映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

釣りバカ日誌  西田敏行

2012-09-16 07:19:42 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「釣りバカ日誌」第一作目を見た。
シリーズ化となって松竹の看板となる作品だ。

どんなシリーズものでも第一作目がある。寅さんもそうだ。ここのところ冴えない映画ばかり選択しまって空振り続きでブログ更新もままならなかった。見ていなかった映画「釣りバカ日誌」のDVDを手に取った。昭和の最後に近づきつつある東京の街と浜ちゃんをみながら気持ちが和らいだ。

舞台は高松だ。
サラリーマン・浜崎伝助(西田敏行)は鈴木建設の万年平社員だ。釣りキチで仕事よりも釣り優先、マイホームもつくった上、愛妻みち子(石田えり)にその日釣った魚を家に持ってかえり捌いて食べるというのが楽しみという生活を送っていた。
ところが、高松から東京本社へ転勤を命じられた。何で奴が?と上司の所長(名古屋章)はできの悪い社員の栄転に驚く。釣り好きの伝助は品川のマンションに引っ越した。そこは釣り船の船着き場のそばだった。配属先の鈴木建設の営業三課で課長(谷啓)をはじめとしたメンバーに歓迎された。しかし、次第にお気楽で仕事をしない主人公の影響が蔓延し、課長はイライラしだす。
そんな時昼に主人公はデパート屋上の食堂で一人の老人(三国連太郎)と知り合った。元気のない定年後のオジサンと思った主人公はその老人を慰めた。そして自分が好きな釣りを彼にすすめ、一緒に釣りに行く約束をした。品川から釣り船に乗る。主人公に餌を釣り針に通してもらいながら、老人はビギナーズラックで思いもよらず釣れた。その日老人は主人公の家でもてなしを受け、気がつくと泊ってしまった。また釣りに行きたいと老人は教えてもらった電話番号を会社からかける。老人は主人公が勤める鈴木建設の社長だったのだ。自分の会社の社員であることを知るが、すぐには言えない。。。。。

品川から釣り船に乗って、スーさんこと三国連太郎が「こんな東京の風景を海から見たことないよ」というシーンがある。そこで映し出される東京湾から見た東京の風景はまったく違う。映画は昭和63年の上映、映し出されるのが昭和62年の光景だとすると、25年前の風景だ。株式のウォーターフロント相場はまさに63年から平成にかけてだ。まだ期待の世界だったのだ。

今の海辺に立ち並ぶビル群を見れば、こうも変わってしまうのかと思う。しかし、東京の地価が取引上で一番高値を付けたのは昭和62年秋に国土法による土地取引届け出制になる前だ。一番土地が高かった時代の風景と今と比較すると奇妙な感じがする。


この映画を見ると、昭和63年の女の子ってこんなんだったのかな?と思ってしまう。まずはメイク、石原真理子ばりに眉毛を濃くするメイクがはやっていた。出てくる女性がみんなそうなんで驚く。髪型も今と比べると洗練されていないような印象だ。当時人気だった山瀬まみも出てくるがちょっと違和感を覚えてしまう。石田えりは熟女路線系のヌードになる前だ。割と痩せている。中身には強烈なバディが隠されているのであるが、気さくでこんな奥さんだったらいいなあと、見ている人に感じさせる浜ちゃんの奥さんを演じている。明るい。わりといいと思う。

脇を固める名古屋章、谷啓、鈴木ヒロミチ、園田裕久がいい。この連中を見ていると昭和ってよかったなあと思う。もちろん西田敏行はエンジン全開でまだ若いし、三国連太郎の味わいもいい。
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友情  渥美清

2012-07-11 17:32:48 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「友情」は昭和50年の松竹の作品だ。
渥美清と中村勘九郎が主演、美の絶頂というべき松坂慶子が美しい。

映画「大鹿村騒動記」とは類似点があることに気づく。
気になり映画を見た。渥美清の振る舞いは基本は寅さんと同じ、人情物が得意の松竹らしい作品だ。

同棲している主人公の大学生(中村勘九郎)とOL(松坂慶子)がいる。大学生は仕送りが途絶えて、OLは生計を立てている。申し訳なく思う大学生は群馬の山奥のダム工事現場へ出稼ぎに行くことを決意する。 OLには両親はいない。肉親のおじ(有島一郎)が、同棲した後彼女が男に捨てられるのではないかと心配していた。
主人公はダムへ向かう途中で一人の男源太郎(渥美清)とであった。道を聞くとダムまでまだまだ遠いという。
気のいい男は主人公をダム工事現場まで連れて行った。そこには下請けの土木会社の幹部(名古屋章と谷村昌彦)がいた。慣れない仕事に主人公は四苦八苦した。それでも飯場に一緒に住む源太郎は一緒にのみに連れて行ったりして仲良くしてくれた。ところが、主人公は運搬トラックが横転して骨折の大怪我を負う。出稼ぎができなくなった。恋人が見舞いに来てくれた後東京へ戻る。
普通の生活に戻ろうとしているとき、警察から電話がある。なんと源太郎の身元を引き受けてくれないかというのだ。警察署に向かうと飲んだ後街の中で大喧嘩したらしい。
主人公は自宅に源太郎を連れてくる。一緒に毛がにで酒盛りをするが、食あたりでしばらく主人公のアパートに寝泊りすることになる。
そこへ現れたのがOLのおじだ。主人公にはっきりしろと迫るが、主人公は「先のことはわからない」とばかりにはっきりしない。
そこで渥美清の得意の口上が始まる。
「男が女に甘えて何が悪いの?」とばかりに応酬する。その場はとりあえず収まった。
主人公は源太郎の故郷瀬戸内海の離島へ向かう。
しかし、源太郎にはそこへ帰りづらい事情があった。遊びの女にお金を持ち逃げされ、妻子を置き去りにしてきたのだ。。。。

(戸越銀座)台詞の中で主人公は戸越銀座に住んでいると言っている。品川の町並みが出てくる。
でもこの映像は明らかに戸越銀座ではない。地元だけによくわかる。
中学生から高校生にかけては、高校のある武蔵小山から、戸越銀座、大井というのは自転車でよく走ったものだ。映像の一部に「○品川」と○が陰に隠れた映像が出てくる。電車は高架を走る。ステンレスカーだ。それだけで池上線でないことがわかる。
おそらくは大井町線(当時は田園都市線)の下神明駅あたりの新幹線と交差するあたりではないか?
確かにこのあたりは西品川という住居表示だからつじつまは合う。
商店街の道路の幅も狭すぎる。これは戸越銀座商店街ではない。たぶん下神明付近ではないだろうか。公園の近くに高架が走っているので、この公園も戸越ではない。遊具にかかれた暴走族「ZERO」の文字が懐かしい。
仲間内でよくこの集会に参加すると自慢げに言っていたやつがいたっけ、ZEROは大井が地元だ。
あえて言えば主人公がラーメンをすする「太陽軒」というのが戸越銀座商店街の第二京浜を渡ったところに今もある。

(配役)自分が小さい頃は、周りに出てくる子役というと四方晴美のチャコちゃんか中村勘九郎神津かんな くらいだった。子供心にすごい存在に思えた。いずれも二世である。でも中村勘九郎が演じるような大学生っていたのかなあ?
松坂慶子がまばゆいばかりに「愛の水中花」で衝撃的な曲線美を見せたのはもう少し先だ。
美しい。当時「同棲時代」という劇画がはやっていた。その影響が強いので作られた脚本だろう。
名古屋章と谷村昌彦を見ると、昭和にタイムスリップした錯覚を覚える。この2人はよくテレビに出ていたなあ。特に渥美清の浅草時代からの盟友谷村昌彦のずうずう弁は学校でよくみんながまねしていたものだった。忍者ハットリ君実写での「ハナオカジッタ君」本当に懐かしい。

(大鹿村とこの映画の類似点)大鹿村騒動記では原田芳雄ふんする主人公の元を幼馴染の男と主人公の妻が駆け落ちをして出て行くシーンが出てくる。
この映画ではお金にまつわる失敗をして渥美清ふんするグータラ男が、妻子を残して瀬戸内海の離島を飛び出す。戻ってきたら妻は夫の幼馴染の男と一緒になっているのである。いずれも人口の少ないエリアでの恋愛、誰も彼もがみんなが知り合いだ。幼馴染同士も絡んだ相関関係ということが類似点である。
でも人口の少ない人里はなれたところにはこういうことってあるんだろうなあ。


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男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく 木の実ナナ

2012-01-13 05:51:20 | 映画(日本 昭和49~63年)
「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」は78年の第21作目の寅さん映画だ。
マドンナは木の実ナナ、妹さくらの幼馴染でSKDでダンサーをやっているという設定である。今は亡き浅草国際劇場が画像に出てきて、SKDのレビューをしっかり見せてくれる。躍動的な印象だ。



世は不景気、タコ社長の工場も例にもれない。とらやのおいちゃんも元気がない。そんな中いつものようにタコ社長とケンカした寅さんはまた柴又を後にする。熊本の田舎町の温泉にやってきた
そこで、寅は想いを寄せる彼女にふられてガックリする青年こと武田鉄矢に出会う。失意の心を慰められた武田はすっかり寅を気に入ってしまう。温泉の経営者こと犬塚弘やみんなから先生扱いされた寅も温泉に長居してしまい、宿代もたまってしまう。いつも通りさくらこと倍賞千恵子にSOSの手紙を書き熊本まで来てもらうのである。

戻った寅は若干まじめになる。しかし、いつも通りになりそうだったところ、SKDのダンサーであるさくらの友人紅奈々子こと木の実ナナがとらやを訪ねてきた。木の実はさくらの同級生、寅も昔はかわいがった。寅は理由をつけては浅草国際劇場に通いはじめた。そうした時に武田鉄矢が上京してきた。国際劇場に案内された武田は、踊り子に一目惚れしてしまい浅草に残り、トンカツ屋に就職して、国際劇場専門の出前持になってしまったが。。。。

メインゲスト木の実ナナ、サブが武田鉄矢といったところだ。
SKDすなわち松竹歌劇団は一世を風靡していた。さくらこと倍賞千恵子も妹倍賞美津子ともどもSKDに所属していた。まさに下町の太陽のようなものである。そのSKDの中に入って、木の実ナナ躍動的だ。ミュージカルに進出して自分の地位をつくっているところだ。ちょうど30過ぎで一番脂の乗ったころなのできれいだ。寅さん映画のいいところはその女優のピークの映像が見れることである。木の実ナナが想いを寄せる男は「ごりさん」こと竜雷太だ。でも太陽にほえろのようなワイルドさはまったくない。

武田鉄矢にとっては名作「幸福の黄色いハンカチ」に続く作品である。金八先生はこの翌年からスタート。前作で見せた三枚目スタイルのままこの映画でもとんまな役を演じている。海援隊のリーダーとしての存在からコメディアンとしての下地をつくっているころだ。まだ青臭い印象だ。まさに松竹に育てられた存在といえよう。

なぜか寅次郎こと渥美清がいつもよりケンカ早い。テキヤ口上も切れがよくワイルドな部類に入る寅さんだ。割といい方だと思う。
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男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎  松坂慶子

2011-12-29 18:15:00 | 映画(日本 昭和49~63年)
男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎は81年の作品
当時美の絶頂にある松坂慶子の姿を見れるだけで価値のある作品だ。


芦屋鴈之助、大村昆、かしまし娘のお姐さんなどの上方お笑いの重鎮が脇を固め、東京のシーンではいつものレギュラーがいる団子屋に美女があらわれびっくりという構図だ。吉岡が子役としてデビューする記念すべき作品でもある。

いつもながら柴又で身内げんかをして寅次郎こと渥美清はさすらいの旅に出る。
瀬戸内海の小さな島で美しい女こと松坂慶子に出会った。妙に気があった二人だった。その後、大阪の新世界界隈に寝城をとってテキ屋稼業に精を出す。神社で口上を飛ばす寅の前を三人の芸者が通りかかった。その中の一人に島で会った松坂がいた。「寅さんやね、確か」と寅の手をとる松坂。意気投合して飲み屋街へ。彼女は大阪の芸鼓であった。新世界の寝城にいる仲間も送ってきた美女にビックリであった
ある日、寅は松坂と生駒の山に遊びに行った時、十何年も前に生き別れになった弟がいることを聞いた。たった二人の姉弟じやないかと会いに行くことを勧める寅。弟の勤め先を探しあてた。しかし、弟はつい最近心臓病で他界していたことを勤務先の大村昆から聞く。弟の恋人から思い出話を聞き、涙を流す松坂に寅はなぐさめる言葉もない。その晩、寅の宿に酒に酔った松坂がやって来たが。。。。

大阪というと通天閣、新世界界隈がロケ地というのはお決まりのようである。
しかし、より観光地化した最近はともかく1980年前後は新世界付近はなかなか行きづらいところだったのではないか?フーテンの寅が宿に選ぶ安い所といえばそうかと思うが、おそらくは南の芸者が住むところではないだろう。
生駒の山に松坂慶子と二人で寅がいくシーンもいい。生駒の山はあくまで通過点であって、なかなか映画の舞台にならないものである。懐かしさを感じた。いかにも大阪らしさを醸し出すのに上方の芸人が出てくるのがいい。まだ生きているのか?と思ってしまうが、かしまし娘のお姐さん達のしぐさを見るだけで楽しくなる。芦屋雁之助のボケもいい。「ちびっこのど自慢」の大村昆は真面目な役で普通だ。

あとはロケ地に対馬が出てくる。最近「韃靼の馬」という小説を読んだ。対馬を起点にして朝鮮大陸や大阪が出てくる小説だ。30年前の映像となるが、対馬を映すめずらしい映像ではないか。寅次郎、松坂慶子のご両人のロケで島の風景を映す。小説の主人公と同じ名字の商店の名前が映るのが印象深い。

いずれにせよ、この映画は松坂慶子の全盛時の美貌を見るためのものといってもいいかもしれない。あでやかな芸者姿はもとより普段着の清楚さも美しい。「愛の水中花」で大フィーバーしたあと、松本清張原作のサスペンス映画などで活躍した。「蒲田行進曲」よりは若干前だ。そんな全盛時の松坂慶子にもてっぱなしで渥美清も悪い気はしないだろう。ここの渥美清は口上含めて普通かな?

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎
美の絶頂にある松坂慶子


第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
太地美和子が美しい全48本中の人気№1作品
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海と毒薬  奥田瑛二

2011-11-13 08:52:26 | 映画(日本 昭和49~63年)
「海と毒薬」は熊井啓監督による86年のキネマ旬報ベスト1となった名作だ。

実際の史実に基づき遠藤周作が小説にした。大学病院で患者が人体実験の材料にされるという話だ。それ自体はよく聞く様な話だが、健康な人間が実験材料にしてしまうとただじゃすまない。あとは「白い巨塔」同様大学医局内の勢力争いと徒弟制度的な上下関係も描いている。原作を熊井啓監督が映画化を表明してからスポンサーがつくまでかなりの時間がかかったといういわくつきの作品だ。

昭和20年5月敗戦寸前の九州のある都市が舞台だ。米軍機による空襲が繰り返されていた。帝大医学部インターン二人奥田瑛二と渡辺謙は医学部の権力闘争の中でさまよっていた。しかも、どうせ死ぬ患者なら実験材料にという教授、助教授の非情な思惑を見せられ続けていた。
当時医学部長の椅子を、奥田たちが所属する第一外科の教授こと田村高広と第二外科の教授こと神山繁が争っていた。教授田村は結核で入院している前医学部長のめいのオペを早めることにした。成功した時の影響力が強いのだ。ところが、田村教授は助教授こと成田三喜男、看護婦長岸田今日子とともに着手したオペに失敗した。手術台に横たわる夫人の遺体を前に茫然とする医局メンバーだ。第一外科のメンバーたちは失敗と見せかけない工作に着手するが。。。。

このあと米軍の捕虜をめぐって人体実験をするシーンが出てくる。全身麻酔をした捕虜の心臓や肺を傷つけて人間の身体がどこまで耐えられるかなんて話はえげつない。そもそもB29が地上の砲撃で墜落するなんてことがあるとは思っていなかった。しかも、米軍機を操縦するメンバーが捕虜になるなんて初めて聞いた。法治国家とは言えない戦前の日本に国際法の概念なんてあるとは思えない。敵の捕虜は徹底的に虐待することしか考えていなかったのではないか。でも映画「戦場にかける橋」では日米の将校同士共感を持つシーンが出てくる。この映画はもはや敗色濃厚となったころの話だ。すべてが狂っていたのであろう。

熊井啓監督のつくる白黒映像は独特のドキュメンタリータッチだ。「謀殺下山事件」の映画も似たようなタッチだった。奥田瑛二は不倫ドラマでちょうど人気が出始めたころである。そこにまだ若手俳優だった渡辺謙がからむ。両者ともまだまだといった演技だ。逆に田村高広や成田三喜男のうまさが冴えるし、岸田今日子はまさに適役だ。

そういう名役者が取り組む手術シーンで実際の手術場面を映す。これがリアルだ。ストーリーに合った形で身体の中がえぐられる。どうやって撮影されたのであろう。
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タンポポ  伊丹十三

2011-08-23 17:36:16 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「タンポポ」は伊丹十三監督の「お葬式」に続く85年の作品だ。これはロードショウで見た。

当時、ラーメン屋版「シェーン」なんてこと伊丹が言っていた気がする。ダメレストランをはやるレストランに変身させるテレビ番組に心動かされてつくられた映画である。山崎努、宮本信子のいつもながらのコンビに加えて、若き日の渡辺謙、役所広司が出演、世界的俳優のルーツのような顔が見れる。
この映画最初に見た時はなんか不思議な映画だな?と思ったけど、何度も何度も見てしまう中毒になる映画だ。歴史的名場面というべきシーンも盛りだくさんにある。見るたびごとに新鮮な発見がある映画だ。


ある雨の降る夜、タンクローリーの運転手の2人こと山崎努と渡辺謙は、来々軒というさびれたラーメン屋に入った。店内には図体の大きい男こと安岡力也とその子分達がいて、態度のでかい恰好をしていた。言い合いが始まり、チンピラ連中と山崎努が乱闘になる。ケガをした山崎は、店の女主人タンポポこと宮本信子に介抱された。彼女は夫亡き後ひとり息子を抱えて店を切盛りしている。

でもラーメンの味が今一つとの山崎努と渡辺謙の言葉に、宮本信子は弟子にしてくれと頼み込む。他の店の視察とスープ作りの特訓が始まった。宮本は他の店のスープの味をこっそり覗いて真似ようとするが、なかなかおいしいスープがつくれない。山崎はそんな宮本を食通の乞食集団と一緒にいる医者くずれのセンセイこと加藤嘉という人物に会わせた。“来々軒”は“タンポポ”と名を替えることになったが。。。。

上に述べたような基本ストーリーが普通に流れる。でも併せて小さい小噺のような話が同時並行で映しだされる。これが実に楽しい。
いろんな人物が登場するが、主要なメンバーは役所広司扮する謎の男とその情婦黒田福美だ。
いまや日本を代表する俳優になった役所もまだ若い。人相が今と違う。韓国通で有名になった黒田福美も20代でものすごい色っぽいヤクザ?の情婦を演じる。

2人がホテルで戯れるシーンは、日本映画史上に残る名シーンだと私は思う。
高級中華の料理「酔蝦」という料理がある。我々は「酔っぱらいエビ」なんて言っている。その昔香港のハイアットリージェンシーの凱悦軒の周中シェフが得意にしていた。紹興酒の中に生きた元気のいいエビを入れて暴れさす。大暴れである。そのエビを沸騰するお湯の中に入れて食べる広東料理の神髄だ。いかにもグルメで名高い伊丹だけに、彼の理想とするシーンを映し出す。


ホテルのスウィートにいる役所と黒田のところに、ルームサービスのワゴンが運ばれる。ワゴンには様々な食材があり、それを黒田福美の裸体を使って食べていくのである。圧巻は「酔蝦」だ。
紹興酒の中で暴れるエビを黒田の裸のおなかの上でまさに踊らせる。これこそ真のエビのおどりである。最初にこれを見た時、黒田福美の裸体の美しさに目を奪われたが、何度も見るとすげーシーンだと思った。2人が生卵をキスしながら繰り返し口移しするシーンもすごい。洞口依子が海女になって、カキを役所に食べさすシーンも印象深い。これもすげー!

なんてシーンが書ききれないほどある。
ブラックコメディの色彩が強い作品だが、「遊び人」伊丹十三の真骨頂というべき映画だ。
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県警対組織暴力  菅原文太

2011-06-04 05:36:22 | 映画(日本 昭和49~63年)
県警対組織暴力「仁義なき戦い」の好評をうけ、深作欣二監督、笠原和夫脚本、菅原文太主演と同じコンビで昭和50年につくられた作品だ。日本映画史上最高のスピード感を持つ「仁義なき戦い」のスタッフがつくっただけに期待を裏切らない。今回は視点を警察側におき、暴力団に接近する刑事と暴力団同士の抗争を描く。架空の町倉島市としているが、中国地方が舞台だ。主演同様松方弘樹も脂が乗り切っていて、金子信雄、成田三喜夫が個性を出し切る。川谷拓三のチンピラぶりも笑える。実におもしろい映画だ。


時は昭和38年、中国地方の倉島署の刑事久能こと菅原文太は暴力団担当の叩き上げの刑事だ。文太は、大原組の若衆頭・広谷こと松方弘樹と癒着している。広谷は、対立する勢力の川手組長こと成田三樹夫と土地がらみの利権を争っている。文太は6年前、対立する暴力団組長を射殺した松方の犯行を見逃してやった。それ以来二人は固い絆で結ばれている。文太は川手組の縄張り拡張のために職権乱用した事をつきとめ叩きつぶした。混乱がつづく倉島地区を取り締まるため、県警主導で暴力取締り本部が再編成されることになり、県警本部からエリート警部補・海田こと梅宮辰夫が赴任した。梅宮は、法に厳正、組織に忠実、やくざとの私的関係を断つと三点をモットーに本部風を吹かせたが。。。。

警察側からの視点と見る目は異なるが、手持ちカメラ中心の躍動感ある映像は「仁義なき戦い」と同じである。今は暴力団との関係に対して、かなり厳しい目がある。昭和30年代から40年代にかけては実際にこういう癒着はあったかもしれない。自分が癒着する組の対抗勢力に対して厳しい取り調べをしたり、警察の手入れがある時は、事前に情報を組関係者にもらしておいたりする場面などはここでも出てくる。


菅原文太の一番いい時期だ。いきなりチンピラを脅して高価なライターを取り上げたり、川手の子分こと川谷拓三を取り調べるときなどは、全裸にひん剥いたあとで殴る蹴るの暴行を加え、マル秘情報をすっかり吐かせる。このシーンは凄い。一世を風靡した川谷拓三の名をあげたシーンともいえる。みっちり川谷を絞りあげた後で、川谷の女を署内に呼ぶ。川谷はたまっているものを吐き出すかのように女をトイレの中に連れ込みコトをいたす。平然とする文太。痛快だ。
松方弘樹の若衆頭も迫力がある。ホステス役の池玲子を手篭めにするシーンはいかにもヤクザの匂いをぷんぷんさせる。池玲子はなつかしい。東映ピンク路線の代表的存在だ。少年だった自分も当時どきどきしながら彼女を追いかけたものだ。

梅宮辰夫の警部役はそののちの貫禄と比較すると、まだまだという気もする。この時期はまだ組関係者の役が似合っていたのかもしれない。プレイボーイで有名だったころだ。彼のお父さんは私の家の近くで開業していた。内科医院でお世話になった。小学校の校医だった記憶がある。母に言わせると、お父さんの方が息子より男前だ。梅宮先生は腰が低いといつも言っていた。子供心に梅宮医院の看護婦は美人だらけだなあと思っていた。
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陽炎座  松田優作&大楠道代

2011-06-01 19:08:25 | 映画(日本 昭和49~63年)
『陽炎座』(かげろうざ)は鈴木清順監督の代表作の一つだ。前年の『ツィゴイネルワイゼン』の成功を受けて製作され「フィルム歌舞伎」と呼ばれた81年の作品。松田優作演じる新派の劇作家が、大楠道代演じる謎めいた女に翻弄される。



1926年の東京が舞台。新派の劇作家松崎こと松田優作は偶然に、美しい謎の女品子こと大楠道代と出会う。三度重なった奇妙な出会いを、松田はパトロンである玉脇こと中村嘉津雄に打ち明けた。ところが、広大な玉脇の邸宅の一室は、劇作家が謎の女と会った部屋とソックリ。謎の女はパトロンの妻ではと松田は恐怖に震えた。
数日後、主人公は品子とソックリの振袖姿のイネと出会う。イネは「玉脇の家内です」と言う。しかし、驚いたことに、イネは、主人公と出会う直前に息を引きとったという。主人公の下宿の女主人みおは、玉脇の過去について語った。玉脇はドイツ留学中、イレーネと結ばれ、彼女は日本に来てイネになりきろうとしたことなど。そして、イネは病気で入院、玉脇は品子を後添いにした。そこへ、品子から主人公へ手紙が来た。「金沢、夕月楼にてお待ち申し候。三度びお会いして、四度目の逢瀬は恋死なねばなりません……」金沢に向う主人公は列車の中で玉脇に出会った。彼は金沢へ亭主持ちの女と若い愛人の心中を見に行くと言う。金沢では不思議なことが相次ぐ。品子と死んだはずのイネこと楠田恵理子が舟に乗っていたかと思うと、やっとめぐり会えた品子は、手紙を出した覚えはないと語るが。。。。

レトロ基調の美術の色合いがカラフルだ。独特な映像美である。前作同様難解な物語の進行が見るものを困惑させる。でもまったく訳がわからないわけではない。大正末期のセレブ社会を映し出すだけでなく、遊郭や花柳界のあでやかな姿やジャズで踊りまくる場面、旅芝居の芸も登場させて見るものを楽しませる。衣装もあでやかだ。終盤にかけての色彩設計には驚く。



「太陽にほえろ」のジーパン刑事でさっそうと登場した松田優作は、我々少年たちに強烈なインパクトを与えた。学校では彼をまねる少年たちがあちらこちらにいた。殉死した回の演技はテレビ史上に残る名演技でコメディアンたちがモノマネしたものだ。この映画はそんなときから7年たっている。ワイルドで暴れまわる彼とは違った面を見せるので、若干戸惑う部分はある。しかし、この辺りから遺作の「ブラックレイン」までのキャリアは緩急入り混ぜお見事としか言いようにない。



大楠道代というのも強い個性を持つ女優である。この当時はまだ30代半ばで、本来の美貌を残している。今は水商売またはそれあがりのような初老の女性を演じると天下一品である。「人間失格」でレトロなバーのママを演じたが、まさに地で行っていた。作品リストをみると「顔」「赤目四十八瀧心中未遂」「空中庭園」と傑作にしか出ていない。というよりも彼女が出演すると、傑作になってしまうということなのかもしれない。

彼女はもともと大映の女優で、東映の藤純子に対抗して江波杏子とつぼを振っていた。自分は当時五反田にあった大映の映画館の前で「やくざ映画」の看板をじっとみていた。安田道代という女優の名前とその美貌が子供心に妙に印象に残った。でも子供の自分はその「やくざ映画」を見ることなく大映は倒産した。

陽炎座
大楠道代の妖艶ぶり


ツィゴイネルワイゼン
鈴木清順の美学を楽しむ
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男はつらいよ  中原理恵

2011-03-02 18:46:50 | 映画(日本 昭和49~63年)
「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」はフーテンの寅さん第33作目である。舞台は北海道で中原理恵がマドンナを演じる。他のマドンナほどの大物度はないが、当時25歳の中原理恵は独特のオーラを出していてなかなか素敵である。



北海道で床屋で散髪していた寅次郎こと渥美清は、一人の若い女性こと中原理恵が求人できているのに出くわす。床屋の店主は紹介ではないのでと採用を断る。そのあと公園のベンチでいる中原理恵に声をかける。彼女はフーテンの風子と名乗った。二人は寅次郎の楽しい話にすっかり打ち解けた。その後親類の紹介で床屋で働くことになる彼女だが、縁日を渡り歩く旅回りののオートバイサーカスのライダーこと渡瀬恒彦との縁を切れずにいたのだが。。。。

こうやって若いころの中原理恵の素敵な姿を見るのはいいものだ。
「東京ララバイ」でデビューした時のことは今でもよく覚えている。ポマードでピシッと決めたショートカットでさっそうと現れた彼女はスタイリッシュでかっこよかった。芸能界にデビューするときに、年を上にごまかしていたのは珍しい。下にごまかすのはいくらでもいるのにね。今でもカラオケで「東京ララバイ」歌うこともある。その後欽ドンで3枚目のキャラを演じた後にこの作品が撮られたと思う。
マドンナはごまんといれど、ここまで寅さんにべたっと密着したマドンナは珍しいのではないか?中原理恵みずから「寅さんと結婚したい」と言い切る。渥美清の腕に絡む中原理恵には恋人感覚での接し方を感じる。他のマドンナでは感じないきわどさがあるのではないか。当時自分と同世代であった中原理恵に惹かれる友人たちは多かった。あらためてこの映画をみていろんなことが映像のようによみがえった。


美保純がロマンポルノを卒業して、タコ社長の娘役になる。吉岡秀隆がそろそろ中学生になるころだ。渥美清は普通、ギャグもさほど笑いを誘わない。ストーリーもどうってことないがけっして悪くはない。



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さらば愛しき大地  根津甚八

2010-09-19 18:14:56 | 映画(日本 昭和49~63年)
82年東京近郊の工業地帯として変貌をとげつつあった時期の鹿島、潮来地区を舞台にして一人のあばずれ男にスポットをあてる。根津甚八が自堕落な男を演じて、愛人役を秋吉久美子が演じる。



茨城県鹿島の一角に小さな農家がある。その一家に不幸が突然襲ってきた。最愛の息子二人が溺死してしまったのだ。妻山口美也子にあたる夫根津甚八は背中に観音像と子供の戒名を刺青し供養する。そんな折、根津は昼間は工場で働き、夜は母の飲み屋を手伝っていた秋吉久美子と親密になる。失意からなおらない根津と秋吉の同棲生活が始まった。数年たち、二人の間には娘も生まれ、依然として根津の二重生活は続く。しかし、日ごろの不安をまぎらわすために、覚せい剤を常用するようになる。一方、家では母の強い希望で東京から戻ってきた弟もダンプの運転手を始めていたが。。。。

現在の都市近郊の風景と比較すると、一時代前の田舎の匂いを残す。根津、秋吉の主演二人をバックアップする俳優には、にっかつポルノで見かける顔が多い。根津の妻役の山口美也子だけでなく、中島葵や白川和子、岡本麗などの往年のにっかつ女優に加えて、人気男優港雄一が登場する。それ自体でノスタルジックな匂いを醸し出す。
いいなあと感じたのはそののち「はぐれ刑事純情派」の藤田まことの同僚の婦人警官役などで堅気の女優に変身した岡本麗が「夜来香」を歌うシーンだ。台湾やフィリピンから稼ぎに出てきた女性が増えつつあった時期の光景を映し出し、岡本には台湾人を演じさせる。

支離滅裂な映画だと私は感じた。でもなつかしのにっかつポルノメンバーの登場で同窓会的な気分も感じさせてくれた。秋吉久美子は年齢を重ねた今の方がより妖艶に感じる気がする。

(参考作品)
さらば愛しき大地
ワイルド根津と美の絶頂秋吉久美子
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ガキ帝国  島田紳助

2010-08-07 07:48:49 | 映画(日本 昭和49~63年)
今をときめく島田紳助が相棒松本竜介とともに大阪でツッパリを演じた映画である。暴力表現大好きな井筒監督の出世作ともいわれる。昭和56年の作品で、まだ映画づくりが今と比べるとかなり粗いが、井筒監督得意のツッパリ喧嘩シーンのルーツは観ておいてもいいだろう。

昭和42年の大阪を舞台に、ケンカと遊びに明け暮れる少年たちの青春を鮮烈に描いている。少年院帰りの島田紳助は仲間の松本竜介とともに、裏の大阪愚連隊であるキタの北神同盟、ミナミのホープ会の二大グループの抗争の間で、つっぱって立ち回っていた。ひたすらケンカにあけくれる毎日を描く


約30年前とはいえ、島田紳助の顔が違う。映画の中のアカぬけない表情は今のテレビスターとしての表情と大きく違う。男の顔は履歴書というが、まさに大きく成長した紳助を我々はテレビで見ていることがわかる。ここでは相棒松本竜介も頑張っている。コテンパンにやられながらも、相手に立ち向かうところはいじらしく感じさせる何かがある。

画面ではひと時代前の大阪の匂いをぷんぷんさせる。ハチャメチャでどこか危険な匂いである。ゴーゴーダンスや当時の風俗を取り入れているが、服装はちょっと違うのかな?という印象を受けた。一部のアイビールックは良しとして、不良少年の服装はもう3から4年くらいあとの服装ではないであろうか?画像のセンスもちょっと古めだ。近年井筒監督がつくる映画とはタッチは違う。それは仕方ない。まあよくケンカさせる。本気に近い動きを見せる場面もある。長回しでリンチシーンを撮るシーンもあった。これはやられるほうはたまったもんじゃないだろう。

島田紳助のルーツを見るだけでも価値はあるかも?
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幸福の黄色いハンカチ 高倉健

2009-12-12 22:22:44 | 映画(日本 昭和49~63年)
山田洋次監督による高倉健主演の作品。ロードムービーが急に観たくなり久しぶりに見た。脇を固めるのがいわゆる山田組の渥美清、倍賞千恵子に加えて、武田哲矢と桃井かおりである。過去のある男が現実とさまよう姿を描く高倉健の得意技では比較的初期の作品である。

北海道の網走に東京から車で一人きていた武田哲矢は、駅で若い女性を見つける。桃井かおりである。どちらかというと奥手のタイプの彼女を強引にドライブに誘う。足がない彼女はついていく。その旅先でたまたま出会ったのは高倉健であった。ひょんなことから彼も同乗してドライブすることになる。ところが、途中で武田が蟹を食べすぎお腹をこわしてしまい、牧場のトイレに駆け込む羽目に。そのときに大きな車が来て動けない。仕方なく仮免までとったことのある桃井が運転して、車が脱輪したり、爆走したり大変なことになる。そこで高倉健が運転することになる。ところが、移動先で警察の一斉検問をやっていた。免許証の提出を求められるが高倉に免許証がない。刑務所から出てきて間もないことを尋問で答えているのを聞いて二人はビックリするが。。。。。

この後は炭鉱夫だった高倉の回想シーンが多くなる。そして倍賞千恵子が絡んでくる。このあと続く高倉の現代劇のいつものパターンと同じである。しかし、音楽を含めた全体的な流れは山田洋次監督の「男はつらいよ」やロードムービー「家族」に近いものがある。降旗監督作品と微妙に違う。笑いをおこしながら、お涙頂戴というのは寅さん映画と一緒である。ある意味単純なのかもしれない。松竹らしい映画スタイル。

武田と桃井かおりはまだ若い。演技も今と比較すると荒削りだ。でもこの二人と高倉健が組んだこと自体意義がある。上映当時はビックリしたものだ。東映のヤクザ映画の大スター高倉健が、こういう人情劇に出てうまくいくのかどきどきした。早いものだ。もう30年以上たつ。古さを感じさせるがそれはそれで良いかもしれない。
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私をスキーに連れていって  原田知世

2009-11-22 07:36:01 | 映画(日本 昭和49~63年)
ここに来て寒さが増してきた。ジングルベルが鳴るころには、毎年この映画を観ながらスキーの計画を練ったものだった。この映画を観るとスキーに行きたくなる。そういう吸引力を持った87年のホイチョイプロダクションによる作品である。90年代のトレンディドラマの流れを先駆したという意味で、日本映画界における存在感が大きい映画だと私は思う。

三上博史は独身スキー狂。商社勤務で地味な軽金属部にいるが、むしろ田中邦衛がいるスポーツ部に入りびたりである。昔からの仲間である沖田浩之、原田知世の姉上、布施博、高橋ひとみとつるんでスキーに行っている。今回は三上の相手になる女性一人を連れて来ているが彼はのれていない。そんな時、ゲレンデで出あったのが原田知世である。初心者に毛の生えたような腕前だ。その彼女を指導しつつ仲良くなる。しかし、後もう一歩というところで布施博が同伴の女の子を二人がいる前につれてきて、仕方なく三上は一緒にすべる。原田は落胆して、仲間の鳥越まりと去ろうとするが、三上は原田の電話番号を聞く。

しかし、街に戻って原田の電話番号をまわすが通じない。どうやら偽の番号を教えられたようである。失意の中、仕事で大きな失敗をしてしまい、上司と一緒に役員の部屋に怒られにいった。その時お茶を持ってきたのがなんとゲレンデで逢った原田知世であった。同じ会社の秘書課にいたのである。。。。。

ユーミンの「サーフ&スノー」が出たのはこの映画の10年以上前だと思う。正直どうってことないなあと思っていた。しかし、この映画のイントロで流れるのを観て、スキーには欠かせない曲になった。映画の内容の詳細は忘れても、三上博史が車でカセットを入れるシーンが忘れられない。「恋人がサンタクロース」も同様である。ゲレンデで流れていると、ノリが良くなる。

何よりも「ブリザード」だ。滑走不可の雪山の中、原田知世三上博史が追いかける有名なシーンがある。今回もそこでこの曲が流れたとたん、やはり背筋が「ゾク!」となった。最高である。この映画のためにつくられたわけでないのに、ものすごく合っている。この映画の後くらいからであろう。冬にユーミンのCDがバカ売れしたのは。それにこの映画は多少は影響している気がする。

原田知世三上博史が滑っているところを指で「バーン」と撃つ、これまた有名なシーンがある。なんとかわいいことか。角川映画であたりまくったあとでこの映画ができたと思う。そこに絡むのが、原田の姉上と高橋ひとみである。スタート前に路面の状態を指で触った後に、セリカで暴走する二人の姿は実にかっこいい。当時スキーをすべる連中にセリカがはやった気がする。

布施博が売れ始めたのもこの映画からではないか?満面に笑みを浮かべた彼のやわらかさがよく出ている。亡くなった沖田浩之も突っ張りキャラから転換するきっかけになった。「とりあえず」なんていいながら防水のカメラを写すシーンが懐かしい。

70年代後半には、大学からゲバ棒をもった学生がじょじょに去っていった。気難しいことは言わず、能天気にみんなで遊ぼう。という空気が強くなった。最初は不良の溜まり場に過ぎなかった「ディスコ」が大学生の溜まり場になっていったのが70年代を終えようとしたころで、80年代はまさに一般学生の社交場になった。そういう学生生活を送っていた連中が社会人になって、その生活をひきづるようにスキー場に繰り出していったのである。自分もそうだった。良い時代だったと思う。
でも残念ながらもう10年以上ゲレンデに立っていない。娘とまた復活するか。

参考作品

彼女が水着にきがえたら
原田知世&織田裕二で昭和の終わりを楽しむ


波の数だけ抱きしめて
中山美穂&織田裕二


私をスキーに連れてって
これを見たらスキーに行きたくなる
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居酒屋兆治 高倉健

2009-10-18 19:59:35 | 映画(日本 昭和49~63年)
昭和58年の降旗監督高倉健コンビ作品。山口瞳原作である。函館の居酒屋の店主を高倉健が演じて、その店と彼に絡む人たちの物語を描く。よくも集めたと思わせるような名脇役がそろっている。大原麗子、伊丹十三、東野英治郎をはじめ鬼籍に入った人も多く、なつかしい感じがする。ストーリー展開の面白さよりも、函館の町の匂いをかぎながら、名優の演技を見るという作品だ。

高倉健は函館で加藤登紀子とともに居酒屋を営む。もとは地元の高校野球部のエースで、地元の造船所に就職したが、会社のリストラを担当することになり、仲間の首切りはできないとやめて居酒屋をやるようになった。お店には野球部でバッテリーを組んでいた親友の田中邦衛を始め、多彩な顧客がきている。大原麗子とは若いころつき合っていたが、お互い貧しく、彼女に結婚話がきて地元の牧場に嫁ぐのを黙って見守るしかなかった。大原麗子はそれが今でも不本意である。そんなあるとき、その牧場で火事が起きた。そして大原麗子は函館の町から失踪する。昔付き合っていた高倉健が何か知っているのでは?とかんぐる人もいるのだが。。。。。

高倉健はヤクザあがりの設定が多いが、ここでは堅気の設定。多彩なお客が多い店の店主役を楽しく演じている印象。田中邦衛もいつもどおりの安定した演技。こんな友人がいたら人生もっと楽しかったろうなあと思わせる好人物を演じる。加藤登紀子の妻役も適切である。

大原麗子の存在は脚本的には非常に微妙な感じだ。元恋人を思いつめる流れがストーリー的に不自然さを感じさせる設定。全盛時だけあってその美貌も絶頂だが、もう一つひきつけられない。しかし、ちょっと驚いたのは、彼女の晩年とどこかダブるところがあるところだ。映画を観ながらつい先ごろの話をダブらせてしまった。

伊丹十三が高倉健の先輩で地元のタクシー会社の副社長役で出てくる。居酒屋で執拗に高倉健に絡む。元々はインテリのキャラである伊丹がめずらしく与太者を演じている。ヤクザではないが、監督のときにつくったヤクザ排除映画の配役を思わせるようないやな役だ。どちらかと言うと高倉健のほうが風貌はそのものだけに不思議な感じだが、これはこれで良いのかもしれない。この翌年「お葬式」を作り、名監督の道を歩んでいく。その前の作品だけに貴重な映像。調べたら、伊丹十三、宮本信子夫妻の媒酌が山口瞳と確認してちょっとびっくり。

あとは悪役の鑑のような佐藤慶、場末のバーのマダム役がまさに地でいけてしまうちあきなおみ、「蒲田行進曲」でブレイクする前の平田満、すっとぼけながらまだ頑張っている大滝秀治、昭和30年代の飲んだくれ親父役が水戸黄門をやって貫禄がついた東野英治郎、うだつの上がらない男をやらせると天下一品の小松政夫。良い人そろえたなあ!!!本当感心する。

山口瞳のエッセイはよく読んだ。粋人で良いタッチの文章だった。今でも書棚にずいぶんとある。競馬にもグルメにもまさに人生の達人のようだった。映画の中で居酒屋の客で出てくるのはほんのご愛嬌。さぞかし名優に囲まれて楽しかったことであろう。
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津軽じょんがら節  江波杏子

2009-06-19 22:32:16 | 映画(日本 昭和49~63年)
73年の作品。津軽の海沿いの故郷に帰ってきた女とその情夫の物語。荒波が響きわたる漁村の荒廃した暮らしの中で、大映で壺ふり賭博師で鳴らした江波杏子の着物姿が美しい。

新宿の飲み屋に働く江波杏子は津軽の田舎に情夫をつれて帰ってきた。情夫がヤクザ同士のいざこざで組の人間を殺してしまったからだ。逃げてきた彼らには、住むところもない。幼馴染が海岸沿いの小屋を修復してそこに二人で住むことになる。追われる立場の情夫は働きようがなく、江波が飲み屋で働くことになった。何もせずぶらぶらしている情夫は盲目の若い娘と知り合う。盲目の娘はおにいちゃんと言って近づいていくが。。。。

北国の波の荒い海というと、高倉健の映画を思い出す。降旗監督はこういう画像が得意だ。世捨て人が堕落した世界で暮らすすさんだ気分の映画だが、最後の場面で若干の光をともす。しかし、自分の犯した悪事は世間に忘れられず、自ら仕打ちを受ける。ワンパターンのストーリーだ。三味線と海の匂いが映画を引き立てるが私には稚拙な演出と映る場面が多かった。
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