映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「かぞくのくに」 井浦新&安藤サクラ

2013-04-04 19:57:22 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「かぞくのくに」は昨年2012年公開の作品
数ある日本映画の中でキネマ旬報日本映画部門で一位の評価を得た。
井浦新そして安藤サクラをはじめ俳優の技量が際立つ良い映画であった。


北朝鮮への帰国事業で祖国に戻った人が病気治療のため日本へ一時帰国するという話とは知っていた。しかし、北朝鮮に絡んだ話はこれまで日本を悪く言う映画が多かった。古くは吉永小百合主演「キューポラのある街」(これって北朝鮮の帰国事業を描いた映画なのに単なる小百合の青春映画と思っている人が多いのに笑う)最近では「パッチギ2」なんて良い例だ。生理的に受け付けなかった。若松孝二監督作品で縁が強くなってきた井浦新が主演ということで見てみたら、想像と違いよかった。傑作だと思う。

見ていてムカついた「パッチギ2」みたいに日本をけなすという部分はみじんもない。むしろ日本に住む在日の朝鮮系の人が横暴な北朝鮮政府当局に翻弄されている姿を描いている。北朝鮮本国が好き勝手やるのにもかかわらず、言うとおりにいかねばならない悲しい性が語られる。ついこの間も朝鮮学校の無償化をめぐって、デモをする姿がテレビに映っていた。非常に不愉快なシーンであった。しかし、この映画を見ると、本国からも良い待遇を受けていない朝鮮系在日のつらい立場に若干同情する。

1997年の東京が舞台だ。
1970年代に帰国事業により北朝鮮へと渡った兄は、日本との国交が樹立されていないため、ずっと別れ別れになっていた。そんな兄・ソンホ(井浦新)が病気治療のために、監視役(ヤン・イクチュン)を同行させての3ヶ月間だけの日本帰国が許された。25年ぶりに帰ってきた兄と生まれたときから自由に育ったリエ(安藤サクラ)、兄を送った両親との家族だんらんは、微妙な空気に包まれていた。兄のかつての級友たちは、奇跡的な再会を喜んでいた。その一方、検査結果はあまり芳しいものではなく、医者から3ヶ月という限られた期間では責任を持って治療することはできないと告げられる。なんとか手立てはないかと奔走するリエたち。そんな中、本国から兄に、明日帰還するよう電話がかかってくる……。

井浦新が演じるシーンの中で印象的なシーンが2つある。
1つは昔の仲間が経営する飲み屋で旧交を温める中で、白いブランコを弾き語りで歌う旧友に合わせて井浦がはもっていくシーン。じわっと涙が出てきた。設定で考えると、97年に41歳くらいの設定だから、自分より少し上だ。でもある意味同世代といえる。72年あたりは当然帰国事業も一段落したことと思っていたが、まだ悲劇に遭遇する人がいたと思うと悲しくなる。


もう1つは北朝鮮へもどった在日である主人公がやりたくない仕事をやらされていることへの強い葛藤を表現するシーンであった。兄が妹に依頼する。「ある特定の人にあった時、どういう話をしたか教えてくれないかと。。」妹はすぐさまスパイ的仕事とひらめく。それはできないと断る。横で聞いていた父親があとで兄を問い詰める。その時に兄は今までと違う感情を爆発させる。これは凄い迫力があった。
今回、兄が自分の家族について何も語らない。少しだけ彼の家族との写真が映像に出るがそれだけである。
ここでも余計なことはしゃべらない。ただ、つらい思いを叫ぶだけである。

イヤーつらいなあ。
他にも「クイズの女王」宮崎美子演じる母親が息子に同行する北朝鮮当局の人間に背広を買ってやるシーンや考えさせられるシーンがたくさんあった。
見ていて本当に在日朝鮮人に同情した。北朝鮮嫌いの全く違う主旨で生きている自分でさえ思うくらいなんだから、そう思わせる映画製作者は大したものだ。しんみりと響く音楽もよくジーンとした。
昨年の日本映画のトップにこの作品を推す気にはならないが、確かによくできている。
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小谷野敦「日本人のための世界史入門」

2013-04-04 19:56:47 | 
小谷野敦「日本人のための世界史入門」を読んだ。
いや一回見終わったときに再読した。そのあともう一回マーカーひきながら読んだ。基本は世界史の教科書の内容をベースにしながら、小谷野氏の思いと雑談を書いていく。なかなか面白いんじゃないと思う。

この男面白い。
このブログでいうのは初めてだけど、ムチャクチャ勉強している割に適度にしか評価されない。なんかうさんく評価されるんだろうか?でもいい男だなあ。一度飲んでみたい。

彼は自分より少し年下
いわゆる学園紛争でクズになった年齢ではない。東大出身だけど当時メジャーな高校の出身ではない。(今は逆にメジャーになったけど)そういえば彼がでた高校は自分も滑り止めで受けている。その中でも彼はいじめられている。
今でもamazonの批評をしていじめられている。
彼は色々な著作や映画に対して割と辛口のアマゾンレビューを書く。それを見て「参考にならない」と一般人にいじめられている。。
ここまで自分から辛口で評したら復讐しようとする奴いるだろうなあ。
彼の意見と違うことも多いが、映画レビューは面白い

でも彼の書いた「母子寮前」という小説を芥川賞候補になった時買って読んだ。
自分が母親をガンで亡くした時の構図によく似てますます好きになった。
他の評論も読んでいて楽しい。変な奴だと思うけど参考になる。

彼の考えのベースは自分と一緒である。
「私はあさま山荘事件について全く理解できないし、理解しようとも思わない。あるいは宗教でなくても、マルクス主義についても異様な情熱を燃やす人たちを理解できないし、理解しようとも思わない。。。。」

変な奴って多かったよね。今でも多いのかも。
昭和20年代生まれには多い人間のクズ。昔社会主義思想にかぶっていた奴。でもこういう人間のクズ、アベノミクスがうまくっているから今沈黙しているかもしれない。

「多くのリベラル知識人が50年にわたって自民党政権を批判してきたのに、選挙で自民党は第一党であり続けたし、知識人がどれほど石原慎太郎を非難しようとも選挙をすれば勝つ」
その通りじゃない。

彼はこういう。
「かつての英雄の子孫を国民が支持する現象をボナパルティズムという。現在、ビルマの軍事独裁政権に抵抗しているアウンサンスーチーも。。。アウンサンスーチー将軍の娘なのでボナパルティズムなのだ。」

なるほど
彼女を描いたリュックベッソン監督の映画見たのでその事実知っていたけど、そう言われるとボナパルティズムなんて言葉あったのね。知らなかった。
日本でいうと、時代ごとにあるよね。この間落選した田中真紀子さんもそうだし、いつまでもつかわからないけど小泉元首相の息子さんも同じだよね。

他にも
宋の蘇さんが流刑なのに妾を連れて地方で豪邸に住む姿の話は面白いし、欧州の王室が何で他の王室から王を連れてくるかという滑稽さ、イスラムの教書コーラン(クアルーン)が「旧約聖書」の内容を焼き直しをしている話など面白かったあ~
まだまだたくさん。。。
「チャールズ1世はピューリタン革命で斬首された人だし、王政復古の後もチャールズ2世だったとはいえ、あまり縁起のいい名前とは言えないけどなんでつけたんだろう。。。」
この言い方もその通りだなあ

この本amazonの批評ではクソミソで、学生には勧められないという人いるけど違うと思う。
むしろ高校2年生くらいが普通に読むと教養になるんじゃないかしら。世界史は流れという論者にもピッタリ。世界史教科書らしい流れを基本に簡潔に逸話をまじえて楽しくよめる。現代史が弱めだけど、ちくっと戦後インチキ知識人を愚弄する。

著者はいう。
「戦後日本人の知識人の多くは、社会主義や平和主義に幻想を抱きすぎていた。中国は1966年から毛沢東が主導して、あの悪名高い文化大革命を行った。多くの文学者はこれを批判したが、これを称賛するものもあり、新島淳良などはのち過ちを認めたが、未だ認めないものもいる。」


「日米を問わず、戦後の知識人のソ連、中共への心酔は恐ろしいほどで、米国やNATOが核兵器を持つのは許されないが、ソ連が中共が持つのはいいという議論が普通になされていた。」
これって今も狂っている反原発で名高い某左翼系新聞社でしょうね。
彼の批評を悪く言う奴はいわゆる学園紛争とかにうつつをぬかした奴か日教組(今もいるかな?)の教師だと思う。いずれも人間のクズだ。

アヘン戦争って誰がどう見てもひどいよね。
著者はいう。
「中共政府は日本に対して強く出るが、一番ひどい加害をおこなった英国は、第二次大戦の戦勝国か、それとも冊封国ではないからか、何も言わない。」
本当そうだ。

論敵ディズレーリ首相とともに19世紀後半ヴィクトリア女王時代の英国をささえたグラッドストーン首相はその若き日アヘン戦争出費が議会で271対262で可決されたときこういったという。
「これほど不正な、恥さらしな戦争はかって聞いたことがない。大英帝国の国旗ユニオン=ジャックは、かっては正義の味方、圧制の敵であり、民族の権利、公正な商業のために戦ってきたのに、いまやあの醜悪なアヘン貿易を保護するために掲げられることになった。国旗の名誉はけがされた。」
その通りだ。
それを機に諸外国は図にのった。日本も人のことは言えない。
でも他の国の方がずいぶんだと思うけど。

これから娘の大学受験の世界史の点数上げようと思うと、この本だけではさすがに無理だと思う。
ちょっとやり方考えてみよう。

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