映画とライフデザイン

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映画「ヒッチコック/トリュフォー」

2016-12-13 04:52:36 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ヒッチコック/トリュフォー」を映画館で見てきました。


ヒッチコック好きの自分からすると見逃せない作品である。インタビュー自体を映像で撮っているわけではないが、膨大なインタビューのテープが残されている。それにあわせて、ヒッチコックが監督した名作の重要なシーンが次から次へと映しだされる。二人の対話は淡々としたものだが、むしろマーティン・スコセッシなどの監督が実にヒッチコック作品をよく見ていて、ディテイルの素晴らしさを語ってくれるところがいい。もう一度彼のたどった軌跡を追いかけてみたくなるような素敵な映画である。


1962年の春、フランソワ・トリュフォーアルフレッド・ヒッチコックにインタビューを申し込む長い手紙をしたためる。インタビュー本出版の暁には、“あなたが世界中で最も偉大な監督であると、誰もが認めることになるでしょう”と宣言入りで。

長年、アメリカでの評価にフラストレーションを募らせてきたヒッチコックは、この若きフランス人監督からの手紙に歓びを隠さなかった。その返事には、手紙を読んで涙が出たと告白し、 トリュフォーからの申し出を快諾する旨を書き送っている。

こうして1962年8月13日、ヒッチコック63歳の誕生日にインタビューは始まった。ユニバーサル・スタジオの会議室にまる1週間こもって、通訳者ヘレン・スコットの助けを借りて行われたインタビューは、録音テープざっと50時間分にも及んだ。そのインタビューから膨大な音源を書き起こし、一作ごとに豊富なスチール写真やコマ撮りのイメージでヒッチコックのテクニックと映画理論を解説してゆく「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」は、4年後の1966年、フランスとアメリカで同時に出版。このヒッチコックを真の映画作家、芸術家として世界に認識させることに成功した伝説の映画本は、各国で翻訳され、世界中の若い映画作家や映画ファンのバイブルとなった。

映画『ヒッチコック/トリュフォー』は、この「映画術」のための伝説的インタビューの貴重な音源と、写真家フィリップ・ハルスマンによるインタビュー風景、その後20年にわたるふたりの友情を感動的に映し出すドキュメタリーだ。さらにマーティン・スコセッシ、デビッド・フィンチャー、ウェス・アンダーソン、リチャード・リンクレイター、黒沢清といったそうそうたる現代の巨匠たちが登場し、いかに「映画術」の影響を受けてきたかを熱く語り、独自の視点でヒッチコック映画を解説してみせる。
(作品情報より引用)

この映画を一回見ただけで、ヒッチコック/トリュフォー二人の会話の内容や名監督たちのヒッチコックへの思いを語る部分を頭に刻み込むのは困難である。どちらかというと、DVDを手に入れて、メモをしながら映画への思いをじっくり書き込んでいくといった作品である。

1.サボタージュ
英国時代のピークともいえる1936年の作品である。何と言ってもシルヴィア・シドニー演じる妻が夫を刺してしまう衝撃シーンをこの映画でも取り上げる。肉切りナイフをめぐって夫、妻それぞれの目線の動きが緊迫感がある。カメラワークの巧みさは歴史上有数の素晴らしさだ。そのポイントを取り上げるのでこちらもドキドキしてしまう。


2.ティッピ・ヘドレン
小学生の時、テレビの名画劇場で「鳥」を初めてみて、なんとも言えない怖さを感じた。その「鳥」と次作「マーニー」でのヒロインはティッピ・ヘドレンである。モデル出身のヒッチコック好みの美貌をもつ。「鳥」では徹底的に攻撃されてエライ目にあうが、再度「マーニー」で起用する。「007」で人気急上昇しているショーンコネリーがお相手だ。でもこの「マーニー」ではグレースケリーに出演してもらおうとモナコにわざわざヒッチコックが向かっている。これが実現したらすごいことだったろう。でもいくらなんでも泥棒役は王妃はできないよね。


「マーニー」では赤いインクがこぼれるのを見て、赤外線のようなスポットがティッピヘドレンにチカチカあてられるのが印象的だ。精神の不安定さを示していて、ここでもそのシーンが取り上げられている。

3.「めまい」のキム・ノヴァクと「サイコ」のジャネット・リー
この映画の中では代表作である「めまい」と「サイコ」の二作に時間をかけて解説している。有名監督たちが実に細かくこの映画を見ていることに驚いた。特にマーティンスコセッシ監督のコメントには感銘を受ける。名作をつくるためには、名画のディテイルを徹底的に検証することが重要なんだと再認識させられた。

「めまい」の中で教会から転落して死んだはずだったキムノヴァク演じるヒロインとそっくりな女性がジェームス・スチュワート演じる主人公の前に現れる。髪型が違うが、そっくりだ。その女性がサニタリールームに入って戻ってくる時の姿に対して細かく解説される。これがまた美しいシーンだ。


「サイコ」のジャネットリー演じるヒロインが会社に入金された4万$をもちだし、車で彷徨うシーンも印象的である。目がぱっちりしたジャネットリーが淡々と運転するが、途中警官の検問などを受けたりして、ドキドキしながら運転していくシーンも印象的だ。これをマーチンスコセッシがとりあげている。あまりにも有名なシャワーシーンもゾクッとする刺激の強いシーンだが、この映画はそういう観客をハラハラさせるシーンに満ちあふれている。


その他にもモンゴメリークリフトとヒッチコックとに葛藤があった話。「汚名」ではケイリーグラントとイングリット・バーグマンが呆れるくらい何度も何度もキスをするのであるが、2人はそれを嫌がっていたという話など興味深い話が盛りだくさんであった。自分としては今、ヘンリーフォンダ主演「間違えられた男」を見てみたい欲求にさらされている。

定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー
フランソワ トリュフォー,アルフレッド ヒッチコック

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