透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「景観からよむ日本の歴史」

2021-12-25 | A 読書日記

『日本の景観』樋口忠彦(春秋社1981)の初読は1981年11月、今から40年前のことだ。今までに数回読んでいる(過去ログ)。本書で著者の樋口氏は日本の景観をいくつかのタイプに分類し、その構造を明らかにすることを試み、更に都市景観を地形景観のアナロジーとして捉えて魅力的な都市景観について論じている。論理的な筋書きが明解な論考。

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『景観から読む日本の歴史』金田章裕(岩波新書2020年)を数日前に読了した。論考の対象は日本の景観で、上掲本と同じ。著者の金田氏は**景観の歴史を読み解くための見方や考え方、またその意義について述べてみたい、というのが本書の目的である。**と、はじめにの冒頭に書いている。全5章から成る論考の第2章の章題が「古地図からよみとく景観史」であることからも分かるが、著者は古地図や写真を手がかりに、景観をつくりだしてきた人々の営みを読み解こうとしている。で、論考の結論というのか、答えが何なのか、どうもよく分からなかった。

あとがきに次のような一文がある。**要するに文化的景観とは、文化景観そのものであるが、生活・生業などの「理解のために欠くことのできないもの」である。(中略)本書で取り上げたのは、こうした文化的景観ではなく(一部にはそれを含むが)一般の文化景観であることをご了解いただきたい。**(199頁)読解力に欠ける私にはこの文章が理解できない。

写真について金田氏は**実際に景観を眺める、という行為の代償として用いた。**(186頁)としているが、ブラタモリ的なフィールドワークに基づく景観の読み解きの方が、私には興味深く、おもしろかったと思う。

『日本の景観』と『景観から読む日本の歴史』とでは景観という同じ対象でもその捉え方、読み解き方が違い、求めている答え、即ち何を解き明かしたいのかということがそもそも違がうのかもしれない。

まあ「何でも読んでやれ精神」で読んできたからいいけれど。でもそろそろ読む本をきちんと選ばないといけないと、自覚しなければ。無理かな・・・。そう劣化脳には難しいことが易しく書かれた本でないとダメ。