映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

サード  森下愛子

2009-06-04 20:12:33 | 映画(日本 昭和49~63年)
78年の作品。誤って人を殺し、少年院に入ってしまった永島敏行の少年院での日常生活を映し出す。若い森下愛子が美しく色を添える。寺山修司の脚本も単純な場面と抽象過ぎる部分と極端に両面つくりすぎる。主人公を妙に走らせたりしてわかりづらくしている映画だ。

永島敏行は高校の野球部でサードを守っている。それなので「サード」と呼ばれている。仲間と女の子2人の3人でお金をためて何かをしようという話になる。女の子からいちばん手っ取り早いのは売春だと言われ、永島がポンビキになり、森下が一人2万で仕事をするコンビを組む。順調に金を稼いでいった。ところがあるときやくざ風の峰岸徹が客となり、二人で部屋に閉じこもるが3時間たっても終わらないので、訪ねていき、そこでトラブルになるという話。それが回顧の話であとはひたすら少年院の中を映す。

この時代って、まだ簡単なことをわざと難しく言うのが偉いとされた時代だと思う。そういう面倒な人が大勢いた。ちょうどディスコブームが始まったころである。もう少しすると人間の発想がもっと単純化されるのであるが、素直にいっていない部分が多い。誤った知性が映画を間違った方向に進ませている。森下愛子の若い裸体はきわめて美しい。でもこの映画ちょっと苦手
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夜叉  高倉健

2009-04-15 20:10:51 | 映画(日本 昭和49~63年)
高倉健は、ヤクザ映画を卒業した後も、元ヤクザの役が多い。足を洗ってもその世界から抜け切れない役は彼以外には考えられない。降旗監督とのコンビは絶妙、独特の雰囲気がいい。

高倉健は北陸若狭湾に面する漁村で妻いしだあゆみと暮らしている。彼は元は夜叉の修治といわれたヤクザである。今は足を洗って15年静かに漁師として暮らしている。
その村に田中裕子がやってきて、居酒屋蛍をはじめる。高倉の仲間田中邦衛をはじめ地元の漁師たちが通いつめている。そこに田中の情夫ビートたけしが住み始める。たけしは飲みにきた地元の漁師たちと麻雀をして、遊びにきた漁師たちに覚せい剤を横流しにして一儲けしている。田中はそれをやめさせようとして覚せい剤を捨ててしまう。怒ったたけしは包丁を振り回して大暴れ。止めようとした高倉健がたけしに背中を切りつけられたところ、背中には美しい刺青が入ってた。。。。。

漁村を取り巻く風景が美しい。荒くれる波、大漁の旗を掲げている漁船、激しく降る雪と雪景色の海岸潮のにおいがする素敵な画面である。そのバックにはジャジーな曲が流れる。演歌ではない。その響きが映像にぴったり合っている。しみじみと情感が高まる。特に高倉と田中が雪の中戯れる映像に。。




高倉健は当時54歳、一番良かった時代である。立ち回りもかっこいい。
田中裕子も一番美しかった時代ではなかろうか。美人ではないが、不思議な色気をぷんぷんさせる。居酒屋のママ役、こんな素敵なママがいるなら毎日通ってしまいたくなるようなオーラを感じさせる。当時の彼女に沢田研二が夢中になるのもわかる。
ビートたけしは本格的に俳優業や映画に足を突っ込んでいないころ。演技は鋭い。彼もチンピラ的なヤクザの役は良く似合う。

後半の脚本の展開がちょっと不自然で、無理やりストーリーを作っている印象がある。しかし、全体に流れる高倉、降旗コンビの雰囲気が良いのでそれを補っている。映像のコンテの選択がよく感心した。荒波の美しさをこれほどまでに表現しているのは他には「ライアンの娘」くらいで非常に素晴らしい。
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香川京子の「私の履歴書」

2009-03-11 07:26:56 | 映画(日本 昭和49~63年)
日本経済新聞連載の「私の履歴書」今月は香川京子さんである。
この連載、経済人や政治家が中心だが、芸能人やスポーツ選手の時には異様に面白いときがある。以前田中絹代や東山千栄子、杉村春子、森光子などの女優が連載されていたことがある。今回もおもしろい。

子供のころから香川京子さんは素敵な人だと思っていた。東宝作品で見ることが多かった気がして東宝専属かと思っていたが、有名な「五社協定」の前にフリーになっていたので、自由にいろんな映画会社の作品を選べた数少ない女優であることを知った。

今日は小津安二郎監督「東京物語」に出たときの話であった。
写真は小津監督が香川京子にメイクするシーンである。
原節子が当時大スターでみんなに追いかけられるのを避けるために、前の駅で降りてロケ地に向かった話。監督の頭の中にできている映像コンテに基づいて、指示が細かくされているという話などが書かれている。

先日の成瀬巳喜男監督の話もよかった。
成瀬監督はだらだら撮影することを嫌い、朝9時から夕方5時までの定時で仕事をしたそうだ。「やりすぎの演技を嫌う」というのは映画を見ているとなんとなくわかる気がする。私もキャサリンヘップバーンのような大げさ演技は嫌いである。よくできた脚本も「これはいらない。」といくつか削って、セリフの思いを絵として重視するという話は映画人としてのすばらしさを感じた。

映画は小説と違い、筋やセリフよりも、風景、音や声を見せるものだと私は思う。
香川さんの文章を見て巨匠が考えることがよくわかった。

まだ出ていない黒澤明監督や溝口健二監督に関するコメントが楽しみである。
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忍ぶ川  栗原小巻

2009-03-06 17:48:34 | 映画(日本 昭和49~63年)
栗原小巻のヌードは当時ものすごい話題だった。
清純派俳優の中でも彼女は格上の印象
ビックリするくらいすごい映画だとも思わないが、一見の価値はある。

加藤剛は津軽の旧家の息子。兄2人が行方不明になったり、姉も身投げしたり病気になったりと悲劇的な家族関係。大学を途中で飛び出し、代用教員となるが、もう一度大学に戻る。
栗原小巻は洲崎遊郭の射的場の娘、父親が病気になり栃木に引っ込む。仕送りのために「忍ぶ川」という割烹?で働く。その店で二人は知り合う。栗原は持ち前の美貌でお店のお客さんをはじめとしてたくさん声がかかる。向こう見ずの大学生加藤の誘いに惹かれるが、不幸な身内を考えて付き合うことに戸惑いを持っている。。。。

画面が白黒であることが雪景色をより美しく見せる。
特に大雪の中、加藤の故郷に到着する汽車から降りる加藤と栗原を加藤の母が迎えるシーンがある。かなり大粒の雪が降っている。いかにも雪国らしい情感を感じさせる美しい画面だ。

また二人が寄り添う部屋から、加藤栗原がふとんにくるみながら外を走る馬車を見るシーンがある。これもなかなかいい。かえって露骨にカラーでないのがいい場合もあるものだ。

新珠三千代主演「洲崎パラダイス」では、洲崎遊郭手前のいっぱい飲み屋が舞台であった。今回は栗原が遊郭の中の生まれということで、中を写す。
これはロケなのか?セットなのか?いずれにせよ趣を感じる。
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魚影の群れ  緒方拳

2009-02-25 13:26:00 | 映画(日本 昭和49~63年)
この映画がロードショーになったとき、十朱幸代がヌードになったことが大きな話題になっていた。それだけの映画と思ってしまい、長い間縁がなかった。
しかし、見てみるとすばらしい映画であった。

青森下北半島の漁村でマグロの一本釣りをやっている緒方拳は、口より手が早い荒っぽさが災いして妻に逃げられ、娘の夏目雅子と二人で生活する。夏目は飲食店を経営する佐藤浩市と恋仲にある。佐藤は漁師になって、娘さんと結婚したいと緒方を説得する。緒方は「お前には漁師は無理だ」と拒絶するが、熱意に負けて仕事を教え始める。二人でマグロ漁に出たとき、大マグロに出会い、佐藤は身体を張ってマグロを獲ろうとするが、身体は瀕死の重傷を負う。命はとりとめたが、人命救助よりマグロ獲りを優先した緒方の振る舞いを、娘の夏目は非難し縁を切る。
その後緒方は青森近海でマグロが獲れないので北海道に遠征する。マグロを引き上げ北海の港に停泊しているとき、別れた元妻十朱幸代を見かけ彼女に声をかけようとする。追いかけられた十朱は懸命に逃げるが。。。。

吉村昭の原作がしっかりしているのであろう。ストーリーは単純にはいかず、最後までいくつかの波をつくる。仕事に乗り切れない佐藤浩市の心理描写も見所だ。
何より緒方拳がすさまじい迫力を見せる。マグロ一本釣りというのは、暴れまわる大マグロを吊り上げるのであるから大変な仕事だ。下手をするとマグロの力に飲まれて海に沈められてしまう恐れすらある。命がけの演技である。彼もまだ40台半ばでパワーもあったのであろう。この時代いろいろな賞を受賞して、油の乗っているころだが、一番大変な役はこの映画の主人公ではなかろうか。

海上の撮影もさぞかし大変であったろう。地元の漁協の協力を得ているとは思うが、大マグロとの格闘の撮影はそうたやすいことではないと思う。スペンサートレイシーがヘミングウェイの「老人と海」の主役を演じた。彼自体の演技はよかったが、海上撮影の迫力はこの作品より落ちると思う。

夏目雅子も晩年で抜群の演技を見せるし、十朱幸代の出番は少ないが、体当たりで汚れ役を演じて美乳も見せる。長まわしのカットが多く、俳優さんたちはさぞかし大変だったと思う。下北半島の塩のにおいがぷんぷん伝わる見所たくさんでいい映画だった。

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男はつらいよ  葛飾立志篇

2009-02-01 07:40:37 | 映画(日本 昭和49~63年)
先週「寅さんに学ぶ日本人の生き方」という大学の教授が書いた本を読んだ。
アインシュタイン、夏目漱石、寅さんの3人が著者の尊敬する人とするだけあって、単なる寅さん論に収まらないのでよかった。48作もあるので、全体を俯瞰するような本があるとセレクトするのに助かる。

この本で彼が最高傑作とするのは第16作「葛飾立志篇」である。

いつものレギュラーメンバーに加えて、今回のゲストは樫山文江と小林桂樹、桜田順子である。高校生の桜田が若い。当時「17の夏」なんてヒット曲あったなあ
樫山は大学の考古学の助手で御前様こと笠智衆の姪でだんごやに下宿することになる。才色兼備の樫山にいつものように寅さんはぞっこん。
自分もインテリぶろうとメガネを買ったり、樫山に歴史を学ぼうとする。
そんなとらやに小林桂樹が訪ねる。汚い格好をしているが、樫山の恩師で考古学の教授である。寅さんがからむが、熱い寅さんの言葉に小林は動かされて自分の師匠というようになるが。。。。。

いつものようにテキヤ口調は絶好調、樫山が歴史を教えているときも、話をすりかえてテキヤ言葉で樫山を笑わす。あとタコ社長との小競り合いのやり取りも冴える。
腹を抱えて笑ってしまうシーンがたくさんある。

それに加えての寅さんが小林桂樹向かって話す名せりふ
「ああ、いい女だなあと思う。その次は話がしたいなあと思う。次にはもうちょっと長くそばにいたいと思う。そのうち、こう、何か気持ちがやわらかくなってさあ、ああ、この人を幸せにあげたいと思う。もう、この人のためなら命なんていらない。死んじゃったっていいとそう思う。それが、愛ってもんじゃない。」
この教授の名前は田所教授、これって渥美清の本名の姓だ。
山田洋次も意識していたのかな?

なるほどいい作品だ。
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麻雀放浪記  阿佐田哲也

2008-12-29 21:43:27 | 映画(日本 昭和49~63年)
阿佐田哲也の風貌は週刊誌のマージャン観戦記でよく見ていたが、何せ百戦錬磨を地でいっている恐ろしい顔だと子供のころ思っていた。
当然ものすごく強い人かと

マージャンを覚えたのが高校に入ってから、本当によくやった。大学でも然りである。11PMの大橋巨泉のマージャン教室は楽しみで仕方なかった。実際本当に面白かった。巨泉、小島武夫、畑正憲、阿佐田哲也の対戦は実にすばらしい戦いであった。2000点の上がりを見逃して、手を崩して、手を大きくしてハネ満をあがった阿佐田哲也のうち回しはあれから30年以上たつけれど忘れられない。学校でも大騒ぎになった記憶がある。

ただ、麻雀放浪記はなんか暗くて高校生の自分にはなじめなかった。戦中派には共感できる人も多かったと思うが、自分にとっては暗すぎた。(ちなみに巨人の星の前半も苦手である。)役満を上がりまくるのも不自然な気がした。でも年齢を経るにしたがって小説がなじめるようになって来た。

18歳から19歳になるにもかかわらず、定職につかずぶらぶらしている坊や哲を囲んで、料理の鉄人鹿賀演じる「どさ健」、アクション映画脇役の重鎮高品演じる「出目徳」を中心に役者が勢ぞろいする。家の権利書や大竹しのぶの吉原への質があっちにいき、こっちにいきする。時代をしのばせる何かがあるがそこに流れるのは本当に暗い世界である。ヒロポンを打ちながら、連夜の勝負をするのは、映画でいうとポールニューマンの「ハスラー」でのファッツとの死闘を思い起こさせる。

阿佐田哲也は麻雀を美しい世界にわざと昇華していた感じである。
であるから飛び切り強かったかというとそうでないきもする。色川が阿佐田を演じるのに固執するところがあったからだ。でも美しい麻雀譜を残してくれた。
今でも阿佐田を敬愛する有名人が多い。五味康祐はあれほどまでに好かれていたであろうか?
人徳であろう。

出目徳は九連宝燈をあがって死ぬ。張作霖が日本軍の謀略で死んだとき、九連宝燈をあがっていたといわれる。私も高校のとき自宅で同級生との対局であがったことがある。でもとりあえず、その後30年生きている。

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真行寺君枝

2008-07-06 22:41:14 | 映画(日本 昭和49~63年)
家でビーチボーイズを聴いていた。
「キープインザサマーアライヴ」なんで全盛をすぎたころだけど、ディスクユニオンで300円で売っていたのでCD買った後たまに聴いている。
そんな時ふと「カリフォルニアガールズ」村上春樹の「風の歌を聴け」の中に出てくるのを思い出した。

DVDレンタルで「風の歌を聴け」を借りる気になった。
むかし本を読んだ時は、ビールが飲みたくなる小説だなあという印象が強かった。

81年の作品、大森一樹監督で主演が小林薫、ヒロインとして真行寺君枝が出てくる。若き日の室井滋が主演の恋人役で脱いでいるのも見ものの一つだ。
それにしても撮影当時はまだ21歳だった真行寺君枝が美しい。「ゆれるまなざし」なんて資生堂のCM当時は17歳だった彼女も、美しさのピークを迎えている。
映画自体は正直あの小説とちょっとイメージが違うと印象。「ジェイズバー」のイメージもちょっと違う。でも美人女優の一番のピークの顔を見るというのは本当に素敵なことである。切れ長の美しい瞳、年の割にはしっとりとした話し方、全盛の彼女をみるだけでどきどきする。たまたま彼女の出た高校が自分の実家の近くで、彼女が資生堂のCMでスターダムになった時は仲間の間で大騒ぎになったのをふと思い出した。
しばらくたって出たヌードもそれなりには良いけど、本当は若いころに見せてほしかったな。
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