穴が開いていないので、間違いなく使用中の巣。
この中には、泥蜂に刺されて麻痺したイモムシがたくさん入っているだろう。
卵はイモムシの体内に産み付けられているのか。
おそらくイモムシの体内で孵化し、仮死状態のイモムシを食い尽くして蛹になり、それからしばらくして蛹から羽化して、泥の壁を壊し世の中に出てくるという段取り。
壊して中を見てみたい衝動にかられるけれど我慢した。
蜂は益虫だという思い込みがあるので、よほどでない限り邪険にはしない。
来世の地獄で、観音様が釜ゆでされている私に泥の舟を差し向けてくれるかも知れない。
じつは壊して中を確認したことが一度あるので予想がつくのだ。
泥の巣を破って出てくる巣立ちは一瞬の出来事だろう。
どういう種類の泥蜂が出てくるか知りたいものだが、巣立ちには滅多に立ち会えない。
源鸞上人の錍に泥をなすりつけて子孫を残す蜂もいたり、『チカン、甘い言葉にご用心!!』の看板があったりする、墓場の入り口なんである。