食用菊は家の周りにいつの間にか咲いているものであり、母親に言いつけられ台所の隅でヘタをひたすらむしり取っていたときの記憶がある。
独特のほろ苦さはなかなかな珍味で、苦くても子どもの頃から嫌いではない。
その菊は絶えてしまい、やり取りするものでもない代物だからしばらく食べる機会はなかったが、ベジパーク(農協)で売られているのを見つけて買ってみた。
先日のドライブである道の駅に行った折、連れの同級生が買ったのを見ていたので、真似をしてみた次第。
うちに生えていたのは、黄色の針のような花びらだったけれど、売られているのは紫色の菊としては中途半端な大きさで、名を『もってのほか』という。
黄色の食用菊で『おもいのほか』というのもあるようで、もってのほかといい、おもいのほかといい、なかなかの命名センスだ。
皇室の紋章になってもいる菊を食うとはもってのほか、ということではないだろうし、もってのほかの美味しさ、おもいのほかの美味しさということか。
1袋160円でしかなく、摘んで袋詰にしてたったこれだけというのはまことに気の毒のようだが、かといって沢山買ってもヘタ取りに時間を取られるばかりだから1袋でたくさん。
この珍味は、お浸しで食べるに過ぎないけれど、手間暇の味。
ポン酢と麺つゆと三杯酢で食べてみた。
母親の味はもうちょっとほんわか甘酸っぱかったような気がするけれど、菊の味は菊の味。
湯がいたのを水に晒して絞って3玉にしたが、ほぐせばけっこうな量なので、1玉だって一度のおかずには多すぎる。
つけ汁は面倒になり、全部混ぜてしまったけれど悪くない。
最後の画像は、引き続きの蛤の、今度はバター焼きだが、剥いてしまうとあまりに存在感がないので、わざわざ一皿分の殻を横に置いて撮った。
まだある、飽きるなんてことはない。
「緊張すると…人は・・・?」
・・・ずうと、あとです、NHKで菊の花を食す料理が出てきたのは。
ある種の興奮状態で、何かを噛みたい咥えたいという気分になるのは分かります。
壊れやすいものを運搬するときに箱に入れる緩衝材の発泡スチロール片を私は口に入れてみせたことがあります。
空気を読めない唐変木の年配同僚が、『すごいねぇ』と感心していたシーンを思いだしました。