家は跡形なく撤去されているのに門扉の残っている空き地があった。
扉には自転車用盗難防止チェーンが巻かれてロックしてある。
古い呼び鈴の押しボタンが有るので、押してみたくなる。
『はい』なんて幻聴が聞こえそうな気もするので押したりはしない。
段々と門柱と門扉を残した意図は何だろう。
何を想ってのことか、芸術的空間になっている。
敷地の真ん中まで飛び石を配置して、ビルの塔屋のようなものを建てたい。
地下へと階段を降りて暮らす。
門柱と門扉はそのまま残し、フェンスも作らず、地上は庭ばかり花と野菜ばかりにしたい。
などと夢想を愉しむ。