映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「愛人 ラマン」

2013-06-14 05:27:20 | 映画(フランス映画 )
映画「愛人 ラマン」は1992年の英仏合作映画だ。
フランス植民地だったベトナムサイゴンの寄宿女学校に通う一人の女学生が、中国人の男との愛欲に狂う姿を描く映画だ。コロニアル文化の建物が美しいサイゴンの街をきれいに映し出す。
初々しい裸体を大胆にさらけ出すジェーン・マーチは敢闘賞ものだ。


1920年代の仏領インドシナ(べトナム)が舞台だ。
主人公(ジェーン・マーチ)はサイゴンにある全寮制の女学校に通っていた。帰省した田舎町サデックの実家をまず映しだす。母親(フレデリック・マイニンガー)はそこで小学校を経営している。長兄(アルノー・ジョヴァニネッテイ)は暴力的で下の兄(メルヴィル・プポー)をいじめ抜いているDV男だ。しかも、アヘンに溺れており、そのため金が必要でこっそり親の金を盗むのを常習とする。しかし、母親はそんな長兄を溺愛していた。少女の父親は植民地に移ったあと亡くなっており、彼女はこうした実家の状況に嫌気がさしていたところだった。

自宅から寄宿舎のあるサイゴンに帰る途中、サイゴン川を渡る船の上で一人の中国人の男性(レオン・カーウェイ)が少女に声をかけた。男は32歳でパリ留学帰りの中国人資本家の息子だという。少女は何となく興味をひかれ、男の黒塗り高級車に乗りこみ、寄宿舎まで送ってもらった。
その翌日から男は毎日お抱え自動車で少女の学校に現れた。ある日、少女は誘われるままに、中華街の猥雑な通りに面した薄暗い部屋に連れていかれる。その部屋で、むしろ少女が誘うように男を求め、処女である少女を抱いた。こうして2人の愛人関係が始まった。


貧しい暮らしに家族の心はすっかりすさんでいて金もなかった。父親が亡くなった後母親が買った土地は詐欺にあい水びだしの土地であった。母親は寄宿舎から無断外泊する娘の件で連絡を受けていた。帰省した娘を見て、中国人男との付き合いで変わっていく姿に気づいた。当初は毛嫌いしたが、娘を通して金品を援助してくれる男を黙認するようになったが。。。。

サイゴン川のほとりを映し出す映像がきれいだ。サイゴン川の汚染度は有名だが、船やそれを取り巻くアジアンテイストの雰囲気がいい。同様に二次大戦以前の仏領インドシナを映し出す映画にはカトリーヌドヌーブ主演「インドシナ」がある。「インドシナ」は北部エリアを中心に映し出している。いずれもコロニアル文化の良い所、悪い所両方を映し出すが、現在だったらここまでは撮れなかっただろう。というのもベトナムが激しい経済発展を遂げたせいで、戦前の面影をずいぶんと失っているからだ。

19世紀後半それまでは中国清王朝の配下にあった宗主国が、清仏戦争でフランスの植民地となった。そのあとはフランス人がその権力をほしいままにした。
今回の2人はあくまでフランス領支配下での中国人青年とフランス人少女なのだ。それを少女の家族4人と中国人男性が食事する場面で露骨にかもし出す。この青年が裕福であっても中国人というだけでバカにする。今は貧しいフランス人家族が招待を受けた高級レストランで、中国人男性の言葉に耳を傾けずに、ガツガツ食べている姿が印象に残る。それでも、この家族は男から相当な援助を受けるのである。フランス人家族の自分勝手な態度は理解不能だ。


見どころは何と言ってもジェーン・マーチだ。当時彼女は19歳である。初々しい全裸でレオンカーウェイと絡みぱなしである。よく撮れたなあと感心するショットも多い。激しい交わりが印象的な「ラストコーション」でのトニーレオンとタン・ウェイの絡みが大人の世界という印象をもたせる一方で、ここでは少女が大人になる姿を純粋に描きだして、耽美的美しさを醸し出す。
男が父親の命令通り中国の富豪の娘と結婚式をあげることになるシーンも美しい。

フランスに帰国することになった少女が自伝的にこの小説を書いたわけだが、どういう心境でこれを発表したのかが気になる。
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