東京都日の出町の山中に1983年、中曽根首相とレーガン大統領が会談した田舎家がある。
日の出山荘などと風流な名前をつけているが、どちらかと言うと、貧農に近い農家を改装した粗末な家である。江戸時代末期か明治時代に立てられたような農家で、材木があまり良くないようだ。
昔はガラス戸の代わりに雨戸が付いていて、左奥の座敷だけ畳で、真ん中の部屋は板敷き、右手入り口を入ると土間で土間の左手に囲炉裏があったと推定出来る。古い農家を数多く見てきたので当時の構造が想像出来る。
1983年に日米会談をここで開催することになり、外務省の役人が慌てて内装を作りなおしたような建物で、現在見ると「貧弱な昔の小さな農家」という感じがする。
中曽根さんは、よくぞこんな山中の粗末な農家へレーガンさんを連れてきたものだと感心する。
飾ってある写真を見ると、堂々とした態度で抹茶をたて大統領夫妻を迎えている。昼食も幕の内弁当のようなものを食べている。
そして長時間2人で会談をしたという。
敷地内に急ごしらえの茶室がある。それだけの古い農家であった。
現在は日の出町が管理して公開している。公開にあたって「書院」と称する大きな建物を作り、中曽根首相の一生の間の華々しい政治活動の様子の写真が多数展示してある。
抜群にエネルギッシュな活動家で、国際感覚に高い見識があり、私が昔から尊敬していた政治家であった。
展示してある写真を見て廻ると、自分にも元気が乗り移ってくる。
見ながら、それぞれの時代の日本の社会の雰囲気を思い出した。高度成長期で騒然とはしていたが、皆が活き活きとしていた時代であった。強烈な自由競争の時代でもあった。
新聞やテレビでは政治家を皆悪者にして批判ばかりしている。政治家の悪口を言えば新聞が売れ、視聴率が上がるという安易な考えが下にあるようで、尊敬できない。
政治家の人間性は別にして、その政策や実行力で賞賛すべき場合があるものだ。そのときは公平に評価して称賛すべきである。
政治家とは付き合いが無かったが、1990年頃に額賀福志郎さんと団体を組んで北京やジャカルタへ旅をしたことがある。防衛大臣や財務大臣をした人である。当時は無役で暇があったらしい。
一緒に旅をしてみると、控え目で自己顕示欲のない素朴な人柄である。
こちらから聞くと外交や防衛はこういう戦略で進めるのが良い、と明解に説明してくれる。
頭脳明晰であるのだが、それを感じさせない風貌である。
それまで額賀さんのことを知らなかったので、つい「総理大臣になられれば良いと思います」と言った。それまで眠っているような目で説明していた彼が、眼がギラギラ光らせて、「自分もそう思っています」と言下に答えた。その眼光の輝きが忘れられない。政治家は全員が総理大臣になろうと、一心に努力しているとその時深く理解できたものです。
日の出山荘を見て回りながら額賀さんのことも思い出していた。そして少し付き合いのあった2、3人の国会議員の事なども懐かしく思い出していました。
訪問者は高年齢の夫婦が子供や孫と連れだってきている。
皆の顔を明るくなり、中曽根さんから活力を貰っているように見える。
場所は五日市市と青梅市を結ぶ秋川街道から山中へ2Kmくらい入ったところで、分かり難い。HPなどで地図を確かめてから行かれますことを是非お勧めしたいです。HP:http://www.town.hinode.tokyo.jp/sansou/index.html (終わり)
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り致します。
後藤和弘(藤山杜人)
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