映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「グランドマスター」 トニー・レオン&チャン・ツィイー

2013-06-02 08:09:13 | 映画(アジア)
映画「グランドマスター」を早速劇場で見た。
これは楽しみにしていた作品だ。自分のブログのプロフィル写真はずっとウォン・カーウァイ監督作品「花様年華」のトニーレオンとマギーチャンが映る写真だ。見に行くしかない。

中国の世界的名監督というと2回もアカデミー監督賞を受賞したアンリー監督と色鮮やかな映像が美しいチャンイーモア監督、そして香港映画界の鬼才ウォン・カーウァイ監督の3人だろう。これまでアンリー監督が「グリーンデスティニー」で、チャンイーモア監督が「LOVERS」でカンフー映画を撮ってきた。今回はいよいよ真打ちとばかりにウォン・カーウァイ監督が自分流にカンフーを題材に取り上げた。そしてブルース・リーの師匠としても知られる伝説の武術家イップ・マンの物語を描く。

ウォン・カーウァイ作品の常連トニーレオンが役作りをして登場、上記の「グリーンデスティニー」「LOVERS」で活躍したチャン・ツィイーがこの役は自分しかいないとばかりにその腕をふるう。その2人を前面に出しながら、これまでのウォン・カーウァイ監督の流れをくむ撮影手法により、カンフーを描く。その映像美はさすがとしか言いようにない。

世界を呑みこむ戦争の足音が、刻一刻と迫る1930年代の中国。
北の八卦掌の宗師グランドマスターである宮宝森は引退を決意し、その地位と生涯をかけた南北統一の使命を譲る後継者を探していた。候補は一番弟子の馬三マーサンと、南の詠春拳の宗師・葉門イップ・マン(トニー・レオン)。バオセンの娘で、奥義六十四手をただ一人受け継ぐ宮若梅(ゴン・ルオメイ)(チャン・ツィイー)も、女としての幸せを願う父の反対を押し切り名乗りを上げる。

だが、野望に目の眩んだ馬三が宝森を殺害。ルオメイは葉問への想いも、父の望みも捨て、仇討ちを誓う。後継者争いと復讐劇が絡み合う、壮絶な闘いの幕が切って落とされた。

八極拳を極め、一線天(チャン・チェン)と呼ばれる謎の男も、不穏な動きを見せている。 動乱の時代を生き抜き、次の世代へと技と心を受け継ぐ真のグランド・マスターとなるのは誰なのか─?
(作品情報から引用)

見せ場というべき大きく印象に残るシーンが3つある。

最初にいきなり大人数の襲撃をイップ・マンが受ける雨の中のシーン

暗闇の中降りつづける雨がスタイリッシュだ。そこでトニーレオンが腕をふるう。厳密にいえば、トニーはカンフーの達人でないから、撮影編集技術で補っているわけだが、これが実にうまい。

2つ目はイップマンとゴン・ルオメイが対決するシーン

1つ目のヤマは考えようによってはよくあるパターンである。しかし、この男女の対決は今までのカンフー映画にはない美しい映像だ。ウォン・カーウァイ監督はスローモーションをかけた映像が得意だ。花様年華でも効果的だった。それをここでも応用する。撮影のスピードに緩急をつける。アクション映画でスピードアップするファストモーションはよくつかわれるが、逆も連発する。しかも、トニーレオンとチャン・ツィイーの顔を急接近させる。恋愛映画でもないのに男女をもつれさす。

3つ目は列車が走り続ける前で親の敵とばかりに、ゴン・ルオメイと馬三マーサンが対決するシーン

横で列車が高速で走る前で、2人が対決する。ちょっと間違うと列車にぶつかってしまう。その緊迫感の中で2人が拳を交わす。この列車通りすぎるまで長いなあなんて思いながら、ドキドキしてしまう。チャン・ツィイーと言えば、「グリーンデスティニー」での男性大人数を相手の立ち回りと、緑が美しい「LOVERS」の竹林での格闘が印象的。今回は1対1で勝負だ。

他にも見せ場はいくつもある。
ただ、この映画ちょっとストーリーの流れがわかりづらい。時代の接続がうまくいっていない気がする。後半になって、文字による解説も増えて多少理解度は進むのであるが、似たような顔をした男たちが流派が違うといっても、自分から見たら全部同じに見える拳をふるうので理解しづらい部分がある。

時代のスタートは1936年である。抗日で蒋介石も共産党と手を結ぼうとしたころだ。途中当時をしのばせる映像として満州国皇帝いわゆるラストエンペラー溥儀が映し出される。東北部は完全に日本に浸食されていた。セリフでもそれが出ているし、登場人物の一人は満州国奉天の大幹部になっているという話もある。この映画でも日本軍は悪者だ。
1938年に主人公イップマンも日本軍に広東省の自宅を奪われる。彼はもともと富豪の息子で、妻は清朝の高官の娘で40まで金の苦労をしたことがなかったという。日本軍への協力を拒否したイップ・マンは貧窮に苦しみ、さらには幼い娘の餓死という最大の悲劇が彼を襲う。日本人として見ていてムカつく場面もないわけでもないが、幸せな暮らしが崩壊されるのをみると考えさせられる。

一つだけ「アレ?」と思ったことがあった。途中状況解説の文字が出るときに年号を「民国40年」という年号で表示していた。辛亥革命を起点として年数をカウントしている。戦前をそのように表現するのは不思議ではないが、中華人民共和国設立後の1950年やその後もそう表示する。当然あえてしていると思うが、どういう意図があったのであろうか?

宗師宮宝森が死んだ葬式の場面その他で冬の東北部の映像が出る。

果てしない寒さを感じさせる。その中に映し出されるチャン・ツィイーは美しい。
コメント (2)
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映画「イノセントガーデン」ミア・ワシコウスカ&ニコールキッドマン

2013-06-01 21:48:48 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「イノセントガーデン」を公開早々劇場で見た。

予告編から妙に不穏な雰囲気を出していた。しかもミア・ワシコウスカちゃんが主人公を演じるという。これは見に行くしかない。サイコホラーというべきであろうか?父親が死んだあと、存在すら知らなかった叔父が同居し、その彼に疑惑の念を抱く。開始早々からドキドキさせる展開が続く。


インディア・ストーカー(ミア・ワシコウスカ)の18歳の誕生日。毎年どこかにプレゼントの「靴」が隠されているのだが、樹の上で見つけた今年の箱には、謎めいた鍵だけが入っていた。そして突然、贈り主のはずの父リチャード(ダーモット・マローニー)が、不審な死を遂げる

不審に思われる父の死について噂でもちきりだ。それが鮮明に聞こえるインディア。繊細で五感が鋭すぎる彼女は、家でも学校でも孤立していた。母のエヴィ(ニコール・キッドマン)とも心は通わず、ただ一人の理解者だった父を失ってしまったのだ。


葬儀の日、長年行方不明だった叔父のチャーリー(マシュー・グード)が現れ、インディアと参列者を驚かせる。そのまま彼は、しばらくストーカー家に泊まることになる。夫との仲が冷えていたエヴィは、悲しみにくれることもなく、チャーリーと楽しげに買い物へ出かける。その間にインディアがチャーリーのバッグを探ると、なぜかプレゼントと同じ箱が入っていた。

ある日、遠方から訪ねてきた大叔母のジン(ジャッキー・ウィーヴァー)が、チャーリーを見て動揺する。エヴィに何かを話そうとするが相手にされず、ホテルへ向かった後に姿を消す。
インディアは彼の過去に疑問も抱き始めるが。。。

「叔父さんを疑う姪」という設定で、ヒッチコックの不朽の名作「疑惑の影」を連想する。

憧れのオジサンというのが、あの映画の設定であり、それが徐々に疑いの目を向けるようになっていく展開だ。ジワリジワリと真相に迫るのが実にスリリングだ。不安な雰囲気を醸し出すカメラワークがヒッチコック作品の中でも際立つ。階段での2人のやり取りはこの映画でも影響受けている。同じような怖さを感じさせる。気になって調べてみたら、ジョセフコットン演じる叔父さんの名前はなんと「チャーリー」なのだ。いかにも「疑惑の影」を意識しているのは明らかだ。
でもリメイクではない。ストーリー展開もちがう。

この映画では、姪どころか母親も義弟であるチャーリーの存在をもともと知らない。インディアに彼への憧れはない。非常に感受性の強いインディアは最初からチャーリーに疑いを持つ。一緒に住むようになった後、学校に迎えにチャーリーが来てもまったく相手にしない。無視する。逆に自分の母親エヴィはチャーリーに強い関心を持つ。徐々に色仕掛けで迫るようになる。(こういう役をやらせると、ニコールキッドマンは天下一品である。)

そして一気にストーリーが急展開する。この映画の英題は「ストーカー」である。主人公の名字がストーカーということもあるが、普通でいうストーカーの意味も含む。途中からサイコスリラー独特の雰囲気が強くなってくるのだ。もともと無視していた関係だったのに、疑惑が強まった後に叔父への意識が変わってくる。そして自らも大胆になっていくのだ。叔父さんも見ようによっては魅力的な悪党に見える。2人のピアノの連弾場面は官能的に映す。旋律も素敵なタッチで印象に残る巧みな映像だ。


ミア・ワシコウスカは以前見せたショートヘアの方がずっと似合うし、ものすごく可愛い。この作品では
学校の中でも孤立した変わり者と周りに邪気にされる生徒だ。あえてドンくさくする。いつもサドルシューズを履く。これは父親からプレゼントされた設定だろう。それがチャーリーからプレゼントされた高いヒールのシューズに履きかえる。少女が変貌していく姿が実は一番の見せ場なのだ。
ここでは言えないが彼女は大胆な演技にも挑戦する。

ニコールキッドマンがきれいに見えた。色仕掛けで義弟と仲良くなる設定だが、ここで醸し出す性的匂いは非常に強い。マシュー・グードとのキスシーンを楽しんでいるようだ。日本でいうと「杉本彩」みたいな役をやらせると抜群にうまい。ここ数年はこのパターンで食べていけるだろう。

ときどき見せるえげつなさが韓国人監督らしいテイストだ。
概ね満足だけど、これも最後に向けての展開がものたりないなあ。
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