映画「白い巨塔」は昭和41年(1966年)の大映映画
山崎豊子のベストセラー小説「白い巨塔」を山本薩夫監督により最初に映画化した作品である。もちろん原作は読了、大々的にリバイバルされたときに映画館で観ている。その後田宮二郎自らテレビでも主演している。直近のテレビ放映は縁がなかった。フィクションということであるが、明らかに大阪大学をモデルにしている浪速大学医学部第一外科の後任人事をめぐる裏のやりとりが描かれている。
Netflix映画の中に入ってきたので、思わず見てしまう。田宮二郎というこの映画を撮るために生まれてきたような適役を得て、キネマ旬報ベスト1位になった。いつみても新しい発見があるいい映画である。
浪速大学医学部第一外科の財前助教授(田宮二郎)は、週刊誌にも取りあげられるくらい手術の腕前に優れていた。翌年、第一外科の東教授(東野英治郞)が定年になるので、その後任が誰になるのかが学内で話題になっていた。財前助教授はその能力から当然後任候補と見られていた。しかし、東教授は財前助教授が目立った行動をとるのが気にくわなかった。そこで、医学部長の鵜飼医学部長(小沢栄太郎)に相談すると、他の大学から推薦してもらうのも手だろうと言われ、医学界の大御所である東教授の母校東都大学教授の船尾(滝沢修)に有力な人物を推薦してもらおうとした。
その動きを察した財前は財前産婦人科を経営し、大阪医師会副会長である義父財前又一(石山健二郎)に相談する。もともとは岡山で生まれ母子家庭で育った財前は養子縁組で財前家に入った。義父の財前からすると、娘婿が浪速大学医学部教授となるのが夢で、医師会の会長ともども金に糸目をつけず協力すると言ってくれた。早速に義父たちは医学部長の鵜飼を懐柔しようとする。
一方、東教授は東京に行き船尾教授から金沢大学医学部の菊川(船越英二)を紹介してもらう。東教授は学内で第二外科教授の今津(下条正巳)に声をかけ、財前の動きを良く思っていないメンバーに投票を依頼する。また、その両方の動きに属さない野坂教授(加藤武)が浪速大学出身で別の候補者を立てて対抗し、三つ巴の選挙戦となった。
財前助教授が第一内科の里見助教授(田村高広)から様子を見てほしいと言われた患者がいた。がんがあり、第一外科で面倒をみることになり結局手術することになった。その際に、里見から今一度検査をしてほしいという要望があったが、もうすでに第一外科の管轄なのでそれは不要だということになった。しかし、このことがその後問題になっていくのであるが。。。
1.田宮二郎
当時まだ31歳だったということに驚く。昇進する大学教授とすればいくら何でも40代であろう。10歳上の役柄を演じていたのだ。大映では勝新太郎とのコンビで「悪名」シリーズ、梶山季之の「黒」シリーズで主役を張っていた。でも、こんな適役はないだろう。
渡辺淳一原作のテレビシリーズ「白い影」の医師役が個人的にはいちばん印象に残る。その後でテレビシリーズの「白い巨塔」で演じるが、テレビの「白」シリーズの中でパイロットを演じた「白い滑走路」も人気あったなあ。クールで二枚目のそのスタイルで亡くなるまで演じていたのに、何で自殺したんだろうか?
2.山本薩夫監督と俳優の起用
山本薩夫監督といえば、まさにアカ監督という印象が強い。実際に戦後の東宝争議をリードしたのは山本薩夫だといわれている。レーニン顔からして典型的一時代前の共産党員である。思想的には自分とまったく合わない監督だが、山本薩夫作品は割と好きである。実は市川雷蔵の「忍びの者」が子どものころ大好きで五反田にあった大映に両親と通っていた。「にっぽん泥棒物語」での後半にかけての裁判場面の躍動感も印象に残るし、政財界の暗黒な部分を描くと抜群にうまかった。同じくレーニン顔のアカ役をやらせると抜群に上手いここでの原告側弁護士役鈴木瑞穂といいコンビである。
山崎豊子の小説といえばかなりの長編であり、それを2時間半程度にまとめるのは容易ではない。ここでの編集はうまく、要旨がわかるように手際よくカットされている。共産党員としてはまったく真逆な部分と言えるだろうが、裏工作で芸者を上げたり、夜のバーでのシーンもうまくまとめている。東野英治郞、小沢栄太郎など俳優座などの劇団員がそれ相応の上手い芝居をみせる。その中で思わずそのパフォーマンスに笑ってしまうのは財前の義父を演じた石山健二郎である。「天国と地獄」でのハゲ刑事役は印象に残る。この作品でのパフォーマンスはまさに明治の男って感じで裏芸も何でもありという一時代前の男を実に上手く演じる。
3.昭和41年の大阪
昭和41年の大阪がずいぶんと映し出される。梅田の駅前に立ち並ぶ建物だけでなくや実際の旧大阪大学病院まででてくる。里見助教授を演じる田村高広と藤村志保が二人並んで歩くのは中之島あたりであろうか?これはこれでいい。ある程度まではセットかもしれないが、財前の義父御用達の料亭でのシーンがいい感じだ。義父の情夫である女将がいて今まったく消えたわけではないだろうが、芸者を呼んでぱーっと宴会をするなんていうのが普通の時代ってそれはそれで素敵かもしれない。
山崎豊子のベストセラー小説「白い巨塔」を山本薩夫監督により最初に映画化した作品である。もちろん原作は読了、大々的にリバイバルされたときに映画館で観ている。その後田宮二郎自らテレビでも主演している。直近のテレビ放映は縁がなかった。フィクションということであるが、明らかに大阪大学をモデルにしている浪速大学医学部第一外科の後任人事をめぐる裏のやりとりが描かれている。
Netflix映画の中に入ってきたので、思わず見てしまう。田宮二郎というこの映画を撮るために生まれてきたような適役を得て、キネマ旬報ベスト1位になった。いつみても新しい発見があるいい映画である。
浪速大学医学部第一外科の財前助教授(田宮二郎)は、週刊誌にも取りあげられるくらい手術の腕前に優れていた。翌年、第一外科の東教授(東野英治郞)が定年になるので、その後任が誰になるのかが学内で話題になっていた。財前助教授はその能力から当然後任候補と見られていた。しかし、東教授は財前助教授が目立った行動をとるのが気にくわなかった。そこで、医学部長の鵜飼医学部長(小沢栄太郎)に相談すると、他の大学から推薦してもらうのも手だろうと言われ、医学界の大御所である東教授の母校東都大学教授の船尾(滝沢修)に有力な人物を推薦してもらおうとした。
その動きを察した財前は財前産婦人科を経営し、大阪医師会副会長である義父財前又一(石山健二郎)に相談する。もともとは岡山で生まれ母子家庭で育った財前は養子縁組で財前家に入った。義父の財前からすると、娘婿が浪速大学医学部教授となるのが夢で、医師会の会長ともども金に糸目をつけず協力すると言ってくれた。早速に義父たちは医学部長の鵜飼を懐柔しようとする。
一方、東教授は東京に行き船尾教授から金沢大学医学部の菊川(船越英二)を紹介してもらう。東教授は学内で第二外科教授の今津(下条正巳)に声をかけ、財前の動きを良く思っていないメンバーに投票を依頼する。また、その両方の動きに属さない野坂教授(加藤武)が浪速大学出身で別の候補者を立てて対抗し、三つ巴の選挙戦となった。
財前助教授が第一内科の里見助教授(田村高広)から様子を見てほしいと言われた患者がいた。がんがあり、第一外科で面倒をみることになり結局手術することになった。その際に、里見から今一度検査をしてほしいという要望があったが、もうすでに第一外科の管轄なのでそれは不要だということになった。しかし、このことがその後問題になっていくのであるが。。。
1.田宮二郎
当時まだ31歳だったということに驚く。昇進する大学教授とすればいくら何でも40代であろう。10歳上の役柄を演じていたのだ。大映では勝新太郎とのコンビで「悪名」シリーズ、梶山季之の「黒」シリーズで主役を張っていた。でも、こんな適役はないだろう。
渡辺淳一原作のテレビシリーズ「白い影」の医師役が個人的にはいちばん印象に残る。その後でテレビシリーズの「白い巨塔」で演じるが、テレビの「白」シリーズの中でパイロットを演じた「白い滑走路」も人気あったなあ。クールで二枚目のそのスタイルで亡くなるまで演じていたのに、何で自殺したんだろうか?
2.山本薩夫監督と俳優の起用
山本薩夫監督といえば、まさにアカ監督という印象が強い。実際に戦後の東宝争議をリードしたのは山本薩夫だといわれている。レーニン顔からして典型的一時代前の共産党員である。思想的には自分とまったく合わない監督だが、山本薩夫作品は割と好きである。実は市川雷蔵の「忍びの者」が子どものころ大好きで五反田にあった大映に両親と通っていた。「にっぽん泥棒物語」での後半にかけての裁判場面の躍動感も印象に残るし、政財界の暗黒な部分を描くと抜群にうまかった。同じくレーニン顔のアカ役をやらせると抜群に上手いここでの原告側弁護士役鈴木瑞穂といいコンビである。
山崎豊子の小説といえばかなりの長編であり、それを2時間半程度にまとめるのは容易ではない。ここでの編集はうまく、要旨がわかるように手際よくカットされている。共産党員としてはまったく真逆な部分と言えるだろうが、裏工作で芸者を上げたり、夜のバーでのシーンもうまくまとめている。東野英治郞、小沢栄太郎など俳優座などの劇団員がそれ相応の上手い芝居をみせる。その中で思わずそのパフォーマンスに笑ってしまうのは財前の義父を演じた石山健二郎である。「天国と地獄」でのハゲ刑事役は印象に残る。この作品でのパフォーマンスはまさに明治の男って感じで裏芸も何でもありという一時代前の男を実に上手く演じる。
3.昭和41年の大阪
昭和41年の大阪がずいぶんと映し出される。梅田の駅前に立ち並ぶ建物だけでなくや実際の旧大阪大学病院まででてくる。里見助教授を演じる田村高広と藤村志保が二人並んで歩くのは中之島あたりであろうか?これはこれでいい。ある程度まではセットかもしれないが、財前の義父御用達の料亭でのシーンがいい感じだ。義父の情夫である女将がいて今まったく消えたわけではないだろうが、芸者を呼んでぱーっと宴会をするなんていうのが普通の時代ってそれはそれで素敵かもしれない。