映画「ニ流小説家 シリアリスト」を劇場で見た。
デビッド・ゴードンによる「二流小説家」は「このミステリーがすごい! 2012年版 海外編1位」をはじめ、日本の主要ミステリーランキングで“史上初の3冠”を達成した。その映画化である。原作は未読、なんとなく面白そうな題名の響きにつられて見に行った。
赤羽一兵(上川隆也)は売れない小説家だ。フリーランスのゴーストライターとしてジャンルによってペンネームを使い分けている。男性なのに母親(賀来千賀子)の旧姓と若い時の写真を使って作品を発表することもあった。泣かず飛ばずで編集者からはエロ系の小説を書くように依頼されていた。
ある日、彼のもとに12年前に連続殺人事件をおこした死刑囚の呉井大悟(武田真治)から「告白本を書いて欲しい」という執筆依頼が舞い込む。自称写真家の呉井は、モデルとして集めた女性たちを殺し、首を切断して写真を撮った「シリアル・フォト・キラー」と呼ばれる男だ。
本当に呉井からの依頼なのか疑問に思い、彼の弁護士(高橋恵子)に確認した。間違いないようだ。弁護士は彼の無実を訴えており、死刑執行までは出版しない条件で面会を許される。この話を知った被害者遺族会は出版しないように赤羽に迫る。赤羽は告白本を書けば世間の話題になって周りを見返すことができる。そんな欲望に駆られていた。
実際に会ってみると、呉井の強烈な個性に驚く。
狂喜に迫る語り口に赤羽もやり込められた。彼にファンレターを送ってくる3人の女と彼とのポルノ小説を書いてくれたら、まだ誰にも話したことのない事件の真相を話してもいいと言う。指定された女性に順に会いインタビューした。最初は30歳の独身OL、次はひきこもりの10代の女の子だった。いずれも呉井に熱烈なラブレターを送っていた。そして赤羽はポルノ小説を書き上げていく。3人目のAV女優の家では相手にいきなり脱がれてあわてて飛び出したが、冷静になりもう一度話を聞こうと戻った赤羽の目に飛び込んできたのは、惨殺された無惨な遺体だった。
死体の状態は12年前に呉井が犯した事件と同じ首なし死体だった。続いて他の2人も同じように殺されるのだ。刑務所にいる呉井に今回の事件の犯行は不可能である。12年前の事件も呉井以外の何者かの犯行なのか。。。
映像のトーンをあえて薄暗くしている。白黒映画は撮影の仕方で濃淡が出てくる。ここではそうもなっていない。薄暗いせいか赤がくっきり浮かび上がる。死体が遺棄されている場所には赤い花びらが散らばっている。そういう薄暗い映像に、川井憲次の音楽がよくあう。不安を掻き立てるのだ。
ストーリーは飽きさせない。映画「リアル」のように途中眠くならない。しかも、武田真治のパフォーマンスが強烈である。うす暗いせいか、最初は武田真治の顔が嵐の松本君に似て見えた。強烈なパフォーマンスを見せつけた時、殺人事件が3つ連続で起きる。12年前事件を起こした同じ手口だし、その有力犯人は塀の中にいる。おっと別犯人がいるなと思わせる。誰かな?
ネタばれ気味だが、この映画を見ている途中で、ある人間が絶対に何かからんでいるな?と思わせてくる。身寄りのない容疑者呉井の幼いころを映すシーンが出てくる。売春婦の母親について全国を回っているシーンだ。その時彼女の母親の顔を見せない。赤いスカーフを印象的にする。この母親は息子と別れ別れになった後死んだという。横溝正史映画が真犯人を最初正面から映さないのと一緒だ。
ある大女優が演じる役柄に説明が加わる。それ自体から臭いにおいがプンプンする。途中別の人間が怪しいと思わせる部分をあえていくつかつくるが、どう考えてもある大女優があやしい。まんざらそれは外れていなかった。展開が読みやすく脚本と映像ができている印象だ。
一つの結論を導き出した後、事件はそれだけでなくもう一度山をつくるというのは、よくできたミステリー小説の手口だ。この映画もその定石に基づく。でももう一つの山がさほど衝撃的な映像とできていなかったので満点をあげられない。いずれにせよ楽しめた。
ここでの武田真治の演技はよかった。似たような変質者を藤原君が「藁の楯」で演じたが、どう比較しても武田真治に軍配が上がる。上川隆也も武田につられたという印象だ。彼も悪くない。
デビッド・ゴードンによる「二流小説家」は「このミステリーがすごい! 2012年版 海外編1位」をはじめ、日本の主要ミステリーランキングで“史上初の3冠”を達成した。その映画化である。原作は未読、なんとなく面白そうな題名の響きにつられて見に行った。
赤羽一兵(上川隆也)は売れない小説家だ。フリーランスのゴーストライターとしてジャンルによってペンネームを使い分けている。男性なのに母親(賀来千賀子)の旧姓と若い時の写真を使って作品を発表することもあった。泣かず飛ばずで編集者からはエロ系の小説を書くように依頼されていた。
ある日、彼のもとに12年前に連続殺人事件をおこした死刑囚の呉井大悟(武田真治)から「告白本を書いて欲しい」という執筆依頼が舞い込む。自称写真家の呉井は、モデルとして集めた女性たちを殺し、首を切断して写真を撮った「シリアル・フォト・キラー」と呼ばれる男だ。
本当に呉井からの依頼なのか疑問に思い、彼の弁護士(高橋恵子)に確認した。間違いないようだ。弁護士は彼の無実を訴えており、死刑執行までは出版しない条件で面会を許される。この話を知った被害者遺族会は出版しないように赤羽に迫る。赤羽は告白本を書けば世間の話題になって周りを見返すことができる。そんな欲望に駆られていた。
実際に会ってみると、呉井の強烈な個性に驚く。
狂喜に迫る語り口に赤羽もやり込められた。彼にファンレターを送ってくる3人の女と彼とのポルノ小説を書いてくれたら、まだ誰にも話したことのない事件の真相を話してもいいと言う。指定された女性に順に会いインタビューした。最初は30歳の独身OL、次はひきこもりの10代の女の子だった。いずれも呉井に熱烈なラブレターを送っていた。そして赤羽はポルノ小説を書き上げていく。3人目のAV女優の家では相手にいきなり脱がれてあわてて飛び出したが、冷静になりもう一度話を聞こうと戻った赤羽の目に飛び込んできたのは、惨殺された無惨な遺体だった。
死体の状態は12年前に呉井が犯した事件と同じ首なし死体だった。続いて他の2人も同じように殺されるのだ。刑務所にいる呉井に今回の事件の犯行は不可能である。12年前の事件も呉井以外の何者かの犯行なのか。。。
映像のトーンをあえて薄暗くしている。白黒映画は撮影の仕方で濃淡が出てくる。ここではそうもなっていない。薄暗いせいか赤がくっきり浮かび上がる。死体が遺棄されている場所には赤い花びらが散らばっている。そういう薄暗い映像に、川井憲次の音楽がよくあう。不安を掻き立てるのだ。
ストーリーは飽きさせない。映画「リアル」のように途中眠くならない。しかも、武田真治のパフォーマンスが強烈である。うす暗いせいか、最初は武田真治の顔が嵐の松本君に似て見えた。強烈なパフォーマンスを見せつけた時、殺人事件が3つ連続で起きる。12年前事件を起こした同じ手口だし、その有力犯人は塀の中にいる。おっと別犯人がいるなと思わせる。誰かな?
ネタばれ気味だが、この映画を見ている途中で、ある人間が絶対に何かからんでいるな?と思わせてくる。身寄りのない容疑者呉井の幼いころを映すシーンが出てくる。売春婦の母親について全国を回っているシーンだ。その時彼女の母親の顔を見せない。赤いスカーフを印象的にする。この母親は息子と別れ別れになった後死んだという。横溝正史映画が真犯人を最初正面から映さないのと一緒だ。
ある大女優が演じる役柄に説明が加わる。それ自体から臭いにおいがプンプンする。途中別の人間が怪しいと思わせる部分をあえていくつかつくるが、どう考えてもある大女優があやしい。まんざらそれは外れていなかった。展開が読みやすく脚本と映像ができている印象だ。
一つの結論を導き出した後、事件はそれだけでなくもう一度山をつくるというのは、よくできたミステリー小説の手口だ。この映画もその定石に基づく。でももう一つの山がさほど衝撃的な映像とできていなかったので満点をあげられない。いずれにせよ楽しめた。
ここでの武田真治の演技はよかった。似たような変質者を藤原君が「藁の楯」で演じたが、どう比較しても武田真治に軍配が上がる。上川隆也も武田につられたという印象だ。彼も悪くない。