■ 最近スポーツ選手はメンタルトレーニングの一環として、競技での最高の状態をイメージする、ということをするそうですね。例えばマラソン選手は自分がトップでゴールする瞬間をイメージするというわけです。そうすることがよい結果をもたらすことに繋がるのでしょう。
ところで、日本はロボット工学の理論面だけでなくの実用化の面でも世界のトップクラスにある、ということはよく知られています。ホンダやソニーのロボットがマスコミを賑わすこともしばしばあります(今どちらのロボットも名前が思い出せません)。
日本がロボット開発において世界の最先端にある、そのことに鉄腕アトムの功績が大きいことはなにも私が初めて指摘するわけではありません。既に指摘さていることです。
多くの人が指摘するように、鉄腕アトムに親しんだことがロボット開発を志す契機となったという人が多いことも注目すべきだと思いますが、私はアトムがロボットの到達点、究極の姿をビジュアルに示しているということのほうが大きいと考えています(アトムより鉄人28号の方がロボットの望ましい姿だという見解もあるようですが、今回はそのことにはふれません)。ロボット開発の目標とする姿が見えている、先に示したスポーツ選手の場合とよく似ています。
最終的な形を具体的にイメージできること、ロボット開発に限らずあらゆる創造行為に共通する重要なポイントといえるでしょう。もちろん建築設計にも当て嵌まります。
設計者は最終的な姿をかなり初期の段階でイメージします。その先の設計は諸条件を整えてそのイメージに収斂させる行為といってもいいかも知れません。
建築の場合には「完成予想図」によって最終的な姿をビジュアルに提示します。ラフなスケッチによってイメージを表現できることは設計者に求められる必須の能力ですが、リアルに表現することはそれを専門とする人たちに委ねられることが一般的です。
以前は手描きの完成予想図(パース)が主流でしたが最近はCGの方が多くなりました。外壁材料などの質感のリアルな表現、敷地周辺の写真との合成などによってまるで竣工写真のようなパースができます。
仕事のことに関しては守秘義務がありますから、具体的には書きませんが、最近リアルなパースを見ました。パースに満足してしまって建築として具現化しようという意欲が低下することもあるのではないか、ふとそんなことを思いました。