映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「きっとここが帰る場所」 ショーンペン

2012-07-05 20:49:15 | 映画(自分好みベスト100)
映画「きっとここが帰る場所」はショーンペン主演のロードショウ作品
劇場で見てきました。

本当にすばらしい映画です!
今年映画鑑賞113作目になりますが、個人的にはベスト1です。

ショーンペンのオカマじみた顔を見て、なんか気持ち悪いなあ。見たくないと思う人はきっと後悔するでしょう。老いた人も楽しめる美しい映画です。
数多く見ても、もう一度その映画を見てみたいと心から思うことはめったにありません。
ロードショウやっている間に1000円デイにもう一度行ってきます。
ワイドスクリーンを思いっきり生かした映像美には脱帽するしかありません。

主人公(ショーンペン)は昔ロックスターだった男だ。今はアイルランドのダブリンに妻(フランシス・マクドーマンド)と大豪邸で暮らしている。ときおり株取引をして遊んでいて、お金には全く困っていない。ロック好きの女の子と遊んだりしているが、別にはまっているわけではない。ロックに未練があるようにも感じられない。メイクはロックスターの時のまま、シワが年齢を感じさせる。

そんな主人公の元にアメリカから父親が危篤だという知らせが来る。30年疎遠な父親の元に向かう。しかし、飛行機嫌いの主人公が船便で着いたのは亡くなった後だった。

そこで主人公は最後まで父親がアウシュビッツ収容所で受けた仕打ちに復讐の念を持っていたことを知る。ドイツ人の名前を聞き、その男を探しに彼はアメリカを縦断しはじめるのである。ニューメキシコ州やユタ州などを車で走りさまざまな人たちと会って行くのであるが。。。

(ショーンペン)
彼が監督する映画「プレッジ」「イントゥザワイルド」に共通するのは美しい映像コンテである。ロケハンティングを念入りにやって、作る映画にあった場所を探してくるのに長けているのがよくわかる。ここでは自身の監督作品ではないが、信じられないくらい美しい映像を見せてくれる。最高の映像コンテである。
映画を見始める前に銀幕が意外にも大画面に拡がった。でもそれが生きてくる。
映画館で見るべき映画だと思う。

ここでの主人公は元ロックスターだ。元スターというといろいろなタイプの映画がある。例えば比較的最近の「レスラー」では、くたびれたままリングに立つ主人公を描いている。古い映画では「サンセット大通り」グロリアスワンソンが昔の栄光を忘れられず、新作での主演を目指す女優を演じる。
この主人公にはそんな野心はまったく感じられない。女じみたオカマ的な声を出したりしている。でも振る舞いは統合失調症にかかって、薬漬けになった患者のようだ。以前はヘロインをやっていたというセリフはあるが、薬漬けになった経験があるというのを意識した動き方と見受けられる。
町を歩いていると、元ロックスターだけにいろんな人物が声をかけてくる。どれに対してもそっけない。
ロック好きの若い女の子と仲がいいが、彼女を口説こうとする男が身近に迫ってきても、「彼と付き合ってみたら」とそっけない。
株式投資はうまくいっている。妻に言わせると、株に手を出しているからこんな調子なのだと言いたげだ。35年も夫婦生活をしている。意外にうまくいっている。庭にある水のないプールで妻とスカッシュをする。何をやっても勝てない。妻は自分勝手に好きに生きる。家はお金持ちなのに妻は消防士をやっている。
(フランシスマクドーマンドにぴったりのキャラ)


主人公はそんなキャラだ。

そんな彼が全米を走り回る。この映画は基本的にはロードムービーなのだ。
鬼才デイヴィッドリンチ監督が一作だけ普通のロードムービーをつくった。その「ストレイトストーリー」の匂いがある。あの映画でもトラクターに乗った老人が旅先で大勢の人たちに逢う。交情を交わす。言葉は足りなくても、心は通じるような映画だった。途中からその流れに近い気がする。
主人公が旅に出て、いろんな人たちと気持ちを通わせる。一つ一つ話してしまうとネタばれすぎるので省略するが、一番良かったのはニューメキシコでの交情だ。
ダイナーで知り合ったウェイトレスと仲良くなる。(ちなみにこのダイナーでのやり取りは笑える。)彼女にはデブの息子がいた。水に入れない。そこで見せるハートフルな主人公の動きにはジーンとした。

他にもたくさんある。大技も見せるが、小技も憎いくらいに決まっている。
ガソリンスタンドでアメリカ先住民と思しきオジサンが何も言わずに、主人公の車に乗っている。主人公はそれに対して何も言わず横に乗せて車を走らせていく。周りに何もない大平原の中で、同乗者が合図する。車を止める。そして同乗者が下車する。大平原の中に歩いていく。先に目的地らしきものはないのに。。。。黙って再度車を走らせる主人公
不思議なシーンである。

ユタ州の黄色に樹木が染まった美しい別荘地に行く。そこには捜している男がいるかもしれない。
住民らしき人物に話しかける。一人ドイツ訛りの男がいる。別荘に行く主人公、そこに寝ていると奇妙な形をした動物が夜やってくる。不思議な余韻がする。

そんなことが続きながら捜している男を追っていく。。。。
30年も疎遠で、父親は自分のことを嫌いだと思っていた。しかし、昔の側近によれば、父親は息子のことが好きだったという。そして、父が追いかけた男を捜しに行く。

ラストでショーンペンが笑顔を見せる。
その笑顔がこの奇妙な話に終止符を打つ。素敵な笑顔だ。

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