@裏庭に咲く高山植物の花々を眺めながら・・・1972年、スウェーデン、エケトルプ先生との会話
イワカガミ、コマクサ、ミヤマウスユキソウ、チングルマに良く似た花々が裏庭一面に咲き乱れているスウェーデンの初夏。 それは1972年のある夏の日でした。
「エケトルプ先生、驚きました。日本では高山にしか咲かない花々が低地の野原に咲くのですね」「緯度が高いのでそうでしょう。でも良く見ると花々は日本のものとは違う筈です。植物は気候と土地の違いによって同じ種類でも違った外見に育ちます。名前も地方によって違うのが普通です」
「西洋の花々は色鮮やかで派手な花が多いのにこんな素朴な美しさを持っている花々もあるのですね?」
@可憐な美しさと、対照的にあでやかな桜の花々
私は続けて言います。「日本人は野生のニホンサクラソウやスミレ、ナデシコのように小さくて可憐な花が好きです。西洋人は薔薇やチューリップ、ガーベラのように派手で装飾的な花が好きなのですね。日本人の美意識は余計な装飾的なものを削ぎ落としたものに美の極致があると感じるのです。洗練された感覚と思います。西洋人には理解出来ない境地です」
「後藤さん、そう決め付けないでください。東京の花屋さんには派手で大きな薔薇やランの花々が並んでいましたよ。サクラソウなんて今日始めて聞く名前です。日本人の花の好みも欧米人と同じですよ。その上満開のあでやかな桜の花々を熱狂的に愛しているではありませんか!」―――エケトルプ先生は続けます、
「この裏庭に可憐な花を咲かすには苦労が多いのです。雑草を根気良く取ったり、花々に合った肥料を秋の間に撒くのです。すると次の年の初夏にこのように一斉に咲くのです。小さな可憐な花も豪華に咲く花々も両方大切にすることは民族の違いによらないと思いますね」
夕食後の庭は白夜で暗くならない。ほの明るい中、一面の花々が高山のお花畑のように輝いている。スウェーデンの初夏の夜。
このように花々について語り合ったエケトルプ先生も7年ほど前に旅立ってしまいました。花々を見ると、私をストックホルムの工科大学へ招んでくれたエケトルプ先生のことを思い出します。楽しい思い出です。しかし一抹の寂しさが漂います。エケトルプ先生へ感謝の気持ちで思い出を楽しんでいます。
@人類は皆、花々が好き
花の咲かない砂漠や極寒の地に住む人々は別にして、世界中の民族はそれぞれの花を大切にしているのです。太古に人間が死者を悼むようになるのと同じ頃から花を好きになったのでしょう。ただ好きな花とその楽しみ方は民族によって少しずつ違うのです。
上の3枚の満開の桜の写真は都立小金井公園で昨年の2008年3月31日午後2時に撮影した写真です。今年も、もう少しで桜も咲きます。待ち遠しいです。
今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人 )