透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1308

2013-09-01 | A ブックレビュー

 猛暑の8月が去って、初秋の9月に。

このところあまり本を読んでいない。8月の読了本は3冊のみ。読書は量より質だとも言われるが、やはりある程度量をこなすことが前提だ。



夏目漱石の『吾輩は猫である』角川文庫、何回目かの再読。奥付の発行日が昭和41年9月となっているから、古い本だ。

この小説はタイトルが斬新だし、**吾輩は猫である。名前はまだない。*という書き出しも印象的で、記憶に残る。

苦沙弥先生のサロンで交わされる社会批評、文明談義を名もない猫が傍聴する。猫の視点を据えることで、漱石自身を客体化しているところがやはりすごい。今秋は漱石の作品を少し読もう。




『伊勢神宮 日本人は何を祈ってきたのか』三橋 健/朝日新書

式年遷宮によって若返る伊勢神宮。690年に始まり、1300年もの長きにわたり脈々と受け継がれてきたこの神事には「常若」の願いが込められている。メタボりズム(新陳代謝という生物学の概念というか生物に見られる現象を建築にも適用しようという考え方)の思想は古代からこの国あったということだ。

今年は式年遷宮の年。繰り返しになるが、この一連の神事のうち、御白石持行事に参加する機会に恵まれた。一期一会の幸運。間近にみる真新しい神殿は実に厳かで神々しい雰囲気に包まれていて、聖地に相応しい空間だった。

『古事記』で語られる神話の世界について偶々宮司さんと話す機会があったことが今回の行事参加に繋がった。『古事記』の神話について何も知らなければこのような機会に恵まれることもなかっただろう。読んでおいてよかった。

それが更にこのような新書を読むことに繋がっている。読書の連鎖も楽しい。




『モバイルハウス 三万円で家をつくる』 坂口恭平/集英社新書

ホームレスのブルーシートハウスに魅せられた著者が試行する理想の家づくり。人にとって家とは何か。