映画とライフデザイン

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映画「運命じゃない人」 内田けんじ

2014-12-31 09:43:32 | 映画(自分好みベスト100)
映画「運命じゃない人」は内田けんじ監督による2005年のドラマ
この映画は傑作だ。
今まで何で見なかったんだろう。出演者はいずれも映画でよく見かける顔だけど、メジャーな俳優は出ていない。ジャケットもパッとしない。なんか違うのかな?といった印象なのかもしれない。内田けんじ監督「鍵泥棒のメソッド」は面白かったけど、ストーリーを書くのが面倒くさくなってブログにアップしていない。「アフタースクール」は途中で見るのをやめた。だからなのか、今まで「運命じゃない人」見ていなかった。


映画を見始めた時も普通の恋愛モノなのか?としばらく映像を追っていた。ところが、途中でこの映画ものすごく手が込んでいることに気づく。
出演者それぞれにドラマがあり、たった一晩でそれがパズルを解くようにつながっていく。周辺にいる便利屋までがつながっていく。
時間軸をずらしながら、われわれ観客に迷彩をたくさん与える。本当はA→Bの話なのをそうはみせない。
見ていくごとに新事実がわかっていくその展開が実にお見事!!

婚約破棄となり、二人で住む家を出てきた桑田真紀(霧島れいか)。婚約指輪を質屋に持って行ったが3500円にしかならず、一人入ったレストランはカップル、家族、友達同士でにぎわっている。一人ぼっちで寂しさがこみ上げて今に泣きそうだ。そんな時前の席に座っている男から一緒に食事をしないかと誘われる。


サラリーマンの宮田 武(中村靖日)は、頼まれ事は断れず、すぐに人を信じてしまう典型的ないい人。結婚前提でマンションを購入した途端、行方知れずになってしまった前の彼女・あゆみが忘れられない。一人さみしくマンションに帰った時、親友から食事に来ないかと誘いがあった。行きたくないなあと思ったのに、別れたあゆみの話があると聞かされ、あわてて待ち合わせのレストランへ向かう。


そんな宮田の親友で私立探偵の神田(山中聡)は、宮田のことが歯がゆくて仕方がない。いつまでも前の彼女にことを引きずっていても仕方がないと、宮田のために女の子をナンパしてやる。それはレストランで一人で寂しそうに食事をしている真紀だった。


こうして3人が揃う。ちょっと席を外したはずの神田は気がつくとレストランから姿を消していない。宮田と真紀の2人になった。
泊まる家もない真紀に、宮田は自分の家に泊まるようすすめ、二人は宮田のマンションに帰っていく。そこに行方知れずだったあゆみ(板谷由夏)が突如現われる。忘れ物を取りに来たのだというのだ。元婚約者が来たことで、真紀はあわてて宮田の家をでていってしまう。宮田は追いかけるが、真紀はきっと元恋人がよりを戻しに来ただけじゃないかとその場を立ち去ろうとする。それでも、勇気を振り絞り真紀の電話番号を聞くことに成功する。

ここまでは普通のよくあるラブストーリーの一幕でどうってことない。
しかし、それだけではなかった。ここでいったん時間軸をずらす。
神田とあゆみが神田の探偵事務所で会っていたのだ。
あゆみが自分を外国へ逃がしてくれと頼む。神田は、親友がつきあっていた女に怪しいところがあるのでは?ときっちりあゆみを調べあげていた。ヤクザの浅井とつき合っているというばかりでなく、何人かの男を騙していたこともわかっていた。でもヤクザに絡むのが嫌で黙っていた。
浅井のところから持ち逃げしてきた金を目の前に出したあゆみの依頼を神田はどう受けるのか??。。。


この時間軸のずらし方も、後になってみると絶妙と感じる。
単純なずらし方とは違う。重層な物語になっていてきちっとした着地点があるのだ。
構造が固まって、いかに観客をだますのかをじっくり練って見せ方を決めている。

このあとも宮田、真紀の物語の裏で神田、あゆみそれぞれのドラマがあり、そこにあゆみの恋人浅井が絡んでくる。
時間軸のずらしを利用させながら、何度もだまされる。
見終わってこの練られた脚本の見事さに感嘆した。

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