透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

読んだ本、誰にすすめる?

2022-11-18 | A 読書日記

『三四郎はそれから門を出た』三浦しをんの読書エッセイ集を読み終えた。彼女はあとがきにかえてに**「この作品は、あのひとの好みにずばり直球ストライクだろうな」とか、「この作品について、ぜひだれかと語りあいたい!」などと、思いを馳せることもできる。**と書いている。

読んだ作品について語りあう、という機会は20代の頃(かなり昔)にはあった。が、その後は無くなってしまった。読書好きの知人・友人はいるけれど、同じ作品を読んでいたということはあまりない・・・。

『三四郎はそれから門を出た』に取り上げられている本で、読んだことがあったのは『海辺のカフカ』村上春樹(新潮文庫)『私の家は山の向こう』有田芳生(文藝春秋)『白い巨塔』山崎豊子(新潮文庫)『黄金を抱いて翔べ』高村 薫。ほとんど重なっていなかった。

読書は十人十色。ひとにすすめられて読むと、おもしろいと思う作品もあるけれど、そうでない作品もある。「そうか、あのひとはこういう作品が好きなのか」とすすめてくれた知人・友人のことを考える。昔(って20代の頃)はそういうことが時々あったなぁ。そのころの本は今でも書棚に並べてある。


 


「三四郎はそれから門を出た」

2022-11-18 | A 読書日記


『三四郎はそれから門を出た』三浦しをん(ポプラ文庫2012年第3刷)@朝カフェ(松本市渚のスタバ)

 我が村の文化祭で行われた中古本プレゼント会でもらってきた本6冊のうちの1冊。三浦しをんは『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を、『舟を編む』で本屋大賞を受賞している。このふたつの賞を受賞しているということから、実力のある作家だということが分かる。だが、ぼくはこれまでこの2作品の他に『しをんのしおり』くらいしか読んだことがなかった。

『三四郎はそれから門を出た』はとにかく読書が好きだという彼女の本に関するエッセイをまとめた本。ユーモアたっぷりに綴られる日々のくらしや読書のことなど。

まえがきにかえてに**私が一日のうちにすることといったら、「起きる。何か読む。食べる。ないか読む。食べる。仕事をしてみる。食べる。なにか読む。食べる。なにか読む。寝る」である。**と書いている(001頁)。**先日、友人の新居に何人かで押しかけ、昼間から宴をした。「お疲れさま!」と、まずはビールで乾杯だ。**(238頁)まあ普通の人はこの文章はこれで終りにすると思うけれど、彼女は続けて次の様に書く。**休日の昼間なのに、いったいなにがどう「お疲れ」なのかわからないが、とにかく乾杯だ。**(238頁)これがこの本に収められたエッセイに共通する彼女のユーモア。

「きらいな動物」というタイトルで猿について書いている。**猿への憎悪が高まりつつある。なんであんな動物が、干支に入っているんだろう。できることならリコールしてやりたい、とまで思う。**(234頁)この先の引用は控えるが、なぜ猿がきらいになったのか、子どものころの出来事を紹介した後、**「さる」と聞いても、意地でも動物の猿を思い浮かべないよう、自分を鍛えたのだ。その甲斐あって、「さるといえば秀吉」と、反射的にすり替えがきくようになった。**(235,236頁)と書く。さらに続けて**「都内に秀吉出没」「イモを洗うかしこい秀吉」「秀吉の群れに荒らされる農作物」といった具合である。人間の知恵の勝利。我が脳内から、ついに動物の猿を駆逐せり・・・・・!**(236頁) このユーモア、この表現力。かと思えばきっちり書評を書いてもいる。才能ある人だなぁ。

最後に、ぼくならこの本のタイトルを「門を出た三四郎はそれから」ってする。こっちの方が良くないか、などとひとり思っている。