映画とライフデザイン

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映画「リンカーン」 ダニエル・デイ=ルイス

2013-05-03 14:27:15 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「リンカーン」を劇場で見てきました。

いきなり南北戦争の戦闘場面が出てくる。これは単なる銃撃戦でない。それぞれの兵士が肉体を使った格闘をしている。もはや19世紀半ばで中世のような戦いをしているのか、まずそれに目をひく。

子供のころにリンカーンの伝記を読んだことがある。誰しもが読んだことだろう。彼の名前を聞くと、奴隷解放、南北戦争、暗殺の3つのキーワードがすぐさま連想される。リンカーンの伝記はその3つが基調なのだ。今回ダニエルがオスカーを受賞した事実以外先入観なく映画をみた。

ちょっとイメージが違った。
苦学して大統領になったその人生が語られるわけでない。奴隷が強制労働されている姿もない。
1864年大統領選挙に再選され、奴隷解放のため憲法改正しようと下院可決に向けて懸命に奮闘する姿だけを映す。それはそれでよかったと思う。彼の人生すべてに焦点を合わそうとするとどうしても内容が薄くなる。アメリカ史で学んだ固有名詞ゲティスバーグ、ジェファソンデイヴィスなど会話に出てきて、北軍グラント将軍、南軍リー将軍も出演するが存在感はない。冒頭以外は戦闘場面は少ない。ただひたすら憲法改正に執念を燃やす彼の姿を描くだけである。
いろんな批評を見ると、性格描写ができていないという人がいるが違うと思う。ダニエルデイルイスの演技を通じて、リンカーンの苦悩が我々にあらわにされた。彼のアクションで我々が知らなかった性格がよくわかる。リンカーンになりきっている。さすがプロ中のプロと思わせる映画である。


1865年1月、エイブラハム・リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)が大統領に再選されて、2カ月が経っていた。南北戦争は4年目に入り、大勢は大統領が率いる北軍に傾いていた。リンカーンはすぐさま戦争を終結させるつもりはなかった。奴隷制度に永遠の別れを告げるため、合衆国憲法修正第十三条を下院議会で批准する前に戦争を止めるわけにいかなかった。上院では可決できた後下院での通過が必要だった。
リンカーンは国務長官ウィリアム・スワード(デヴィッド・ストラザーン)を介して、下院の議会工作を進めるべく指示する。同じ共和党の保守派プレストン・ブレア(ハル・ホルブルック)を使って党の票をまとめても、成立させるためには20票足りなかった。リンカーンはあらゆる策を弄するように命じ、スワードはW.N.ビルボ(ジェームズ・スペイダー)をはじめとするロビイストを駆使して、敵対する民主党議員の切り崩しにかかる。

奴隷解放急進派のタデウス・スティーブンス(トミー・リー・ジョーンズ)は状況をじっと見守っている。

リンカーンは長男のロバート(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)とはぎくしゃくしていた。リンカーンの妻のメアリー・トッド(サリー・フィールズ)の強硬な反対を押し切って、ロバートは正義感で北軍に入隊しようとする。リンカーンは息子を戦争で亡くしている。父としては長男を戦場に行かせたくなかったがやむを得なかった。
大統領周辺による多数派工作が進む中、成立は微妙な状況だった。リンカーンは1月25日、下院議会に合衆国憲法修正第十三条に提出するが。。。

「ギャングオブニューヨーク」や「ゼアウィルビーブラッド」でのダニエルデイルイスは荒れ狂う野獣のようである。その演技を連想すると若干違う。このころの大統領は常にさまざまなことに悩まされていたのだ。終戦のタイミング、法案の成立、妻や息子との葛藤など。波状攻撃で死ぬ直前まで落ち付かなかった。大統領としての権限で一部激しく主張する場面もあるが、あとは冷静沈着である。リンカーンの性格が温和だったというのがよくわかる。そして、ダニエルデイルイスは徹底的にそれを研究していたと思われる。

あと抜群にうまかったのは妻役のサリー・フィールズだ。南部出身と言われる妻はある意味出しゃばり女だ。周辺の議員に絡むときに示す強い意志ばかりだけでなく、母として夫アブラハムが息子を戦場に送らないように懸命に訴える姿を演じる部分を通じて妻の性格も浮き彫りにされた。

民主党の反対派の論点はもし奴隷制を止めたら、400万人に及ぶ黒人奴隷が解放されてしまい、白人の雇用も圧迫されるのではないかということだ。なるほど、その影響はあるけど人道的には違うよね。
自由貿易、保護貿易をめぐる南北の対立の話は知っていたけど、北軍側でこんな権力闘争があるとは知らなかった。反対派を口説くのは職を与えることだった。民主党議員は選挙で敗れ、職を失う可能性すらあった。そこを突いた共和党の面々は彼らにポストを用意した。なるほどうまいやりかただ。勉強になった。

議案が通るか微妙な状況で、多数工作で揺れ動いた議員が次々に法案に賛成する。反対演説をした議員までが賛成に回る場面は爽快な気分になった。

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