■ 『知ってるつもり「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方』西林克彦(光文社新書2021年)を読んだ。どのようなカテゴリーにおいても知識の全体像を体系的に・システマティックに把握することが必要であることを説いている、と本書の内容を理解した。
第1章「知ってるつもり」をなぜ問題にするのかの第2節は私たちはこんなマズイ知識の中で育っていると刺激的なタイトルだ。この節で著者はある教科書(中学社会科)の文章を引用する。**日本の海岸線は、出入りが多く複雑で小さな岬、湾などが多く見られます。そのため日本は、国土面積に比べて海岸線が長いという特徴があります。三陸海岸や志摩半島、若狭海岸などにはリアス海岸が見られます。いっぽう、出入りの少ない砂浜海岸も多く(九十九里浜の写真)、鳥取砂丘のように砂丘が発達していることろもあります。**(32頁)この教科書の海岸についての話はこれで終わりとのこと。
とりたてて違和感のないこの説明文のどこがマズイというのだろうか・・・。
著者がまず指摘しているのは海岸として「リアス海岸」と「砂浜海岸」を対比的に取り上げているが、すべての海岸はこの2つで尽くされているのか、ということ。全体像を体系的にという観点の取っ掛かりとしてこのような説明文はどうなのか。
ぼくも教科書からこのような知識だけを得ていただけだった。海岸は大きく砂浜海岸と岩石海岸(*1)に分けられ、リアス海岸は岩石海岸に含まれるという関係だから、まず海岸として「岩石海岸」と「砂浜海岸」を対比させなければならない、そうしないと体系的ではないということか・・・。なるほど、確かに。
論考は多様なものを捉える際の「共通性」と「個別特性」について(第2章)、孤立した知識への対応(第3章)へと展開され、孤立した「知ってるつもり」は疑問を生まない(第3章 第2節)ということなどが論じられる。確かに指摘の通りだと思う。だからチコちゃんに叱られっぱなしなのだ。
ただ単に知識を得るだけでなく、知識のシステム化、知識を有機的に繋げるということについて、知識システムと教育(第5章)、知識システム構築に関する留意点(第6章)で論じられる。
知識の体系化、知識システムの構築は長いスパンで自分でやっていくしかない、ということなんだろうな・・・。本書を中高生に読んで欲しい。
*1 岩石海岸ということばは知らなかった(と正直に書く)。