映画とライフデザイン

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映画「ブライアンウィルソン 約束の旅路」

2022-08-16 17:16:12 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ブライアンウィルソン 約束の旅路」を映画館で観てきました。


映画「ブライアンウィルソン 約束の旅路」ビーチボーイズのブライアンウィルソンの往年の映像と直近のインタビューを中心に描いたドキュメンタリー作品である。個人的な2015年の映画ベストは、ブライアンウィルソン自身をポールダノとジョンキューザックが演じたラブ&マーシーで大好きな作品だ。ビーチムードあふれるサウンドで人気を集めたビーチボーイズの人気絶頂の時に、バンドの中心人物だったブライアンウィルソンが薬物に溺れて凋落していく姿を描いた。

今回のドキュメンタリーでは、年老いてまだ現役のブライアンウィルソンが自ら出演すると同時に、昔のビーチボーイズの映像も観られるようだ。早速映画館に向かう。驚いたのが、男性おじさん率が95%を超えるということ。お盆休みだからなおさらかもしれないが、一部若い男性音楽ファンがいてもカップルはほとんどいない。公営ギャンブルやプロレス会場並みの男性率の高さは映画館では近来稀に見る。

ブライアンウィルソンは、ビーチボーイズのウィルソン兄弟の長兄で作曲兼プロデュースの実質リーダーであった。1960年代に南カリフォルニアのムードを基調にしたサウンドでヒット曲を連発させた。徐々に精神に異常をきたして行き、長らくメンバーから抜ける時期もあった。数々の苦難を経ていまだミュージシャンとして現役である。


気難しいブライアンと気心が通じている音楽雑誌ローリングストーン誌のジェイソンファインが、自ら運転するクルマにブライアンを乗せ、想い出の場所を走り回る。すでに亡くなったブライアンの2人の弟の想い出を語ったり、強引なステージパパだった父親との確執やブライアンの主治医が薬漬けにした話なども混ぜていく。ブライアンウィルソンのファンであるエルトンジョンとブルーススプリングスティーンの2人の大物のインタビューも織り交ぜる。超一流のプロがここまで絶賛すると、ブライアンウィルソンの凄みも増す。聞き手の引き出し方も絶妙だ。


この映画も居心地のいい映画だった。
夏にはビーチボーイズというわけではないが、めったに乗らない車を運転すると、アルバム「エンドレスサマー」で初期のヒット曲を聴いている。映画が始まりモノクロで映る初期のビーチボーイズの姿にウキウキしてしまう。精神と体調を崩したブライアンウィルソンの最悪期を映画ラブ&マーシーほど触れているわけではない。あの映画は本来暗い題材なのに不快な感情がなかった。この映画も同様である。しかもブライアンは回復している。カラッとしたビーチボーイズのハーモニーがバックに流れているおかげで気分良く過ごせる。



ペットサウンズを聴きかえす。
名作アルバムと言われる1966年の作品である。歴史的にも評価が高い。ラブ&マーシーでもブライアンウィルソンがサウンド作りに凝りに凝って精神に支障をきたす姿を映し出す。この映画を観たのがいいきっかけなので、久しぶりに聴いてみる

サイケデリックロックなんて言う人もいる。でも、むずかしい曲が並ぶわけではない。あくまでビーチボーイズ特有の美しいハーモニーが基調である。曲の長さも一曲あたり3分台までで収まり簡潔だ。このリズムを聴いて「ペットサウンズ」なくして山下達郎や大滝詠一の存在があり得たのかとも思ってしまう。

スタートは「Wouldn't It Be Nice」で始まる。数多いビーチボーイズの曲の中でも大好きな曲だ。三木孝浩監督陽だまりの少女でテーマ曲として使われたのも記憶に新しい。その後に続く曲のメロディラインが美しい。映画の中でブライアンが「Caroline, No」を歌っていたのが印象的だった。アルバムをじっくり聴くと、アレンジに凝っているのがわかる。多彩な楽器が使われている。4ヶ所のスタジオで収録したなんてセリフもあった。まだシンセサイザー利用となる前の時期で楽器の音質の組み合わせを模索してひたすら音にこだわる。


ビートルズの「ラバーソウル」に影響を受けたという。初めてシタールが使われて、「in my life」ではプロデューサーのジョージマーチンが弾くバロック調のハープシコードの音色が流れる。多彩な音をバックに使うというのもテーマの1つなのだ。

こうやって「ペットサウンズ」を聴くと、ビートルズの「サージェントペッパーズ」に影響を与えたという世評はまんざら大げさでないのがよくわかる。アナロジーを多くの曲で感じてしまう


観客は男ばかりといったが、映画館を出ようとすると、数人の女性に出くわした。もちろん白髪混じりで迫力がある。音楽雑誌の元記者風か?共〇党を応援するバアさんとちょっと違うワル風で、この映画マイク・ラブのこと触れていないよねなんて話していた。確かにそうだ。このあたりの確執はむずかしいねえ。
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