映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ホーンテッドマンション」 

2023-09-03 10:49:31 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ホーンテッドマンション」を映画館で観てきました。


映画「ホーンテッドマンション」ディズニーランドでおなじみのアトラクションを実写化したディズニー映画である。ここしばらくはディズニーランドに行っていない。コロナ期の混乱はあったとは言え、チャンスに恵まれない。それでも行った時には「ホーンテッドマンション」に立ち寄ることも多い。でも、アトラクションの内容をかなり忘れている。

ジャスティン・シミエン監督ディズニーランドの元キャストで「ホーンテッドマンション」は休憩時間にかなり乗ったという。もしかして、2時間分アトラクションの気分が楽しめるのかもしれない。ゾンビ系に近いホラー映画に行くことはまずない。大量に出てくるというゴーストといっても「ゴーストバスターズ」みたいなものだろう。怖くない。そんな軽い気持ちで観る。

舞台はニューオリンズだ。医師でシングルマザーのギャビー(ロザリオ・ドーソン)が破格の条件で風格のあるお屋敷を手に入れた。 ところが、息子のトラヴィスがお屋敷に入るとゴーストたちが乱舞する怪奇現象に何度も遭遇する。二人は屋敷の呪いをとくためかなりクセが強い4人の心霊エキスパートに声をかける。宇宙物理学者上がりのゴースト専門家(ラキース・スタンフィールド)、歴史学者(ダニー・デヴィート)、霊媒師(ティファニー・ハディッシュ)、神父(オーウェン・ウィルソン)が集結する。


まあ、時間つぶしにはなったくらいの感触だ。
さすが、ディズニーといった感じでお金はかなりかかっていそうだ。これだけのセットはさすが米国資本という感じで、アトラクションのように縦横無尽に動くお屋敷の美術、ゴーストのVFXなどはすごい。「ホーンテッドマンション」を熟知しているジャスティン・シミエン監督ならではと感じる場面もある。でも、東京ディズニーで初めて「ホーンテッドマンション」に入った時の感激はない。これは経済学の「限界効用逓減の法則」みたいなもので仕方ないけど、リピーターは別なんだろうなあ。

出演者でインパクトが強いのは霊媒師のティファニー・ハディッシュだ。胡散臭くクセの強いパフォーマンスで家主たちを引っ張る。最近「カードカウンター」でギャンブルブローカーを演じてオスカーアイザックの相手役だ。かなり動的に変貌する。


あとはダニーデヴィートだ。歴史学者でお屋敷建築当時のエピソードを語るが、いつも通りのせわしないパフォーマンスは変わらない。最近「アウシュヴィッツの生還者」でボクシングのトレーナー役で出て、久々だなあと思ったらここで再会できてうれしい。「バットマンリターンズ」異形でインパクトが強いペンギン役が目に焼き付く。


心霊エキスパートを引き連れてのお屋敷での立ち回りはストーリー的に訳がわからなくなるが、仕方ないだろう。物語の構造的には宮崎駿「君たちはどう生きるか」と同じで、異様なお屋敷に入って、幻のような数多くの外敵と出会いなんとかしのいで無事に対決を終える話だ。ただ、悪いゴーストと良いゴーストがいて、良いゴーストと共存共栄という感じで締めくくるのは「ホーンテッドマンション」アトラクションを維持していくために必要なオチかもしれない。
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映画「バカ塗りの娘」 堀田真由&小林薫

2023-09-02 18:44:38 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「バカ塗りの娘」を映画館で観てきました。


映画「バカ塗りの娘」は青森県の伝統工芸である津軽塗の職人とその娘の物語である。初めて知ったが、塗っては研ぐを繰り返す手間のかかる手法で完成した漆器は美的感覚に優れている。監督は不思議な映画だった「まく子」鶴岡慧子で、津軽塗の職人に小林薫、その娘が堀田真由だ。弘前で家を借りて撮影された。青森を舞台にした映画は相性がよく、2021年の「いとみち」には特に感動した。津軽の岩木山をバックにした風景が実に美しい。ポスターを見て期待して早速映画館に向かう。

青森の弘前で伝統の津軽塗の工房を営む青木清史郎(小林薫)は、高校を出てからスーパーでパートをしながら仕事を手伝っている娘の美也子(堀田真由)と暮らしている。本来は坂東龍汰)が跡を継ぐのを父が希望していたが、結局美容師になってしまう。元妻も夫に愛想をつかして家を出ていった。美也子が津軽塗を真剣にやりたいと言っても父親は無理だというばかりだ。でも、美也子は廃校になった母校にあったピアノに津軽塗で色づけしようと本気を出して取り組む。


不器用な生き方をしていた23歳の女の子が、父親とともに郷土の工芸品づくりで身を立てようと奮闘する成長物語だ。好感がもてる。

先日観たばかりの「高野豆腐店の春」と物語の構造は類似している。地方の町を舞台にして、職人肌の父と娘が一緒に暮らして家業に取り組む。頑固オヤジの振る舞いに翻弄されながら、娘が父についていく姿を見るのは娘を持つ自分には親しみがある。そういえば、同じ青森が舞台の「いとみち」豊川悦司の父親と娘の物語だった。普通に父娘の交情を描いていくだけかと思ったら、若干意外な題材を組み込む。それがわかった時は思わず「え!」と声が出てしまった。

髙森美由紀の原作「ジャパン・ディグニティ」はあれど、プロデューサーと鶴岡慧子監督が数年かけて現地で津軽塗の世界を追求したのがよくわかる映像だ。小林薫と堀田真由も工房で津軽塗の漆器を実際に製作している。作品情報で津軽塗の解説を見ると、制作者の強い思い入れが感じられる。父娘が仕事する工房も実際に職工が使っている部屋なのでリアル感がある。岩木山はもとより、弘前内のレトロ感覚あふれる建物でのロケが随所に映るのもいい。


堀田真由はもしかして初めて観るかもしれない。映画のスタートで自転車を走らせる堀田真由をカメラが追い続けるシーンがある。さわやかで清々しい。不器用に生きている姿をスーパーでオロオロする場面などで示す。でも、青森の田舎にこんなにかわいい子はそうはいないと思う。普通だったら放っておかないだろう。ちょっとかわいすぎる。想いを寄せる花屋で働く男との関係が意外な展開になるのには自分も驚いた。

小林薫の出演作はよく観ている。今回は津軽塗の職工だ。地方都市の職人肌で熟練を要する仕事に長い間携わった頑固オヤジという役柄が多くなった。「深夜食堂」の店主だけでなく、昨年も「冬薔薇」の船乗りや「とべない風船」の元教師役などに味があった。青森弁の習得に苦労したとは作品情報での本人弁だ。確かに地元民が話す青森弁は普通の日本人が聞いてよくわからないだから気持ちはよくわかる。


美也子が慕うオバさんにこれまた出演作が多い名脇役木野花で、どうも青森県出身らしい。小林薫みたいには苦労しなかっただろう。家を飛び出した兄を演じるのが坂東龍汰だ。つい最近観たばかりの「春に散る」に出ていることを知り、横浜流星が世界戦の前哨戦で闘う相手ボクサー役だと映画が終わって気づきギャップに驚いた。
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映画「兎たちの暴走」

2023-09-01 18:16:13 | 映画(中国映画)
中国映画「兎たちの暴走」を観てきました。


映画「兎たちの暴走」は中国映画、内陸部の工業都市で起きた殺人事件を描くクライムドラマだ。実際の事件にもとづく。中国映画でも裏びれた町の一角での泥くさい犯罪モノは好きだし、ピックアップして観ている。今年はじめに日本公開された「シャドウプレイ」も中国の裏事情にスポットをあてた自分が好きなタイプの映画だった。同じスタッフが今回参加しているという。2020年に映画祭に出品された映画が今さら公開というのもずいぶんと遅い気もするが、興味深い。でも、公開館は少ない。

中国四川省の工業都市の女子高校生シュイチン(リーゲンシー)は、父と継母と弟と暮らしている。しかし、継母とは折り合いが悪い。その街に一歳の時に別れ大都市に移った実母チューイン(ワンチェン)が帰ってくる。ダンサーの母親は感傷的にならず冷静だが、シュイチンは実母に接近する。ところが、実母は200万元の多額の借金があり、黒社会筋のヤミ金の取立てに追われていて、しかも期限が迫っていた。


女性監督らしくきめが細かい。あらゆる映像に目が行き届いた感触をもつ良作である。
女の子の微妙な心理状態がよく描かれている。エンディングなどに欠点もあるけど、掘り出し物の一つだろう。

ポイントは、継母といい関係が築けない女の子のもとに、幼い頃に別れた母親が身近なところに戻ってくる時に女の子が感じる心の動きだ。その母親は美しく、スポーティーな黄色のクルマを乗りまわし、学校で仲間にもダンスを教えてくれる自慢の母親だ。再会できて誰よりもうれしい。その実母が怪しい奴らに追われている。しかも、多額の借金をしていて、遠方から取り立てが来ている。何とか実母を助けなければという健気な気持ちだ。そこでインチキ誘拐事件を装って友人の実家からカネを引き出そうと企むのだ。


実質主役とも言える高校生を演じるリーゲンシーは、「初恋のきた道」の頃のチャンツィーを彷彿させる純真な少女だ。一歳の時に自分を捨てた母親だけど、実母には違いない。母親を慕う気持ちで犯罪に加担した主人公が実に切ない。珍しく実際の犯人に同情心を持ってしまう。

ここでは、主人公シュイチンの友人として2人女の子を登場させる。1人は家は裕福なんだけど、意地の悪い子でいわゆる女のいやらしさを兼ね備えている。もう1人はモデルになるくらいの美貌をもち金持ちから自分の養女にしたいと言われている子で、心配性の実父から虐待を受けている。この2人の使い方は女性監督ならではかもしれない。ストーリーのネタバレになるので言わないが、事件にも関わってくる。


つい最近も韓国映画「あしたの少女」で女性監督が巧みに脚本監督をこなしたが、ここでもシェン・ユー監督が巧い。四川省といっても広い。今回の舞台となる工業都市は中核都市成都とは700km以上離れている。東京から青森の距離だ。金沙江と言う川に沿った工業都市で,煙突から煙がもうもうと出ている。実際には別の都市で起きた事件のようだが,ロケハンがうまく良い撮影地を見つけて,現地の高校生たちにも協力してもらったようだ。その辺の配慮が映画を見ているとよくわかる。
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