後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

ゴーンさんの保釈、嗚呼、私は間違っていた!

2019年03月05日 | 日記・エッセイ・コラム
ゴーンさんの保釈が決定し、10億円の保釈金を払えば今日中にでも拘置所から解放されることになりました。
3畳の不自由な独房から出られるので本人はさぞ喜んでいることでしょう。
私は江戸時代から連綿と続く日本の排他性、外人嫌いをつねづね悲しく思っていました。
ですから西川社長たち日本人幹部のクーデターまがいの裏切りを日本人の排他性のお陰だと理解しました。
そして日産再建の大恩人のゴーンさんに対して弓を引く行為は恩人に泥をかける行為であり日本人の美学に反すると感じていました。
その延長としてフランス人は日本人を非難し憎んでいると確信していました。
そこでゴーンさんを支援するような内容の記事を幾つか書いてきました。
しかし今思うと私は馬鹿でした。間違っていました。今回の事件は裁判沙汰になっているのです。裁判のことを知らない素人の私は沈黙を守るべきでした。
自分の感情論を記事にして掲載すべきではないと考えるようになりました。
そんな感情的な記事の例は次のようなものです。
(1)「西川社長一派のクーデターでゴーン会長が逮捕、この事件が面白い
    三つの理由」               2018年11月21日 掲載 
(2)「ゴーンさんんは天才、西川社長は賢い日本人、それぞれの悲しみ」
                         2018年11月24日 掲載
(3)「ゴーンさん逮捕が浮き彫りにした日本の3つの特殊性」
                         2018年11月29日掲載
(4)「ゴーンさんの再逮捕で留飲を下げる日本人、怒るフランス人、しかし」
                         2018年12月22日 掲載
(5)「 早春の花とゴーンさんの罪と罰」
                         2019年01月09日掲載|
これらの記事に加えてフランスに長く住んでお孫さんもいる日本人のMotoko Boutdumonde からフランス人の今回の事件に対する受け止め方をコメントとして投稿して下さいましたので以下にご紹介します。
このコメントによって私の間違いに気がついたのです。
(1)「ゴーンさんの再逮捕で留飲を下げる日本人、怒るフランス人、しかし」という私の記事に対するコメント;Motokoさんより、
おっしゃるようにフランスの人がゴーンの逮捕に怒っているかどうか、私には分かりません。マスコミは厳しく日本側を非難しているところもありますし、またはこの事件を日産とルノーの、アライアンスの中での勢力争いとして扱っています。ゴーンの肩を持った記事を書いているのはChalenge誌ですが、これはルノーがかなりの株を持っています。ゴーンは色々な人に裏切られて売られたのかもしれませんが、新聞などを読む限り無罪ということはあり得ないのではないでしょうか。
フランス人にとってこの事件は一大関心事ではありません。ゴーン逮捕に先立って始まった「ジレ・ジョーヌ」運動の方がどれだけ重要か分かりません。長く続いてマクロンを脅かしているジレ・ジョーヌのデモは、今は(一旦?)静まりましたが、フランス国民の85%もの支持を受けるまでに至った運動です。購買力の低下、国民の声を聞かない政府のやり方が主な理由になっています(ことの起こりは燃料税の増税)が、特に多くの国民が感じるのはある一部の人たちは信じられないほどの収入を得ているのに税金が免除されたということでしょう。この考えは正しいとは言えないのですが、感情論として通ります。ですから高所得者で権力の権化のようなカルロス・ゴーンが逮捕されても当然のように思えるのです。一般庶民の考えはなかなかマスコミには反映されないようですね。
(2)「 早春の花とゴーンさんの罪と罰」という私の記事に対するコメント;
Motokoさんより、
梅が美しいですね。もうそろそろ府中の郷土の森の梅林にも花が咲くことでしょう。もうあの梅林には行かれないかもしれませんが、とても懐かしいです。
さて、カルロス・ゴーンについて諸国のマスコミではいろいろ言われていますが、日本の司法制度と他の国との違いを指摘することなく感情論のような記事も見かけます。ある国の司法制度は他の国からとやかく言われるべきものではないと思います。日本には日本のやり方というのがあってしかるべきだと思います。
私は、あまりこの後藤さんの投稿と関係ないかもしれませんし感情論ではありますが、どうしてもゴーンに解雇された、または倒産させられた人たちのことを考えてしまうのです。ゴーンは拘留されていても毎日日本円で600万円ちかくの給与をもらい続けています。毎日、です。彼がベルギーや日本などで解雇した人たちはどんな思いでしょう?私が時々通訳に行ったこともあるルノーのテクノセンターではノルマの厳しさのため何人もエンジニアが自殺した時期もありました。その家族たちはどんな思いをしているでしょう?他の勾留者のように四畳半の独房で毎日ご飯3杯の粗食はそんなに大問題でしょうか?
ゴーンは絶対に自分の無罪を主張し続け、負けないでしょう。彼にとってそれ以外に救いはないのですから。
ゴーンの逮捕によって日本にあるアメリカとかの企業が恐れをなして撤退するとかいう噂は聞きました。やましいところがある企業はそうなのでしょうね…
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この2つのコメントを見るとフランス人の本音が分かるようです。日本のマスコミには出て来ないフランス社会の実態です。
そしてゴーンさんの裁判はこれから始まるのです。注意深く見守って行きたいと思っています。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
今日の挿し絵代わりの写真はユトリロのパリ風景です。







石山望著、「英国が大きく揺らいでいる」

2019年03月05日 | 日記・エッセイ・コラム
著者の石山望さんはイギリスに永住している私の友人です。趣味人倶楽部に時々イギリス社会の実態を投稿されています。住んでいなければ理解出来ない社会の実態です。
今日ご紹介する文章は2月1日に投稿されたものです。大変貴重な内容なので、この欄でもご紹介しようと思いつつ、あっという間に時が過ぎてしまいました。
EUの離脱を国民投票で決定したイギリス人は愚かでしょうか?
年月が過ぎてやがて歴史が教えてくれるでしょう。ご一読下さい。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
今日の挿し絵代わりの写真は陽光を受けて生き生きと咲く花々の写真です。
先週、三鷹市の「花と緑の広場」で撮って来ました。









===石山望著、「英国が揺らいでいる、大きく揺らいでいる」======
英国(UK)が揺いでいる。大きく揺らいでいる。。ご存知だと思う。

英国がEU(欧州連合)を離脱するため。その期日が3月29日。もう2ヶ月というところまで来た。

EUというのは、第二次世界大戦直後の廃墟と化した欧州(大陸部分の)を、皆で協力して立て直そうということで、ドイツ、フランス、それにイタリア、ベネルックス3国が発起国になり、1952年に発足した。
いわば、欧州連邦を作ろうというわけ。経済的協力、それにいろんな決まりも基を一にする。何より、国境がないのも同然であるから、人の往き来が自由である。どこでも仕事ができる

そうすればまず、戦争が起こることもないであろう。今では、28ケ国に膨れ上がった。ご存知の通り、その大抵の国で、統一通貨が使える。ユーロ(英国は、これを使ったことがない。正しい選択であったと思う)。

ただ、英国が、このEUに加盟するのは、ずっと後のことで、1973年、保守党ヒース首相の時。

その頃、英国は「英国病」などと言って、恥かしい汚名を頂戴し、経済は混迷していた。ストライキも多かったし。ヒースは、EUに参加することによって、なんとか活路を見出そうとしたのではないであろうか。
しかし、英国の経済が本当に回復するのには、ヒース退陣後5年からのサッチャー政権を待たなければならなかった。

それはそれとして、EU。

英国は、ヨーロッパに属すると言っても、島国であって、大陸部のヨーロッパ諸国とは大いに違う文化を育んできた。また、EUの一員だと、他の国からの移民を多く受け入れなければならない。こういうことを苦々しく思う国民もまた多かった。

したがって、英国では、EUに加盟してからも、他のヨーロッパ諸国とは「一線を画したい」という人間が非常に多く、それが、EU加盟後43年、2016年の国民投票で爆発した。

時の保守党首相キャメロンが、「EUに存続するか、否か」ということを世に問うたのである。どうやら、国会議員の中の多くの離脱派から圧力をかけられたらしい。

首相自身は、「存続派」であったから、どうしてそんな危ない橋を渡るのかと、私には不思議であったが、それは、その前の総選挙での、保守党公約であったという。私、これは立派であると思う。何しろ、この国、「選挙公約(マニフェスト)は、きちんと履行するもの」という大前提がある。

そして、2016年6月の国民投票では、なんと離脱派が51%の票を集め、存続派を100万人の差で破ってしまったのである。

蜂の巣をつついたような大騒ぎ、それからというもの、英国では、政治家も一般国民も、その話で明け暮れた。

キャメロン首相、この人は存続派であったので、たちどころに辞職。すぐに、女性のメイ内務大臣が後を継いだ。この人も、もともと存続派であったが、そんなことは言ってられない。英国EU離脱に向けて、何とか、お互いに納得のいく「離婚策」はないものかと、英国とEUの間を奔走した。

手切れ金を払う、これは、一番手間のかからない問題で、もっと厄介なのがいくつかある。EUを離れると言っても、離脱後、それらEU諸国と、国交を断つ訳ではない。貿易をするのである。その折の関税の問題をどうするか。また、困ったのが、アイルランドと北アイルランドの国境問題。それらは当然地続きで、もともと同じ国。今の所、国境と言っても何にもない。しかし、アイルランドはEU国で、英国がEUから抜けると、北アイルランドは、UKの一部であるので、じゃ今度は、はっきりした国境線を作らないといけないのか、。

昨年暮れ、メイ首相が、ブラッセルのEU幹部と掛け合い、英国離脱の条件を取り付けてきた。もちろん、理想的とはいえず、あくまで「妥協案」である。

これ以上は望めないという妥協案。EUも、そう言っている、「これ以上は、譲歩できません」。

しかし、英国では、いくら首相がそういう案を持ってきても、それが国会で通らなければ、法案にはならない。

はじめのその妥協案は、国会ではねられることがわかっていたので、メイ首相、再度ブラッセルと掛け合い、少しは、色よい案を持ってきた。

それでも、それを議案として提出すると、大きく負けてしまった。

それから、少しづつ「歩み寄り」があるが、目下の状況はそんなところである。誰にも先行きはわからない。

私、密かに思うが、こういう状況に日本が置かれるということは、ちょっと考え難い。

日本の与党党首(すなわち首相)が、何か議案を持ってきたとしよう。もしその与党が、国会で過半数の議員数を有するならば、その与党議員は、全員、その議案に賛成するはず。だから、この議案は法案として成立することになる。
ここで問題は、その首相が持ってきた議案というのが、多くの国民の反感を買うような、鼻持ちならないものであっても、という点である。

それが、英国では、そう簡単ではない。それは、与党議員の中に、党首である首相に、正面切って、はっきり「ノー」という人がいくらでもいるからのことである。因みに、メイ首相の保守党は、現行の国会で、過半数をわずかに下回る。

そういう時、日本人のやり方だと、なんとかして、事態を「丸く」納める方向に持っていくのではないであろうか。私は、そう思う。

どちらが、健全な、国会のあり方であると、皆様は思われるか。

PS:それにしても、一国の首相か大統領にになるほどの人は、実にタフ。いつも、感心している。ただ、それだけでも。
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