映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「殺されたミンジュ」 キムギドク

2016-01-20 20:42:53 | 映画(韓国映画)
韓国映画「殺されたミンジュ」を映画館で見てきました。


「メビウス」以来のキムギドク監督の新作である。必ず見に行く監督の作品なので、早速に映画館に向かう。前作「メビウス」はまったくセリフがなく、息子の性器を切り取るなんて、かなりマニアックな映画だったが、逆にセリフがキムギドク監督作品の割に多い。


女子高校生を死に至らした犯行グループへの復讐という題材だが、最初は何が何だかわからない。正体不明の武装集団が1人づつ拉致して、拷問というべきリンチを加えて白状させてという構図が次から次へと映しだされる。いつもながらキムギドク監督は低所得の社会の底辺をさまよう連中をクローズアップさせる。ここでも同様のパターンだが、最後に向けてあれ?こういうふうに持っていくの??と若干疑問が残るような展開だった。それでも最後まで見るものを飽きさせないのはキムギドク監督のさすがの手腕である。

5月、ソウル市内の市場を必死に逃げ惑う女子高生、彼女を追う屈強な男たちがいた。
彼女の名はミンジュ。ミンジュは次第に追い詰められ、そして路地の片隅で顔にテープを巻かれ、叫ぶ間もなく無残に殺された。


しかし、事件から1年たった頃、平穏を装うこの街のなかで、ミンジュの死の真相を執拗に追いかける謎の集団が、暗闇の中で不気味に動き始める。ミンジュ殺害に関わったのは7人の男たち。謎の集団は、そのうちの一人を誘拐して、拷問を加え「去年の5月9日を覚えているか、その日何をした…」と執拗に問いただす。


恐怖と自責の念に襲われた容疑者は、全面的に自白して許しを請うのだった。謎の集団は変幻自在に変装して一人、また一人と誘拐して、自白を強要する。
それぞれの立場から語られる証言により、事件の背後に潜む闇が明らかになっていく…。 (作品情報より)

いきなり女子高校生が殺される。
何で殺されるのかはわからない。強姦されて殺されるのではなく、いきなり大人数に囲まれて殺される。
むごい話と思っていると、なぜか?ミリタリールックのような服を着た正体不明の集団がリンチを加えていく。さっぱりつかめない。しかし、同じようなことが繰り返され、復讐なんだなということがわかる。
でも殺されたミンジュとこの集団がどういう関係なのかは語られない。
そうしていくうちにこの集団の構成員が社会に不満を持っている連中だということが少しづつわかっていく。

1.社会の底辺で暮らす連中
キムギドク監督も苦労人で、映画監督になる前は自らが社会の底辺にいた経験を持つ。一方で海兵隊にも所属していて、軍隊の中で日常的に使われる暴力も映画でよく見せつけている。キムギドク監督の傑作「嘆きのピエタ」は借金取りの男をクローズアップしていた。ここでも同様な友人に金を騙したとられた自営業者や妻の病気で高利貸しから金を借りている男が借金取りに追いまわされている姿が印象的だ。ほかにも上司に侮辱される自動車修理工、客にバカにされるウェイター、DVに悩まされる女性などをいかにも社会の底辺を彷徨う連中として描く。ちなみにそういう不満をもつ面々が女子高生殺人事件の復讐に立ち上がったというのがこの映画の主旨だ。


2.暴力表現
韓国映画独特の暴力表現はここでもかなりきつく表現される。犯行を認めさせるために次から次へとリンチを加える。そして自分がやったということを認めさせるのだ。


犯行グループには社会的な地位が高い人たちもいて、最初はどういう権限で自分を確保したのかなんてほざいているのが、コテンパンにやられていやいや自分が何をしたのかを書いていく。でも戻っても公安に訴えるわけでもない。奥さんにも言えない。黙っているしかないのだ。でも、何でこんな高校生が殺されたんだろう?ちょっとそこだけは意味不明??

複雑な心情を抱える謎の集団のリーダーを演じたのは『悪いやつら』のマ・ドンソクでずっと暴力表現を続ける。いかにも韓国クライムサスペンスらしい顔役でなかなかうまい。DVで同棲した男に暴力をふるわれる女性を演じたアン・ジへも印象的だった。

(参考作品)
嘆きのピエタ
キムギドク監督の傑作(参考記事)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「白鯨との闘い」ロンハ... | トップ | 映画「ビューティ・インサイ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(韓国映画)」カテゴリの最新記事