映画とライフデザイン

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運命の逆転  ジュレミー・アイアンズ

2011-05-07 05:23:56 | 映画(洋画 99年以前)
「運命の逆転」は実話に基づく90年のサスペンス映画である。「危険な情事」で世紀の悪女を怪演したグレンクローズが、貴族出身の貴婦人と正反対の役柄を演じる。彼女がクレジットトップだが、夫役ジュレミー・アイアンズがアカデミー賞主演男優賞をこの映画で受賞した。冷静沈着な男を演じた。犯罪者なのか無罪なのかきわどい男を演じた。実に巧妙だ。

富豪の令夫人サニーことグレンクローズが病院で植物人間のように寝ている場面から始まる。その彼女が回想するがごとく話が始まる。
1980年の大富豪のお城のような家が舞台だ。主人であるクラウス・フォン・ビューローことジュレミー・アイアンズが朝食時に妻が不在ということに気づき、サニタリールームを見た。グレンが倒れていた。グレンは再婚で二人には妻グレンの連れ子の2人と二人の子供の妹がいた。ジュレミーの振る舞いをみて、連れ子の二人が疑問を持つ。結局彼女は植物状態に陥ってしまった。夫は財産目当てで妻の殺害を企てたと訴えられた。そして証人の証言、証拠などから裁判では1審で懲役30年の有罪判決を受けた。
ここまで速い展開で進んでいく。


ハーバード・ロー・スクールの教授アラン・ダーショウィッツことロン・シルヴァーはある日、ニュー・ポートに住む大富豪のジュレミーから弁護の依頼を受ける。ユダヤ人の教授は最初は裁判の引き受けをためらった。この事件は上流階級のスキャンダルとして世間の注目を浴びていた。会ってみると上流ぶった元ドイツ貴族のジェレミーからユダヤ差別と受け取りかねない発言も出ていた。元検察の人間がからんだ一審の判決への疑問、別の人権関係の事件の裁判費用を調達するためにも依頼を引き受けることにする。同時に同僚とチームを組んで事件を洗いなおす。
調べていくうちにいろんな事実が見えてきた。夫の供述もおかしくはない。確かに夫には愛人もいたり、不利と思われる事実も数多くあった。しかし、少しづつ裁判に有利な状況も浮かび上がってきたが。。。。

なかなかおもしろい作品だ。日本で言うと三浦事件のようだ。夫に愛人がいたりして、いかにもクロという印象を最初に我々に持たせる。簡潔に一審までの話を述べた後で、教授と主人との会話の中でわずかながら妻がみずから薬中毒になってしまったのではとしだいに思わせる。つくり方が上手だなと思う。
しかし、実話に基づくせいか、「逆転」という割にはびっくりさせるようなストーリーではないかもしれない。詰めが甘いような印象を持った。それは仕方ない。


主人公ジュレミー・アイアンズはいかにも冷静沈着な印象を与えるキャラクターを演じた。アカデミー主演賞というと、普通と違ったキャラクターを演じている時に与えられていることが多いと思う。今回は動の印象はない。でもこの役ってそう簡単ではない。お見事というのに尽きる。それを引き出したグレンクローズも貫禄の演技だ。せわしない教授を登場人物に入れたのも、主人公の冷静沈着ぶりを逆に印象付ける。対照的な存在をうまく引き出すことで主人公のオスカーが勝ち取れた印象を受けた。
コメント
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