後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

EU離脱で右往左往する大英帝国の見っともなさ

2019年03月30日 | 日記・エッセイ・コラム
今日の記事の挿絵の説明から始めます。
国分寺市にある都立武蔵国分寺公園で昨日撮った桜と海棠と連翹の3枚の写真です。
この時期は桜に気持ちが行ってしまいますが海棠と連翹も美しく咲いています。木蓮も辛夷も雪柳も咲いて百花繚乱の春なのです。そんな花々も忘れないで下さい。





さて今日の本題に移ります。世界の七つの海に君臨したかつての大英帝国としては今回のイギリスの右往左往ぶりはあまりにも見っともないと思います。イギリスを尊敬していた私は悲しいのです。
そもそもイギリスは2016年6月に行った国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたのが今回の混乱の始まりでした。投票結果は、離脱支持51・89%、残留支持48・11%という僅差だったことも混乱の原因になっています。
そして昨日、イギリス議会の下院が3度目の離脱案を否決したのです。この結果イギリスは4月12日に何の合意も無いままEUから脱退する可能性が出てきたのです。すると大きい混乱を招く「合意なき離脱」が起きてしまうのです。
それを避けるためにはEU理事会によって脱退の長期間延期を容認して貰う必要があるのです。
イギリス側の脱退の長期間延期の申し出を審議するEU側の会合は4月10日に開催される予定です。

なぜイギリスのEU離脱がこんなにまで揉めるのでしょうか?
原因はイギリス国内のいろいろな産業分野の利益を全て守れる離脱案を作ることが困難なためです。
産業分野とは工作機械工業、半導体工業、自動車製造工業などから金融業、観光業、各種サービス業まで多種多様あるのです。それらがEU加盟のお陰で儲かっていたのです。
移民問題でEU離脱に賛成した人々も後からこのことに気が付いたのです。
結局は各産業分野がお金に固執しているのです。ですから潔くキッパリEUを離脱出来ないのです。
だからこそ私は見っともなく見ていられないのです。かつての大英帝国の誇りは何処に行ったのでしょうか?
見たくない人間の汚さを見ているようで私は悲しいのです。

一方、東欧から安い労賃の働き手が流れ込む「移民問題」がイギリスのEU脱退の原因だと言われています。
しかしその深層の理由は別です。イギリス人は深層心理でヨーロッパ大陸の人々が嫌いなことが原因なのです。
このことは笠原 敏彦氏の文章に活写してあります。
「英国と大陸欧州の心理的な溝の深さ」、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50639?page=3
・・・移民問題は反EU感情を引き起こしている現象面のエピソードに過ぎない。英国の大陸欧州との関係を考える際、見逃せないのは、両者を分断する心理的なフォルトライン(分断線)の深さである。
やや誇張すれば、英国人にとって大陸欧州とは歴史的に悪いニュースがやってくる震源であり続けてきた。20世紀を振り返るだけでも、二つの世界大戦、全体主義、共産主義という巨大な脅威にさらされてきた。
必然的に、英国と大陸欧州諸国では欧州統合に向き合う姿勢も大きく異なっている。・・・
上記のような文化論は日本と中国や韓国との関係を考えるとき大いに参考になる卓見ではないでしょうか?

それはさておきイギリス国内の実際の混乱ぶりはイギリス在住の石山望さんが具体的に書いています。
それは石山望著、「英国が大きく揺らいでいる」(2019年03月05日掲載記事)という記事で紹介してあります。
・・そして、2016年6月の国民投票では、なんと離脱派が51%の票を集め、存続派を100万人の差で破ってしまったのである。
蜂の巣をつついたような大騒ぎ、それからというもの、英国では、政治家も一般国民も、その話で明け暮れた。
・・・手切れ金を払う、これは、一番手間のかからない問題で、もっと厄介なのがいくつかある。EUを離れると言っても、離脱後、それらEU諸国と、国交を断つ訳ではない。貿易をするのである。その折の関税の問題をどうするか。また、困ったのが、アイルランドと北アイルランドの国境問題。それらは当然地続きで、もともと同じ国。今の所、国境と言っても何にもない。しかし、アイルランドはEU国で、英国がEUから抜けると、北アイルランドは、UKの一部であるので、じゃ今度は、はっきりした国境線を作らないといけないのか、。
昨年暮れ、メイ首相が、ブラッセルのEU幹部と掛け合い、英国離脱の条件を取り付けてきた。もちろん、理想的とはいえず、あくまで「妥協案」である。
これ以上は望めないという妥協案。EUも、そう言っている、「これ以上は、譲歩できません」。
しかし、英国では、いくら首相がそういう案を持ってきても、それが国会で通らなければ、法案にはならない。・・・

そして昨日はイギリスの議会の下院が3度目の離脱案を否決したのです。これではイギリスの議会が賛成する離脱案はなかなか出来ません。百年河清を俟つようなものです。
世界の七つの海に君臨したかつての大英帝国として誇りは何処に行ってしまったのでしょうか。嗚呼。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。 後藤和弘(藤山杜人)