映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「誘拐報道」萩原健一&小柳ルミ子

2019-07-01 05:55:05 | 映画(日本 昭和49~63年)

映画「誘拐報道」(1982年)を映画館で観てきました。


名画座の「萩原健一特集」最終日に放映された。レンタル店で見ることもなく、そもそも「誘拐報道」という映画の存在すら知らなかった。実際に起きた誘拐事件のあらましと取材する新聞社の動きを映し出す。誘拐犯人を萩原健一、その妻を小柳ルミ子が演じる。萩原健一は俳優としてのキャリアを積んで映画「約束」から10年、演技力を高めてきている。減量しての役作りだったという。


読売新聞という実名が出てきて驚いた。実話に基づく話だけにノンフィクション的な臨場感もある。この当時でいえば豪華俳優総出演だけに予想以上の見ごたえがあった。特に小柳ルミ子の好演が光る。先日内田裕也特集で「少女娼婦けものみち」姫田真佐久のカメラの見事さに感心したが、ここでも犯人が丹後の実家に帰った時の映像などに凄みを感じる。

私立小学校一年生の三田村英之が下校途中に誘拐された。県警本部の発表で、犯人が英之少年の父で小児科医の三田村昇(岡本富士太)に三千万円の身代金を要求していることが分かった。県警捜査課長(平幹二朗)から各新聞社へ子供の身の安全に留意するため「報道協定」の要請があり各社は受けざるを得なかった。三田村家には遠藤警部(伊東四朗)以下六名の警察官が入り込み、妻の緋沙子(秋吉久美子)と共に電話を待った。緋沙子が一人で来るようにとの電話があった。そこに向かうと川原には英之の学帽とランドセルが置かれてあった。

日本海側丹後の雪道を一台の車が通過していく。サングラスの男が降りて公衆電話で三田村家に電話をする。男は金をそろえるように指示して受話器を置いた。誘拐事件発生の知らせを土門社会部長(丹波哲郎)をはじめとした読売新聞大阪本社の幹部は大阪のクラブで受ける。地元の新聞販売店では大西支局長(三波伸介)をはじめとした事件記者たちが泊まり込みで捜査の行方をうかがっていた。


海を見下す断崖の上から、犯人が布団袋に入れた子供を投げすてようとするが、海面に潜水服着用の数名が目に入りやめる。そのあと、犯人=古屋数男(萩原健一)は老母(賀原夏子)のいる実家へ寄る。そこへ数男の妻・芳江(小柳ルミ子)から電話がかかってきた。家計を助けるため芳江が働いている造花の作業場に取り立ての男がきて、数男の行方を捜していた。方々連絡とった後で実家にかけたのであった。金策に困った数男は娘の香織を私立小学校に通わせていており、生徒の名簿から三田村家のことを知り犯行に及んだ。

数男は途中で財布を落とし、母親からもらったお金のほかに持ち金も無くなっていた。あらためて三田村家に電話を入れ、宝塚市内の喫茶店での現金受け渡しを指示する。捜査本部はあわただしく動き、記者たちも店のまわりを張り込んだ。しかし、店の中の動きに異変を感じた数男は店に近づかなかったが。。。

1.萩原健一と小柳ルミ子
ここでのショーケンこと萩原健一は持ち味の破天荒さをいかして、誘拐犯の切羽詰まった姿を巧みに演じている。これはこれで敢闘賞。今日は「いだてん」の高橋是清役で萩原健一でてしまうだよね。最後の姿、貫禄あるなあ!

でもまったく予期せず良かったのは小柳ルミ子である。犯人の妻を演じている。もちろん、自分の夫が子供を誘拐しているなんて全く知らない。ただ、振り出した200万円の手形がよくない筋に回って取り立てに来ていて、夫が窮地に陥り姿を消していることはわかっている。その夫が自宅に戻ってきた。自分は親も死んで身寄りもない。戻るところもない。私はどうすればいいの?財布をなくして、金がない夫になけなしの金を渡そうとして泣き崩れてしまうシーンもある。これには映画だということを忘れて情を移してしまう。


あとは、振り出した手形の件で喫茶店の店主に行ったときに言い寄られるシーン、ある意味覚悟を決めていくシーンの下着姿が超色っぽい。このあと、時が過ぎ妙に気前よくヌードになることが多くなった小柳ルミ子であるが、脱いでいないこのときの色香は明らかに脱いだ時よりも強く、並々ではないものを感じる。

この映画、被害者側の妻である秋吉久美子、事件記者の婚約者である藤谷美和子に同情させる設定になっているけど、なんとも感じないなあ。ただただ、小柳ルミ子の好演に魅かれる。見直した。

2.新聞社の前時代的な動き
自分が働き始めたころは、どこの会社も今でいうパワハラの基準でいえば、すべてアウトであろう。頭をたたき、部下を罵倒し、取材活動に向かわせるシーンがある。しかも、劇中で読売新聞の実名までだしている。要はこのパワハラみんなOKということだ。夜討ち朝駆けが当たり前の世界だったけど、今はどうなんだろう。

3.豪華俳優と三波伸介
上映されてからすでに37年たっている。鬼籍に入った出演者も少なくない。捜査課長の平幹二朗、編集局長の永井智雄、部長の丹波哲郎、支局長の三波伸介、いずれも故人である。丹波哲郎が下手な当時はやった「ダンシングオールナイト」を歌うのがご愛嬌。

それにしても三波伸介久しぶりに見たなあ。

このころは絶頂期で「笑点」の司会者でもあったので、日本テレビ系のこの映画には出演を頼まれたのかもしれない。現場近くの新聞販売店に寝泊まりする際、ズボンを脱いでステテコ姿になったけど、だぶだぶの身体だなあと映画を見て思った。でも調べると、この映画が公開されたのが1982年9月、そのあと12月に突然死しているんだよね。不摂生丸出しの身体だけに仕方ないけどなあ。あの時はみんなびっくりした。それにしても、てんぷくトリオのコンビの伊東四朗が刑事役演じている。この映画から37年たっているけど、現役まっしぐら。反面教師というのはこういうことか?



誘拐報道

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「嗚呼!おんなたち・猥歌」内田裕也

2019-06-14 20:12:43 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「嗚呼!おんなたち・猥歌」を観てきました。

内田裕也特集の神代辰巳監督とのコンビのもう一作である。自由奔放な内田裕也と過激な演出の神代辰巳監督との相性はいい。内田裕也はロック歌手を演じる。ロックの帝王といっても、これといったヒット曲がないのが内田裕也である。女癖の悪い売れないロック歌手というキャラはいかにも自らを演じているのでやりやすいだろう。1981年キネマ旬報ベストテン第5位とやけに評価はいい。内田裕也のハチャメチャさがうまく引き出せている。


売れないロック歌手ジョージ(内田裕也)は妻(絵沢萌子)と別居中で、今は風俗嬢の佳江(角ゆり子)のヒモ同然の暮しをしている。ある日、結婚に煮え切らないジョージの態度に、佳江はヒステリーを起こし彼の運転する車のハンドルを一方に切りまくり車は横転大破する。佳江は重傷を負い入院するが、ジョージはカスリ傷だった。ジョージは病院で眠っている佳江の隣りのベッドで看護婦の羊子(中村れい子)と話すうち強引に犯していった。

ジョージはマネジャーのユタカ(安岡力也)と新曲のキャンペーンでレコード店に行き、街頭に立ち歌うが誰からも相手にされない。キャバレーで歌っていても、客に野次られ喧嘩になってしまう。子供の誕生日に、ジョージはプレゼントを持って久しぶりに家へ戻るが、妻からなじられる。ある日、佳江は羊子の存在に気づき、彼と別れてくれと迫り大ゲンカ、でもやがて、二人の間に奇妙な親近感が生まれ、妙な三角関係となっていく。


その頃、売り込み効果が出て新曲が有線放送の二十九位にランクされた。ジョージはマネージャーのユタカと喜びを分かち合うが、悪い女癖がでて控え室にいたユタカの恋人の一美(太田あや子)を犯してしまう。一美は警察に訴えジョージは留置されてしまうのであるが。。。

1.売れないロック歌手
ここでは内田裕也自身のキャラが生かされる。東京の下町商店街あたりでは今でも見るようなレコード屋でマイクを持って前に立つ。演歌中心にDVDやカセットが置いてあるレコード屋に売れない歌手がきてキャンペーンを張っているのは今も同じ。通り過ぎる人で物珍しそうな顔で一瞥する人もいるが、止まって聞く人はほとんどいない。


あとはキャバレーどさ周り。80年代までは東京でもグランドキャバレー的な店はいくつもあった。典型的なロックンロールのイントロで始まる「コミック雑誌はいらない」を歌う。店に来ている客は演奏など気にせず、大きな声で女の子をからかっている。なぜかむかつき、客と喧嘩。いかにも売れない歌手モード満載である。


確かに内田裕也に代表曲というのはない。でも死ぬまで何かインタビューをされたら、最後に「ロックンロール」とのたまう。その一貫性に誰もがすごいと思う。これだけいい加減で悪態ついてもムカつかないキャラだ。アウトローであっても暗くない。基本的にネアカだと思う。映画を見ての後味がいい。

2.ソープでなくトルコ
この時代はまだソープでなくトルコである。 いきなり角ゆり子が泡まみれになって泡踊りをしているトルコ風呂シーンから映し出す。客には懐かしの黒田征太郎もでている。途中でトルコ嬢の佳江が羊子にどんなことやるのと頼まれて秘技を加える。当然感じまくりでジョージはカヤの外だ。そのあとで大物ピンク女優珠瑠美が演じる有閑マダムが女性用トルコに入り、内田裕也が奉仕するというシーンがある。脂がのった珠瑠美の身体を泡だらけにして内田裕也が楽しんでいる。脚本の荒井晴彦にこういうのをやらせろよと言っているみたいだ。

3.中村れい子
これがいい女で、この当時大好きだった。「水のないプール」内田裕也と再共演する。当時としては現代的美貌に加えて、しなやかな肢体の中村れい子に当時ノックアウトした男どもは多かった。男好きする甘ったるい声もいい。あか抜けない感じの看護婦役で登場するが、徐々に色っぽく熟れてくる。

内田裕也のお気に入りといった感じだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「少女娼婦 けものみち」内田裕也&神代辰巳

2019-06-13 22:08:09 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「少女娼婦 けものみち」を映画館で観てきました。

名画座で故内田裕也特集をやっている。この日は映画に頻繁に出るようになった40代前半の2作の上映である。神代辰巳監督作品は、かなり大胆な演出で同じ日活作品でも際立つ。破天荒な内田裕也とは絶妙なコンビだと思う。これは見るしかない。


まずは1980年3月公開の「少女娼婦 けものみち」だ。ストーリーはどうってことない。高校生の女の子が恋人と交わり大人の世界に一歩踏み入れる。ほぼ同時に2人の男との交渉で懐妊が判明する。でもどちらの子かわからない。こんな話はどこにでもある話だ。吉村彩子はクレジットには新人とある。記憶にないなあ。初めて見るけどいい女だ。男出入りの激しい母親のもとに生まれて育った16歳の女の子を演じる。その子も自ら母親と同じようなはずれた道を歩みそうな感じをだしつつ映画は展開する。


サキ(吉村彩子)は、屋台を引いて生計をたてている母・圭子(珠瑠美)と二人暮らしの十六歳の少女。ある冬の日の午後、サキはボーイフレンドの外男と、自転車で海辺へ行き、初体験を済ませた。そのあと、サキは外男を追いやった。彼女は一人になりたかったのだ。ダンプカーの運転手のアタル(内田裕也)が遊子(水島美奈子)を乗せて国道を走っていた。その道をサキが自転車で走っている。彼女に気づいたアタルは、ドライブインで遊子を降ろすと、サキを追う。そしてデートをした二人は、そこで関係を結ぶ。

その後サキは子供を宿していたことがわかる。どちらの子であるか分らない。アタルは妊娠の事実をサキに聞くと、「産めよ」とやさしく言うのだった。一方、外男は堕胎費用を集め、彼女に渡す。でもサキはその札束を放りなげる。ある日、サキはアタルの部屋に行くと、彼は遊子と絡み合っていた。嫉妬した彼女は、アタルの足を包丁で刺してしまうが、彼はそんな彼女をやさしく迎えるのだった。


1.内田裕也
演技という次元を通り越した存在感があった。個人的には寺島しのぶ主演「赤目四十八瀧心中未遂」で演じた彫り師に脅威を感じる。こういうはぐれ者をなかなか演じる人はいない。でもまだ若かった時のこの役には末期の凄みというのはない。海辺の静かな田舎町に暮らすトラックの運転手だ。バックに小林旭の「自動車ショー」がすっとぼけたように流れる。現在も風景は変わらないような海辺の片隅で、ひたすらオンナと交わる。夕陽を浴びた船の上でいたすシーンが印象的だ。日活の名カメラマン姫田真佐久の腕前が冴える。波打つ荒波も情感がある。


2.神代辰巳

中学から高校にかけて故萩原健一、水谷豊コンビの「傷だらけの天使」をよく見たものだ。その中でも深作欣二と神代辰巳が演出した作品は一番印象に残る。池部良の使い方がうまかった。日活で「黒薔薇昇天」という神代辰巳監督作品がある。当時18禁なのに見に行ったが、あまりの激しさにぶったまげた記憶が今でも残る。岸田森と谷ナオミの共演でからみが強烈すぎ。ワイルドだ。数多き日活P作品の中でも頂点に位置する。それだけにこの2作が気になった。


ここでも神代辰巳監督内田裕也に激しいカラミを要求する。まだ若い内田がそれに応えて腰の切れもいい。



3.珠瑠美

ませていたせいか、五反田の18禁映画館には中学生の頃からよく潜り込んだものだ。いわゆるピンク系は見ているといつも同じような俳優が出てくる。その中でも頻度が高かったのが、谷ナオミと珠瑠美であった。老け顔なのかなあ、当時30代前半とわかって驚く。しかも中年の女役が多い。ここでは屋台を引く主人公の母親役。男が替わるたびに新しい屋台をつくるなんて言って5台目だという。こういう男に依存しつつ、その男をダメにするなんて役は適役だ。珠瑠美のねっとりとした身体を見ても中学生の時は何とも感じなかったが、人間歳をとるとこういうのもいいかと思ってしまう。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「泥の河」 小栗康平&田村高廣

2018-04-25 22:30:55 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「泥の河」を名画座で観てきました。

宮本輝の原作は未読、キネマ旬報ベスト1などやたらに評価が高いのにDVDレンタルにはみあたらない。チャンスがなかったが、白黒映画特集でやっていることに気づく。仕事を抜け出して観てきました。


昭和31年の大阪のドブ川の側で暮らす小学校3年生の少年2人の友情を基調に、戦後を引きずった社会の底辺で生きる人たちを描いている昭和56年の作品だ。このころはエリアによってはまだ戦後を引きずったエリアがまだ残っていたのであろう。少年2人と少女をとらえるカメラアングルが巧みで、天神祭りの祭り船をふんだんに見せているところもよい。まさしく泥の河というように、主人公のうどん屋からも次から次へと生活雑排水や汚物が捨てられる。そんなシーンの連続に懐かしさをおぼえる。

昭和31年大阪のドブ川のほとりでうどん屋を営む一家を映し出す。夫板倉晋平(田村高廣)と妻板倉貞子(藤田弓子)と小学三年生の息子信雄で暮らしていた。店に食事に来ていた荷車のオッチャン(芦屋雁之助)が馬車にはねられて死んでしまう。荷車に積んでいた鉄を持ち去ろうとする少年がいた。その少年喜一は向こう側の岸にあるぼろい船で生活していた。父親はこれが廓船と気づいて、息子には行くなといっていた。

それでも、同じ年の子供どうし仲良くなって、向こう岸の船に遊びに行くことになった。うっかり信雄は船の側で転んでしまったが、姉の銀子がいてやさしくしてくれた。奥に母上がいるようだったが、出てこなかった。そのあと、逆に遊びに行っていいかと言われ、姉を連れて喜一がうどん屋に遊びに来た。娘のいない夫婦は大歓迎だ。ところが、食堂に飲みに来ていた心ない酔客があの船で客引きをやっている子供じゃないかという。夫婦はその酔客を追い出す。

喜一は学校に通っていないという。信雄は自分の小学校の学友を紹介しようとするが、拒否され憤慨する。そのあと信雄はまた喜一の船に遊びに行った。母親の声が聞こえる。こちらにおいでと言われて、入っていくとまばゆいばかりの美しいつやっぽい母親(加賀まりこ)がいた。

1.水上生活者
大映映画「女経」若尾文子が自由奔放に生きるホステスを演じるのは、下町の河で暮らす水上生活者の娘という設定だった。「女経」は昭和35年の映画だ。ここでも母と姉弟の3人で船暮らしている。船頭だった父親は亡くなっている。自分の感覚ではピンとこないけど、まだまだ昭和30年代には水上生活者っていたんだろうなあ。それと同時に川岸で暮らす主人公のような人たちもいるんだろう。でもこの川岸のうどん屋台風が来たら一発アウトって感じがするけど、どうなんだろう。

2.戦争の足跡
戦争を引きずるのはうどん屋の店主晋平だけでない。小学校3年生の喜一が軍歌を歌うのだ。「ここはお国を何百里 離れて遠き満州。。。」と戦友を1番だけでなく次も正確に歌ってみせる。それを聞いていた店主晋平が思わず、自分の満州の想い出に浸る。きっと少年喜一の父親が歌っていたんだろう。いくつかのシーンで戦争を引きずっている人が多数出てくる。「もはや戦後ではない」という有名な経済白書の新聞欄まで映し出すが、実際にはこういう川岸で生活する人たちにとっての戦後の終了は大阪万博過ぎまで変わらなかったのであろう。


3.加賀まりこの見せ方
映画「ジョーズ」では、サメに被害にあった海水浴客とかは映るがなかなかサメが現れない。1時間以上現れない。それとある意味一緒だ。食堂の息子信雄は友人喜一の船に行く。姉にも会うが、声が聞こえど母親が出てこない。しばらくはそれでストーリーが進む。そのあとでようやく出てくる。


はじめは着流しの浴衣を着た後ろ姿だけだ。そのあとでようやく妖艶としか言いようにない加賀まりこを見せる。この勿体つけ方がうまい。もう一度重要場面で現れるが、最初の見せ方はぴか一だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「北陸代理戦争」 深作欣二&松方弘樹

2016-05-26 05:10:18 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「北陸代理戦争」は昭和52年(1977年)公開の東映映画だ。


紀伊國屋書店の平置きコーナーで「映画の奈落 完結編」という本を見つけた。表紙に松方弘樹のヤクザ姿の写真があり、なんじゃこれとページをめくってみると、「仁義なき戦い」のころの実録もののことが書いてある。脚本の話にも触れていて、帯には立花隆「こんな面白い本があるのか」というコメントがあり思わず購入する。

読んでみると、ムチャクチャ面白い。映画「北陸代理戦争」は川内という福井を基盤にしたヤクザがモデルになっていて、その映画の背景と脚本を担当する高田宏治を追いかける。川内組と山口組直系の組との北陸の利権をめぐっての抗争が親分のルーツや素性を含めて念入りに調べていて、当時の川内へのインタビューを基本にしたすごいドキュメンタリー読み物になっている。しかも、川内組長はこの映画が公開された2ヶ月後に殺されている。確かにすごい本だ。


「北陸代理戦争」という映画の存在は知っていたが、今までdvdをピックアップしていなかった。深作欣二監督作品独特の緊迫感、スピード感をもって、ならず者の救いのない世界を描いている。しかも深作欣二監督はこの映画を最後に実録ものヤクザ映画を撮っていない。モデルの死にそれほど強い衝撃を受けてしまったのであろう。もともと「新仁義なき戦い」の延長で菅原文太主演だったのを事情で松方弘樹に代わっている。ここではトップスターめがけて這い上がろうとする松方弘樹の意地が見て取れる。

北陸福井の三国競艇場の場内外の利権をめぐって、川田組組長主人公川田登(松方弘樹)が自分の元の親分(西村晃)が約束通り自分に渡さないことで憤慨している。雪の海岸で首だけ出して埋めて、その周りをジープで疾走して言質をとらせる。親分は舎弟の万谷(ハナ肇)と組んで復讐をする。


万谷は、仲介役として大阪浅田組の斬り込み遂長・金井組金井八郎(千葉真一)に相談。金井はかねてより、北陸を支配下に入れようとねらっていたので、安本対川田の仲介役という名目で北陸にのり出すことにする。ある日、川田は万谷の闇打ちに合う。半殺しの重傷を負った川田は、自分の情婦であるきく(野川由美子)の実家で傷のてあてをする。公にはすでに死んだことにして身をひそめきくの妹(高橋洋子)が面倒を見ていた。

川田は傷がなおってから、まず万谷に復讐をし、刑務所に入る。出所後、川田は、大阪・浅田組に援助を依頼する。金井は、その行動があまりにもすごく、浅田組は金井に手を焼いていた。そこで、川田に援助することを約束する。川田は、浅田組の援助のおかげで、金井組の連中を北陸から追い出すことに成功。しかし、こんどは浅田組系の岡野組が幅をきかすようになる。川田はそこで、今は落目の万谷と安本に、地元を北陸のやくざの手にもどすことを提案。そして、川田は兄貴分でもある岡野組に挑戦状を叩きつける結果になる。

1.脚本家 高田宏治
一応フィクションと断っているが、実話に基づいたものである。ただし、現在進行形の争いごともあるわけなので、時間軸をかえたりしてフィクションらしくはしている。「仁義なき戦い」当初の作品は名脚本家笠原昭夫によるもので、最後の「完結編」だけを高田宏治が担当し、肌合いが違うという評価もあるようだ。しかし、観客動員は完結編が一番多い。そして「新仁義なき戦い」も引き続き脚本している東大出の東映生え抜きの脚本家である。元来インテリだが、裏筋に近い路線にも接近しているせいか、事情は十分承知している。



2.深作欣二
映画「仁義なき戦い」は70年代の日本映画の代表作といっても過言ではない。裏切りに次ぐ裏切りの中でアナーキーな登場人物の動きを手持ちカメラでとらえたあの映画の持つスピード感はただものではない。この映画でも臨場感ある深作映画らしいカメラが冴えわたり、今日本映画で一番引用が多いと思われる「仁義なき戦い」で何度も鳴り響くテーマ曲に類した曲を多発させる津島利章の音楽がこの映画の過激な動きを増長させる。お見事だ。

「仁義なき戦い」で理屈とはまったく無縁の猛獣のようなテキ屋の親分大友役を演じた千葉真一に同じテイストの武闘派の親分を演じさせるように、俳優の力を巧みに出し切らせている。また、ここではヤクザの親分を割り切って渡り歩く野川由美子の使い方もうまく、このあたりの女性の使い方がこの先の深作欣二のキャリアに大きく影響している気がする。


3.印象に残るシーン(高橋洋子)
映画「旅の重さ」のヌード姿で鮮烈なデビューを果たした時から五年たっている。でも顔立ちは幼い。ヤクザの情婦野川由美子の妹役である。追われている主人公をかくまい、気がつくと姉の男といい関係になっている。素朴で幼い顔をしながら、非常に情熱的な演技を繰り返している。


元々の肉親である地井武男演じる兄貴に向かって立ち向かい、刺すシーンの女の情念は深作欣二映画らしい激しい演出である。

いきなり雪の中を首だけ出した西村晃のまわりをジープが走り回るシーンを出して、ドッキリさせる。すげえなあと思ったら、次から次へとドッキリさせるシーンが続く。ある意味これでヤクザ映画と距離を置いた深作欣二の集大成的な作品なのかもしれない。



(参考作品)
北陸代理戦争
深作欣二実録もの映画の集大成


映画の奈落 完結編 北陸代理戦争事件
この映画製作の背景を書いたドキュメンタリー、おもしろい


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「仁義の墓場」 深作欣二&渡哲也

2015-01-02 10:20:06 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「仁義の墓場」は深作欣二監督による1975年公開の実録バイオレンス映画である。
これは傑作だ。


昨年亡くなった菅原文太主演「仁義なき戦い」は戦後の日本映画史において重要な位置を占める。「仁義なき戦い」の持つスピード感はすばらしく、深作欣二監督が手持ちカメラ中心に撮る映像は敵味方入り乱れてすさまじい迫力を放っている。「仁義なき戦い」シリーズ全般にわたってハズレはないが、警察側の視点からみた深作作品県警対組織暴力も優れた作品だ。その「県警対組織暴力」の前に撮られたのが「仁義の墓場」である。

渡哲也が主演というと、テレビでの二枚目役のイメージが先行して、外してしまいがちだ。しかも笠原和夫の脚本ではない。それでご縁がなかったが、見てみてビックリ、これは凄い映画だ。深作欣二は実在した石川という狂犬のようなヤクザを戦後の闇市に放つ。自らの親分を刺したり、兄弟分を殺したり、同じ極道でも杯を分けた身内にここまでやるやつはそうはいない。その暴れん坊を深作欣二の指導のもと、渡哲也が絶妙の演技をみせ、思いっきり暴れまわる。最近のエリッククラプトンしか知らない人が、クリームを聴いてそのワイルドなギタープレイにおったまげるというような気分みたいな感覚をもつ。


昭和二十一年。終戦直後の新宿では、戦勝国という名のもとに第三国人たちが好き勝手し放題であった。テキ屋一家「河田組」の石川力夫(渡哲也)は連中がのさばるのを見過ごさず、痛い目にあわせていた。河田組は、河田修造(ハナ肇)を組長に、組長(安藤昇)が衆議院選挙に立候補をする最大勢力野津組に次ぐ勢力を誇っていた。


兄弟分の今井幸三郎(梅宮辰夫)、杉浦(郷治)、田村(山城新伍)らを伴った石川は、中野を拠点とする三国人の愚連隊「山東会」の賭場を襲い金を奪った。山東会の追手から逃がれ、忍び込んだ家で、石川は置屋の若い娘、地恵子(多岐川由美)を衝動的に犯した。

この抗争によって双方摘発される。しかし巧みに警察を利用して自分らのみ釈放され、まんまと山東会を壊滅に追い込んだ彼らは中野今井組を興す。兇暴な石川に手を焼く河田は、縄張りを荒らす「池袋親和会」の青木政次を消すように示唆した。石川は青木の情婦夏子を強姦し、駈けつけた政の顔を叩きのめす。


報復のために、幹部の梶木(成田三樹夫)率いる兵隊が新宿に進出して来て、にらみ合いとなる。だがこの抗争は、野津組組長野津の発案によって、進駐軍に鎮圧するよう仕向けることで事なきを得た。
それから間もなく、兄弟分杉浦は野津の盃を受ける。一方、無鉄砲な石川は、賭場で悶着を起こし、野津から一喝される。


その腹いせに野津の自家用車に火をつけた。この一件で怒った河田は石川に猛烈な制裁を加えたが、逆上した石川は河田を刺してしまう。一時は今井の許に身を隠した石川だが、今では石川の女房になった地恵子が彼の身を案じ警察に報せたために、石川は逮捕され、一年八カ月の刑を受ける。

出所した石川は、河田組から関東の渡世の世界からの追放を意味する十年間の関東所払いになっているため今井に説得され大阪へ流れた。この地で肺を病んだ石川は、釜ヶ崎のドヤ街で娼婦からヘロインを覚え中毒となり、売人を襲撃しようとしたところでやはり中毒患者の小崎(田中邦衛)と出会い、意気投合する。


そして一年後。石川が小崎とともに無断で帰京し、今井組の賭場で騒動を起こす。だが、石川は兄弟分の今井からも説教されると、狂ったように石川は今井を刀で斬りつけ重傷を負わす。そしていったん逃走した後に今井を撃ち殺した。

アパートに潜伏していた石川と小崎を、警官隊と河田組員、今井組員が包囲する中、石川は無差別に発砲を繰り返す。追い詰められ石川は、弾も尽き自棄になって表へ飛び出したところを取り押さえられる。警察病院に収容された後、彼は殺人及び殺人未遂で懲役十年の刑を宣告される。昭和二十六年一月二十九日、肺を病んだ体に鞭を打って保釈金を工面するなど石川を献身的に支え続けた地恵子は、心身を磨耗し尽くして自殺した。刑務所内で胸部疾患が悪化した石川が、病気治療のため仮出獄を許される、わずか三日前のことであったが。。。

映画がはじまってまもなく、「仁義なき戦い」ファンなら誰もが好きになるような、ハチャメチャな乱闘シーンが続く。
敵味方入り乱れて暴れまくるスピード感あふれるシーンだ。どっちがどっちだかよくわからない。
狭い場所での乱闘を的確に手持ちカメラがとらえる。すげえなあ!こんなの何回もできないよなあ。
すげえ衝撃を与えてくれる。

今までいじめられてきた腹いせに日本人から金をむしり取る第三国人を懲らしめてやろうとする姿には「もっとやっちまえ!!」と叫んでみたくなるが、この男普通じゃない。渡世の義理で生きようとする気持ちは持っているが、一度キレてしまったらまったく見境がつかない。敵味方が入り乱れる姿は「仁義なき戦い」でよく見る展開だが、狂犬のように親分や兄弟分に切りかかる姿ってそうはない。粗暴で凶悪な姿は「仁義なき戦い」第二作の千葉真一演じる大友勝利のようだ。



日活で活躍してきた渡哲也が、ポルノ路線に日活を飛び出し新天地を求めて東映に移ってきたころの作品だ。やる気も満々だ。
脇役もいい味出している。多岐川由美は可憐な印象、後年はいやな女が似合う顔立ちになったがこの映画ではかわいいなあ。東映ピンク映画の女王池玲子はヤクザの姐さんがよく似合う。。

まさに「本物」だった安藤昇が持つ貫禄、成田三樹夫の苦味つぶした表情、ヤク中常習者になりきった演技を見せる田中邦衛、裏芸をもつ親分という役がまさに適役のハナ肇、兄弟分梅宮辰夫、山城新伍を含めて最高のキャストである。

後半堕ちていく石川の姿はエレジーじみているが、さすが深作欣二といいたい傑作である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「刑事物語」武田鉄矢&高倉健

2014-12-09 20:59:44 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「刑事物語」は1982年(昭和57年)製作された武田鉄矢主演の刑事ものだ。

このあとシリーズ化する「刑事物語」の第一作だ。
武田鉄矢がまだ若いが、みずから脚本を書く。エロい匂いも入れながら楽しく娯楽作品を撮っている印象だ。


博多署はあるソープランドを管理売春の容疑で不意打ち捜査した。刑事の片山元(武田鉄矢)はそこで耳の聞こえない風俗嬢三沢ひさ子(有賀)と出会った。翌朝、ガサ入れ失敗をマスコミは書きたてた。そのとばっちりが片山にまわってきて、沼津転勤が決まった。

東京行きのブルートレインに片山とひさ子が乗っていた。ひさ子の悲惨な過去に同情した片山が身柄を引き取ったのだ。二人は兄妹ということで、市内の花園荘に住むことになった。そこでは隣の部屋でじっと見ている男がいた。片山は早速、南沼津署に出勤し、連続殺人事件班に組み入れられた。


ある日、信用金庫で強盗事件が起きた。片山は犯人を取り押さえ、その男が連続殺人事件と繋がっていることをつきとめた。男は女性を売春組織に送り込む周旋屋だったのだ。さらに片山は九州時代の知り合いの老ヤクザ工藤(花沢徳衛)からソープランドを根城にした大がかりな売春ルートの情報を入手、捜査班はソープランド「徳川」への強制捜査に踏み切った。だが、片山はそこで、重要参考人のクリーニング店「白美社」の店員を死亡させるというミスを犯してしまった。ある夜、片山は正体不明の三人組に襲われ、工藤の勧めで沢木と共にひさ子の身辺を見張ることにした。あやしい車が花園荘に近づき、ひさ子を連れ去ったが。。。




昭和の匂いがたちこめる映画である。

最初に武田鉄矢ふんする刑事が福岡から静岡に異動と聞いて、これってありえないよと感じる。幹部はともかく一般刑事が他の県にはいかないよね。そもそも、なんか勘違いじゃないだろうか?まずはそれが疑問

まだソープランドをトルコ風呂と言っている頃だ。ただ、こんなに抜き打ち捜査がされるであろうか ?意外にソープって警察の手入れは受けない気がする。あまり聞いたことがない。しかも、捜査に行った刑事がトルコ嬢に聞き込みに行って、そのままいたしてしまうなんてあり得ないでしょう。そういうわけで映画の設定には穴が多い。

まだ若い武田鉄矢からすると、ボリューム感のあるバストを持つ女性を次から次へと出演させて楽しんでいる気がする。有賀久代、宇田川智子いずれも過去の人で現存しないが、ぶったまげるスーパーボディだ。金八先生のような健全なムードはない。ただ宇田川智子って金八先生の先生役だった気がするんだけど。武田自身、乳にしゃぶりついてみたかったという願望が顕著に見える。

それでも、昭和の名優が次から次へと出てきて懐かしい。警察の捜査課長は仲谷昇、先輩刑事にウルトラマンの隊長小林昭二、岡本冨士太、三上真一郎、そして助手の樹木希林が味のある演技を見せる。この樹木希林の憧れが健さんだ。そして、本当に本物の高倉健が出てくる。


前年「駅station」で刑事役を北海道を舞台に演じた。その役名三上刑事役で出てくる。クレジットはない。まさに友情出演だ。

1つだけうまいと思ったのが田中邦衛の使い方。
何もしゃべらず、こっそり武田と女性が暮らす部屋をきっと覗く。
しかも、部屋の中に入ってくることもある。彼女がバイトする喫茶店も覗きに行く。
あやしい!!


ただ、この映画って放送禁止用語やエッチ画像でテレビでは放映難しいでしょうね。

刑事物語
刑事物語第1作に美女2人
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「遠雷」 永島敏行&石田えり&ジョニー大倉

2014-12-03 18:28:28 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「遠雷」は昭和56年(1981年)の日本映画だ。

ジョニー大倉が亡くなった。キャロル以降も音楽活動は続けていたが、矢沢永吉と比較するとその実績は普通のものとなってしまった。しかし、俳優としての才能をいくつかの作品で発揮している。「遠雷」もその一つである。ジョニー大倉永島敏行演じる主人公の親友役だ。


宇都宮出身の作家立松和平の小説を映画化したものだ。首都圏近郊の農家で跡取りになろうとする青年の姿を描いた。公開当時も見て、石田えりの奔放さは強烈な印象を残した。その後2度も見ている。永島敏行もいいが、荒井晴彦の脚本がわきを固める俳優を引立たせ、すがすがしい映画になっている。戦前を引きずっていた農業が近代へと変わる分岐点を描いた名作だ。


宇都宮市近郊で農業を営む主人公満夫(永島敏行)は、ハウスでトマトを栽培している23歳の青年だ。母親(七尾伶子)と祖母(原泉)と暮らしている。父親(ケーシー高峰)は情婦(藤田弓子)と出て行ったきり帰ってこない。
主人公は同じような農家の跡取りである親友広次(ジョニー大倉)とつるんで遊んでいる。いつも飲みにいくスナックのカエデ(横山リエ)に誘われ、もう旦那とは別れているのと言われ、ハウスの中でいたしてしまう。翌日夫(蟹江敬三)にもう近づかないでくれと言われる。
そんな時お見合いの話が来た。ガソリンスタンドに勤めるあや子(石田えり)だ。両家の会食が終わって2人はドライブに出る。いきなり満夫はモーテルに誘う。突然の誘いにあや子は憤慨するが、結婚してくれるならと許す。
後日あや子が主人公の自宅に遊びに来たときに、祖母の奇怪な行動を見て、自分がお嫁に行ってやっていけるのか心配になりぷいと帰ってしまう。
スナックのカエデは親友広次に近づいている。いい仲になってきた。それなのにカエデはまた満夫に近づいてくる。奇妙な三角関係になりそうに見えるが。。。


90年代の終りに、5年宇都宮に住んだことがある。映画に出てくる地名が懐かしい。宇都宮駅から見て東側のエリアではないだろうか?そういう風景の中で映画は淡々と進む。井上尭之バンドの音楽がほのぼのしていていい。
永島敏行は好演だが、助演者を中心に語った方がいいかもしれない。

1.石田えり
お見合いした直後に2人でモーテルにしけこむシーンが印象的だった。そして石田えりのダイナマイトバストをバッチリさらす。それまでに雑誌「GORO」で彼女のスーパーボディは見ていた。あっけらかんとしている石田えりがこの役にぴったりである。


主人公が石田えりと軽トラックにトマトを積んで、1袋100円で団地で売る。このシーンがほのぼのしていて好きだ。

2.ジョニー大倉
スナックの女カエデに入れ込んでしまう。カエデは主人公にもちょっかいを出す好きもの女だ。カエデと2人駆け落ちをしてしまい、挙句の果ては首を絞めてしまう。そして、主人公の結婚式を自宅で盛大にやっている時に、戻ってくる。殺人を犯したジョニー大倉の独白を永島敏行が聞くところが映画の最大の見どころだ。

この時泣きながら独白するジョニーの姿をみると、運に恵まれなかったジョニー大倉本人の人生にかぶせてしまう。もともとキャロルの時にしばらく失踪したことがある。レギュラーだったギンザナウでも3人で演奏していたなあ。晩年も妙に突っ張っていたが、本性は気が弱いんじゃないかと思う。それだけに涙の独白に情感がこもっている印象を改めて思った。


3.ケーシー高峰
先祖代々の土地を売っぱらって、バーの女としけこむダメなオヤジの役だ。これが実にうまい。親が医者で本人も医者を目指していた彼のエロ漫談を、昭和の頃はテレビでよく見たものだ。情婦役は酒豪で有名な藤田弓子でこれも適役だ。中年太りの姿がいかにもうらびれたバーのホステス風だ。オヤジはいったん家に戻ってくるが、もう一度女のところに戻る。そこで見せるケーシー高峰の女装姿をみると、いつも腹を抱えて笑ってしまう。

最後に見せる永島敏行が歌う桜田淳子の「私の青い鳥」が音痴だけど妙に心に残る。

あとは人妻役の横山リエのなまめかしさ、名優七尾伶子のダメ旦那を許してしまう農家の妻っぷり、おばあさん役の原泉のぼけっぷりもよくキャスティングの妙がこの作品を名作にしている。

遠雷 [DVD]


ジーナ・K
円熟した石田えりを楽しむ


参考記事
ジョニー大倉追悼矢沢永吉歌う
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「戦場のメリークリスマス」 大島渚

2014-10-29 21:54:39 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「戦場のメリークリスマス」は大島渚監督による83年の映画作品だ。


テーマ曲があまりにも有名、題名が「戦場」となっているが日米の交戦シーンはない。捕虜収容所における英国捕虜と管理する日本兵との関わりを描く。ここでは2人の超一流ミュージシャンを中心にストーリーが展開する。デヴィッド・ボウイと坂本龍一だ。それにジョニー大倉、内田裕也という2人のミュージシャンが加わり捕虜収容所におけるヒューマンドラマを展開する。

ストーリーはどうってことない。
ここではこれらのミュージシャンとビートたけしのふるまいを見て楽しむということだろう。

1942年、ジャワに日本軍の浮虜収容所があった。日本軍軍曹ハラ(ビートたけし)は英国軍中佐ロレンスを叩き起こし、閲兵場に引き連れて行く。広場にはオランダ兵デ・ヨンと朝鮮人軍属カネモト(ジョニー大倉)が転がされていた。カネモトはデ・ヨンの独房に忍び込み彼を犯したのだ。ハラは日本語を操るロレンスを立ち合わせたのだった。


そこへ、収容所長ヨノイ大尉(坂本龍一)が現れ、察した彼はハラに後刻の報告を命じて、軍律会議出席のためバビヤダへ向かった。法廷では、英国陸軍少佐ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)の軍律会議が開廷された。ヨノイは異様な眼差しでセリアズを凝視する。セリアズは浮虜収容所へ送られてきた。ヨノイはハラに、セリアズをすぐに医務室へ運ぶよう命令する。そこへ浮虜長ヒックスリが連れてこられた。ヨノイは彼に、浮虜の内、兵器、銃砲の専門家の名簿をよこせと命ずるがヒックスリは拒否する。

ある日、ヨノイの稽古場にハラが現れ、ロレンスが面会を申し入れていると告げる。ヨノイは唐突に、自分は二・二六事件の3ヵ月前満州に左遷されたため、死に遅れたのだと語った。そして、その場でカネモトの処刑をいい渡した。処刑場にはヒックスリ以下浮虜側も強制的に立ち会わされ、ハラがカネモトの首を切り落とした瞬間、デ・ヨンが舌を噛みきった。「礼を尽くせ」とヨノイは命ずるが浮虜たちは無視する。激昂したヨノイは、収容所の全員に48時間の謹慎と断食の行を命じる。ロレンスとセリアズは独房入りとなった。

ロレンスは、たった2度しか会わなかった女性の思い出の中へ。セリアズは、耳許に内向的だった弟の歌声を聞く。2人は司令室に連行された。そこには「ろーれんすさん。ふあーぜる・くり~すます」と笑いかけるハラがいた。ハラは2人に収容所に帰ってよいといい渡す。ヨノイの命令で、浮虜全員が閲兵場に整列させられたが、病棟の浮虜たちがいない。病人たちをかばうヒックスリに、激怒したヨノイは再び「兵器の専門家は何人いるか」と問う。「おりません」とヒックスリ。ヨノイは「斬る」と軍刀を抜いた。そのとき、浮虜の群からセリアズが優雅に歩み出、両手でヨノイの腕をつかむと、彼の頬に唇を当てたが。。。


男色系恋愛映画というのがある。そういう映画とは一線を引くが、デヴィッド・ボウイが登場してから坂本龍一をはじめとした日本兵の調子がくるってくる。客観的に見てもここでのデヴィッドボウイの美青年ぶりが際立つ。ぞくっとするようないい男ぶりだ。パブリックスクール時代の想い出と弟がくらうイジメの話が挿入されるがちょっとついていけなかった。

1.デヴィッドボウイ
デビューしてからもう10年たつ頃だ。キャロルが初めて登場したフジテレビ「リブヤング」で、自殺した評論家今野雄二がデビュー以来何度も紹介していた。今野は有名な男色系だ。1983年といえば、「レッツダンス」が全米ヒットチャート1位をとる。ディスコで何度もかかった曲である。そういう世界の頂点にある時期にこの映画に出演したという事実が凄い。


最近では化粧しているミュージシャンが珍しくない時代となったが、デビュー時のデヴィッドボウイの化粧姿には驚いた。ここでのデヴィッドボウイは化粧なしで、しかも端正なマスクを見せる。美しいといってもいいかもしれない。あえて女性を一人も出演させなかったのにはデヴィッドボウイを際立たせる意味があったのではと感じる。

2.坂本龍一
イエローマジックオーケストラで脚光を浴びたのは1979年である。82年には矢野顯子と結婚している。演技を見ればわかるように、まったくの素人である。大島渚もよく出演させたなあと思うけど、独特のオリエンタルムードを持っている。デヴィッドボウイに対抗させるには彼しかいなかったろう。87年の「ラストエンペラー」では甘粕大尉を見事に演じるようになるのであるが。。。


3.ジョニー大倉
キャロルの解散は75年で、もう8年たっている。いまや醜い姿をさらしているが、俳優としての基礎を固めつつある時期で、矢沢永吉との差は今ほど極端に開いているわけではなかった。81年の「遠雷」は今もって傑作とされる。ここでは日本兵として罰せられる朝鮮人兵を演じている。情けない顔をさらしているだけであるが、元々在日のジョニーが戦争中も差別を受けていた朝鮮人の姿を見せつける。

4.内田裕也
浮虜収容所の所長役である。ここ最近は凄い色の髪をしてヤクザまがいの表情を見せる。この作品では端正な顔でかっこいい。65年の「エレキの若大将」での司会役、この映画、2003年の「赤目四十八瀧心中未遂」の刺青師の3つを比較してみると面白い。


こんな4人を見れるだけでも価値がある。ビートたけしはまだツービートの漫才で売っていたころで、映画の世界に本格的に足を突っ込んでいなかった。坊主姿の顔は戦前の日本人そのものの表情と言っていいだろう。最後のシーンは感動したという人も多いが、さほどでもなかった。

(参考作品)
戦場のメリークリスマス
日本兵と捕虜の奇怪な関係


ラストエンペラー
甘粕大尉を演じる坂本龍一


レッツ・ダンス
全盛期のデイヴィッドボウイ


赤目四十八瀧心中未遂
内田裕也を見比べる
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「男はつらいよ 寅次郎と殿様」 渥美清&真野響子

2014-08-26 21:53:56 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「男はつらいよ 寅次郎と殿様」は1977年公開のシリーズ第19作目
マドンナは真野響子で、その義父である殿様役を嵐寛寿郎が演じる。


端午の節句に戻った寅次郎(渥美清)は、ささいなことで柴又のとらやの面々とケンカをして四国愛媛の大洲の町へ旅に出る。戦国武将藤堂氏がつくった大洲城のもとで栄えていた城下町だ。
そこの定宿で一人の若い女性(真野響子)が隣室で泊っていることを知り、寅次郎は夕食時に鮎料理をおごってあげる。彼女の住まいは堀切菖蒲園の近くということでウマが合い、柴又の団子屋を知っているらしい。気前が良くなりお土産も持たせた。
ところが、翌日勘定を確認すると、高くついたことに気づく。大洲城のそばで財布をいじくると、なけなしのお札が風で飛ばされる。あわてて城壁をくだると、1人の老人が寅次郎のお札をもっていた。

これは自分のお金と老人からお札をもらい、拾ってくれたお礼にラムネをおごってあげる。すると老人(嵐寛寿郎)の家に招待される。二人連れ立って歩いていると町の人々が老人に丁寧に挨拶してきた。老人の正体は大洲の殿様の子孫・藤堂久宗だった。藤堂家の執事(三木のり平)は寅次郎を怪訝そうに思うも、殿様はすっかり寅のことを気に入ってしまったのだ。

そして寅次郎が東京出身と知った殿様は、東京で亡くなったという末っ子の話をする。末っ子には嫁の「まりこ」がいたが、その結婚を「身分違い」として認めず勘当同然の扱いをしたと言う。今はすっかり反省した殿様は、せめて息子の嫁に会って謝りたいと、寅次郎に探してくれるように依頼する。


酒の勢いで安請け合いした寅次郎を殿様は完全に信用しきっており、寅を追いかけて上京してしまった。寅次郎は柴又の面々も巻き込み東京にいる鞠子という情報だけで、自分の足で鞠子を探そうとするが当然上手くいかない。とらやにかつて寅が大洲の宿で会った女性が突然現れる。彼女の名前は鞠子で、愛媛出身の夫と死に別れたというのだが。。。

昭和の匂いが立ち込める映画だ。昭和52年ともなれば、学園紛争も収まり、ディスコブームにさしかかり時代が変化しているはずなのに葛飾柴又とらやの周りには変化がない。いつものように寅さんはちょっとした口げんかで家出してしまうが、そこでとらやの家族や寅さんが怒る理由がよくわからない。最初はちょっと気分がもやもやする。

なんか変だな?と思っていたところに、ボケギャクのアラカンが登場し、その執事として三木のり平が登場してくる。
ここからは圧倒的に笑えてくる。渥美とあわせて3人とも一世一代の名優だよね。
それにしても渥美清のテキヤ口上が冴え渡る。ノリが抜群だ。



1.嵐寛寿郎
藤堂氏は本当に大洲の町を取り仕切っている。架空の名前ではない。しかも、その殿様を演じる。
鞍馬天狗とはちょっとちがう雰囲気だが、年老いた殿様を巧みに演じている。ついこの間「網走番外地」で稀代の殺人鬼の服役囚を演じていたのを見たばかりだ。実に貫禄たっぷりであった。「明治天皇」を演じた後、円熟味が感じられるようになっていた。ここでは本当にすっとぼけたじいさんだ。三木のり平とのコンビが絶妙だ。

2.三木のり平
松竹作品出演とは珍しい。森繁久弥とともに東宝の「駅前」「社長」シリーズの常連で、当時は「桃屋」の宣伝がコミカルでよかった。加東大介が75年に亡くなってしまうので、東宝の喜劇シリーズも終わってしまったのであろうか?


小林信彦が名著「日本の喜劇人」の中で三木のり平をこう評する。
「主役を張れないタイプで、映画、舞台、ともに主役の場合は成功していない。あくまで脇の、しかも、完全な<ぼけ>でないとうまくいかない。」
山田洋次の脚本は脇役としての三木のり平を活かす絶妙な<ぼけ>ぶりを前面に出す。いかにも天性の喜劇役者だ。

3.愛媛大洲と下灘駅
愛媛県の八幡浜にこの8月行って来たばかりなのも、このdvdを手に取って見ようと思った理由だ。
大洲5万石というが、藤堂氏はいろんな場所に城を作っている。映画の最初に「しもなだ」という駅が出てくる。寅さんが居眠りをしてしまってふと目覚める駅だ。まさに海に面している駅で、海ぎわを列車が走る。


海に面してすばらしい光景だ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「疑惑」 桃井かおり&岩下志麻

2014-06-01 22:33:34 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「疑惑」は松本清張原作の映画化で1982年度キネマ旬報日本映画4位となったサスペンス映画である。
松本清張といえば野村芳太郎監督である。まさに疑惑をかけられるのは桃井かおりで、弁護するのは岩下志麻である。

70年代後半から80年代にかけては、主演2人にとっては人気のピークである。ノリにのって芝居をしているという印象である。桃井かおり31歳、岩下志麻41歳である。桃井については被告人にもかかわらず、裁判の審議中にちゃちゃを入れるあばずれぶりが凄い。岩下志麻の弁護人ぶりもなかなか堂にいっている。中年にさしかかったころの美貌に目を奪われる。
最終の結末に疑問が残るけど退屈せず楽しめる。

富山の老舗酒造会社の社長夫妻がのる自動車が港の岸壁から海に突っ込んだ。妻は車から脱出したが、夫はそのまま海の中で車に閉じ込められ死亡する。
夫である酒造会社社長(仲谷昇)は元銀座ホステスの女(桃井かおり)と再婚したばかりで、妻の受取名義で3億の死亡保険金が掛けられていた。女は結婚前に犯罪歴があり、警察から保険金殺人を疑われる。妻は懸命に無罪を主張する。その後、事故現場周辺の目撃証言で逮捕される。
新聞や週刊誌などで悪女に仕立てられた妻には弁護人がつかない。結局引き受けたのは離婚歴のある弁護士(岩下志麻)であった。接見した弁護士と妻は一癖ある女同士いきなり衝突する。それでも弁護人は捜査資料を読み解き、妻の過去に注目するが。。。

1.桃井かおり
元銀座ホステスで、店に来た富山の金持から求愛を受け結婚する。金持ちの社長は7年前に妻と別れていて、さみしい社長の方から熱烈に求愛された。里子に出されていい育ち方はしていない。博多中州で水商売に入ったが、傷害事件を起こすなどまともな生活をしていなかった。

2.仲谷昇
富山の老舗酒造会社の跡取りで社長。妻とは死別していて、元妻との間に中学生の長男がいる。母親がまだ存命で、何かとうるさい。田舎では派手に遊べないけど、東京では大丈夫という感覚で桃井に言い寄る。気がつくと桃井に惚れて、お願いして富山に来てもらう。ところが桃井と家族とは合わない。財産は中学生の長男に贈与されることになり、その代わりに多額の保険に加入することになった。

焦点は車を運転していたのが誰かということ。
証人は妻が運転していると言うが、服装が微妙だ。現場には工具が置かれていた。警察は故意に妻が運転して海に突っ込んでフロントガラスを割って脱出したという。妻はそんな危険なことをわざわざするわけがないという。

岩下志麻が弁護士で出てくる。
配役的に?事件を解決してしまって勝訴は堅いだろうと自分は推測をたてるけど、桃井が証人にからんだり法廷で暴れまくる。桃井の元恋人がたまたま一度会った際に、エドワードケネディの自動車事故事件になぞらえて、保険金殺人を彼女が企んだと証言する。しかも、桃井かおりの法廷での心証は最悪である。岩下はどうするのであろう?


この映画ですごいなあと思うのは、実験を実際に何度もやっているということ
つまり、岸壁から海に向けて無人車を走らせ、フロントガラスがどうなるのか実験をする。普通はここまでしない。それによって、フロントガラスは車が海に突っ込んだ衝撃で割れたことが証明される。
なるほど、ではどういうことなの?
その伏線は映画の最初の方で見せていた。

最後まで気の強い同士の岩下志麻、桃井は争い合う。この演技合戦はすごい。
若き日の柄本明の新聞記者がいやらしく主人公と敵対し、「料理の鉄人」より10年以上前の鹿賀丈史のチンピラぶりも絶妙だ。戦後映画界を支えた多くの俳優が出演している。北林谷栄、小沢栄太郎、名古屋章なんかはなつかしい。山田五十鈴がみせる銀座のママ役の貫禄はさすがといったところだ。

でも元夫との間にいる夫側に育てられている1人娘の件が最後まで話題になる。これってストーリー全体に必要なのかしら?あとは保険金の扱いもちょっと疑問?あれほど騒いだのが何?という感じだけど

とはいうものの全盛時の大女優2人による良質のサスペンスである。

疑惑
岩下、桃井の演技合戦
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

悪魔が来りて笛を吹く 山本邦山死す

2014-02-10 17:36:16 | 映画(日本 昭和49~63年)
山本邦山が亡くなったと報道されている。
人間国宝となっている尺八演奏者だ。

ついこの間映画「悪魔が来りて笛を吹く」のDVDを久しぶりに見た。

この映画は大学時代に劇場で見たことがあった。
横溝正史の原作で、近親相姦の絡んだ生臭い映画であった。当時はやりの密室殺人の謎解きがテーマ
西田敏行が金田一耕介を演じるレア版でDVDでは見かけなかったので久々見れて良かった。
何よりも当時30代の熟れきった鰐淵晴子のヌードが拝めるのが凄い。貴重な存在である。


ここでは山本邦山が音楽を担当している。
彼の存在を知ったのは中学生のときである。ジャズに目覚めた自分がどういう経緯か彼のことを知った。
尺八でジャズを演じるなんて話自体、興味深かった。
石庭のジャケットが美しいレコードを購入して、これまた凄い衝撃を受けた。
モダンジャズのリズムにこれ以上ないフィット感である。


山本邦山、菊地雅章、ゲイリー・ピーコック、 村上寛というすばらしいメンバー
和のテイストとモダンジャズの混在が美しい世紀の名盤だと思う。
ご冥福を祈ります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「八甲田山」 高倉健&北大路欣也

2013-10-06 16:20:31 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「八甲田山」は昭和52年の作品だ。

当時大ヒットしたが、そのときは見に行かなかった。
その後、DVDレンタルで借りようとしたが、どこにも置いていない。今回はじめてみた。
こうしてみると、強烈な吹雪の中過酷な撮影に俳優さんたちはよく耐えたものだ。
そして吹雪の中カメラファインダーを覗くのは名カメラマン木村大作だ。これこそ名人芸といえる。

日露戦争開戦を目前にした明治三十四年末の出来事だ。
露軍と戦うためには、戦場となる中国東北部の寒さに耐えねばならない。軍部は寒地訓練が必要であるというの考えをもった。そして冬の八甲田山がその演習場所に選ばれた。青森第五連隊の神田(北大路欣也)と弘前第三十一連隊の徳島(高倉健)の二人の大尉は演習を指揮するよう指示を受けた。雪中行軍は、双方が青森と弘前から出発、八甲田山ですれ違うということであった。
年が明けて一月二十日。徳島隊は、わずか二十七名の編成部隊で弘前を出発。行軍計画は、徳島の意見が全面的に採用され隊員はみな雪になれている者が選ばれた。出発の日、徳島は神田に手紙を書いた。それは、我が隊が危険な状態な場合はぜひ援助をというものであった。

一方、神田大尉も小数精鋭部隊の編成をもうし出たが、大隊長山田少佐(三国連太郎)に拒否された。そして二百十名という大部隊で青森を出発した。神田は案内人を用意したが、山田が断った。いつのまにか随行のはずの山田に隊の実権は移っていた。神田の部隊は、猛吹雪に襲われ、磁石が用をなさなくなり、方向を失った。次第に隊列は乱れ、狂死するものさえではじめた。

一方徳島の部隊は、女案内人(秋吉久美子)を先頭に八甲田山に向って快調に進んでいた。体力があるうちに八甲田山へと先をいそいだ神田隊。耐寒訓練をしつつ八甲田山へ向った徳島隊。狂暴な自然を征服しようとする二百十名、自然と折り合いをつけながら進む二十七名。神田隊は次第にその人数が減りだした。二十七日、徳島隊はついに八甲田に入った。降り積もる雪の中で神田大尉の従卒の遺体を発見した。

なんてバカなことをしたと思ってしまうが、武士道の心意気が残っている明治時代では、このくらいなことに耐えなければという気運が強かったのかもしれない。満州の寒さは厳しい。
そこで戦うために耐える訓練をするという軍人の気持ちもわからなくもない。
それでも、亡くなった人たちは本当にかわいそうだ。

三国連太郎演じる少佐は案内を拒絶する。田舎者にガイドしてもらわなくても磁石もあるし、地図もある。自力でいけるというのだ。ところが、うまくいかない。本来指揮を依頼されたのは北大路欣也の方だ。しだいに焦りが募る。その一方で、高倉健の部隊は田舎娘にガイドを頼む。若かりし時の秋吉久美子だ。素朴さがにじみ出ている新妻だ。さっそうと雪山を闊歩する姿がいい。ガイドを選ぶか選ばないかというこの分かれ目を境に猛吹雪の中の映像が続く。



これは映画である。誰かが撮影して、誰かが撮られなければならないのである。
映像に映る吹雪はここぞとばかりに強く吹き荒れる。極寒の中、俳優もしんどい。
今も現役である撮影の木村大作は山と雪を知り尽くしているといえよう。その彼の苦労がにじみ出る。
先般も「北のカナリア」で北海道を美しく映し出した。「剣岳」に至っては、メガホンを取り、美しい雪山を映像にしてくれた。職人の仕事にうならせられる。たぶん日本映画史上これほどまで過酷な撮影条件の映画もないのでは?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「五番町夕霧楼」 松坂慶子

2012-12-24 15:58:10 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「五番町夕霧楼」は水上勉の2つの原作をもとに映画化した1980年の作品だ。

まだ若き日の松坂慶子が京都の廓町の娼婦役を演じ、奥田詠二がドモリの僧を演じる。金閣寺炎上という大事件の犯人とフィクション上の幼馴染の娼婦とのはかない恋の物語だ。例によってこの当時の松坂慶子は美しい。


昭和25年前後の設定だ。丹後の木樵の娘・夕子(松坂慶子)は、貧しい父、肺病の母と3人の妹と暮らしていた。その村に京都の廓町である五番町の夕霧楼の女将(浜木綿子)が葬儀のために来ていた。友子は母の治療費のために自ら売られて京都へいく。遊郭には同じように不遇で娼婦となった女性がいた。女将は早速西陣の織元の旦那甚造(長門裕之)に夕子を売り込む。旦那は夕子を気にいり、2万円で水揚げする。贔屓を得て、1年後には夕子は五番町で一、二を争う売れっ妓になっていた。


だが夕子には同郷の幼友達であり思いを寄せていた青年僧の正順(奥田詠二)がいた。正順は丹後の禅宗寺の跡取りだったが、ドモリがひどくコンプレックスをもっていた。鳳閣寺の長老(佐分利信)の厳しい指導に耐えていたが、ある時夕子がおとづれて来たのを機に遊郭へ行くようになる。夕子は彼をやさしく迎える。しかし、正順は夕子の身体を欲せず、何もせずに二人で時間を過ごすだけで帰って行ったのであった。だが夕子を妾にしようとしていた甚造は鳳閣寺の長老に彼の廓通いを密告するが。。。


テレビ朝日の2時間ドラマを見ているがごとくである。全盛時代の松坂慶子くらいが見どころだけど、この映画は割と芸達者が数多く出ている。昭和に戻ったようで、何か気分は悪くはない。
朝鮮戦争に突入というのが、映像の中で出てくる。昭和25年6月である。実際の金閣寺炎上事件も同じ年の7月だ。米軍兵が京都の街中を闊歩する場面も多い。実際京都は戦災に遭っていない。戦争相手がまともだったと思うしかない奇跡である。溝口健二の映画の「お遊さま」「祇園囃子」でもこの時代設定と同じような京都が登場する。何か神がかったものがあるのであろう。
2万円で水揚げというと、今で言うとどういう金銭感覚なのであろう。日経平均株価が昭和25年を100として現在が1万円と考えると、貨幣価値がほぼ100倍と考えていいと思う。そうすると約200万か、水揚げしても全部自分のものになるわけではないからちょっと高いかなって気もするけど、戦災に遭っていない旦那衆はそのくらいどうってことないか。

金閣寺炎上事件は三島由紀夫の小説「金閣寺」があまりにも有名だ。水上勉「金閣炎上」を書いたのはこの映画が上映される前年だ。大映映画で市川雷蔵主演で「炎上」というこの事件をもとにした映画があった。本当に暗い映画だった。市川雷蔵も暗かったが、仲代達矢の友人役がもっと暗かった。ここでは松坂慶子という美形をクローズアップするために僧の精神状態に入り込むというよりも、娼婦になった彼女を追いかけていく。


注目すべきは、五番町夕霧楼の女将役を演じた浜木綿子だ。俳優香川照之氏の母上だ。年齢は当時45歳、華やかな夜の街を切り盛りする女将が実に似合っている。最近でこそ見なくなったが、このころはテレビのドラマで変幻自在の活躍を見せていたものだ。女手一つで当代きっての名優を育てたところが凄い。ただこの映画では、いかにも裏も表も知り尽くしたやり手の女将という姿しかない。自分が当時の彼女の年より上のせいもあるけど、非常に魅力的に感じてしまうのは年のせいかな?


娼婦には中島葵や風吹じゅん、根岸季衣が名を連ねる。中島葵はにっかつポルノで見せたような存在感はない。いずれにせよ、今で考えると全然色の香りがしない。ジャケットとは正反対に松坂慶子もほとんどその裸体を見せないし、バストトップも姿を現さない。そう言った意味では見る人たちを落胆させるかもしれない。




(参考作品)
五番町夕霧楼」
妖艶な松坂慶子


炎上
市川雷蔵演じる修行僧
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

釣りバカ日誌  西田敏行

2012-09-16 07:19:42 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「釣りバカ日誌」第一作目を見た。
シリーズ化となって松竹の看板となる作品だ。

どんなシリーズものでも第一作目がある。寅さんもそうだ。ここのところ冴えない映画ばかり選択しまって空振り続きでブログ更新もままならなかった。見ていなかった映画「釣りバカ日誌」のDVDを手に取った。昭和の最後に近づきつつある東京の街と浜ちゃんをみながら気持ちが和らいだ。

舞台は高松だ。
サラリーマン・浜崎伝助(西田敏行)は鈴木建設の万年平社員だ。釣りキチで仕事よりも釣り優先、マイホームもつくった上、愛妻みち子(石田えり)にその日釣った魚を家に持ってかえり捌いて食べるというのが楽しみという生活を送っていた。
ところが、高松から東京本社へ転勤を命じられた。何で奴が?と上司の所長(名古屋章)はできの悪い社員の栄転に驚く。釣り好きの伝助は品川のマンションに引っ越した。そこは釣り船の船着き場のそばだった。配属先の鈴木建設の営業三課で課長(谷啓)をはじめとしたメンバーに歓迎された。しかし、次第にお気楽で仕事をしない主人公の影響が蔓延し、課長はイライラしだす。
そんな時昼に主人公はデパート屋上の食堂で一人の老人(三国連太郎)と知り合った。元気のない定年後のオジサンと思った主人公はその老人を慰めた。そして自分が好きな釣りを彼にすすめ、一緒に釣りに行く約束をした。品川から釣り船に乗る。主人公に餌を釣り針に通してもらいながら、老人はビギナーズラックで思いもよらず釣れた。その日老人は主人公の家でもてなしを受け、気がつくと泊ってしまった。また釣りに行きたいと老人は教えてもらった電話番号を会社からかける。老人は主人公が勤める鈴木建設の社長だったのだ。自分の会社の社員であることを知るが、すぐには言えない。。。。。

品川から釣り船に乗って、スーさんこと三国連太郎が「こんな東京の風景を海から見たことないよ」というシーンがある。そこで映し出される東京湾から見た東京の風景はまったく違う。映画は昭和63年の上映、映し出されるのが昭和62年の光景だとすると、25年前の風景だ。株式のウォーターフロント相場はまさに63年から平成にかけてだ。まだ期待の世界だったのだ。

今の海辺に立ち並ぶビル群を見れば、こうも変わってしまうのかと思う。しかし、東京の地価が取引上で一番高値を付けたのは昭和62年秋に国土法による土地取引届け出制になる前だ。一番土地が高かった時代の風景と今と比較すると奇妙な感じがする。


この映画を見ると、昭和63年の女の子ってこんなんだったのかな?と思ってしまう。まずはメイク、石原真理子ばりに眉毛を濃くするメイクがはやっていた。出てくる女性がみんなそうなんで驚く。髪型も今と比べると洗練されていないような印象だ。当時人気だった山瀬まみも出てくるがちょっと違和感を覚えてしまう。石田えりは熟女路線系のヌードになる前だ。割と痩せている。中身には強烈なバディが隠されているのであるが、気さくでこんな奥さんだったらいいなあと、見ている人に感じさせる浜ちゃんの奥さんを演じている。明るい。わりといいと思う。

脇を固める名古屋章、谷啓、鈴木ヒロミチ、園田裕久がいい。この連中を見ていると昭和ってよかったなあと思う。もちろん西田敏行はエンジン全開でまだ若いし、三国連太郎の味わいもいい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする