宗教は人間の精神生活を豊かにします。愛する人々の死別の悲しみをやわらげてくれます。私自身も宗教というものが大好きです。キリスト教も仏教も神道も大好きです。
ですから最近の日本人の宗教離れ、特に寺院仏教から離れる現象を悲しい気持ちで見守っています。
悲しいことですが、社会の変化や人々の考え方の変化は冷静に客観的に見て、静かに受け入れています。
日本の経済の高度成長にしたがって先祖代々のお墓を郷里の寺から、自宅のそばの共同墓地へ移す人が増えて来ました。民間会社が開発した無宗教の大型共同墓地が全国的に流行し、そこに自分のお墓や先祖代々のお墓を作る人が急に増加したのです。
江戸幕府のキリシタン禁教政策の一つとして全ての家はお寺の檀家になっていたのです。その風習は明治、大正、昭和になっても連綿と続いていた日本の仏教的風習でした。
その仏教的風習が1970年代そして1980年代と次第に大きく崩れ出したのです。
この社会的風潮をもって日本人の仏教離れや宗教離れと判断するのは少し厳密性に欠けるかも知れません。しかし大雑把に言うと、日本人の仏教離れや宗教離れの具体的な一例と考えられます。そこでこの社会現象について少し詳しく書いてみます。
檀家制度が崩れ、多くの人々はお寺とは縁が切れ出しただけではありません。宗教抜きの葬儀を行い、宗教抜きの遺骨の取り扱いが流行のように広がり出したのです。
この宗教離れの葬儀の例は樹林葬と海への散骨葬など自然葬のことです。それは大雑把に言って1990年頃から生まれた日本の新しい社会現象でした。
1990年頃、以前は、遺骨を決められた墓地以外に埋めると、刑法190条により「遺骨遺棄罪」になったのです。この刑法を支えているのが戦後の昭和23年に出来た「墓地、埋葬等に関する法律」の規定です。しかし1991年に法務省と厚生省がこの法律をゆるめたのです。
1991年に「葬送の自由をすすめる会」が神奈川県の相模湾で海への散骨をしたのです。その後、この会は全国に12の支部を作り、会員も12000人になります。
15年後の2006年までに全国で1137回の自然葬を行い、1945人の遺骨を自然へ還しています。現在は毎年100回程の自然葬を行い200人ほどの遺骨を自然へ還しています。
1991年に、法務省と厚生省は新しい解釈を発表し、「葬送の自由をすすめる会」の葬送は違法ではないという趣旨を公にしたのです。
適切な方法なら海への散骨だけでなく樹林葬や桜葬や山岳などなどへの散骨葬は違法でないという解釈です。しかし「適切な方法」は具体的に規定していません。
この法務省や厚生省の法律への新見解以後、多くの宗教団体や業者が「自然葬」を斡旋し、代行する事業を始めたのです。
このような自然葬を行ってくれる会社は急増し、現在は一つの大きなビジネス分野として育っています。
例えば株海の散骨・海洋散骨「グランブルーセレモニー」業務式会社ジール(http://www.sankotsu.net/company.html)は北海道の知床から沖縄の石垣島まで全国の都道府県に事業を展開し、海の散骨・海洋散骨「グランブルーセレモニー」業務を実施しています。
一方、樹木葬や樹林墓地の全国情報は、http://en-park.net/books/571 に掲載してあります。
それによると樹木葬とは、1999年に岩手県の祥雲寺(現、知勝院)ではじめて行われたそうです。樹木を墓標(目印)として遺骨を埋葬し、供養する方法です。そして里山型の樹林墓地もあります。
この方法では都市部から離れた山林など広い墓域で埋葬されます。自然と一体になるイメージが強く、一見するとどこがお墓にあたる場所がわからないほど自然に溶け込んでいます。里山の環境保全に繋がります。
そこで最後に東京都立小平霊園の樹木葬について説明いたします。
この都立霊園では末尾の参考資料の(3)に示したような条件で自然葬の受付をしているのです。
さてところで樹林葬式を希望している人はどの位いるのでしょうか?
都立霊園の統計によると、東京都では毎年ほぼ10万人が死亡していて、そのうち25000人位の人が散骨を希望しているそうです。
私は2012年の7月に、都立小平霊園の管理事務所を訪問し、樹林墓地の実態について取材して来ました。
管理事務所の話では、2012年3月に10700体の遺灰を埋蔵可能な樹林墓地が完成し、2012年には試しに、500人の募集をしました。それに対して5000人の希望者があったそうです。平成26年からは本格的に多数の募集をする予定だそうです。(小平霊園の樹林葬については参考資料の(3)も是非ご覧下さい。)
総合的に観察すると自然葬はますます増加する傾向があると考えられるのです。
以下に自然葬に関連する写真を示します。
1番目の写真は、2012年7月に撮って来た都立小平霊園の樹林墓地の写真です。樹林墓地の入り口の門から撮った写真です。
2番目の写真はその中の一段高くなった芝生を示しています。粉状の遺灰は水に溶ける紙の容器に入れ、この芝生の下に埋葬します。
3番目の写真は、海へ散骨するヨットの写真です。
ヨットの上から散骨してくれる会社は、風という会社:http://sankotsu-kaze.com/about/index.html です。
そして4番目の写真は海への散骨をしているある会社のモーターボートの写真です。写真の出典は、7つの海で海洋散骨:http://shizensou.com/ です。
さて、一般的に、1990年前後のバブル経済の崩壊から後を「伝統文化の変革期」と私は定義したいと思います。それは江戸時代から明治、大正、昭和と続いた日本人の伝統的な価値観や民族特有の文化がどんどん変化し出した時期だからです。
いろいろな新しい社会現象が起きていますが、今日はその一例として「自然葬の普及」について書いてみました。
皆様は自然葬をどのようにお考えでしょうか?
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。 後藤和弘(藤山杜人)
====参考資料======================
(1)自然葬を行っている団体の数例:
風という会社:http://sankotsu-kaze.com/about/index.html
NPO葬送の自由を進める会:http://www.shizensou.net/
家族葬の会:自然葬(海洋葬・里山葬):http://www.npo-kazokusou.net/support/nature.html
7つの海で海洋散骨:http://shizensou.com/
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(2)自然葬に要求される必要な条件:
1、火葬にした遺骨は必ず米粒以下の粒子か粉にすること。一見して遺骨と判らないようにし、海水中や土中へ溶けやすい状態にすること。(遺骨はリン酸カルシュウムが主成分で水には難溶性です)
2、海への散骨は海水浴場や湾内の養殖筏の近辺はいけない。沖でも漁場に使われる海域はいけない。風評で魚が売れなくなることへ充分配慮する。
3、陸上での散骨は土地の所有者の承諾を得ること。自分の所有する山でもキノコや山菜取りの入会権へ充分配慮する。自分の別荘の庭に散骨するのは別荘が他人の手に渡った場合についても充分な配慮をする。(アメリカでその為に不動産価格が下がって裁判になった例があるそうです。)
4、国有林は広大で散骨に適しているが、管理している農水省や国土交通省の明確な見解が発表されていない。NPO葬送の自由を進める会が現在、国有林の散骨葬への解放運動をしている。
僻地の町や村の所有する山林はその役場に願い出ると許可される場合もあるそうです。
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(3)都立小平霊園の樹林葬式の詳細:
都立小平霊園の場合;費用は粉状の遺骨で持ち込めば44000円です。纏めて44000円支払えば、以後一切の費用は不要です。粉状でない普通の遺骨の状態で持ちこめば134000円です。
遺骨を粉状にするには火葬場に頼むとしてくれるそうです。設備が無くて粉状に出来ない火葬場もあるので、あらかじめ相談の上火葬を頼むことが肝要だそうです。
遺灰は水に溶ける紙製の容器に入れ、何個か纏めて樹林に囲まれた芝生の中に埋めるそうです。30年間そのままにして土中へ自然に混合するのを待ちます。30年後に残った遺灰はまとめて共同埋蔵します。
埋葬後、故人へ花や線香を供えるための献花台は用意するそうです。詳しくは管理お事務所、電話:042-341-0050へお聞き下さい。
以上は東京都の場合ですが、全国の市町村役場で管理している墓地や、お寺が管理している墓地でも急速に樹林葬墓地が普及していると想像できます。
ですから最近の日本人の宗教離れ、特に寺院仏教から離れる現象を悲しい気持ちで見守っています。
悲しいことですが、社会の変化や人々の考え方の変化は冷静に客観的に見て、静かに受け入れています。
日本の経済の高度成長にしたがって先祖代々のお墓を郷里の寺から、自宅のそばの共同墓地へ移す人が増えて来ました。民間会社が開発した無宗教の大型共同墓地が全国的に流行し、そこに自分のお墓や先祖代々のお墓を作る人が急に増加したのです。
江戸幕府のキリシタン禁教政策の一つとして全ての家はお寺の檀家になっていたのです。その風習は明治、大正、昭和になっても連綿と続いていた日本の仏教的風習でした。
その仏教的風習が1970年代そして1980年代と次第に大きく崩れ出したのです。
この社会的風潮をもって日本人の仏教離れや宗教離れと判断するのは少し厳密性に欠けるかも知れません。しかし大雑把に言うと、日本人の仏教離れや宗教離れの具体的な一例と考えられます。そこでこの社会現象について少し詳しく書いてみます。
檀家制度が崩れ、多くの人々はお寺とは縁が切れ出しただけではありません。宗教抜きの葬儀を行い、宗教抜きの遺骨の取り扱いが流行のように広がり出したのです。
この宗教離れの葬儀の例は樹林葬と海への散骨葬など自然葬のことです。それは大雑把に言って1990年頃から生まれた日本の新しい社会現象でした。
1990年頃、以前は、遺骨を決められた墓地以外に埋めると、刑法190条により「遺骨遺棄罪」になったのです。この刑法を支えているのが戦後の昭和23年に出来た「墓地、埋葬等に関する法律」の規定です。しかし1991年に法務省と厚生省がこの法律をゆるめたのです。
1991年に「葬送の自由をすすめる会」が神奈川県の相模湾で海への散骨をしたのです。その後、この会は全国に12の支部を作り、会員も12000人になります。
15年後の2006年までに全国で1137回の自然葬を行い、1945人の遺骨を自然へ還しています。現在は毎年100回程の自然葬を行い200人ほどの遺骨を自然へ還しています。
1991年に、法務省と厚生省は新しい解釈を発表し、「葬送の自由をすすめる会」の葬送は違法ではないという趣旨を公にしたのです。
適切な方法なら海への散骨だけでなく樹林葬や桜葬や山岳などなどへの散骨葬は違法でないという解釈です。しかし「適切な方法」は具体的に規定していません。
この法務省や厚生省の法律への新見解以後、多くの宗教団体や業者が「自然葬」を斡旋し、代行する事業を始めたのです。
このような自然葬を行ってくれる会社は急増し、現在は一つの大きなビジネス分野として育っています。
例えば株海の散骨・海洋散骨「グランブルーセレモニー」業務式会社ジール(http://www.sankotsu.net/company.html)は北海道の知床から沖縄の石垣島まで全国の都道府県に事業を展開し、海の散骨・海洋散骨「グランブルーセレモニー」業務を実施しています。
一方、樹木葬や樹林墓地の全国情報は、http://en-park.net/books/571 に掲載してあります。
それによると樹木葬とは、1999年に岩手県の祥雲寺(現、知勝院)ではじめて行われたそうです。樹木を墓標(目印)として遺骨を埋葬し、供養する方法です。そして里山型の樹林墓地もあります。
この方法では都市部から離れた山林など広い墓域で埋葬されます。自然と一体になるイメージが強く、一見するとどこがお墓にあたる場所がわからないほど自然に溶け込んでいます。里山の環境保全に繋がります。
そこで最後に東京都立小平霊園の樹木葬について説明いたします。
この都立霊園では末尾の参考資料の(3)に示したような条件で自然葬の受付をしているのです。
さてところで樹林葬式を希望している人はどの位いるのでしょうか?
都立霊園の統計によると、東京都では毎年ほぼ10万人が死亡していて、そのうち25000人位の人が散骨を希望しているそうです。
私は2012年の7月に、都立小平霊園の管理事務所を訪問し、樹林墓地の実態について取材して来ました。
管理事務所の話では、2012年3月に10700体の遺灰を埋蔵可能な樹林墓地が完成し、2012年には試しに、500人の募集をしました。それに対して5000人の希望者があったそうです。平成26年からは本格的に多数の募集をする予定だそうです。(小平霊園の樹林葬については参考資料の(3)も是非ご覧下さい。)
総合的に観察すると自然葬はますます増加する傾向があると考えられるのです。
以下に自然葬に関連する写真を示します。
1番目の写真は、2012年7月に撮って来た都立小平霊園の樹林墓地の写真です。樹林墓地の入り口の門から撮った写真です。
2番目の写真はその中の一段高くなった芝生を示しています。粉状の遺灰は水に溶ける紙の容器に入れ、この芝生の下に埋葬します。
3番目の写真は、海へ散骨するヨットの写真です。
ヨットの上から散骨してくれる会社は、風という会社:http://sankotsu-kaze.com/about/index.html です。
そして4番目の写真は海への散骨をしているある会社のモーターボートの写真です。写真の出典は、7つの海で海洋散骨:http://shizensou.com/ です。
さて、一般的に、1990年前後のバブル経済の崩壊から後を「伝統文化の変革期」と私は定義したいと思います。それは江戸時代から明治、大正、昭和と続いた日本人の伝統的な価値観や民族特有の文化がどんどん変化し出した時期だからです。
いろいろな新しい社会現象が起きていますが、今日はその一例として「自然葬の普及」について書いてみました。
皆様は自然葬をどのようにお考えでしょうか?
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。 後藤和弘(藤山杜人)
====参考資料======================
(1)自然葬を行っている団体の数例:
風という会社:http://sankotsu-kaze.com/about/index.html
NPO葬送の自由を進める会:http://www.shizensou.net/
家族葬の会:自然葬(海洋葬・里山葬):http://www.npo-kazokusou.net/support/nature.html
7つの海で海洋散骨:http://shizensou.com/
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(2)自然葬に要求される必要な条件:
1、火葬にした遺骨は必ず米粒以下の粒子か粉にすること。一見して遺骨と判らないようにし、海水中や土中へ溶けやすい状態にすること。(遺骨はリン酸カルシュウムが主成分で水には難溶性です)
2、海への散骨は海水浴場や湾内の養殖筏の近辺はいけない。沖でも漁場に使われる海域はいけない。風評で魚が売れなくなることへ充分配慮する。
3、陸上での散骨は土地の所有者の承諾を得ること。自分の所有する山でもキノコや山菜取りの入会権へ充分配慮する。自分の別荘の庭に散骨するのは別荘が他人の手に渡った場合についても充分な配慮をする。(アメリカでその為に不動産価格が下がって裁判になった例があるそうです。)
4、国有林は広大で散骨に適しているが、管理している農水省や国土交通省の明確な見解が発表されていない。NPO葬送の自由を進める会が現在、国有林の散骨葬への解放運動をしている。
僻地の町や村の所有する山林はその役場に願い出ると許可される場合もあるそうです。
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(3)都立小平霊園の樹林葬式の詳細:
都立小平霊園の場合;費用は粉状の遺骨で持ち込めば44000円です。纏めて44000円支払えば、以後一切の費用は不要です。粉状でない普通の遺骨の状態で持ちこめば134000円です。
遺骨を粉状にするには火葬場に頼むとしてくれるそうです。設備が無くて粉状に出来ない火葬場もあるので、あらかじめ相談の上火葬を頼むことが肝要だそうです。
遺灰は水に溶ける紙製の容器に入れ、何個か纏めて樹林に囲まれた芝生の中に埋めるそうです。30年間そのままにして土中へ自然に混合するのを待ちます。30年後に残った遺灰はまとめて共同埋蔵します。
埋葬後、故人へ花や線香を供えるための献花台は用意するそうです。詳しくは管理お事務所、電話:042-341-0050へお聞き下さい。
以上は東京都の場合ですが、全国の市町村役場で管理している墓地や、お寺が管理している墓地でも急速に樹林葬墓地が普及していると想像できます。