映画「ゴッドファーザー」は1972年度のオスカー作品賞
映画史上に残る傑作である。
中学生の時、公開されるや否や友人と銀座の「テアトル東京」へ行った。当時マスコミの話題はこの映画のことでもちきりであった。テレビを見ると、人気絶頂の尾崎紀世彦が「ゴッドファーザー愛のテーマ」を歌っていた。衝撃的な映像だったけど、この映画を理解するには自分はあまりに幼すぎた。
その後まだビデオがない時代にテレビの名画劇場でもう一度見た。テレビだと気が散って映画全体を把握していない。夏休みにもう一度第三作まで見てみようとdvdを手にとった。40年前初めてみた時の記憶がよみがえるシーンもあるが、ストーリーのディテイルは忘れていた。久々に見てこの映画の奥行きの深さに改めて感銘した。基調となるドンファミリーの物語に複数の線が張り巡らせる。重層構造だ。そして世紀の傑作だと改めて思い知らされた。
記憶にとどめるために細かくストーリーを確認する。有名なストーリーなのでネタばれ前提。
1945年ビトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の屋敷では、彼の娘コニー(タリア・シャイア)の結婚式が行なわれていた。一族、友人やファミリーの部下たち数百名が集まった。
ボスのビトー・コルレオーネは、書斎で陳情する人たちの訴えを聞いている。
彼は助けを求めてくれば親身になってどんな困難な問題でも解決してやった。
ファミリーが支援してきた落ち目の歌手ジョニー・フォンテーン(アル・マルティーノ)も当日結婚式で歌うために来ていた。彼がカムバックするために出演を願望する新作映画があった。しかし、ハリウッドで絶大な権力を持つプロデューサー、ウォルツ(ジョン・マーレイ)からその主役をもらえずにいた。ドンの指示が一家の養子でファミリーの顧問役のトム・ハーゲン(ロバート・デュヴァル)にくだった。トムは出演依頼のためハリウッドに飛び立った。ドンがバックとわかってウォルツの対応が変わったが、要望は拒絶された。ある朝、目を覚ましたウォルツはシーツが血染めになっているのに気づく。60万ドルで買い入れた自慢の競走馬の首が、寝ているベッドの上に転がっていたのだ。ウォルツは大声を出し卒倒する。
ある日、麻薬を商売にしているソロッツォ(アル・レッティエーリ)が仕事を持ちかけてきた。政界や警察に顔のきくドンのコネに期待したのだが、彼は断った。ドンの長男ソニー(ジェームズ・カーン)はその話にのっていたので、ソロッツォは、ドンさえ殺せば取引は成立すると思い、彼を狙った。ドンは街頭でソロッツォの部下に5発の銃弾を浴びせられた。ソロッツォの後にはタッタリア・ファミリーがあり、ニューヨークの五大ファミリーが動いている。
末の息子マイケル(アル・パシーノ)は戦争で軍の功労者となり帰国していた。彼は恋人ケイ(ダイアン・キートン)とのデート中に街の新聞スタンドで父が狙撃を受けたことを知った。すぐに一命をとりとめた父のいる病院に駈けつけた。そこには父のボディガードも警察も病院から返されていて誰もいない。異変を感じた。とっさにドンの病室を別室に移して2度目の襲撃からドンを救った。マイケルは警察とソロッツォがつるんでいることに気づいた。やがてソロッツォが一時的な停戦を申し入れてきた。だがソロッツォを殺さなければドンの命はあやうい。ファミリー内での話し合いでマイケルがその役目を買ってでた。ドンの入院後仕切っていたソニーは堅気のマイケルの申し出に驚いた。慎重に作戦を練って、手打ちとなる席であるイタリアンレストランにソロッツォと警部を呼び出した。そして任務は遂行された。
マイケルは父の故郷シチリア島へ身を隠した。そこで一人の娘と知り合い、マイケルは結婚する。
ところが、追手はどこまでも追いかけてくる。マイケルの妻が車を爆破されてしまうのだ。
一方ニューヨークではタッタリアとの闘いは熾烈をきわめていた。ソニーは持ち前の衝動的な性格が災いして敵の罠に落ち、殺された。ドンの傷もいえ、ニューヨークの五大ファミリーに自ら呼びかけ和解が成立した。ドンにとっては大きな譲歩だが、マイケルを呼び戻し、一家を建て直すためだった。アメリカに帰ったマイケルは、ドンからファミリーの切り盛りを任された。そして離れ離れになっていたケイと結婚することになる。
マイケルはボスの位置につき少しずつ勢力を拡大しつつあった。そんなある日の朝、孫と遊んでいたドンが急に倒れた。ドンは安らかに死を迎えた。マイケルの計画によってライバルのボスたちは次々に殺され、その勢力は一向に衰えなかった。
ゴッドファーザーというと長らく記憶に残っているシーンがいくつかあった。
1つはジェームスカーンが有料道路の料金所でお金を払おうとしたところを大人数の敵にハチの巣状態にむちゃくちゃに撃たれるシーン、映画を見終わって一番衝撃的だったシーンだ。日本映画やテレビのアクションものでも人が殺されるシーンはたくさん見ていたはずだが、ここまでやる??といった感じでビックリした。
もう1つはアル・パシーノが父の故郷シチリア島で美貌の娘をみつけ求婚して結婚した日の初夜シーンだ。思春期真っ盛りの自分にとって、美しいイタリア娘の色薄い乳輪が目にまぶしかった。見終わった後友達にこの話をするのは恥ずかしかったけど、ある時みんなで雑談している時に思いが爆発した。この映画を見た誰もが同じように思っていたのだ。「精気盛んな中学生」にはあの刺激は誰にも強すぎたのだ。
ここで見直して、最初の結婚式のシーンやハリウッドのプロデューサーの寝床に馬の首を置いておくシーン、孫と遊びながらドンの死んでいくシーンなど思い起こされるシーンは数多くある。
40年後の自分が見ていて一番刺激的だったのはマイケルがイタリアンレストランで敵を撃ち殺すシーンだ。このシーンの緊迫感はなんとも言えず凄い。車に乗る際も、トイレに行く際も身体に何か隠していないか2人に丹念にボディチェックを受ける。大丈夫だと警部に言われてトイレに行く。便器の裏側にピストルが隠されているのだ。相手を撃つ直前からバックで列車が走りぬける音が聞こえる。マイケルの目の動きは落ち着かない。線路の音がキーと流れる。その音がピークとなった時に拳銃をぬく。終わった後、不安を呼び起こすように何度も流れるメインテーマが高らかく鳴り響く。自分の身体中に電流が走る。
黒澤明「天国と地獄」の重要場面で流れる音楽を連想した。よく最初の結婚式のシーンが同じように結婚式シーンで始める黒澤作品「悪い奴ほどよく眠る」を参考にしていると言われる。類似点は少ない気がする。むしろこの管楽器の使い方に類似点を自分は見出す。
中学生の自分には気の荒いソニーの性格が一番印象的だった。社会人として30年以上もやってくると、ドンの凄味を感じる。陳情を受けた内容を即座に頭で整理して部下に指示する姿をみて何か感じるってことって中学生には無理だよなあ。マーロンブランドはやっぱり凄い。「波止場」の一不良少年がこんなに立派になるのだ。彼は辞退したけど、オスカー主演賞は当然である。同時に自分が大好きな名優ロバートデュバルの理性的な動きにものすごく魅かれる。インテリやくざには必ず法律顧問のような存在がいるのだ。
中学から高校の時に読んだ古典文学を再度読み直すとのと同じように傑作と言える映画を見直してみる重要性を改めて感じる。
映画史上に残る傑作である。
中学生の時、公開されるや否や友人と銀座の「テアトル東京」へ行った。当時マスコミの話題はこの映画のことでもちきりであった。テレビを見ると、人気絶頂の尾崎紀世彦が「ゴッドファーザー愛のテーマ」を歌っていた。衝撃的な映像だったけど、この映画を理解するには自分はあまりに幼すぎた。
その後まだビデオがない時代にテレビの名画劇場でもう一度見た。テレビだと気が散って映画全体を把握していない。夏休みにもう一度第三作まで見てみようとdvdを手にとった。40年前初めてみた時の記憶がよみがえるシーンもあるが、ストーリーのディテイルは忘れていた。久々に見てこの映画の奥行きの深さに改めて感銘した。基調となるドンファミリーの物語に複数の線が張り巡らせる。重層構造だ。そして世紀の傑作だと改めて思い知らされた。
記憶にとどめるために細かくストーリーを確認する。有名なストーリーなのでネタばれ前提。
1945年ビトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の屋敷では、彼の娘コニー(タリア・シャイア)の結婚式が行なわれていた。一族、友人やファミリーの部下たち数百名が集まった。
ボスのビトー・コルレオーネは、書斎で陳情する人たちの訴えを聞いている。
彼は助けを求めてくれば親身になってどんな困難な問題でも解決してやった。
ファミリーが支援してきた落ち目の歌手ジョニー・フォンテーン(アル・マルティーノ)も当日結婚式で歌うために来ていた。彼がカムバックするために出演を願望する新作映画があった。しかし、ハリウッドで絶大な権力を持つプロデューサー、ウォルツ(ジョン・マーレイ)からその主役をもらえずにいた。ドンの指示が一家の養子でファミリーの顧問役のトム・ハーゲン(ロバート・デュヴァル)にくだった。トムは出演依頼のためハリウッドに飛び立った。ドンがバックとわかってウォルツの対応が変わったが、要望は拒絶された。ある朝、目を覚ましたウォルツはシーツが血染めになっているのに気づく。60万ドルで買い入れた自慢の競走馬の首が、寝ているベッドの上に転がっていたのだ。ウォルツは大声を出し卒倒する。
ある日、麻薬を商売にしているソロッツォ(アル・レッティエーリ)が仕事を持ちかけてきた。政界や警察に顔のきくドンのコネに期待したのだが、彼は断った。ドンの長男ソニー(ジェームズ・カーン)はその話にのっていたので、ソロッツォは、ドンさえ殺せば取引は成立すると思い、彼を狙った。ドンは街頭でソロッツォの部下に5発の銃弾を浴びせられた。ソロッツォの後にはタッタリア・ファミリーがあり、ニューヨークの五大ファミリーが動いている。
末の息子マイケル(アル・パシーノ)は戦争で軍の功労者となり帰国していた。彼は恋人ケイ(ダイアン・キートン)とのデート中に街の新聞スタンドで父が狙撃を受けたことを知った。すぐに一命をとりとめた父のいる病院に駈けつけた。そこには父のボディガードも警察も病院から返されていて誰もいない。異変を感じた。とっさにドンの病室を別室に移して2度目の襲撃からドンを救った。マイケルは警察とソロッツォがつるんでいることに気づいた。やがてソロッツォが一時的な停戦を申し入れてきた。だがソロッツォを殺さなければドンの命はあやうい。ファミリー内での話し合いでマイケルがその役目を買ってでた。ドンの入院後仕切っていたソニーは堅気のマイケルの申し出に驚いた。慎重に作戦を練って、手打ちとなる席であるイタリアンレストランにソロッツォと警部を呼び出した。そして任務は遂行された。
マイケルは父の故郷シチリア島へ身を隠した。そこで一人の娘と知り合い、マイケルは結婚する。
ところが、追手はどこまでも追いかけてくる。マイケルの妻が車を爆破されてしまうのだ。
一方ニューヨークではタッタリアとの闘いは熾烈をきわめていた。ソニーは持ち前の衝動的な性格が災いして敵の罠に落ち、殺された。ドンの傷もいえ、ニューヨークの五大ファミリーに自ら呼びかけ和解が成立した。ドンにとっては大きな譲歩だが、マイケルを呼び戻し、一家を建て直すためだった。アメリカに帰ったマイケルは、ドンからファミリーの切り盛りを任された。そして離れ離れになっていたケイと結婚することになる。
マイケルはボスの位置につき少しずつ勢力を拡大しつつあった。そんなある日の朝、孫と遊んでいたドンが急に倒れた。ドンは安らかに死を迎えた。マイケルの計画によってライバルのボスたちは次々に殺され、その勢力は一向に衰えなかった。
ゴッドファーザーというと長らく記憶に残っているシーンがいくつかあった。
1つはジェームスカーンが有料道路の料金所でお金を払おうとしたところを大人数の敵にハチの巣状態にむちゃくちゃに撃たれるシーン、映画を見終わって一番衝撃的だったシーンだ。日本映画やテレビのアクションものでも人が殺されるシーンはたくさん見ていたはずだが、ここまでやる??といった感じでビックリした。
もう1つはアル・パシーノが父の故郷シチリア島で美貌の娘をみつけ求婚して結婚した日の初夜シーンだ。思春期真っ盛りの自分にとって、美しいイタリア娘の色薄い乳輪が目にまぶしかった。見終わった後友達にこの話をするのは恥ずかしかったけど、ある時みんなで雑談している時に思いが爆発した。この映画を見た誰もが同じように思っていたのだ。「精気盛んな中学生」にはあの刺激は誰にも強すぎたのだ。
ここで見直して、最初の結婚式のシーンやハリウッドのプロデューサーの寝床に馬の首を置いておくシーン、孫と遊びながらドンの死んでいくシーンなど思い起こされるシーンは数多くある。
40年後の自分が見ていて一番刺激的だったのはマイケルがイタリアンレストランで敵を撃ち殺すシーンだ。このシーンの緊迫感はなんとも言えず凄い。車に乗る際も、トイレに行く際も身体に何か隠していないか2人に丹念にボディチェックを受ける。大丈夫だと警部に言われてトイレに行く。便器の裏側にピストルが隠されているのだ。相手を撃つ直前からバックで列車が走りぬける音が聞こえる。マイケルの目の動きは落ち着かない。線路の音がキーと流れる。その音がピークとなった時に拳銃をぬく。終わった後、不安を呼び起こすように何度も流れるメインテーマが高らかく鳴り響く。自分の身体中に電流が走る。
黒澤明「天国と地獄」の重要場面で流れる音楽を連想した。よく最初の結婚式のシーンが同じように結婚式シーンで始める黒澤作品「悪い奴ほどよく眠る」を参考にしていると言われる。類似点は少ない気がする。むしろこの管楽器の使い方に類似点を自分は見出す。
中学生の自分には気の荒いソニーの性格が一番印象的だった。社会人として30年以上もやってくると、ドンの凄味を感じる。陳情を受けた内容を即座に頭で整理して部下に指示する姿をみて何か感じるってことって中学生には無理だよなあ。マーロンブランドはやっぱり凄い。「波止場」の一不良少年がこんなに立派になるのだ。彼は辞退したけど、オスカー主演賞は当然である。同時に自分が大好きな名優ロバートデュバルの理性的な動きにものすごく魅かれる。インテリやくざには必ず法律顧問のような存在がいるのだ。
中学から高校の時に読んだ古典文学を再度読み直すとのと同じように傑作と言える映画を見直してみる重要性を改めて感じる。