要所を抜粋しておく。

TPPは、わが国の進路を規定する最も重要な戦略の1つである。それは、アメリカを含め環太平洋諸国の間で、ヒト、モノ、カネの自由な移動を目標にするTPPは、当該地域の先行きを制するからである。

「環太平洋諸国」などというのはとんでもない誤解で、これは単なる「日米」の自由貿易協定なのである。中野剛志氏が指摘するとおり《「TPPに入ってアジアの成長を取り込む」と言いますが、そこにアジアはほとんどありません。環太平洋というのはただの名前に過ぎません。仮に日本をTPP交渉参加国に入れてGDPのシェアを見てみると、米国が7割、日本が2割強、豪州が5%で残りの7カ国が5%です。これは実質、日米の自由貿易協定(FTA)です》。

幕末から明治維新にかけ、開国を巡って国論は揺れに揺れた。列強の圧力もあったが、最終的にたどりついた選択は開国だった。不満・不平はあっても、鎖国という異例の体制を改めなければ、世界の大勢に遅れ、文明開化も殖産興業も叶わないと当時の為政者は肚を括ったのである。(中略) 深層では、少子・高齢化、新興国の急速な追い上げと産業の空洞化、巨額の公的債務など激震の予兆が生じている。こうした厳しい認識に立てば、わが国の将来にとって、発展性に富む地域と絆を強めることが不可欠である。そのためには、まず、国を開かなければならない。

これも、推進派がよく使う屁理屈である。「まず、国を開かなければならない」というが今、日本は鎖国しているというのか。これはとんでもない誤解である。中野氏によれば《推進派の人たちが国を開けとか、外を向けとか言っていますが、本当に外を向けば、TPPでは何のメリットもないことがわかるんです》《日本はWTO加盟国でAPECもあり、11の国や地域とFTAを結び、平均関税率は米国や欧州、もちろん韓国よりも低い部類に入ります》《TPPに入る気がない韓国は世界の孤児なのでしょうか》。

そもそも、TPPという「過激な対米貿易協定」に入れば、松島氏の指摘する「少子・高齢化、新興国の急速な追い上げと産業の空洞化、巨額の公的債務」が解決するというのか。そんなはずはないのである。具体的な道筋を示すのではなく、「当時の為政者は肚を括った」「激震の予兆が生じている」「発展性に富む地域と絆を強める」という情緒的な言葉しか出てこないところが、推進派の特徴である。

TPPいかんにかかわらず、真の構造転換を行わない限り、農業に明日はないのが実情である。そういう意味では、いまこのときが農業再生のチャンスではないか。関税撤廃と見合いに導入される所得補償といったバラマキ補償ではなく、品種改良や品質改善、生産性向上やマーケティングのためであれば、財政支援にも反対はあるまい。いまようやく芽ばえ始めた企業的農業の動きを積極的に後押しすることが望ましい。

野球は9人対9人、サッカーは11人対11人で勝負するから、努力によって相手に勝つ算段もできよう。アメリカの農地面積は3,655,000k㎡、日本は45,000k㎡、81対1である。どんな「カイゼン」で、これに太刀打ちできるというのか。また、これ以上の「品種改良」「生産性向上」のためには遺伝子組み換えなどが推進されていくことになろうが、そうなると食品としての安全性、生態系などへの影響、倫理問題などが新たに浮上してくる。そんなリスクを冒しても、メリットは「GDPの0.054%」なのだ。

中野氏は《関税が100%撤廃されれば日本の農業は勝てません。関税の下駄がはずれ、米国の大規模生産的農業と戦わざるを得なくなったところでドル安が追い打ちをかけます。さらに米国は不景気でデフレしかかっており、賃金が下がっていて競争力が増しています。関税撤廃、大規模農業の効率性、ドル安、賃金下落という4つの要素を乗り越えられる農業構造改革が思いつく頭脳があるなら、関税があっても韓国に勝てる製造業を考えろと言いたい》と指摘している。

遠い将来を見据えて、いま何をすべきか見極める必要がある。新しい体制の構築には、生みの苦しみがあって当然である。そこを突き抜けていく聡明さ、勇気、希望こそ求められる政治原理である。

アメリカの国家戦略に踊らされない「聡明さ」、NOと言える「勇気」が肝心である。私は、いくら何でもTPPなんかには参加しないだろうという「希望」に支えられて、政府の動きに注目している。どうか、木材の二の舞になりませんように。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする