映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

海洋天堂 ジェットリー

2012-04-18 09:49:00 | 映画(アジア)
映画「海洋天堂」は中国のヒューマン映画
自閉症の息子とガンに侵され余命が短い父親との触れ合いを描く映画だ。父親役にアクション映画で名高いジェットリー、いつもと違う人情深い役を演じる。息子の先行きを心配して四方八方に走り回る父親の心情を思い、ジーンときた。


中国山東半島青島が舞台、父親(ジェットリー)は水族館に勤める。妻は早くして亡くなっていた。息子は自閉症で相手と目を合わせて話ができない。言葉も少ない。取り柄は水泳だ。水族館の水槽の中で魚やアザラシと一緒にすいすい泳いでしまう。2人で生活していた。
父親は肝臓がんで余命が短いということを医者に伝えられる。この先どうなってしまうのか心配になった父親は養護施設をしらみつぶしにまわる。どの施設も子供なら受け入れられるが、すでに青年になっている息子は受け取れないと断られる。
近所に住む女性や水族館の同僚も心配するがうまくいかない。そんな折、以前子供のころにお世話になった養護学校の元校長が救いの手を差し伸べてくれるが。。。。


青島は戦前ドイツや日本に占領されていた海沿いの街だ。主人公たちが住む建物はおそらくは戦前に居留していた人が建てていたと思われる洋館だ。街並みもその昔のコロニアル文化を感じさせる。
主人公が水族館に勤めているので、水槽が映像に浮かびあがる。息子が魚と一緒に優雅に泳ぐ映像はきれいだ。基調のカラーはブルーでイエローも効果的に使われる。一時代前の地味な中国映画ではありえない色彩感覚だ。美しい。撮影クリストファードイルはいつもながらうまい。ウォンカーウァイ監督の一連作品、自分がプロフィルの写真に使っている「花様年華」もそうだ。ジェットリー主演「HERO」でも抜群の色彩感覚を見せてくれた。

父親の心情はよくわかる。その先短い障害をもった息子がちゃんと生きていけるのであろうか。それを誰かに託そうと懸命に歩き回る。しかも、ここなら安心と託した施設でパニック症をおこしてすぐ父親が駆けつけたりする。なかなかうまくいかない。そんな息子に対して出来る限りの教育をする。バスの乗り方から、電話の取り方まで。。。これもすぐ上達しない。ときおりがんの激痛に沈む父親はけなげだ。


自閉症の映画ってこれまでもいくつかあった。でも親に焦点を合わせた映画って少なかったのかと思う。オスカー映画「レインマン」は付き添いの弟トムクルーズというよりあくまでサヴァン症候群のダスティンホフマンに焦点を合わせる。「モーツァルトとクジラ」では自閉症同士の恋に焦点をあわせる。この映画でも自閉症の息子は水族館に出入りした女の子に恋をする。でもこれはこの映画の肝ではない。あくまで障害の息子を持った命短い親の心情だろう。

この映画に出演している人たちがみんないい人に見える。表情がやさしい。とかく中国人の女性というと気の強そうな女性が多い。ぼったくり中国人パブばかりでなく、映画界でもコンリーは典型的だし、チャンツィイーだってそう見える場面が多い。この映画は全然ちがう。施設の人も近所の人もみんなやさしそうだ。中国人に対する見方が少しかわりそうだ。

人によって見方が違うかもしれないが、個人的にはいろんなことを考えさせられる作品だった。
コメント
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