映画とライフデザイン

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映画「俳優 亀岡拓次」 安田顕

2016-01-31 21:29:23 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「俳優 亀岡拓次」を初日いきなり映画館で見てきました。


心温まるいい映画で、安田顕演じる主演の亀岡拓次に気持ちが同化してしまう。笑いあり、恋あり、そしてトジありで2時間いい感じで過ごせた。意外に女性の多い館内では常に笑い声が響いていた。

安田顕が脇役俳優亀岡拓次を演じる。亀岡は映画の玄人筋ではひっぱりだこになる脇役だけど、殺されたり、殴られたり、川にぶち込まれたりハチャメチャなシーンに登場させられる。私生活では独身で一杯飲み屋やうらびれたスナックで飲んだくれることも多い。突然もてたり、売れっ子になるわけでもない。そんな彼に焦点をあたえる。ある意味、渥美清の「男はつらいよ」に通じるストーリーだけど、安田顕が抑制のきいた演技で、まったくきどらない。亀岡拓次が自己顕示欲とは無縁の謙虚な人柄であることを示す。しばらく出会ったことのない非常に味がある映画だ。雰囲気に酔いしれる。

亀岡拓次(安田顕)、37歳独身。職業は脇役メインの俳優。泥棒、チンピラ、ホームレス・・・演じた役は数知れず。監督やスタッフから愛され、現場に奇跡を呼ぶ?と言われる“最強の脇役”。呼ばれればどこへでも、なるべく仕事は断らない。プライベートは一人お酒を楽しむ地味な生活。


そんなある日の夜、ロケ先で訪れた長野県諏訪市でのこと。初めて入った居酒屋「ムロタ」のカウンター席でうとうと眠りこけていた亀岡。冷たい隙間風に起こされると、そこには美しい若女将の姿があった。
名は室田安曇【アヅミ】(麻生久美子)。地元の名物だという寒天をつまみながら、気の利いた彼女の会話にすっかり癒される亀岡。「淋しくなったら、また飲みに来てくださいよ」―優しく微笑む安曇に、亀岡は恋をしてしまう。


甘い時間も束の間、再びロケや撮影所など、都内から地方へと忙しく飛び回る日々。はじめて引き受けた舞台の仕事で、劇団・陽光座の稽古場にも通う。ある日、亀岡に大きなチャンスが訪れた。彼が心酔する世界的巨匠、アラン・スペッソ監督が極秘で来日しており、その新作オーディションを受けることになったのだ。
カメタクの一世一代の恋の行方は?そして初の海外進出なるのか・・・?
(映画の作品情報を引用)

1.亀岡拓次
映画のHPを見て、設定の年齢が37歳ということを知ったが、全くその年には見えない。どう見ても40代後半の設定のようだ。仕事があれば、やりたくなくても引き受ける。独身なので、気楽に地方ロケも行ってしまう。普段は殺され役や殴られ役など何でもこなす。それを演出する監督たちから絶大な信頼がある。ストレス発散なのか、夕方は居酒屋で過ごす。それも一人酒が多い。気がつくとカウンターやソファで寝てしまうこともある。このしがない感じがいい。


飲み屋のカウンターで見る夢と、自室で見る夢と演技している時演じている姿が交錯して、ふらふらしながら亀岡拓次は生きている。そんな亀岡を安田顕が実にうまく演じた。
飲み屋でのパフォーマンスが、1人で自分が飲む時のパフォーマンスに通じていて引き込まれてしまう。




殴られ役を演じているとき、改めて亀岡を撮った映像をみると、目の玉が飛び出している。それを見てみんなから亀岡さん凄いなあといわれている姿がある意味かっこいい。

2.麻生久美子
小さい一杯飲み屋にいる女将という設定である。
これまでテレビ「時間ですよ」で影のある藤竜也が場末の小料理屋のカウンターで一人飲んでいる時、対応する女将篠ひろ子やテレビ日曜劇場「課長さんの厄年」萩原健一が小洒落たバーでしみじみ飲む時、山口いずみママが着物をきて対応する姿、ちょっと違うかもしれないが「はぐれ刑事純情派」で刑事藤田まことが通うバーで対応する真野あずさママなど、男性の自分から見てうらやましいなあ!!と思うような飲み屋のお相手を映像で見てきた。



それらに匹敵するいやそれ以上にいい感じなのが麻生久美子の女将ぶりである。普段着のようなセーターを着て、手作りのたこぶつや寒天をだす。そのしぐさや亀岡に勧められて飲む酒の飲みっぷりのかわいさなどにむちゃくちゃそそられる。客は1人しかいないけど、こんな素敵なママが1人でいたら、それを目当てに次から次へと客は来るよ。いくつもそんな店あるなあ。でもここまで癒し系はいない。

3.映画監督役
山崎努も三田佳子も50年以上映画界の現役で活躍している。凄い話だ。ここでの両者がまたいい味出している。山崎努が演じるのは巨匠のベテラン監督、スタッフからも恐れられている。俳優たちが演じた後、なかなか監督が口火をきらないで、一瞬沈黙の世界だ。この間がおもしろい。OKをだした後、周囲がほっとする感じをうまく横浜聡子監督が描き出している。


あとは大森一樹監督が地のままでている。新井の監督もいい感じだ。フィリピンバーでホステス役のフィリピン人と亀岡拓次の会話を何度も撮り直す時の染谷将太の監督姿がまた滑稽だ。なかなかOKの出ない2人のかみ合わない会話は下手な漫才よりムチャクチャ笑える。


それにしても、日本映画で西川美和、呉美保、タナダユキなどの女流監督の活躍が目立つ。この映画ってちょっとうだつのあがらない飲んだくれの役者という設定だけに普通だったら男性がメガホンとりそうなものだが、横浜聡子監督は見事に演出したと思う。まさに女性監督恐るべしといった感じだ。


(参考作品)
ウルトラミラクルラブストーリー
横浜聡子監督作品

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