映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ほつれる」 門脇麦

2023-09-13 17:08:20 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ほつれる」を映画館で観てきました。


映画「ほつれる」は門脇麦が不倫していた主婦を演じる演劇畑の加藤拓也監督作品である。不倫していたと過去形にするのは、浮気相手が突然亡くなってしまうからである。

映画評は最悪、日経新聞は星2つだし、映画comも2.9と良くない。それでも観に行くのは門脇麦のファンだからである。前作「渇水」では売春まがいのことをしていて水道代を滞納するシングルマザーを演じた。主演ではないが、存在感があった。理由があるわけでない。ずっと追いかけてみたい女優である。映画館内はガラガラ、いつ公開打切りになってもおかしくない状況だった。

人妻の綿子(門脇麦)は夫に友人英梨(黒木華)と旅行に行くと夫(田村健太郎)にウソをいって木村(染谷将太)とキャンプに出かけていた。ところが、その帰路で木村は交通事故に遭う。綿子は救急車を呼ぼうとしたが、やめて自宅に戻る。夫との関係は冷めきっていたが、夫は修復しようとしていた。もともと木村は英梨を通じて知り合った。英梨より死亡の知らせを受けるが葬儀には参列しなかった。

それでも、綿子は木村のことが気になって仕方ない。英梨と一緒にまだお骨が納められていない山梨のお墓に向かう。夫との約束があったのに突然予定外の行動をとる綿子の動きに夫が疑いをもつようになる。


内容は普通、ストーリーには驚くような起伏はない。
低い点数をつける人の気持ちもわかる。
でも、門脇麦はよかった。現代版夫のいる不倫女になりきる。

夫がいながら不倫をしてしまっている若い女性を追いかける映画である。不倫にのめり込んでいるわけではない。熟女の不倫のような官能的な世界ではない。若い夫を騙して別の男に心を移す若い女性の揺れを門脇麦が巧みに演じる。ウソが重なり収拾がつかなくなる時もあると思うが、この手の女性は身近な男を騙すのが上手いので乗り切る。脚本の加藤拓也夫のある若い女性とつき合った経験があるのかもしれない。そういう女性を間近で見ないと書けない。


杉田水脈衆議院議員「女はいくらでもウソをつく」と言って、世間から強いパッシングを浴びた。(本人は否定しているが)でも、「それって当たっているんじゃない。」と思っている人は逆に多いと思う。大手をふっては誰も肯定しない。動物行動研究家で数多くのおもしろい本を書いている竹内久美子女史杉田の言葉は概ね本当だという。「うそをついている自覚がないのだから,挙動不審にもならず,見破られにくい。つまり,うそをつくのがうまいのだ。」(「ウェストがくびれた女は男心をお見通し」竹内久美子 pp.109-112)

「止められるか、俺たちを」若松孝二監督の助手を演じた門脇麦にグッと惹かれてから追いかけている。音楽をキーとしたロードムービー「さよならくちびる」や東京のハイソなご令嬢を演じた「あの子は貴族」は良かった。でも、自分には「止められるか」や本当は歌手になりたいストリップ嬢を演じた「浅草キッド」や売春行為で生きるシングルマザーを演じた「渇水」のような汚れて堕ちていく役柄に真骨頂を感じる。

ここでも、門脇麦「ウソをつく女」がもつ心の真実の揺れを表情で実にうまく見せてくれる。着実に成長しているのをみれるのはうれしい。本音を話した時の言葉の噴出が妙にリアルだ。演技の熟練度が増したのを見るだけでいいのでは。
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映画「こんにちは、母さん」 吉永小百合&山田洋次

2023-09-12 17:35:40 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「こんにちは、母さん」を映画館で観てきました。


映画「こんにちは、母さん」は9月13日で92歳になる山田洋次監督吉永小百合主演で東京向島を舞台に母と息子の交情を描いた作品である。自分にとって大先輩にあたる山田洋次監督は、沢田研二主演「キネマの神様」以来の監督作品である。吉永小百合ももう78歳、永野芽郁のおばあちゃん役だが信じられないくらいに若い。妖怪のようだ。今回は息子役に大泉洋を迎えて、いかにも山田洋次監督作品らしい人情劇としている。

大手会社の人事部長を務める神崎昭夫(大泉洋)は向島の足袋屋の息子だ。父は亡くなり家業は母福江(吉永小百合)が継いでいた。昭夫は妻と大学生の娘舞(永野芽郁)と暮らしていたが、現在別居中で舞は向島の家に入り浸っていた。
母は地元のご婦人たちとボランティアサークルでの活動に励んでいたが、牧師(寺尾聰)も一緒に活動している。実家に寄った昭夫が牧師に接する母親の様子がどこか違うと感じるのであった。

いかにも伝統的な松竹のホームドラマの肌合いだ。
東京スカイツリーを臨む隅田川の言問橋より北側の向島エリアが今回の舞台だ。地下鉄の本所吾妻橋駅から歩くのが普通の行き方か。向島芸者はいまだに数多くいる。両国の相撲取りを含めて着物を着る人たちの足袋の需要がないわけでない。映画では隅田川および周辺が繰り返し映し出される。東京らしい風景で趣きがある。

映画では、美しい未亡人の母の老いらくの恋、リストラで同期のクビを切らなければならない上に家庭不和の息子の苦悩が主な焦点だ。隅田川の岸辺にはホームレスで生活する人たちが大勢いて、そのうちの1人田中泯演じるホームレスをクローズアップする。


ただ、現状東京都の取り締まりで掘立て小屋で野宿するホームレスは大幅に減った。しかも、有効求人倍率がアップして、人手は足りないくらいだ。主人公昭夫のオフィスからは東京駅が見える。そんなロケーションのオフィスがある会社では、最近は以前のようなリストラはないはずだ。他にもリストラ者への通告や解雇の取り扱いなど映画を観ながら、ビジネスの世界にいる身で観ると、絶対おかしいと感じる場面はいくつもある。共同脚本の山田洋次も近年の世間の動きがわかっていないんじゃないかとも思っていた。

実は「こんにちは、母さん」は劇作家の永井愛2001年に作った戯曲である。2001年製作なら、その時点のリストラ状況やホームレスの実態をそのまま戯曲にしたのはよくわかる。でも、現代を基軸にすると、原作内容と変わっているので違和感を感じる。でも、吉永小百合と山田洋次が組むわけだから目をつむっても仕方ないでしょう。

⒈吉永小百合
日曜日の日経新聞を読むと、ギターリストの村治佳織吉永小百合と一緒に2人で海外旅行に行くエッセイが掲載されていた。優しい文章で吉永小百合の楽しむ様子が目に浮かぶ。読んでから颯爽と映画館に向かった。

映画ポスターに写る吉永小百合の表情がかわいい。でも、自分より一回り以上年上である。自分が物心ついた時すでに青春スターだった。地元五反田にも日活の映画館はあったが、両親は関心がなかった。「キューポラのある街」のジュン役から61年も経つ。あの時の少女が東京下町の片隅でこんな感じで育っていると考えても理に合う。川口から向島までは隅田川をたどれば決して遠くはない。

器用な俳優ではない。78歳になっても精一杯こなしている。素敵だ。サユリストと言われる世の男性の老人たちは、この映画で寺尾聰の手を握った時の吉永小百合をみてどう思ったか?気になる。それにしても、隅田川沿いで着こなした夏っぽい薄い水色の着物は良かったなあ。


⒉山田洋次
いかにも松竹のホームドラマっぽい映画を今回も撮り切った。90過ぎてのお仕事お疲れ様でした。映画では前半から松竹っぽいわざとらしいセリフが続く。リズムはゆっくりだ。ただ、山田洋次の作品だと思って観に来た観客は安心してこの世界に入れる。「男はつらいよ」シリーズの特に前期では、渥美清のスピード感あふれる口上でテンポはもう少し早かった。もともと喜劇中心だった山田洋次ミステリーに取り組んだ「霧の旗」という傑作がある。盟友倍賞千恵子悪女を演じて編集もよく、スピード感もある。

でも、90を過ぎた監督に、そんなスピード感を期待する方がどうかしている。吉永小百合という人智を超越した存在と自分が撮りたい作品を撮るという感じだ。もし、両国の花火が今年なかったらまずかったという山田洋次のインタビュー記事を見た。ホッとされたでしょう。完全復活とまでいかないがコロナ制約からの復帰を喜びたい。


⒊寺尾聰
後藤久美子が久々に登場した「寅さん」復帰の映画「男はつらいよ お帰り寅さん」を観た時、アレと思ったことがあった。後藤久美子の劇中の父親役は寺尾聰のはずだ。母親の夏木マリがいるのにどうしたんだろう?その時点で山田洋次、寺尾聰いずれも気にしていたと推察する。それが故での今回の出演だろうか?まあ吉永小百合の相手役の方がいいに決まっている。仏文科の大学教授を辞めて牧師になった設定だ。

寺尾聰が主役を張った中では時代劇の「雨あがる」が大好きだ。ひょうひょうとした雰囲気がいいけど、以前より出番は減った。最近周囲でカラオケタイムに寺尾聰の歌を歌う人が目立つ。大ヒットした「ルビーの指輪」が入っているRefrections には味のあるいい歌が多い。初っ端の「Havana Express 」のノリに身を任せると、勘定が予定外にエスカレートしてしまう。


⒋大泉洋
大泉洋といえば北海道だけど、今回は向島育ちの設定だ。主役的存在の「浅草キッド」は浅草が舞台だった。隣り合わせの向島と続き東京の下町が似合うようになってきた。現在50歳で実年齢相応の役柄だ。年齢差を考慮しても、吉永小百合の実子となってもおかしくない。大学の同窓同期の宮藤官九郎演じる課長がリストラになり、何とかしてくれとからまれる面倒な立場だ。リストラはする方もされる方もしんどい


山田洋次監督の作品は人情ものなので、普通だと冷徹そのものな野郎を人事部長に配役するが、そうはならない。観ると欠点が目立つ映画だけど、終了間際に急に涙腺が刺激された。何かよくわからない。まだまだ山田洋次監督には頑張ってもらいたい気持ちがあったのかもしれない。
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映画「バカ塗りの娘」 堀田真由&小林薫

2023-09-02 18:44:38 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「バカ塗りの娘」を映画館で観てきました。


映画「バカ塗りの娘」は青森県の伝統工芸である津軽塗の職人とその娘の物語である。初めて知ったが、塗っては研ぐを繰り返す手間のかかる手法で完成した漆器は美的感覚に優れている。監督は不思議な映画だった「まく子」鶴岡慧子で、津軽塗の職人に小林薫、その娘が堀田真由だ。弘前で家を借りて撮影された。青森を舞台にした映画は相性がよく、2021年の「いとみち」には特に感動した。津軽の岩木山をバックにした風景が実に美しい。ポスターを見て期待して早速映画館に向かう。

青森の弘前で伝統の津軽塗の工房を営む青木清史郎(小林薫)は、高校を出てからスーパーでパートをしながら仕事を手伝っている娘の美也子(堀田真由)と暮らしている。本来は坂東龍汰)が跡を継ぐのを父が希望していたが、結局美容師になってしまう。元妻も夫に愛想をつかして家を出ていった。美也子が津軽塗を真剣にやりたいと言っても父親は無理だというばかりだ。でも、美也子は廃校になった母校にあったピアノに津軽塗で色づけしようと本気を出して取り組む。


不器用な生き方をしていた23歳の女の子が、父親とともに郷土の工芸品づくりで身を立てようと奮闘する成長物語だ。好感がもてる。

先日観たばかりの「高野豆腐店の春」と物語の構造は類似している。地方の町を舞台にして、職人肌の父と娘が一緒に暮らして家業に取り組む。頑固オヤジの振る舞いに翻弄されながら、娘が父についていく姿を見るのは娘を持つ自分には親しみがある。そういえば、同じ青森が舞台の「いとみち」豊川悦司の父親と娘の物語だった。普通に父娘の交情を描いていくだけかと思ったら、若干意外な題材を組み込む。それがわかった時は思わず「え!」と声が出てしまった。

髙森美由紀の原作「ジャパン・ディグニティ」はあれど、プロデューサーと鶴岡慧子監督が数年かけて現地で津軽塗の世界を追求したのがよくわかる映像だ。小林薫と堀田真由も工房で津軽塗の漆器を実際に製作している。作品情報で津軽塗の解説を見ると、制作者の強い思い入れが感じられる。父娘が仕事する工房も実際に職工が使っている部屋なのでリアル感がある。岩木山はもとより、弘前内のレトロ感覚あふれる建物でのロケが随所に映るのもいい。


堀田真由はもしかして初めて観るかもしれない。映画のスタートで自転車を走らせる堀田真由をカメラが追い続けるシーンがある。さわやかで清々しい。不器用に生きている姿をスーパーでオロオロする場面などで示す。でも、青森の田舎にこんなにかわいい子はそうはいないと思う。普通だったら放っておかないだろう。ちょっとかわいすぎる。想いを寄せる花屋で働く男との関係が意外な展開になるのには自分も驚いた。

小林薫の出演作はよく観ている。今回は津軽塗の職工だ。地方都市の職人肌で熟練を要する仕事に長い間携わった頑固オヤジという役柄が多くなった。「深夜食堂」の店主だけでなく、昨年も「冬薔薇」の船乗りや「とべない風船」の元教師役などに味があった。青森弁の習得に苦労したとは作品情報での本人弁だ。確かに地元民が話す青森弁は普通の日本人が聞いてよくわからないだから気持ちはよくわかる。


美也子が慕うオバさんにこれまた出演作が多い名脇役木野花で、どうも青森県出身らしい。小林薫みたいには苦労しなかっただろう。家を飛び出した兄を演じるのが坂東龍汰だ。つい最近観たばかりの「春に散る」に出ていることを知り、横浜流星が世界戦の前哨戦で闘う相手ボクサー役だと映画が終わって気づきギャップに驚いた。
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映画「リボルバーリリー」 綾瀬はるか

2023-08-13 16:34:48 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「リボルバーリリー」を映画館で観てきました。


映画「リボルバーリリー」は大正末期の1924年(大正13年)を舞台にした秘密諜報機関の元女性工作員にスポットを当てる映画である。綾瀬はるかが工作員を演じて、行定勲がメガホンをとる長浦京の原作の映画化である。予告編で見ると綾瀬はるかの動きがアクション俳優としてサマになっている。

元工作員リリーこと百合(綾瀬はるか)は50人以上の殺しを請け負っていたスナイパーだったが、今は足を洗って玉ノ井のサロンで静かにしていた。ところが、旧知の男性が秩父で亡くなった新聞記事を見て現地に向かった。帰りの列車で陸軍兵士に追われている少年慎太(羽村仁成)を匿う。少年は身内を殺されて逃げる途中で、玉ノ井の百合に渡すように父親から書類を預かっていた。そこには陸軍が知りたかった隠密資金の情報が書いてあった。東京に戻ろうとするが、陸軍の部隊は執拗にリリーと少年を追う。


出演者は豪華で、常に窮地に追われる綾瀬はるかのアクションはカッコいい。
映画が始まって1時間以上経って初めてある事実がわかる。ストーリーに深みがでてくる。気の利いた推理小説のようだ。ただ、状況設定に無理がある部分が多いのが欠点だ。

陸軍中野学校をはじめとして、秘密諜報員を国家で育成していたのは間違いない。ここでは幣原機関という名前を使って女性工作員を登場させる。それ自体は悪くない。格闘能力にも優れて、銃を操り爆破装置の知識もある。ひと時代前だと志穂美悦子なんかを登場させた感じだ。最近の日本映画では少ない設定なので新鮮だ。

日本映画では比較的予算はある方なのであろう。東映製作なのでセットも利用できる。大正12年の関東大震災を経て一年たった東京の浅草六区と思しき芝居小屋や都電が走る上野広小路や娼婦が呼び込みをする猥雑な玉ノ井などを再現する。震災で壊滅状態の東京が1年でここまで復興されたかは疑問だけど、まあいいだろう。この時代にはすでに開通していた秩父鉄道の荒川橋梁陸海軍の本部や執務室などもきっちり映し出す。海軍の本部を映すVFXを使った映像もよく、背景の映像はよくできている方だ。


同時に配役も豪華だ。味方も敵も好配役だ。
百合に好意を寄せる海軍兵学校出の弁護士が長谷川勝己だ。玉ノ井のサロンにいる女性にシシドカフカと古川琴音を起用する。銃も扱う謎の女は鼻筋がきれいな美形だ。一体何者なのか?最初は永井荷風の濹東綺譚を映画化した時の墨田ゆきに見えてしまった。シシドカフカという名は初めて知った。


「街の上で」や「偶然と想像」で重要な役割を演じたので古川琴音はすぐわかった。実年齢より10歳若い役柄だけど、個性派俳優らしく巧みに10代の娼婦を演じる。


海軍大佐の山本五十六阿部サダヲを起用して、文書の謎を握る男が豊川悦司で、リリーが依頼するドレスの仕立て屋の店主に野村萬斎とぜいたくな使い方をする。山本五十六は実際小柄だったらしい。

リリーをおとしめようとする陸軍の男たちの使い方も上手い。不穏な雰囲気をだしてうまかったのが、「さがす」凶悪犯人を演じた清水尋也で、リリーと何度も格闘対決する。主人公が葛藤する相手は強くないといけない。他にも同じく「さがす」佐藤二朗や、内務官僚の吹越満など登場人物がうまく配置されている。


ただ、設定にはかなり無理がある。(ここからネタバレなので注意)
海軍と比較して、陸軍の軍人を悪くいうのは戦後の日本映画ではよくあることだ。ただ、ちょっとやりすぎかもしれない。陸軍がかなり無能な存在になっているのが気になる。軍人たちがリリーたちに銃を向ける場面が何度も出てくる。しかも、大勢の射撃手がいるのに、撃ち崩せない。おいおいここまで日本陸軍をバカにすることはないだろう。

長谷川博己演じる弁護士が内務省に逮捕されて匿われている時にスキを見て逃げ出すシーンもあり得るかと感じてしまう。戦前の内務省は現在の自治省や総務省などいくつもの官庁と警察組織も含んだ強い権限を持つ組織で、いわゆる特高の組織まで含まれる。そんなに易々と逃げていけるわけがない。しかも、あなただけと言って内務省の役人が内密の話をするのもおかしい。もっとも原作の問題だろうけど、戦前の日本をバカにしすぎだ。


あとはリリーが不死身すぎるということ。主人公が頑強であらゆる困難を克服するというのは物語の定石だろうけど、圧倒的に強い相手に胸を繰り返し刺されているのにそのまま生き延びられるのであろうか?その場で死んでもおかしくない。事実、ミッションインポッシブルの最新作では同じように胸を刺されて重要人物が亡くなっている。刺された後で格闘なんてできるわけない。これでは人智を超えた世界だ。オーバーな表現は必要でもちょっとやりすぎ?と感じてしまう。
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映画「セフレの品格 決意」

2023-08-05 07:47:20 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「セフレの品格 決意」を映画館で観てきました。


映画「セフレの品格 決意」は湊よりこ原作の人気レディースコミック「セフレの品格」の実写化で前回の続編である。引き続き城定秀夫監督、主演行平あい佳のコンビは変わらない。原作はいまだ観ていないが、1作目はデートもしない、恋に落ちないでただただ交わる。そんな設定が新鮮に見えた。城定秀夫監督の演出もよく十分堪能できた。2作目はどうなるのか楽しみだった。


バツ2のシングルマザー抄子(行平あい佳)は高校の同級生産婦人科医一樹(青柳翔)とのセフレ関係は相変わらず続いていた。そんな時、17歳にして望まぬ妊娠をした咲(高石あかり)が一樹の診療所に堕しにくるが、相手の合意書や親の同意がないとできないと断る。ある時、町で咲が自虐的行為に陥っているのを偶然見て、いったん一樹が家に引きとる。抄子は咲の存在に驚くが、娘のような咲をかわいがる。しかし、咲は好意をもった一樹に近い抄子が気に入らず大胆な行為にでてしまう。


そこで抄子はいったん身を引く。そんな時、会社の用務員的存在だった猛(石橋侑大)と近づく。猛は抄子よりずっと年下の23歳でボクサーだった。抄子は若い猛に一樹と同じような関係を提案する。

一作目のようにはのれなかった。
ストーリーが昼メロみたいだ。無理やり不自然なストーリーをつくっているように見える。新たな登場人物を2人加えるけど、ボクサーの猛はいいけど、17歳の咲が中途半端である。猛はボクサーとしての荒々しさで抄子と交わる。未成年の17歳の設定にしてしまったせいか、咲を脱がすわけにはいかない


結局、脱がすのは主人公の抄子だけになってしまうのはロマンポルノとしては物足りなさを呼ぶ。主演の行平あい佳自体は悪くないし、本格的ボクシングスタイルの石橋侑大もいい。ただただ、純粋なにっかつポルノに寄りきれていない展開がのれなかった。
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映画「658km 陽子の旅」 菊地凛子

2023-07-30 22:38:37 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「658km 陽子の旅」を映画館で観てきました。


映画「658km 陽子の旅」菊地凛子上海国際映画祭で主演女優賞を受賞した作品である。監督は熊切和嘉「夏の終り」「私の男」など連続していい作品を作ってきたが、今回久々に彼の作品を観る。疎遠だった父親が亡くなり東京から青森までヒッチハイクで向かうロードムービーだということは事前情報でわかる。ストーリーは何となく想像できるが、菊地凛子の演技が気になり映画館に向かう。この映画の菊地凛子は疲れている役柄だけど、近況の姿はすごくきれいになった感がある。

東京の古いアパートで引きこもり気味に1人住む42歳のフリーター陽子(菊地凛子)の元を従兄弟の茂(竹原ピストル)が、青森にいる陽子の父親が亡くなったと伝えにくる。陽子は呆然とするが、一緒に車で青森に向かおうと茂にいやいや引っ張られ同乗する。

ところが、高速のサービスエリアでの休憩中に、茂の子どもがトラブルに巻き込まれてその場を一時離れる。トラブルが起きた時に別の場所にいた陽子のスマホは使えない状態になっていた。茂の車が自分を置いて先に行ってしまったと思い、駐車中の車に北の方面に行ってくれと頼む。

主人公は最初からヒッチハイクで青森へ行こうとするわけではない。高速のサービスエリアで置いて行かれてしまうのだ。しかも、スマホもないし、所持金は2000円足らずだ。やむなく、誰かの車に同乗せざるを得なくなるのだ。


典型的なロードムービーで、青森に向かう菊地凛子をひたすら追う映画である。出ずっぱりの菊地凛子は東京のアパートに引きこもりに近い状況である。人との関わりがなくなって他人とのコミュニケーションがうまくとれない。ヒッチハイクで同乗した人ともうまく話せない。そんな状況をうまく演じている。そこにファンタジー的にあの世に行ったオヤジ役のオダギリジョーがからむ。これも趣きがある。


ただ、脚本は欠点だらけだ。青森に送っていく従兄弟とハグれないとストーリーが成立しないのはわかるけど別れ方の設定が強引すぎるし、菊地凛子が携帯持っていないのがわかっていての従兄弟の行動ではない。当初人との会話ができない菊地凛子の表情に途中から変化がみれるのはわかるけど、何か不自然にみえる。ロードムービー特有の色んな人との出会いも強引な流れが目立つ。時間が2日くらいあるならともかく、一晩の設定ではこれだけの出会いと移動はキツすぎる。

自分は福島から東北青森方面に運転したことあるからわかるけど、高速だけでなく下道も走るのにこんな早く明るいうちに着くわけない。しかも、福島の海側からだ。


それでも、「私の男」で雪景色を美しく映した熊切和嘉監督北国を撮るのはうまい。ラストで撮った菊地凛子とそれを取り巻く雪が積もるショットはよく見えた。余韻をもった素敵なラストだと思う。
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映画「セフレの品格 初恋」 行平あい佳&城定秀夫

2023-07-26 20:20:47 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「セフレの品格 初恋」を映画館で観てきました。


映画「セフレの品格 初恋」は次々と作品を発表する城定秀夫監督の新作である。湊よりこ原作の人気レディースコミック「セフレの品格」の実写版らしい。そもそもレディースコミックなんて読んだこともないし、湊よりこも知らない。ただ、宣伝文句では430万部も売れたようだ。これはすごい。

城定秀夫ピンク映画出身で自分が追いかけている監督の1人だ。公開館が少ないので低予算は仕方ないかもしれないけど、作品の出来には当たりはずれがあって物足りない気分で帰ることもある。でも、城定秀夫はピンク映画出身だけにお客様を満足させようとするサービス精神旺盛なところがある。そこが好きだ。今回の製作は日活だ。ニューロマンポルノで「手」を観たが、その流れであろうか?早速映画館に向かう。映画好きの男性観客の中に女性がいるのが昭和の日活ポルノ映画館とは違う。作品情報で振り返る。

森村抄子(行平あい佳)は36歳のバツ2で、派遣社員として働きながら娘を育てているシングルマザー。高校の同窓会で初恋の相手で産婦人科医の北田一樹(青柳翔)と再会し、ホテルに誘われる。

数年ぶりのSEXの快感に、二人の関係を深めていきたくなる抄子だったが、一樹にその気はなく、セフレになることを提案される。唐突な提案に驚く抄子は、セフレという関係を受け入れられずにいた。そんな折、抄子は同級生の新堂華江(片山萌美)が一樹とセフレであることを知り、さらに会社の上司である栗山(新納信也)にも言い寄られ る。(作品情報 引用)


サービス精神旺盛の城定秀夫監督作品らしく十分堪能できる仕上げだ。
同窓会で再会した男女が間違いを犯して不倫に陥るのはよくあるパターンだ。でも、少し路線をはずす。ここではお互い本気にならない、食事とかのデートはしない。恋心も追わない。ひたすらsexだけの関係を継続するというのがミソだ。

それでも、お互いに亭主や妻がいれば、バレてぐちゃぐちゃになる。それが不倫物語のパターンだけど、この2人は男にも女性にも離婚歴があって現状相手がいない。ならば恋へと進むと思うけど、付き合うという方向性がない。それがポイントだ。

単純に2人の交わりを追う展開だけにはしない。変化を持たせるために2人の間に媒介する美女を含めたり、それぞれのバックストーリーを追い、話に膨らみをもたせる。城定秀夫の脚本も冴える。

⒈行平あい佳
初めて見る女性だ。出演作「ダイナマイトスキャンダル」や「タイトル拒絶」での記憶がない。実年齢は31歳と設定年齢の36歳よりも若い。美人ではないけど、周囲にいそうな女性である。当然のごとく脱ぐけど、AV女優的なナイスバディではない。行平と同じ早稲田出身の往年の女優高瀬春奈の爆乳に比較すると、小粒な乳首で乳輪も小さいし、肉感的ではない。それなのに魅力的だ。親近感もある。


自分には浴衣姿の行平あい佳がよく見えたし、メイクラブシーンもいいけど不倫ムード満載の貸切風呂でイチャイチャするシーンに惹かれた。これこそ城定秀夫の真骨頂だ。事前情報で往年の日活ポルノで聖子ちゃんカットで人気だった寺島まゆみの実娘だとわかる。懐かしいと思って、映画を観ているとなんと母親と思しき中年女性が出てきてハッとする。おでん屋の屋台で久々に見る伊藤克信と飲んでいる女性だ。こういう屋台って最近東京近郊で見なくなったなあ。

⒉城定秀夫監督
驚異的な量産体制である。「愛なのに」を観て、自分に波長があっているので城定秀夫作品を観るようになった。「アルプススタンドのはしの方」という高校野球の応援席のはしの方で野球オンチの女の子のチグハグな会話を楽しむような青春映画を作る人かと思っていたら違う。ピンク映画を山ほどつくっていた人だった。


佐藤泰志原作の「夜鳥たちが啼く」の巧みな展開や「恋のいばら」のコミカルタッチに比べると、直近の「放課後アングラーライフ」は青春モノで、その前の「銀平町シネマブルース」のような映画好きの人間模様のような普通の作品を続けてつくったので路線が変わったのかと心配していた。ある意味、「愛なのに」の路線に回帰してくれて安心した。

きっと原作のおもしろさもあると思うけど、「セフレの品格」の展開には練ったバックストーリーもあるので意外に単純ではない。例えば、からみの多い「火口のふたり」に比べると、話の道筋に変化がある。そのために主演も張る川瀬陽太や田中美奈子まで引っ張ってきて、いかにも日活ポルノ系のヤバい話まで用意して楽しませてくれた。主人公に言いよる上司役の新納慎也が往年のピンク男優久保新二に妙にダブって笑えた。
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映画「無情の世界」 唐田えりか

2023-07-05 18:01:00 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「無情の世界」を映画館で観てきました。


映画「無情の世界」は気鋭の映画人による3つの短編映画を集めた作品だ。でも正直、唐田えりかを観に行ったようなものである。例の事件以来復活した作品がいくつか公開されたが、残念ながら都合の合う時に上映していない上にすぐ上映終了で観れていない。しかも、唐田えりかが主演する「真夜中のキッス」の監督脚本は佐向大である。昨年観た佐向大監督「夜を走る」は自分の2022ベストに入る実におもしろい映画だった。気になり映画館に向う。

「真夜中のキッス」は、ある男女が殺人事件に絡んでしまい、男は自首を提案するが、女は拒否して夜を彷徨い元カレを含めた男たちを巻き込む話
「イミテーションヤクザ」は、無名の俳優がヤクザ映画のオーディション会場の雑居ビルに行くが、手違いでホンモノのヤクザの事務所に入って課題のセリフを披露してクロウトと立ち回る話

「あなたと私の2人だけの世界」は、奥手の男性向けの恋愛講座と女性向けの護身術講座がひょんなことで絡む話

正直言ってつまらなかった。
低予算フィルムということもあるだろうけど、学生の自主製作映画レベルとたいしてかわらない印象を受ける。あえていえば、「イミテーションヤクザ」の話が若干おもしろいくらいだなあ。たしかに、ある首都圏の町で自分が食べに行った町中華のビルに超有名なヤクザの事務所が入っていたことを偶然知ったことがあった。そう言われればその筋と思しき人が食べているのをみたことがあったが、周囲に威圧感を与えていなかったので気づかなかったことがある。ただ、ここまでの話はちょっと出来過ぎ。いい発想だと思うけど。


「夜を走る」の着想があまりに良かったので、「真夜中のキッス」には期待したが残念。イマイチだ。でも、期待していた唐田えりかはここでも実にかわいい。この作品には「アルプススタンドのはしの方」で名を売って、最近は「少女は卒業しない」にも出た小野莉奈も出演している。映画界きっての期待の若手だ。唐田えりかが恋人の元を飛び出してしまった後で、小野莉奈はその男の恋人になった未成年の女という設定だ。その男は戻ってきた唐田えりかに未練たらたらで女同士のイザコザが生じている。

映画の中で、小野莉奈唐田えりか「かわいいからって何でも許されるの」みたいなセリフを発する。小野莉奈も平均点を大きく超えて可愛いけど、今回は引き立て役みたいになって気の毒だ。それくらい唐田えりかはかわいい。


一気にメジャーになった濱口竜介監督「寝ても覚めても」での瑞々しい唐田えりかにはグイッと引き寄せられた。でも、東出昌大との不倫で世間一般特に女性陣から窮地に落とされたのは残念だ。という素敵な奥様がいても、唐田えりかに惹かれる東出の気持ちは男としてよくわかる。毎日フレンチばかり食べたら別のおいしい軽食が食べたくなるといった感じか。映画評論の御大である元東大総長の蓮實重彦唐田えりかを絶賛した。下世話な話にはお偉いさんは無関心だ。


唐田えりかはあまりのかわいさに周囲の女性陣から警戒されるタイプなんだろう。自分の会社にもいた。やさしくてかわいい女の子だ。風貌の雰囲気まで似ている。上位下位を問わず男性ファンが多い女の子が、別の女子社員からあの子は仕事ができないなどと、悪口を陰で言われている。自分も直に聞いた。男同士で飲んでそのかわいい子の話題になると、本当に女っていじわるで嫌だねという話になる。むずかしいねえ。この映画での唐田えりかを観て改めてそんなことを思う。
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映画「愛のこむらがえり」磯山さやか&吉橋航也

2023-06-29 19:31:09 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「愛のこむらがえり」を映画館で観てきました。


映画「愛のこむらがえり」は先日「渇水」で初長編監督作品を発表したばかりの高橋正弥監督の作品だ。監督昇格できず万年助監督に甘んじている男が同棲している彼女と一緒に自ら書いた脚本を売り込んで日の目をみようとする物語だ。磯山さやかと東京乾電池に所属する吉橋航也の主演である。東京乾電池の親分柄本明をはじめとして、吉行和子、浅田美代子といったベテラン勢が脇を固める。

子どもの頃からの夢で公務員になるべくしてなった香織(磯山さやか)が、地元鉾田の映画祭で賞を受賞した映画に感動して映画の仕事をしようと上京する。賞を受賞した浩平(吉橋航也)と映画の仕事で一緒になり、同棲を始めて8年になる。しかし、浩平は18年も助監督という名の雑用係で、今では自分より若い監督の下につく始末だ。

自ら限界を感じながら、浩平が起死回生で書いた脚本「愛のこむらがえり」を読んだ香織が感動して映画製作者に売り込む。でも、なかなかうまくいかない。香織が映画プロデューサーの友人橋本(菜葉菜)に脚本を見せて、いくつかアドバイスを受け脚本はブラッシュアップした。ただ、いいキャストがでなけりゃ映画製作のカネは出せないということで名優西園寺宏(柄本明)に出演交渉しようと香織がストーカーまがいに近づいていく。でも、門前払いをくらってしまう。


主演2人に好感が持てるコミカルテイストをもった作品だ。
もう40近いけど、磯山さやかは、かわいい。映画に感動して周囲を気にせずずっと拍手し続けたり、同棲相手が書いたシナリオを読んで涙を流しながら感動している姿がいい感じだ。そこまでやられると相方もやる気にもなるだろう。しかも、各映画会社などに率先してtel打ちして売り込み、名優にも出演してくれと強引な出演交渉をする。映画の中の存在だけど、熱心さにしびれる


万年助監督の浩平を演じる吉橋航也は、今回初めて知った存在だ。才能はあるけど、うだつの上がらないボーッとしたキャラクターの役づくりだ。プロフィールを見ると、東大法科出身だという。昭和の時代には、山村聰や渡辺文雄の東大出身俳優がいて、現役には香川照之もいるけど、いずれも法科卒ではない。ただ、3人とも政財界の大物のような役ができる。今回観た限りでは、吉橋航也はちょっと出来なさそうなキャラだ。むしろ東大理系研究者の匂いがする。自分の経験では頭のいいやつってこんなボーッとしたやつが多い。


高橋正弥監督には長らく助監督をしてきた経歴があるので、自分で自分のことを題材にして書いたのかと思ったら違う。脚本は「ツユクサ」安倍照雄、三嶋龍郎との共同脚本だがメインは加藤正人である。東北芸術工科大学の教授で、比較的最近では白石和彌監督で香取慎吾主演の「凪待ち」の脚本を書いている。2019年の公開作品では自分なりには評価が高い。競輪狂いの主人公を描いているのに白石和彌がギャンブルをやらないと聞き変だな?と思った記憶がある。どうやらピンク映画上がりの加藤正人裏筋の人生にもくわしいのだろう。

助監督が長いという経歴の高橋正弥を意識して加藤正人が書いたのかもしれない。履歴を見ると、加藤正人も高橋正弥も秋田出身なので同郷のよしみもあるのだろう。助監督がロケ地で交通整理をしたり、なかなか監督作をもらえないと助監督仲間とキズを舐め合うシーンは映画製作内部にいないとわからない。


柄本明も出演作に事欠かない。「最後まで行く」はやくざ役だったけど今回は名優役だ。日経新聞で「私の履歴書」を既に書いた吉行和子も80代半ばを過ぎてスクリプター白鳥あかね役で出演しているし、往年の名映画監督役で品川徹が出ているのも味があるセリフが出せて良い。往年のファンとしては浅田美代子の出演もうれしい。


いくつかの映画で出会っている菜葉菜が、映画プロデューサー役で出ている。これがうまい。現代映画のプロデュース事情を語ってくれたのでわかりやすくて良かった。それによれば、最近の映画は「原作至上主義」で名の通った原作がないとスポンサーがつかない。オリジナル脚本なら著名キャストを連れてこないとダメだと語る。なるほどと思った。
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映画「君は放課後インソムニア」 森七菜&奥平大兼

2023-06-25 05:14:55 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「君は放課後インソムニア」を映画館で観てきました。


映画「放課後のインソムニア」オジロマコトの漫画原作を池田千尋監督がメガホンをとり、若手の人気女優森七菜が主演の青春モノである。共演は「マザー」長澤まさみ演じる出来のわるい母親に振り回される息子を好演した奥平大兼だ。でんでん、田畑智子、MEGUMI、萩原聖人といったベテランが脇を固める。

たまに青春モノが見たくなる時がある。とは言うものの、予告編でこれは違うなと思うことが多い。今回、日経新聞の映画評古賀重樹編集委員が星5個(満点)をつけていた。いい批評しても評価は3点が多い古賀重樹には珍しいことなので、ついつい目が止まる。しかも、「ラストレター」で観た森七菜の瑞々しさとクルド人移民の悲哀を描いた「マイスモールランド」でも好演した奥平大兼が気になり映画館に向かう。

石川県の高校生中見丸太(奥平大兼)は夜眠れない不眠症に悩まされていた。ある時用事があって学校の天文台に入った丸太は、そこで寝ているクラスメイトの女子高生曲伊咲(森七菜)に気づく。伊咲も同じように眠れない悩みをもって時々来ていることがわかり、2人でこっそり訪れるようになる。ところが、養護教員に2人が天文台にいることがバレてしまう。事情を聞いた教員は2人に思いきって学校公認の天文部を作ったらどうかと勧める。そして、以前部員だった先輩にも頼り天文台を活用した活動を始める。


さわやかな青春物語で好感が持てる。
石川県七尾市が舞台で、おそらくは地元も全面的に協力したのであろう。まさに天文台がある七尾高校を使ってロケをしたみたいだ。人口5万の海辺に面した地方の町の息づかいが手にとるようにわかる。7つの橋を誰にも見られずに渡るといいことあるなんてエピソードもいい感じだ。能登町の真脇遺跡にいる2人を捉えるカメラワークが良かった。しかも、このところの日本映画に多い下層社会の暗い面を妙に盛りだくさんにしすぎる雰囲気がないのも良い。


森七菜と奥平大兼の主演2人がさわやかだ。もともと恋心がお互いにあったわけではない。天文部の活動で、天文台という密室で共通の時間を過ごすことで恋が深まっていく。若い2人の空気感がじわりじわり伝わってきて応援してあげたくなる。これまでの作品を観て好感をもった2人が頑張った。若い2人の同級生たちや先輩やお姉さんの使い方もうまい。読んではいないが、オジロマコトの漫画の原作もいいムードを持っているのであろう。

伊咲に心臓疾患の持病があることや、丸太の母親が飛び出して行ったなんて話題もある。それぞれの悩みを乗り越えながらこの純愛をキープしようとしている。「努力も運も写真に写らない」と伊咲がカメラ好きの丸太にいうセリフが妙に腑に落ちた


自分も目線を高校時代に落とした時、森七菜みたいな女の子とこんな共通の時間が過ごせたらどんなに楽しかったんだろうかとうらやましい気分になる。主題歌「夜明けの君へ」もいい曲で席を立つ人がいなかった。そう、ラストのエンディングロール終わったあとにオマケがあるので注意。少し涙腺を刺激するシーンはあったけど、スッキリと映画館をあとにできた。
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映画「波紋」筒井真理子&光石研

2023-05-27 17:21:01 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「波紋」を映画館で観てきました。


映画「波紋」は「川っペリムコリッタ」荻上直子監督のオリジナル脚本で筒井真理子が主演のシリアスドラマである。予告編で何度も観て、内容はうっすら想像できた。夫が失踪してしばらくして妻が新興宗教にハマった時に夫が突如戻って来るというストーリーは予想通りのままだった。「よこがお」など筒井真理子主演のドラマはいずれも好きで、期待して映画館に向かう。直近にいい公開作がないせいか、上映館は比較的多いようだ。

東日本大震災の直後に放射能の影響が報道されている頃、親子3人と要介護の父親で暮らしている須藤家の主人修(光石研)が突如妻の依子(筒井真理子)の前から姿を消す。それからしばらく経って、義父も亡くなり息子(磯村)も九州の大学に行って就職して一人暮らしの依子は新興宗教「緑命会」にハマっていた。そこに突然夫が戻ってきた。線香をあげたいという夫を家に向かい入れると、夫はガンになってしまったという。そのまま夫が家に住み着くようになる話だ。


映画自体は興味深く観れたけど、期待したほどではなかった。
でも、筒井真理子、光石研は相変わらずの安定した演技である。特に筒井真理子はほぼ出ずっぱりで普通の主婦が新興宗教にハマっている姿を描いている。それ以外のプールやサウナのシーンやお隣さんとのやりとりのシーン、息子がフィアンセを連れてきた時の動揺を巧みに演じた。光石研は今回のようなダメ男の方が味がある。新興宗教の教祖?役を演じるキムラ緑子やスーパーの同僚の木野花の存在も映画の幅を広げる。いずれもうまい。


予告編で予想した通りの出だしで、ストーリーも普通に展開しただけでその後の起伏が少なかった意外性はなく、残念ながらパンチがない「川っペリムコリッタ」も中身がない映画だと思ったが、震災や介護や障がい者問題など世相の話題をいくつも継ぎはぎにしているだけで新興宗教の扱い以外は中途半端だ。荻上直子監督の作風はこんなあっさりした感じなのかもしれない。

ただ、筒井真理子演じる妻は夫が戻ってきた時に泣いたりわめいたりしなかった。普通だったら家の中に入れないだろうと思うけど、あえてその展開にしたのであろう。それ自体は悪くはない。別に寛容性があるというわけではない。いやで仕方ないけど、つらく当たると自分にしっぺ返しをくらうと考えてそうしているだけだ。それなのに、息子がフィアンセを連れてきたときの態度は考えられないほどの嫌悪感だ。これって女流監督だから演出できる男にはわからない女性心理を描いているのか?


こういった新興宗教の信者たちって、みんないつもニッコリして健全な感じだ。駅の前でよく見る宗教の勧誘や共産党のビラを配るおばさんたちと同じだ。江口のり子がそのうちの1人というのはいつもと違う。宗教の集会でキムラ緑子の教祖と一緒に信者たちが歌ったり、踊ったりする歌は当然オリジナルだろう。作詞作曲や振り付けも荻上直子監督が自ら考えたのであろう。これだけは事前取材の成果が出てすごいなと感じた。筒井真理子赤いカサを持ったフラメンコも好意的に見れた。
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映画「放課後アングラーライフ」十味

2023-05-06 20:44:24 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「放課後アングラーライフ」を映画館で観てきました。


映画「放課後のアングラーライフ」は頻繁に新作を量産する城定秀夫監督の新作である。井上かおるのライトノベルの映画化で関西の海辺の街が舞台である。「アングラー」とは釣り人のこと。城定秀夫監督作品は毎回観ているが、今回は東京近郊で公開の映画館が1つだけだ。無名の俳優だけでは客が呼べないのであろう。たしかに、脇役の宇野祥平や中山忍、西村知美など以外は知らない俳優しかいない。それでも一抹の期待をこめて映画館に向かう。

父親の転勤で関西の海辺の町に突然引っ越してきた女子高生めざし(十味)は、転校前は同級生にいじめられていた。友達はもうつくらないと誓って、転入してきた。すると、同級生となった椎羅(まるぴ)と凪(森ふた葉)から釣りの同好会であるアングラ女子会に入会を勧められ、一緒に海に向かう。勝気な明里とともに釣りに繰り出すが、めざしには以前のイジメのトラウマがあった。


さわやかな女子高生の友情物語であった。
海辺の田舎町に女子校ってあるのかな?というのが不思議だったけど、海辺の町独特の空気感がいい。若い女の子と組み合わせると清涼感を感じる。ただ、「ちひろさん」「とべない風船」などの直近でいくつか観ている地方の海辺の物語と同じで、話のネタが少ない。田舎町では大きな事件は起きない。釣りの同好会に入会して、どう話が展開するのかと思ったけど、高校生どうしの他愛のない話しかなかった。むかしの「中学生日記」のようなものだ。城定秀夫監督あり合わせの料理をさくっと作ったって感じがした。


それでも、若い女子高生が海辺で釣りに没頭する姿は絵になる。釣りをするシーンに加えて、魚をさばいて料理をつくって食べるシーンもある。のどかだ。主人公のめざしこと十味は、内気な女の子だ。あまりいじめられるようにも見えないタイプだと思うんだけど。都会的な顔立ちで最近よくいる若手女子社員とも見えるし、場末のキャバクラでなく少し値段が高めの銀座クラブにも清純派若手でいるタイプだ。ずいぶんと遠慮がちの演技に疲れたんじゃなかろうか?


釣り同好会会長椎羅の家は釣具店でそのお母さん役が西村知美だ。久々に顔をみた。日本TVのマラソンも完走したし、一時期はTVでその姿を見ない日はなかった。気さくな感じの釣具店のお母さん役で、自分にはよく見えた。これから同じような役で起用されるのでは?宇野祥平は今の日本映画の脇役では欠かせない存在だ。善悪どちらでもokで何でもこなす。未亡人の西村知美のことを慕う農家のオヤジで、まんざらでもなさそうだ。いつもよりやりやすかったんじゃないかな。


舞台が関西で釣る魚を「がしら」というので、てっきり和歌山かな?と思った。平成の初めに転勤で和歌山に住んで、当時「がしら」をよく食べた。関東ではカサゴと呼ぶけど、焼き魚にするとうまい魚だと思った。この映像ってどこかな?と思っていたけど、エンディングロールによるとロケ地は三浦半島のようだ。たぶん低予算だと思うので、それは仕方ないか。
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映画「少女は卒業しない」河合優実&小野莉奈

2023-02-26 17:38:05 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「少女は卒業しない」を映画館で観てきました。


映画「少女は卒業しない」は朝井リョウの原作を映画化した作品。頻繁に映画に出演している河合優実を含めた4人の女子高校生が卒業式まであと2日になった日々を描く偶像劇である。往年の山口百恵を思わせる趣きをもつ河合優実には、同世代と違う大人びた色気を感じる。「アルプススタンドのはしの方」野球オンチの女子高生を演じた小野莉奈もここで登場する。いずれも2000年生まれだ。若き日に思いっきり目線を下げる決意で映画館に向かう。

校舎の解体が決まっている山梨にある高校で、4人の女子高校生が卒業式を迎える。それぞれに悩みを持っている。4人は卒業式を迎えることでは一緒でも、クロスしていない独立した関係である。

山城まなみ(河合優実)は料理部に所属して、卒業後は地元の栄養の専門学校に行くことが決まっている。付き合っている彼氏に弁当をつくってあげていた。卒業式で答辞を読むことが決まって、本文の推敲を重ねて臨む。いざ本番になるときにある出来事を思い出し、胸に込み上げてくるものがある。


後藤由貴(小野莉奈)はバスケットボール部に所属している。卒業後は東京で心理学を勉強しようと進学を決めた。男子バスケ部に付き合っている彼氏がいるが、地元進学予定と進路が別々となり、数ヶ月疎遠になっていた。これではマズイと卒業式に一緒に登校しようと誘いかけるのであるが。。。


作田詩織(中井友望)は引っ込み思案で、クラスでみんなの会話に入れないまま図書館にいることが多かった。図書室担当の教員にクラスメイトと馴染めない話をすると、卒業式前に話しかけてみたらと言われる。思い切って実行してみると、感触が今イチであり、先生にグチってしまうのであるが。。。


神田杏子(小宮山莉奈)は軽音楽部の部長である。卒業式の記念ライブに出る部内の3つのバンドの人気投票をすると、森崎率いるパンクバンドが圧倒的人気だった。結局、杏子は投票通り森崎バンドにトリを任せることにしたが、投票結果はヤラセだと反感する部員が出てきた。そして、当日を迎えようとしたとき突然バンドの楽器やメイク道具が行方不明になるのであるが。。。


これらの4つの話が並行して時系列通りに進んでいく。「え!どうなっちゃうんだろう?」と思わせるのはバンドの話くらいで、あとはごく普通に話が進む。田舎町の普通の高校にビックリするような話は起きない。卒業式を題材にしたこの映画を観ながら、すっかり忘れていた自分の学生時代のエピソードが次々とよみがえる。そんなこともあったなと振り返るには良いきっかけになる映画だった。

⒈山梨の県立高校
いかにも山梨らしい盆地にある高校だ。見渡す風景は田舎町の風景である。全員が大学に進むわけではない。進学校ではない。地元の大学に進学する者もいれば、東京に進学することでウキウキしている者もいる。専門学校に進む生徒も就職する者もいる。ある意味バラバラだ。でも卒業式まであと何日と黒板に書いてあるけど、その時期って高校には行っていなかった気がする。

ただ、こんなふうに進路がバラバラな方が、物語をつくりやすい気がする。オムニバス映画に近い構造である。

⒉卒業式の同伴登校
小野莉奈演じる由貴が東京の大学に進学するけど、相手が地元進学で進む進路が違うことで仲違いして疎遠になっている。でも、このまま高校生活をおえるのはマズイと彼を電話で誘いだして、明朝一緒に登校しようと誘いだしたのだ。このシーンを観て、自分が高校を卒業する時に同伴登校する2人がものすごい話題になった事件を思い出した。

男はラグビーの名プレイヤーで、自分の学校では一大行事だった運動会の団長であった。女は陸上走り幅跳びの選手で、各スポーツクラブの人気者から羨望のまなざしで見られた女子高校生。このスクールカースト上位の2人が卒業式に同伴登校しただけで、卒業式はその話題で持ちきりとなり、それから1年以上現役進学、浪人と進む進路が分かれた面々がそれぞれこのカップルの話題を持ち出した。


夜のクラブの女の子と同伴出勤するのとは異なり、高校時代は一緒に登校すること自体が付き合っているのと同値になっていたからだ。こんな話をずっと忘れていた。映画ってすごいよね。押し入れの奥底にしまっているような想い出を引き出してしまうんだから。ちなみに、その2人は結局結婚して2人の子供を作ったが、離婚した。そこにもドラマがあったが、ここではやめておこう。

⒊自分の想い出
幼稚園の卒園式だけはどうしても思い出せないが、小中高、そして大学それぞれの卒業式に想い出がある。高校の卒業式は3月18日講堂でクラスの代表が卒業証書を受け取る場面が脳裏をよぎる。東大をはじめとした国立の発表は3月20日だった。その結果がわからない状態でも私立は合否がわかって、浪人覚悟も大勢いた。

今時だったらコンプライアンスでエライ大騒ぎになる話だが、当時目蒲線だったある駅にある飲み屋で卒業式打ち上げをやった。自分が部活のOB会の飲み会で使ったことのある飲み屋をアテンドした。いつもOBに飲まされていた。2日後に東大や京大に合格する男もその場にいたし、女性陣もいた。結局、酔っ払いすぎて、前後不覚になって御嶽山にある友人宅に担ぎ込まれた。まあ、ひどい話だけど、楽しかったなあ。本当、今の高校生はかわいそう。


⒋卒業したくない
今回の主人公たちは「卒業したくない」とそれぞれ言う場面がある。今のままでずっといたいと。先日大学の同期5人で飲んだ。その会話の中で、「戻るんだったら、いつの時代に戻りたい?」という話題になった。紅一点の女性は高校時代と言っていた。


小学校から一気通貫の彼女は、名前を言えば誰でも知っている人の子孫にあたる上級国民出身で教育ママ羨望のルートを歩んでいた。若い頃は大学で3本の指に入るすごい美人であった。「なぜ高校なの?」と言うと、小中が共学で、高校で女子高になって、それがムチャクチャ楽しかったそうだ。自分にはわからない世界だ。

でも、その彼女がずっと幸せだったわけではない。夫の不貞で財産問題と離婚訴訟が起こり、ハチャメチャになる。一時はあの美貌がかなり衰えた。美形で何もかも恵まれた人が必ずしもずっと幸せになるわけではない「ずっと卒業したくない」と言っている時がいちばん幸せなのかもしれない。
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Netflix映画「ちひろさん」 有村架純

2023-02-25 10:12:21 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
「ちひろさん」はNetflix映画


Netflix映画「ちひろさん」は原作漫画を有村架純主演今泉力哉監督が映画化したものだ。映画館の予告編で観ていたが、すぐさま発信されたので覗いてみる。有村架純が風俗嬢を演じるという設定が気になる。予告編で観た時に、印象に残るセリフがいくつかあった。

海辺の小さな町の弁当屋で、ちひろ(有村架純)が店員をしている。ちひろは元風俗嬢で、そのプロフィールは隠さず務めていて、来店する男性客にも人気だ。ちひろのパフォーマンスを追う地元女子高校生や小学生もいる。そんな時、友人とお祭りに行くと、そこで元店長(リリーフランキー)に偶然出くわした。以前お世話になっていた。


こんな調子で進む。どこのロケかな?と思ったら、変わった名前の釣具屋がある。この看板は本物だろうとネットで検索すると静岡の焼津だった。ごく普通の漁港で、素朴な出演者たちを描く。


Netflixで予算はもらえたのか、有村架純をはじめ出演者はまともだ。リリーフランキーや風吹ジュン、平田満などに加えて今泉力哉作品常連の若葉竜也もでてくる。いつもの今泉力哉監督作品ほど長回しはない。くどくはない。田舎町での小さなエピソードを集めているけど、大きな紆余曲折はない。そんなに大きな出来事が起きるところでもないだろう。昨年から今年にかけて海辺の町を舞台にした「ツユクサ」「とべない風船」もそうだった。静かに始まり、さらっと終わる。


有村架純演じるちひろさんは、人生に疲れてもうダメだと思った時にリリーフランキー店長の風俗店に救われる。そういう履歴を経た29歳の女の子だ。ホームレスのおじさんに弁当をあげたり、不登校気味の高校生と仲良くなったり、夜の商売で働くシングルマザーの1人息子に食べさせたりする。そういった海辺の町の住人との交情がずっと描かれる。それぞれに心の闇を抱えている人たちに癒しを与える存在だ。この映画の予告編はこの映画の重要な会話を簡潔にまとめている。傑作というわけでもなくあっさりした映画だけど、悪くはない。
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映画「茶飲友達」岡本玲&外山文治

2023-02-15 18:50:29 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「茶飲友達」を映画館で観てきました。


映画「茶飲友達」は老人向けの風俗に焦点をあてた作品。自分も60を超えたので、ある意味気になる題材で映画館に向かう。この映画も東京ではユーロスペースでしか上演していない。そのせいか、地味な映画なのに「コンパートメントNo.6」同様超満員で驚く。外山文治監督の前作「ソワレ」村上虹郎主演の若者の物語だったけど、がら空きだった。

老人パワーはすごい。客席には男女を問わず老人が多い。身近に感じられるのであろう。岡本玲や名脇役渡辺哲など一部の俳優を除いては、一般人の老人がかなり出演している。


非常によくできた映画である。
傑作と言っても良い。素人も混じっているのにリアル感が半端じゃない。ドラマ仕立てで、ドキュメンタリータッチというわけでもないのに真に迫るものがある。それぞれのセリフに不自然さがない。一定の年齢に達した人がこれを観ると、誰もが思うことがあるだろう。

妻に先立たれた1人住まいの老人が新聞を読んでいると、「茶飲友達」募集という三行広告に気づく。電話すると若い女性が「ティーフレンドです」と応答した。会ってみると、お相手とスタッフの2人の女性と面会する。メニューは普通のコースと玉露コースに分かれていて、玉露コースではハードなお付き合いもできるのだ。運営者の代表は元風俗嬢のマナ(岡本玲)で、若者たちで運営している。送迎やトラブル対応をしていて、大勢の老女コールガールを抱えている。


⒈勧誘
店のオーナーであるマナがスーパーで買い物をしていると、万引きをしようとする初老の女性に気づく。おにぎりをバッグに入れたところを店員に見られ摘発されそうになっている。その場をマナが見つけて、お母さんレジに行きましょうと助けの手を伸ばす。まったく関係ないので初老の女性は啞然とする。そして、マナは自分たちのアジトに連れて行って勧誘する。当然、最初はそんな気はないと抵抗するが、未亡人の初老の女性マキは気がつくと「ファミリー」に入っているのだ。


あとはパチンコ屋にいるいかにもカネを突っ込んで金欠の女性などにも目をつける。みんな金がない。前借りもしょっちゅうだ。浪費家がその道に入っていく。ある意味、貧困ビジネスの要素もある。何かのきっかけで、「ティーフレンド」に来た女性をスタッフが手取り足取り初歩から教えていくのだ。

⒉男性たち
ネットというよりも全国紙の三行広告の方が効果がある。「茶飲友達募集」ということで連絡すると、待ち合わせ場所には初老の女性と若いティーフレンドのスタッフが待っている。そして、雑談を少しした後でバイアグラを差し出す。気がつくと一気にディープなコースに進んでしまうのだ。リピート率も高い。深い仲になったあと、男性側は普通の付き合いも求めるがそれには応じない。タイマーが終了したら、さっさと出ていく。


ここで「ティーフレンド」は別の需要に気づき一歩先に進んでしまう。老人ホームの個室で対応するのだ。お見舞いのふりをして、若いスタッフと初老の老女が部屋に入っていき、あとは老女にお任せだ。偉そうなことを言っても男は女性にキスされるともうダメ。かなりの重症で自分で何もできないような要介護老人にも対応する。白髪まじりの老女が入っていったら、施設の人も心配しない。


しかし、ずっとうまくいくことはない。ある時点で転換期を迎える。ここからはネタバレなので言えないが、万一の時にどうするか?ということもマニュアル化しておけばうまく逃げ切れたのかもしれない。当然、こんな映画の存在で実際に商売のネタにする人たちがいることも考えられる。その際には、いい事例になるだろう。

スタッフの人間模様にも着目する。
ただ、ここまでやらなくてもいい気もした。そうすると、120分以内で簡潔にまとめられるかもしれない。
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