透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

『魔女の1ダース』

2006-06-04 | A 読書日記
**日本において、男が女にモテるには、「三高」、要するに収入と学歴と身長が高いことが条件らしいが、ロシアにおける必須三条件は、次の通り。

頭に銀(ロマンス・グレー、要するに、禿げないということ)。
・ポケットに金(やはりお金持ちがよろしい)。
・股ぐらに鋼鉄・・・・・・

ここまで書いたところで、出版社からクレームがついた。**

『ガセネッタ○シモネッタ』文春文庫

先日亡くなった米原万里さんは機知に富んだエッセイを書く方だったが、シモネッタもときには書いておられる。 この文庫に収録されている「省略語」という一文では、母親の介護のために高価な手すりつきの付きのベッドを買えと勧められた際に、今のベッドで十分です。手すりだけ付けたいんです。といったところたちまち相手が無愛想になって、勝手におやりなさい、補助金は出ませんよ、といわれたという経験から、高齢者福祉行政を皮肉って**ああ、私としたことが、重大な省略を見過ごしていたのだ。「高齢者支援センター」とは、「高齢者(を対象に事業展開する企業を)支援するセンター」のことだったのだ。**と書いている。

このように米原さんは、ときには辛口の批評家でもあった。 『真夜中の太陽』中公文庫の解説で、あの佐高信さんは、**まちがって私につけられている 辛口批評家 という呼称は、米原さんにこそふさわしいのである。** と書いている。

『旅行者の朝食』文春文庫に収録されている「桃太郎の黍(きび)団子」。犬や猿や雉に黍団子をやるとみな桃太郎の家来になって、危険を冒してまで鬼退治について行こうという気になるんだからよっぽど美味しいに違いない。一度でいいから食べてみたい!米原さんはそう思っていたそうだが、後年実際に食べてみて思いっきり落胆したと書いている。

それから二十年後にアメリカの養豚場で豚どもがものすごいスピードで餌を平らげていくのをみて、餌は何かと米原さんが訊ねると、**答えはhog millet、つまり黍だった。猿や犬や雉にとっては、黍団子がとても魅力的だったのかもしれない、とのとき思った。**とこのエッセイを結んでいる。 

私は彼女のこういうエッセイが好きだ。 **猫のいない人生なんて、人生じゃないわよ** 昨日の新聞に寄せた追悼文で作家の吉岡忍さんは、猫好きだった米原さんのエピソードを紹介していた。 米原さんは1950年生まれ、まだ若かった、残念だ。 

彼女が遺した作品をじっくり読もう。

建築文化の喪失

2006-06-03 | A あれこれ


日本の家から消えつつあるもの 060603 

 日本の現代住宅を紹介する月刊誌を見る機会がある。そこに紹介されている作品の多くには和室がない。室名が和室となっていても床の仕上げが畳ではあるが、壁や天井は洋室と変わらない、畳敷きの洋室とでも言うべきものが大半だ。 今日では縁側、床の間、襖(ふすま)などの無い家も決してめずらしくはないだろう。

日本の住まいから消えつつある伝統的なしつらいなどにまつわる小論文的なエッセイ集『日本の家 空間・記憶・言葉』中川武/TOTO出版。この本は友人からのメールで知った。

境界空間、仕切り、場、部位、しつらい、素材、象徴 と章立てし、カラー写真、図版などと共に各章3から5、計25の項目について綴っている。対象を的確に捉えたカラー写真が美しい。 「長押ってなに、三和土ってなんて読むの」といった質問を挙げそうな、建築に関する知識の少ない一般の方にも読んでみて欲しい本だ。

**何かを得るためには、何かを捨てなければならない。住宅近代化の課程で、私たちは多くの懐かしいものを失ってきただろう。それは、時代に即応した新奇性や性能など、新しい何かを得るためであった。**

著者は、このことを必ずしも悲観的に捉えているわけではないようだが、私には、日常生活に根差した「文化」の喪失に思える。 失われつつある日本の伝統文化、とりわけ日々の暮しから生まれ、日々の暮しを支えてきた建築文化に無関心ではいけない・・・そんな思いでこの本を読んだ。  


                                        


本棚に人を見る

2006-06-02 | A 読書日記

○本棚が見たい!(060602)

他人に自分の裸を見せるより本棚を見せる方が、いや!っていう人、結構多いらしいですね。

この三冊の本は雑誌に連載された「著名人の本棚を拝見し、その人なりの読書論、読書方法、本の整理法について伺う」という企画をまとめたものだそうです。発行は今からおよそ10年前。それぞれ24人の本棚が収録されていますので、計72人分紹介されています。女性は少なくて、高村薫、上野千鶴子、櫻井よしこ、高橋章子、阿井恵子、たったの5人。

個性が出ますね~ッ。本の種類、整理の仕方がそれぞれ違います。 書名まではきちんと読み取れませんが背表紙の色などの雰囲気から上野千鶴子さんは流行本を結構読んでいそうです。

筒井康隆氏の本棚には整然と本が並んでいます。 この企画、復活してもらって是非、川上さんの本棚を見せて欲しいな。

他に見せて欲しい本棚は・・・、あなたはどなたの本棚?

ところで『磯崎新の革命遊戯』TOTO出版には磯崎さんの蔵書リストが載っています。全体の一部、千数百冊とのことですが、世界を代表する建築家の読んでいる本は凄い!のひと言。

出会い頭

2006-06-01 | A あれこれ

○モダン建築?(060415)  

「路上観察学会」藤森照信さん、赤瀬川原平さん、南伸坊さん、松田哲夫さんらが会員だと知ると、この学会なんだか楽しそうですね。

『路上探検隊 奥の細道をゆく』路上観察学会/JICC出版局 には、ゆかいな写真がたくさん載っています。藤森さんが路上でこの学会の発足を宣言している写真を観た記憶がありますが、どこに載っていたのかは忘れてしまいました。

友人のYさんがブログに路上観察写真を載せています。私もこれからときどき載せようと思います。Yさん、今度いっしょに路上観察しましょう。

この写真、ふたつの壁の材料が出会い頭にぶつかっています。左官材と金属パネルなどの異質の材料を唐突にぶつける、このところよく見かけるパターンですね。モダン建築のデザインの常套手段といってもいいかもしれません。屋根の小波トタンと塗り壁との「取り合い」もおもしろいですね。

今回タイトルを「出会い頭に衝突」ってしようかなと思ったのですが、エッ!事故ったのって、勘違いされそうな気がしたのでやめました。