後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

石山 望著「ノーベル賞のカズオ イシグロ、 石黒一雄さんのイギリスでの評価」

2017年11月29日 | 日記・エッセイ・コラム
石山 望さんは何十年もロンドンにお住まいです。以下はその実感的なご感想です。
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先日、ニューズで知ったのですが、カズオイシグロ(Kazuo Ishiguro, 石黒一雄)さんが、文学部門で、今年のノーベル賞をもらわれたとのこと。
まずは、おめでとうございます。
この方、日本人ですが、5歳の時、家族と一緒に渡英。それからずーっと、62歳の今まで、英国住まいですから、国籍は英国ですし、思考様式も気質も、ほぼ英国人のそれです。奥様も英国人です。
でも、ご本人は、日本人の部分が少しあると仰っています。まあ、さしづめ感性がそうでしょうね。
代表作そして出世作「日の名残り(The Remains of the day)」で、ブッカー賞(日本の芥川賞にあたるもの)も貰っておられますし、当地では、よく知られた作家ですので、今度の受賞は、驚くに当らないというところでしょうか。
従って、彼の受賞に対する国民の反応も、淡々としたものでした。
その日のTVニューズでも、イシグロさんの受賞のことに関しては、最後の方に、アナウンサーが少し述べただけという、。
一体、この国では、ノーベル賞受賞者が出たからといって、あまりとやかくは言いませんね。ましてや、ノーベル賞受賞者を、神様扱いにするということは決してありません。
私、英国のこういうところは、とても好きです。
ただ、今回の場合は、文学賞ですから、一般大衆にも、まだ身近に感じられる部分があるのですが、これが、例えば、物理学賞とかいうことになると、国民の殆んどの人は、何のことかさっぱり分らないようなことなのですから、そういう部門で受賞者が出たといっても、彼らの反応は「ああ、そう、、」と、それだけ、。
また、英国人でも、小説など、全く読まない人も沢山おられます。それと同時に、すごい量の本を読まれる方もまた多いです。
私も、本は読みますが、悲しいかな、日本語か英語の本の乱読。読書量の多い皆様には、非常に恥ずかしいです。
これは、子供の頃に読書の習慣をつけておかなかったからだと、今にして思います。
何しろ、私の母が買って来る本といえば、講談社の偉人伝ばかりだったのですからね。その頃から、ひねくれ者の私、別に何とも思いませんでした。豊田佐吉さんとか、二宮金次郎さんとか、野口英世さんとか、(私に言わせると、我が家の救育ママ、教育センスがイマイチ)。
というわけで、イシグロさんの本は一冊も読んだことはありません。しかし、それでは、あまりに恥ずかしいので、昨日、町の大きな本屋に2軒行ってみましたが、いずれの店でも、彼の本は「売り切れました」とのこと。
仕方なく、今日、アマゾンで一冊注文しました。一番有名な「日の名残り」です。
私、基本的に、どんな本でも「読了する」という主義なのですが、この頃年端が行き、そんなことは言っておられなくなってきました。つまらないと思えば、途中で放り投げてもいい。
面白いと思う本を読みなさい。いくら、立派なためになる本だからと人に言われても、自分の梃子に合わないと思ったら、さっさと諦めなさい。
最後に付言、。
日本にも、イシグロさんに十分匹敵する作家は、以前から、少なからずおられたと思います。
しかし、その方達の作品が、極東のちょっと変った一言語で書かれているため、よほど頻繁に英語にでも翻訳されていない限り、ノーベル賞の候補対象になるには、不利だということではありませんか。(終り)
=====著者紹介===========================
この随筆の原題は、「面白いと思う本を読みなさい。」です、SNSの趣味人倶楽部の石山さんの日記欄に掲載されていたものを転載しました。
転載の許しを電話で頂きました。その折、原題を変えても良いというご承諾も得ました。
石山さんは何十年もロンドンにお住まいです。イギリスを愛し、日本を愛している知性豊かな紳士です。
石山さんにはこの欄に何度かご寄稿を頂いていますので、ご記憶の方も多いと存じます。
日本の文化とイギリスの文化に関して比較文化人類学的な鋭い観察眼をお持ちです。
私はかねがね日本でノーベル賞受賞者を崇め、大騒ぎをする様子を苦々しく思っていました。イギリスではノーベル賞もブッカー賞も同じようなものなのでしょう。
・・・「私の母が買って来る本といえば、講談社の偉人伝ばかりだったのです」と母親のことを言いながら今は亡き母親を偲んでいるところが石山さんの優しさです。微笑ましいです。

今日の挿し絵代わりの写真はイギリスの景勝地として有名な湖水地方の風景写真です。
写真の出典は、https://www.veltra.com/en/europe/uk/london/a/100639 です。

ロンドンから電車で3時間~4時間ほど行けます。湖水地方の景勝は、幾世紀にもわたってイギリスの詩人や芸術家たちを魅了してきました。世界中の子供たちの好きな小さな絵本シリーズのピーターラビットを描いたビアトリクス・ポターも住んでいたそうです。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)









日馬富士問題より重大ニュース!ローマ法王のミャンマー訪問

2017年11月29日 | 日記・エッセイ・コラム
日馬富士が引退することになり問題は収束に向かいました。しかしここ数日の日本のマスコミは日馬富士問題だけを連日、報道しています。貴乃花親方の不思議な行動を批判しています。白鳳の万歳三唱を批判しています。日本中が相撲界の暴力事件などに大騒ぎをしているのです。
しかし海外ニュースに目を向けると、ローマ法王フランシスコ教皇がロヒィンギャ族の虐待で揺れるミャンマーのスーチーさんと会談し、その後で、バングラデシュを訪問します。
ローマ法王と会談したスーチーさんは明日、中国側からの招待で北京を訪問し習近平国家主席と会います。
習近平主席は、「一帯一路」政策で中国からヨーロッパにかける経済圏を構築しその地域の支配をしようとしています。
ミャンマーはこの「一帯一路」の丁度中間点に位置する重要な国です。ですから習近平国家主席がスーチーさんを招待したのです。
安倍総理は最近、舵を切り、この中国の「一帯一路」政策に協力する姿勢を取り始めました。
これは正しい政策の修正です。日本へのエネルギー輸送の安全を確保することに寄与します。
中国はフランシスコ教皇の巨大な国際的な影響力を利用して「一帯一路」政策の地ならしをしようとしています。
最近、バチカン国と中国の関係が改善されてきたと言います。北京でバチカン美術展をすることになっています。バチカンは美術品を貸し出すと云います。
台湾のカトリック教会を傘下にしているローマ法王は共産党政権とは激しく対立して来たのです。この対立の原因は共産党政権が中国大陸のカトリック教会とローマ法王との断絶政策をして来たからです。
日本が日馬富士問題などに大騒ぎをしている間に中国の「一帯一路」政策がどんどん進行しているのです。
このような文脈を知った上でフランシスコ教皇とスーチーさんの会談に関するニュースを見てみましょう。
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『ローマ法王ミャンマーで演説 ロヒンギャ問題言及せず』
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171128/k10011238641000.html
11月28日 21時10分ロヒンギャ
ミャンマーを訪れているローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が演説し、「ミャンマーの人々は長年にわたる紛争や敵対によって苦しみ続けている」と述べましたが、少数派のロヒンギャの人たちをめぐる問題には直接は言及しませんでした。
ミャンマーを訪れているフランシスコ法王は28日午後、首都ネピドーでアウン・サン・スー・チー国家顧問と面会しました。このあとフランシスコ法王は政府関係者や市民の代表を前に演説し、「ミャンマーの人々は長年にわたる紛争や敵対によって苦しみ続け、深く断絶されている。こうした傷をいやすことが政治においても、宗教においても最優先の課題であるべきだ」と述べました。
ミャンマーは、少数派のロヒンギャの人たちが隣国バングラデシュへの避難を余儀なくされている問題で国際的な批判を受けていて、フランシスコ法王もこれまで、ロヒンギャの人権の擁護を呼びかけてきましたが、28日の演説では、この問題には直接、言及しませんでした。
これに対し、スー・チー氏は法王の訪問に感謝の意を示したうえで、「問題の解決にはミャンマーの市民と私たちの成功を願ってくれる友人たちの支援が非常に重要だ」と述べ、理解を求めました。
ロヒンギャの人たちをめぐっては、ミャンマー政府が法律で認められた民族ではないとして、「ロヒンギャ」という表現を認めておらず、各国にもこの表現を使わないよう求めています。
また、法王の訪問を前に、ミャンマーのカトリック教会で最も位の高い枢機卿が、法王に「ロヒンギャ」という表現を使わないよう求めていることを明らかにしていて、フランシスコ法王の演説はこうした事情に配慮したものと見られます。
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上にご紹介したNHKのネットニュースは深く掘り下げた報道ではありません。
この点、今朝の読売新聞の11面の「法王融和呼びかけ」という記事は秀逸でした。
バチカン国とミャンマーの国交樹立、それを受けて習近平国家主席がスーチーさんを招待したことも報道しています。
そしてこの招待が中国の「一帯一路」政策の地ならしになることを示唆しています。秀逸な記事です。
このようにロヒィンギャ問題は日本のエネルギ輸送の安全にも関係してきているのです。そして中国の太平洋制海権と西方への「一帯一路」政策とも深く関係しているのです。
安倍総理の森友学園問題だけを騒がないで、同じくらい国際問題意にも目を向けたいと、私は心がけています。

添付した写真はフランシスコ教皇の今回のミャンマ訪問の光景です。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)