透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

コラボレーション 2

2007-08-12 | A あれこれ

前稿から続く 

 現在の建築設計の現場でかつての丹下さんと坪井さんのような関係を挙げるとすれば伊東豊雄さんと佐々木睦朗さん、ということになるでしょうか。

伊東さんの代表作「せんだいメディアテーク」をはじめ主要な作品の構造を佐々木さんが担当しています。佐々木さんの卓越した構造センスなくしてあの建築は実現しなかったと言っても言い過ぎではない、と思います。

ミースの箱をガウディが貫いている  

「せんだい」をここまでシンプルに表現したかどうかは別としてこのような捉え方を示してみせたのは、ふたりの建築家に感心を持つ佐々木さんだったような・・・ 曖昧な記憶があります。その後、伊東さんが「オレはガウディを目指す!」と言ったと藤森さんが証言していますが、この宣言にも佐々木さんと伊東さんとのデザインを巡る議論が関係しているのではないか、私にはそう思えるのです。

「建築雑誌」の今月(8月)号に佐々木さんが「高度IT時代の構造デザイン」という小論を書いています。

**現代の構造デザインにおいて、自由、複雑、不定形、流動的、有機的といった特徴をもつ新しい3次元的な構造物の創造は、近代の呪縛から建築を解放し、建築という領域を拡張するうえで、今や国際的にもコンテンポラリィなテーマになりつつある。しかし、それを真に合理的に実現するためには、従来の経験的な構造デザイン手法にかわって、力学と美学とを統合した理論的な形態デザイン手法が必要である。**

この形態デザイン手法を既に確立し実用化しているのが、佐々木さん自身なんです。「建築雑誌」のこの小論には、佐々木さんの「ドーダ」がちょっと入っていますが、大いにドーダしてかまわない、と私は思います。「ぐりんぐりん」や「瞑想の森 市営斎場」のような自由曲面も佐々木さんが数理的な難しい力学理論を基にコンピュータを使って解析し最適解を抽出したことによって実現したのですから。

佐々木さんは学生時代は構造より意匠の方に惹かれていたそうです。坪井さんがそうだったように、佐々木さんも意匠にも感心が高くていろいろ意見を言うそうです。

コラボレーション、相手の領域にも関心があって自論を持ち合わせていることがその前提かもしれません。


 


コラボレーション 1

2007-08-12 | A あれこれ

 縁側でアルバムを開いては 私の幼い日の思い出を 何度も同じ話繰り返す 独り言みたいに小さな声で

さだまさしは「秋桜」でこう詠いました。同じ話を繰り返しするのはどうやら歳をとった証のようです。このことを自覚しつつ私も同じような話を繰り返します。

 丹下健三さんは日本の近代建築のデザイン力を初めて世界に示した建築家でしたし、都市を意識した建築デザインをする国内では数少ない、いや唯一人の建築家でした。都市という文脈に沿ってデザインした建築、代々木体育館や
、広島平和記念公園をその実例として挙げることができます。

どちらも優れたデザインだと思います。代々木の体育館は1964年に開催された東京オリンピック用の施設として造られていますから、40年以上も前の作品ですがいまだにこの体育館を最も優れた日本の建築に挙げる人も多い、と雑誌などで紹介されることがあります。

「広島」は知りませんが「代々木」の構造を担当したのは坪井善勝さんでした。丹下さんと坪井さんはなかなかいコンビだったようです。時には立場が逆転して丹下さんが構造のアイデアを提示し、坪井さんがデザインに口を出すということもあったそうです。

優れた仕事が成立するための必要条件のようにも思えます。(以後 次稿)


 


遠い記憶の夏休みに咲く花

2007-08-12 | A あれこれ

夏のフォトアルバム 4 (070812)

 夏休み 遠い記憶の中の夏休みにはこの花が咲いています。

夏の花といえばこのアサガオとヒマワリだと思うのですが、どちらも健康的なイメージがありますね。

ギラギラと輝く太陽のように咲くヒマワリ、元気一杯。夏の朝、静かに咲いているアサガオ、早寝早起き 健康的な生活。

子供のころは時の流れが随分ゆっくりだったような気がします。夏休みも長かった・・・。大人になってからの時の流れの速いこと。この感覚は証明できると何かで読んだ記憶があります。『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』本川達雄/中公新書に出てくるのかな・・・。

今年の夏休みは今日一日だけ、バンザイ!さて貴重な休日、どう過ごしましょう。

「色」に込めた想いとは

2007-08-12 | A あれこれ

『続・住宅巡礼』中村好文/新潮社 

 昨日、夕方偶々観たTV番組(タイトルは「20世紀の名住宅物語」だったかな)で、メキシコ・シティにあるルイス・バラガンという建築家の自邸を取りあげていました。

世界遺産にも登録されている「バラガン自邸」、この写真にも写っている濃いピンク色の壁が有名です。今から60年も前に設計、建築された住宅ですが、今日よく見かける「ペナペナで存在感が希薄な単なる四角い箱」とは大違い、光の扱いや内外の空間の関係などが見事!な作品でした。

自分で撮った写真をアップできればいいのですが、田舎暮らしの貧乏人にはメキシコまで見学に出かけるなどという余裕はありません。本に載っている写真の転載はルール違反かも知れませんが、そっと載せておきます。

ところで、この有名な「ピンク」は番組によるとブーゲンビリアの色だそうです。なるほど、確かに同じ色ですね。

バラガンは1902年、メキシコ西部のある町の大地主の家に生まれますが、1936年の農地改革によって広大な土地を国に没収されたそうです。彼には同じような境遇に生まれ裕福に暮らしていた幼なじみがいたそうで、書斎だったかな、本人の写真の横に彼女の写真も飾ってあるところが紹介されました。

生涯独身だった彼が想いを寄せ、頼りにもしていた女性だったんですね。で、彼はふたりの故郷に咲き乱れていたブーゲンビリアと同色に壁を塗った・・・、彼女への想いを壁の「ピンク」に込めた・・・、番組ではそう説明していました。

豊かな色彩がメキシコの民家の特徴のようで、壁のピンクはめずらしくないようですが、このような解釈はロマンチックでいいですね。

このように、ある人に宛てたメッセージを作品にそっと盛り込むなんてことを芸術家は案外しているのかもしれません。

そういえば先日も書きましたが青木繁は「海の幸」に恋人の顔を描きこんだそうですし、建築家の宮脇檀も、卒業設計のパースに彼女の後姿を描きこんだそうです。このような例はいくらでもありそうです。

ロマンチストであることは、芸術家の条件なんでしょうか・・・。