映画とライフデザイン

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映画「グランド・ブタペスト・ホテル」 ウェスアンダーソン

2014-06-11 09:02:20 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「グランド・ブタペスト・ホテル」を映画館で見てきました。

ウェスアンダーソン監督の新作で、前評判は上々なので行こうと思っていた。しかし、前作「ムーンライズ・キングダム」は自分にはあまり面白くなかった。自分としてはむしろ初期の「天才マックスの世界」や「ロイヤル・テネンバウムズ」の方が好きだ。若干の不安もあった。

どちらかというと、ファンタジー系に属する映画だと思う。ドラマでもラブストーリーでもない。アニメ映画を見ているような錯覚を覚えた。ホテルの外観やお菓子のパッケージのピンクはこの映画を象徴する色である。色彩設計は鮮やかだ。
架空の国でのドタバタ劇だが、ストーリー自体は世界史の流れに沿っている。主人公の2人、敵対者、援護者とはっきり善悪を分けて物語の定石を踏み、それなりには楽しまさせてはくれる。でも自分と監督との相性はよくないかも。

1968年、温泉リゾート地のさびれたグランド・ブダペスト・ホテルに逗留している若き作家(ジュード・ロウ)は、オーナーのゼロ・ムスタファ(F・マーレイ・エイブラハム)から、驚くべき物語を聞く。



1932年、ズブロフカ王国にある大盛況のグランド・ブダペスト・ホテルで若きゼロ(トニー・レヴォロリ)がベルボーイとして働き始める。当時のホテルは伝説のコンシェルジュ、ムッシュ・グスタヴ・H(レイフ・ファインズ)の手腕により、栄華を極めていた。



常連客の伯爵夫人(ティルダ・スウィントン)が亡くなり、グスタヴはゼロを連れて夫人の葬儀に向かった。葬儀会場で遺言の代理人により、名画をグスタヴに残すことが伝えられた。そのために伯爵夫人の息子(エイドリアン・ブロディ)が憤慨、夫人の殺害容疑がグスタヴにかけられる。


濡れ衣を晴らし、ホテルの威信を保つため、グスタヴはゼロの協力のもと、真相解明にヨーロッパ大陸を駆けめぐる。

1.ズブロフカ王国
名前を聞いてすぐウォッカの「ズブロッカ」を連想した。ポーランド製で、酒の中に草(バイソングラス)が入っているウォッカだ。冷やして飲むとこの上なくおいしい。
30年前に新宿のロシア料理の店「スンガリー」で初めて知った。それ以来大好物のロシア料理を食べるときには欠かせない。余談だが、「スンガリー」は歌手の加藤登紀子さん一族経営の名店で、彼女も数回見かけた。娘が母親に似ず(失礼)スゲエ美人で驚いた。

もしかして何かつながりが?と思い作品情報を読んだら、ズブロフカ王国のことが説明してある。あれ?こんな国あったっけ?いやこれってすごいジョークだ。まさに架空の国である。スペリングはいずれもŻubrówka
そうか!このおいしいウォッカの名前をもじってつくった国の名前だろうと自分は推測する。

2.共産主義と全体主義(ファシズム)への批判
三種類のスクリーンサイズに分かれる。1985年と1968年そして主要な舞台の1932年だ。1932年はヒトラーのナチス党が選挙で第一党になってヒンデンブルク大統領から首相に指名させる時だ。実際には積極的に他国に進出しているわけではない。1968年というとソビエトがチェコへ侵攻する年である。いずれも年号的には重要な年である。
平和なズブロフカ王国がファシズム政権によって占領され、グランドブタペストホテルもエドワードノートン演じる軍人たちにより、いいようにやられる。まずはファシズムを批判するが、戦後ホテルがさびれてしまうということで共産主義による経済の停滞をも不快感を持って接している。ここでは共産主義、ファシズム両方への嫌悪感がある。
ここでファシズム国家をナチスドイツとはしない。ZZの文字でいかにも連想させようとする。
その匿名性は自然だ。

実際には共産主義もファシズムも同値に近いのだ。
ドラッカーの言葉を引用する。
「共産主義とファシズムが本質的に同じというわけではない。ファシズムは共産主義が幻想だと明らかになった後にやってくる段階なのだ。そしてヒトラー直前のドイツでと同様に、スターリン下のソ連において、それは幻想だと明らかになった。」

ノーベル賞学者ハイエク
「ファシズムと共産主義を研究してきた人々が。。。この両体制の下における諸条件は。。。驚くほど似ている事実を発見して衝撃を受けている」(隷属への道より)

共産党を支持するバカなババアがよく駅前で署名してくれと言っているが困ったものだ。
佐藤優曰く「日本共産党という組織は、マルクス主義の毒薬にやられた宗教団体」
まさにその通り

3.配役の妙
アルトマンの映画のように出演者が多いのでストーリーがつかめるか心配していた。
配役の置き方は物語作りの定石を踏んでうまく分配している。

主人公2人 グスタヴ(レイフ・ファインズ)とゼロ(恋人もいる)
依頼人  伯爵夫人(ティルダ・スウィントン)
敵対者  伯爵夫人の息子(エイドリアン・ブロディ) ファシズムの軍人たち(エドワード・ノートン)
援護者  欧州全域にいるコンシェルジュの仲間たち(ビルマーレイなど)

今回は伯爵夫人が血縁でない主人公に由緒ある絵画を与える話をしたものだから話がおかしくなる。夫人の息子は敵対者になる。昔ホテルに泊まったことがあるエドワードノートンは、葬式に行く移動時では味方だったが途中で逆転する。味方がいない。
ところが、気が効いて人格者のグスタヴには欧州中のコンシェルジュが味方だ。そのアイディアがいい感じだ。至る所で助けてくれる。その逃亡劇がうまい具合に笑いを誘ってくれる。ソリで逃走する場面はちょっと笑えるし、凍りついた崖っぷちのやり取りもニクイ。
ものすごく多い出演者がきれいに整理されていることに気づく



美術の色合いのセンスは感じるけど、もう少し特撮に金をかけた方がよいのではと自分は感じた。ミニチュアの技術が稚拙な印象を持つ。あえてこの映画のスタイルを選択している気はするけど。。

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