後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

細川呉港著、「桜旅」(愛育社出版)のご紹介

2020年11月30日 | 日記・エッセイ・コラム
2017年の2月に細川呉港さんから一冊の新刊書が送られて来ました。
細川呉港著、「桜旅」(愛育社出版)という2016年4月11日出版の本です。ネットで簡単に購入出来ます。1800円です。
この本は桜のことが出て来ますが、主題は無名の人々のせつなく美しい生き方を描いた本なのです。12の章に分かれていて、それぞれに桜を植え、育てた無名の人々の美しい生き方が描いてあるのです。

1、千島桜、2、桜が美しいと思うようになったころ、3、河津桜発見から伊豆の「町おこし」顛末記、4、しぐれ桜、5、小督の桜と女の一生、6、、京都金閣寺の奥の桜の谷にひそむ秘密、7、小督の桜を訪ねて、その後、8、台湾で桜を植え続ける老人ーある日本語族、9、奈良の都の八重桜とは?、10、ノモンハン桜(蒙古桜)、11、冬桜の発見、12、西行桜を見て死ぬ。

このように各章の見出しを書いていると細川呉港氏がそれぞれの桜に関係した人々へ暖かい心を寄せているのがしみじみと分かってきます。
例えば、1、千島桜の章では、国鉄が国有鉄道だった時代の職員が皆勤勉で実直な人柄だったと書いています。生涯、ただひたすら勤務に忠実に、真面目に生きて行くのです。その一例として北海道の国鉄職員だった佐々木栄松という実在の人物を紹介しています。彼が先輩のT老人から千島桜の鉢植えを譲り受け、庭に植えかえたら見事な大木になったという話です。
このような話が12章に渡って書いてあるのです。
その中で「2、桜が美しいと思うようになったころ、」だけは趣が少し変わっています。自分の幼少のころから見てきた呉の高台に見事に咲いていた桜並木の話なのです。彼は呉に生まれ育ったのです。
呉といえば海軍の港があり、そこから数多くの将兵が桜花を見上げて出撃して行ったのです。戦艦武蔵や戦艦大和や数多くの巡洋艦、駆逐艦、潜水艦が出て行きました。桜に見送らて出て行きました。そして2度と帰って来なかったのです。
その桜並木が近年、全て切り倒され、切株だけが残っているのです。高台まで住宅が出来てしまい、桜並木の近所の家の主婦が落ち葉の掃除に困ると言い出したのです。自治体の役所は主婦たちの言いなりに全て切り倒してしまったのです。淋しい心です。

こんなことも書いてある本が細川呉港氏の「桜旅」という本です。
細川呉港氏の過去の出版の『満ちてくる湖』 (平河出版)、『草原のラーゲリ』 (文藝春秋) などの主題も全て無名の人々の感動的な生き方です。

ある民族の歴史の記録にとって一般庶民の暮らし方や喜怒哀楽の記録も重要なことは論を待ちません。
細川呉港氏の興味と関心はそこにあるのです。そして無名の人々の美しい人生を探しては本にして世に送り出しているのです。
それは大変重要な歴史書です。将来、その重要さが高く評価される歴史書です。

しかし細川呉港氏はそんな気で書いていません。ただひたすら美しい人生を探して、探して彷徨っているのです。そんな細川呉港氏の人生もせつない、そしてひたむきな生き方として人々の胸を打つのです。
細川呉港著、「桜旅」とはそんな内容の本なのです。

今日の挿し絵代わりの写真は小金井公園の桜の写真です。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)