まえがき、
「狩猟の趣味の深さ」という連載の第二回目は3匹の猟犬と、でいしゅうさんとの強い絆が描かれています。この文章を読むと狩猟の主人公は猟犬だと思えるのです。いや獲物を追う人間と猟犬の躍動的なチームワークが猟の成功、不成功を決定するのです。
そこには人間と猟犬の強い絆がなければなりません。人間は猟犬を深く、時には厳しく愛さなければなりません。
こんな世界があるのですね。人間と猟犬の抜き差し無いドラマです。時期をずらして飼った3匹の猟犬の個性の違いも面白いです。
それでは第二回の文章をお楽しみ下さい。
===でいしゅう著、「狩猟の趣味の深さ(2)猟犬への深い愛が狩猟の決め手」 ===
今まで3匹の猟犬を飼いました。古い順にセッター2匹、最後はフランスブルトン(ブルタニュースパニエル)でした。
一頭目は狩猟の師匠が紹介してくれました。師匠の猟友が飼っていた犬の仔犬でした。生後3か月ぐらいになったので師匠と見に行きました。もう2匹しか残っていませんでした。
観察していると一頭が私に寄って来るので、決めようかと師匠を見ると「ダメだ、違う犬」と目で合図を送ってきました。私はその指示に従い、1万円で買いました。
飼い主は師匠と友人なので、無料で良い、血統書はないと言ってくれましたが、師匠は丁重にお断りしていました。
帰り道に尋ねると
「2頭いたが、選んだ方の犬の骨格が良い、遊具を与えると良く観察し、ポイントらしき姿勢を取っていた。無料の犬は大切にしない」こう説明してくれました。そして「仔犬は予想だが、あの母犬の猟芸は絶品だ。ラウンドをしてこちらへ雉を追い出す」だから仔犬にも期待が出来るそうでした。
それから師匠との二人三脚で、訓練しました。狩猟の解禁前には猟場へ連れて行きました。当然猟銃は使用できませんから、子供の百連発ピストルを持参しました。
訓練では雉の臭いを地に擦りつけていますが、自然では沢山の臭いが残っています。古い臭いではその先に雉はいません。何日も通い、本物の雉にポイントしました!
眼は限りなく開かれ、右前脚を曲げ、尾は震えています。
犬も実物の近くへ行き、嗅いだ事もない強烈な臭いに興奮しています。それ以上に私と師匠は緊張し、興奮しました。犬は臭いでポイントするだけで、実物は見ていません。
そこで「ハッ」と声を掛けると、草叢に飛び込みました。
たまらず雉が舞い上がります。
百連発ピストルをバーンと打ちますが、雉は?で逃げていきました。
犬は雉のいた場所を盛んに嗅ぎまわっていました。
そして狩猟解禁日です。場所は休猟区明けが良いのですが、今回は練習でよく雉を出した場所にしました。
解禁時刻は日の出時刻ですから、待機して待ちます。他府県ナンバーの車もやって来ますが、私の車を見て帰ります。師匠と時計を確認して、猟野に出ました。私は銃を持たず、犬を一番に出ます。犬を誘導してその後に師匠がつきます。
犬の様子が変わりました。歩き方、地面の嗅ぎ方に「力」が漲ってきました。師匠に眼で合図をすると大きく肯きました。そして畳3畳ほどの草叢で犬は停止し、ポイント姿勢になりました。涙が出るほどうれしい。
この間、師匠は周囲を確認し、矢先の安全を再度確認、そして弾を込めました。
「ハッ!」
犬が草叢に飛び込むと、ガタガタと羽音を立てて雉が飛び出しました。20メーターほど飛ばし、滑空飛行に変わる寸前に 、「ドーン」と師匠が撃ち落としました。命中です。
羽を広げて落ちれば、半矢(半死)ですが、濡れ雑巾を落とすように落ちましたから、命中です。
ところが犬は雉のいた場所でウロウロしているだけで、回収に行きません。仕方なく、リードを付けて雉の落ちた場所へ連れて行きました。臭いで発見した犬はしばらく咥えましたが、捨ててしまいました。
回収運搬が課題として残った初猟でした。
その後捜索や、ポイントは良くなりましたが回収だけはマスター出来ず、猟期の終わりには見ている前で穴を掘り、埋めてしまうようになりました。食べるよりは良いかと、使役しましたが、3年目の夏に盗まれました。
2頭目は猟犬を得意とする犬舎から購入しましたが、凡庸な犬でした。転勤で困った時に、欲しいと言う人が現れ譲りました。血統書が附いていましたので、交配で儲けたそうです。
2番目の犬(セッター)は凡庸な犬でしたが、糞が好きだったのです。ですから猟野では随分悩みました。狸の糞を見つけると体中に塗りつけるのです。犬はその強烈な臭いに快感を得ているのか、平気です。寒中の河に入り何度も洗いました。私の手も臭くなり、車の中も悪臭で窓を全開にして帰りました。
ただセッターにしては珍しく、山鳥猟が出来ました。これはと思う谷に入り、犬が臭いを拾うと弾を込めました。谷の上流を監視していると、ワーンと鳴きます。山鳥を追い出したのです。私はスキート射撃の要領で構えると、山鳥が流れ星のように下ってきます。ところが滑空してくる山鳥の速度は雉の何倍も有り、5回に1回ぐらいしか落とせません。黒い十字架が流れ星のように飛んできます。
2番目の猟犬との長い間には、恥多き体験ばかりです。
さて最後の3番目の犬は訓練も3回目なので順調に出来上がりました。
暑い時に河に行き、木片を投げると飛び込み拾ってきました。私が参るまで何度もやらされました。ところが狩猟シーズンになり、川に雉が落ちても拾いに行きません。足を川に入れて「おっ寒」となると絶対に入りません。仕方なく人間が拾いに行きました。しかし、野原では確実に拾ってきます。雉もバタバタしていると直ぐに発見できますが、命中し草の間に落ちていると1メーターの距離でも解らないものです。犬の眼は悪く、全て臭いが元ですから、探すことが出来るのです。
3匹目のブルドンでは小綬鶏、ヤマシギ、ウズラも獲らせてもらいました。
昨年の夏に11歳で死に、それからは犬を飼っていません。鉄砲撃ちに犬が無ければ陸に上がった河童です。
この次は大物猟の犬の話をしますが、他人の犬です。(続く)
「狩猟の趣味の深さ」という連載の第二回目は3匹の猟犬と、でいしゅうさんとの強い絆が描かれています。この文章を読むと狩猟の主人公は猟犬だと思えるのです。いや獲物を追う人間と猟犬の躍動的なチームワークが猟の成功、不成功を決定するのです。
そこには人間と猟犬の強い絆がなければなりません。人間は猟犬を深く、時には厳しく愛さなければなりません。
こんな世界があるのですね。人間と猟犬の抜き差し無いドラマです。時期をずらして飼った3匹の猟犬の個性の違いも面白いです。
それでは第二回の文章をお楽しみ下さい。
===でいしゅう著、「狩猟の趣味の深さ(2)猟犬への深い愛が狩猟の決め手」 ===
今まで3匹の猟犬を飼いました。古い順にセッター2匹、最後はフランスブルトン(ブルタニュースパニエル)でした。
一頭目は狩猟の師匠が紹介してくれました。師匠の猟友が飼っていた犬の仔犬でした。生後3か月ぐらいになったので師匠と見に行きました。もう2匹しか残っていませんでした。
観察していると一頭が私に寄って来るので、決めようかと師匠を見ると「ダメだ、違う犬」と目で合図を送ってきました。私はその指示に従い、1万円で買いました。
飼い主は師匠と友人なので、無料で良い、血統書はないと言ってくれましたが、師匠は丁重にお断りしていました。
帰り道に尋ねると
「2頭いたが、選んだ方の犬の骨格が良い、遊具を与えると良く観察し、ポイントらしき姿勢を取っていた。無料の犬は大切にしない」こう説明してくれました。そして「仔犬は予想だが、あの母犬の猟芸は絶品だ。ラウンドをしてこちらへ雉を追い出す」だから仔犬にも期待が出来るそうでした。
それから師匠との二人三脚で、訓練しました。狩猟の解禁前には猟場へ連れて行きました。当然猟銃は使用できませんから、子供の百連発ピストルを持参しました。
訓練では雉の臭いを地に擦りつけていますが、自然では沢山の臭いが残っています。古い臭いではその先に雉はいません。何日も通い、本物の雉にポイントしました!
眼は限りなく開かれ、右前脚を曲げ、尾は震えています。
犬も実物の近くへ行き、嗅いだ事もない強烈な臭いに興奮しています。それ以上に私と師匠は緊張し、興奮しました。犬は臭いでポイントするだけで、実物は見ていません。
そこで「ハッ」と声を掛けると、草叢に飛び込みました。
たまらず雉が舞い上がります。
百連発ピストルをバーンと打ちますが、雉は?で逃げていきました。
犬は雉のいた場所を盛んに嗅ぎまわっていました。
そして狩猟解禁日です。場所は休猟区明けが良いのですが、今回は練習でよく雉を出した場所にしました。
解禁時刻は日の出時刻ですから、待機して待ちます。他府県ナンバーの車もやって来ますが、私の車を見て帰ります。師匠と時計を確認して、猟野に出ました。私は銃を持たず、犬を一番に出ます。犬を誘導してその後に師匠がつきます。
犬の様子が変わりました。歩き方、地面の嗅ぎ方に「力」が漲ってきました。師匠に眼で合図をすると大きく肯きました。そして畳3畳ほどの草叢で犬は停止し、ポイント姿勢になりました。涙が出るほどうれしい。
この間、師匠は周囲を確認し、矢先の安全を再度確認、そして弾を込めました。
「ハッ!」
犬が草叢に飛び込むと、ガタガタと羽音を立てて雉が飛び出しました。20メーターほど飛ばし、滑空飛行に変わる寸前に 、「ドーン」と師匠が撃ち落としました。命中です。
羽を広げて落ちれば、半矢(半死)ですが、濡れ雑巾を落とすように落ちましたから、命中です。
ところが犬は雉のいた場所でウロウロしているだけで、回収に行きません。仕方なく、リードを付けて雉の落ちた場所へ連れて行きました。臭いで発見した犬はしばらく咥えましたが、捨ててしまいました。
回収運搬が課題として残った初猟でした。
その後捜索や、ポイントは良くなりましたが回収だけはマスター出来ず、猟期の終わりには見ている前で穴を掘り、埋めてしまうようになりました。食べるよりは良いかと、使役しましたが、3年目の夏に盗まれました。
2頭目は猟犬を得意とする犬舎から購入しましたが、凡庸な犬でした。転勤で困った時に、欲しいと言う人が現れ譲りました。血統書が附いていましたので、交配で儲けたそうです。
2番目の犬(セッター)は凡庸な犬でしたが、糞が好きだったのです。ですから猟野では随分悩みました。狸の糞を見つけると体中に塗りつけるのです。犬はその強烈な臭いに快感を得ているのか、平気です。寒中の河に入り何度も洗いました。私の手も臭くなり、車の中も悪臭で窓を全開にして帰りました。
ただセッターにしては珍しく、山鳥猟が出来ました。これはと思う谷に入り、犬が臭いを拾うと弾を込めました。谷の上流を監視していると、ワーンと鳴きます。山鳥を追い出したのです。私はスキート射撃の要領で構えると、山鳥が流れ星のように下ってきます。ところが滑空してくる山鳥の速度は雉の何倍も有り、5回に1回ぐらいしか落とせません。黒い十字架が流れ星のように飛んできます。
2番目の猟犬との長い間には、恥多き体験ばかりです。
さて最後の3番目の犬は訓練も3回目なので順調に出来上がりました。
暑い時に河に行き、木片を投げると飛び込み拾ってきました。私が参るまで何度もやらされました。ところが狩猟シーズンになり、川に雉が落ちても拾いに行きません。足を川に入れて「おっ寒」となると絶対に入りません。仕方なく人間が拾いに行きました。しかし、野原では確実に拾ってきます。雉もバタバタしていると直ぐに発見できますが、命中し草の間に落ちていると1メーターの距離でも解らないものです。犬の眼は悪く、全て臭いが元ですから、探すことが出来るのです。
3匹目のブルドンでは小綬鶏、ヤマシギ、ウズラも獲らせてもらいました。
昨年の夏に11歳で死に、それからは犬を飼っていません。鉄砲撃ちに犬が無ければ陸に上がった河童です。
この次は大物猟の犬の話をしますが、他人の犬です。(続く)