映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「隣人X 疑惑の彼女」上野樹里

2023-12-09 08:17:37 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「隣人X 疑惑の彼女」を映画館で観てきました。


映画「隣人X 疑惑の彼女」は小説現代長編新人賞を受賞したパリュスあや子の小説「隣人X」を、上野樹里と林遣都の共演で映画化した作品だ。もちろん原作は未読。映画ポスターの上野樹里には、30代半ばの凛々しさがあって素敵だ。気になる。

「スウィングガール」上野樹里に注目した後も三木聡のカルト映画「亀は意外と速く泳ぐ」「陽だまりの彼女」などが好きだ。いずれもファンタジーとまでいかないが、異類との交わりの要素をもつ。この映画にもその匂いを感じて映画館に向かう。

ある日、日本は故郷を追われた惑星難民X の受け入れを発表した。 Xは人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだ。 X は誰なのか?日本中でX を見つけ出そうと躍起 になっている 。

スクープがとれない鳴かず飛ばずの週刊誌記者の笹(林遣都)が「X特集」の取材班に起用される。各取材記者にX 疑惑リストが配られて身辺を調べるよう指示される。笹のリストには良子(上野樹里)と留学生のリン(ファン・ペイチャ)の2人のリストがあった。2人は同じコンビニで働いていた。笹は正体を隠して宝くじ売り場で掛け持ちで働く良子に近づく。

ちょっとしたきっかけで強引に良子を食事に誘った後も、笹は積極的にアプローチするとともに距離を縮め良子の素性に迫る。そうしているうちに恋心が徐々に芽生える。しかし、Xだと示す決定的証拠が見つからない。編集長(嶋田久作)からは記事になるネタを出せと結果を求められる。クビ一歩手前だ。笹は契約社員でカネがない。スクープを取るために,良子の実家に行って両親に会うことを決意する。


次にどうなるかが読みづらい。
世間の諸問題をいくつも含んだ物語の構造で、意外性もある映画であった。


SF的な展開を予想したが,さほどでもない。非現実の世界を描くことは少ない。原作者パリュスあや子フランス居住で、イスラム系難民の話題から原作の発想を得たという。それを監督脚本の熊澤尚人がかなりアレンジしているようだ。しかも、上野樹里と監督がディスカッションした結果、セリフも都度書きかえて脚本にしているという。なるほど良くできているのもうなずける。

主人公良子(上野樹里)は、田舎に両親がいる36歳独身の1人暮らしの設定だ。感情の起伏が少ない。女性っぽい女々しさはなく泣いたりわめいたりしない。セリフは淡々としている。同世代の女性の目線で作り上げた物語に不思議なリアル感を感じる。

映画は、週刊誌記者の目線で物語が展開していく。スクープがとれない契約社員のダメ週刊誌記者が,世間で話題になっている宇宙から来た移民者Xの謎を明かす取材班に運良く加わることができた。功を急いで良子に焦点を絞って、ないふり構わず近づいていく。

もともとはスクープをとることしか考えていなかったのに、ずっと近づいていると徐々に恋愛感情が生まれる。ただ、いかんせん金がない。祖母の施設費用も払えなくて追い出されそうだ。編集長からも責められる。窮地に立たされて、好きになった良子の両親からXだという証拠をとることで解決しようとする。記者としてXの正体を暴くのと、恋愛を成功させるのはトレードオフだ。複雑な立場に頭を悩ませながらも功を急ぐ林遣都が上手い。自分が同じ境遇だったらきっと発狂しているだろう。


ずっと前から好きな上野樹里が30代半ばになってグッといい女になった。
かわいさで売る初期の作品も良いが、少し大人になって撮った「陽だまりの彼女」上野樹里が抜群に良い。中学の時いじめられっ子だった女の子が突然美しくなって目の前に現れる。そんな設定も良かった。そんな1人のファンとして30代半ば過ぎた上野樹里をここで再度見直す。ストーリー展開だけでなく、セリフまで提案するというのは、若くして数多くの作品に出演して映画を知り尽くしたからだろう。渡辺淳一の「失楽園」をはじめとして、素敵な女性主人公に30代半ば過ぎの女性が多い。また、彼女の出演作が観たい。


この映画を観て、反省しなければならないことがあった。Xの疑念を持たれた台湾留学生リンが登場する。学業に専念したいが、生活のためにコンビニと居酒屋の両方でバイトする。言葉が不完全なので、顧客の要望に応えられない時がある。映画では繰り返し登場する。それもテーマになっている。原作者パリュスあや子日本育ちでフランスに移住するあたりで似たような苦労をしたかもしれない。

最近街中では、留学生のバイトを見ることが多い。確かに、たどたどしい言葉は聞こえずらいし、意思疎通を図りにくい。この映画では登場人物がかなり留学生をバカにしている場面がでてくる。ただ、自分を振り返ってそれに近いことをしていなかったのか?自分は絶対に違うとは言い切れないと思い、同じような場面に出くわしたら、こちらから目線を落として助けてあげねばならないのかと感じた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする