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映画「バーニング」ユ・アイン&イ・チャンドン

2019-08-09 08:03:18 | 映画(韓国映画)


映画「バーニング」は2018年の韓国映画


映画「バーニング」村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を原作としている。イ・チャンドン監督「シークレットサンシャイン」、「ペパーミントキャンディ」の名作を残してきた。玄人筋の評価は高い。原作は読了しているが、記憶にない。映画を見た後で再読した。もともと同郷の幼馴染だった男女が再会して仲良くなったあとで、得体のしれない金持ちの男性が出現する。ある時男性が主人公に秘密の趣味の告白をする。その告白のあと動揺する主人公の姿を描く。

村上春樹の短編は謎めいたものが多い。舞台を韓国に移したこの作品は原作の重要ワードをそのまま残すが、話を広げ独自の解釈をする。不思議な味わいをもつ映画である。

運送業のアルバイトをしながら小説家を目指すイ・ジョンス(ユ・アイン)は、デパートの店頭で幼馴染のシン・ヘミ(チョン・ジョンソ)に声をかけられる。2人で酒を酌み交わした後に急接近して肉体関係を持つ。そのあとヘミはアフリカ旅行に行く。旅行中、飼い猫の世話を頼まれたジョンスは、ヘミのマンションを時折訪れるが、猫は一度も姿を見せなかった。

半月後に帰国したヘミは、ナイロビ空港で出会ったという青年ベン(スティーブン・ユァン)を連れていた。ヘミに誘われてベンの自宅に行くと、仕事をせずに高級マンションに暮らし、高級車を乗り回しているようだ。ヘミはベンに急接近している。そのあと、ベンとヘミがジョンスの実家に遊びにきた。その時、ベンはジョンスに「ビニールハウスを焼くのが趣味だ」ということを打ち明ける。その日を境にヘミがジョンスの前から姿を消すのであるが。。。


1.納屋を焼く
原作では「納屋を焼く」ことになっているが、ここではビニールハウスだ。それ自体は同値のようなものである。ジョンスの古くなった実家で3人は大麻を吸ってハイになっている。へミは上半身裸になって踊りだす。疲れ切ってへミが寝て二人きりになった時ベンが「ビニールハウスを焼くのが趣味」と告白する。ジョンスはあぜんとする。近々にこの近所で焼くと聞いたジョンスは気になって仕方がない。ふだん乗っているトラックで近所をくまなく走り回る。でも焼かれたビニールハウスはどこにもない。これはどういうことなんだろうとジョンスは動揺する。


2.姿を消すヒロイン
久々出会った2人がへミの部屋でメイクラブする。ベットの下からスキンを出して、使ってという。男慣れしていることを示すのであろうか、脱ぎっぷりもよく韓国映画では珍しい大胆さである。夕焼け空をバックに、マイルス・デイヴィスのトランペットに合わせて、へミが上半身裸になって踊るシーンがある。バストに整形大国韓国を思わせるものを感じる。


村上春樹の小説では、ヒロインとなる女性が突然姿を消すことが多い。行方不明になること自体は「スプートニクの恋人」などで読んだことがあるので、また来たかという感触である。彼女は金を持っていませんよとベンが話しているので、高利貸しの追い込みから逃げているのかと自分は一瞬感じた。でもへミは現れない。自室にはもう住んでいないようだ。ジョンスはベンを尾行するようになる。初めてベンの「ビニールハウスを焼く」というのが「殺人」につながるということに気づく。

村上春樹の原作では余韻を残すように終わっている。読者に想像させる。ハードなエンディングではない。誰かが突然姿を消すことが日常茶飯事にあるので、最初に読んだとき何も考えなかったかもしれない。黒沢明監督の映画「羅生門」は、芥川龍之介の「藪の中」を題材にしている。小説では事件の当事者2人と殺された男の死霊の3つの証言が語られるだけである。映画「羅生門」では目撃者が見たままを語るシーンを加える。黒澤明の新解釈だ。韓国の名監督イ・チャンドンが映画の中で自分なりに解釈する。へミの家族、ジョンスの母親など登場人物も加えて証言を増やす。もともとの短編小説を深みのあるものとしている。そして衝撃のシーンにつなげる。

バーニング


螢・納屋を焼く
村上 春樹


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