■「週刊ブックレビュー」
日曜日の朝、この番組を観てBモードに切り替えています。読書な日曜日にしようと思うわけです。「読書な日曜日」って変な表現ですが、マ、いいでしょう。本のタイトルの「もっとコロッケな日本語を」、コロッケな日本語ってどんな日本語なのか、どんな意味なのかわかりませんが、それに比べたらまとも。川上弘美さんには「なんとなくな日々」というエッセイ集もあります。
話を元に戻して「週刊ブックレビュー」。
この一時間番組は前半が三人の書評ゲストがそれぞれ三冊の本を紹介して、そのうちの一冊、計三冊について合評するコーナー。後半がゲストに話題作などについて話を聞くという構成です。
今回合評された本のうち、私の注目は関川夏央さん紹介の宮脇俊三さんの『時刻表ひとり旅』。宮脇さんといえば中央公論社入社後、中央公論編集長、編集局長、最後は常務で退社した方だそうですが(手元の宮脇さんの著書の奥付けを参照しました)、私は北杜夫の隣りの住人(宮脇さんがまだ若かりし頃の北杜夫に自分の隣りの土地を紹介したんです)ということで知っていた方です。確か北杜夫の初期の作品の担当者でもあった方だったと思います。仲のよい隣人どうしだったんですね。
その宮脇さんの名著『時刻表ひとり旅』が何故か講談社現代新書に収録されたそうです。時刻表を細かく読み解きその裏側のドラマに思いを馳せる・・・。私のように別に鉄っちゃん、鉄道マニアでなくても楽しいだろうなと想像がつきます。宮脇さんの本は好きで何冊か読みました。この本も書棚にあったはずなんですが見つかりませんでした。あるいは未読なのかも知れません。
**スジやさんが引いたアナログなグラフをデジタル化したものが時刻表**だと関川さんは番組で説明していましたが、そうか、なるほどと思いました。
さて、番組の後半。今朝のゲストは芥川賞を受賞した諏訪哲史さんでした。
失踪した叔父が残した日記。そこに書かれていた意味不明な「言葉」ポンパ、タポンテュー・・・、叔父の思い出を小説にしようとする私。「アサッテの人」はその過程をそのまま小説にした作品です。
諏訪さん自身、昔吃音があって話し言葉でなくて書き言葉で勝負しよう、自由になろうとして8年前に書いた最初の小説だそうです。「言葉そのもの」を書いた作品です。
諏訪さんの次の発言が今回の芥川賞の選評に対する感想・評価にもなっていると思いました。発言のままではありませんが書き留めておきます。
**中高年の男性に支持されると予想していたが女性読者の方が好意的に読んでいる。感性の違い、女性の方が受け入れる器を持っている。男の方が定型的な日常に嵌まっている。**
文学とはこうでなくてはならない・・・、その定型からの逸脱、そういう意図で書かれた小説なんですね。改めてこの小説の選評を読んでみると、川上弘美さんがこの意図を読み取っています、さすがです。
「書き言葉を使って生きていく」という諏訪さんの決意の表明、「アサッテの人」ってそういう小説なんだと、分かりました。そのことを読み取ることができなかった私は型に嵌まっているのです、きっと。