■ 朝5時の外気温は19度だった。半袖では肌寒いくらい。窓を開けて冷気を室内に取り込む。
「アサッテの人」を涼しい室内で読了。
芥川賞の選考委員に今回から小川洋子さんと川上弘美さん、ふたりの人気作家が加わった。だから、どんな作品が選出されるのか興味があった。
「文藝春秋」を買い求めたのは、川上弘美さんの写真が載っていたからではない。各選考委員の選評も読みたいと思っていたから、というのがその理由。
選評は(たぶん編集室に)到着順に掲載されている。一番目が小川さん、二番目が川上さん。予想通り、ふたりは「アサッテの人」を推薦している。
**彼はやすやすと小説の枠を越え、ただひたすら叔父さんの発する声の響きのみに耳を澄ませた。**
**『アサッテの人』は、異常なことを描いているようにみえて、実は多くの人がかかえる、「生きて言葉を使って人と関係を持たねばならぬということ」の覚束なさを、ていねいに表現している。**
ふたりはこのように評しているが、私には到底ついていけない作品だった。
作家は言葉で勝負しなくては。
■■■! これはいただけない(写真左)。美しくない。文字を強調することはあるだろう、でもこれはなしだ。最後に平面図が添付されているが(写真右)、これもいただけない。
石原慎太郎氏の選評に共感した。**ある選者はこの作品を言葉への挑戦と評していたが、通常言語への否定としての挑戦としても、文中に出てくる『声の暴発』なるものを活字の四倍大の黒い四角で示すとか、最後に『読者への便宜を図るため』として『叔父の肉筆によるオリジナルな平面図』なるものを付記しているのは、作者の持つ言葉の限界を逆に露呈しているとしかいいようない。**
小川さん、川上さんが選考委員でなかったら、この作品が受賞することはなかっただろう。作者の諏訪哲史さんは、ラッキーだった。
また前回の受賞作『ひとり日和』青山七恵/河出書房新社を石原、村上両氏が絶賛したそうだが、このとき小川さんと川上さんが選考委員だったら、この作品はまず受賞出来なかった、と私は思う。
**自分が苦労?して書いた作品を表象する題名も付けられぬ者にどんな文章が書けるものかと思わざるをえない。曰くに『グレート生活アドベンチャー』、『アウラ アウラ』、『わたくし率イン歯ー、または世界』、『オブ・ザ・ベースボール』、『アサッテの人』。いいかげんにしてもらいたい。**
石原評。
これが新しい文学の流れの予兆?
来週の「週刊ブックレビュー」に諏訪哲史さんが出演する。注目、注目。