575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

あこがれとロマン    麗

2013年12月07日 | Weblog
先月、私は生まれて初めてノーベル賞学者とお話をさせて頂きました。
そのお方は2008年にノーベル物理学賞を受賞された、あの益川敏英先生です。小林先生と一緒に「小林・益川理論」でノーベル賞を受賞されたことはまだ記憶にあたらしいですがどんな内容だったかもう覚えていませんよね。
当時、素粒子とかクオークといった言葉がマスコミで取り上げられ、先生がノーベル賞の受賞講演のスピーチを英語ではなく日本語でやったことを覚えている方も多いでしょう。クォークが4つではなく6つとひらめいたのがお風呂の中とは有名なエピソード。

益川先生は今、名古屋大学の素粒子宇宙起源研究機構長をつとめていらっしゃるので週に2、3日は名古屋にいらしているそうです。
先週は「読書フェスティバル」という催しが名古屋市公会堂であり益川先生との対談をさせていただきました。先生がこれまでどんな本を読んで来られたかを、読書から先生の人生を振り返るといった内容でした。

先生のテレビからの印象はなんせ素粒子物理学という私には訳のわからない世界なのでちょっと気むずかしい方かな?と思っていたのですが本当に優しくてこんな言い方は失礼かもしれませんがどんな質問にも気軽に答えてくださりとてもお茶目な面白い方でした。1940年生まれ73歳の益川先生。

先生は大変な読書家で今でも月に6万円くらい本を買われるそうです。蔵書は一万冊。
子供の頃鶴舞図書館の近くに住んでいらした益川少年。初めて図書館に行ったのは小学5年生の時、たくさんの本棚から一冊の本をとり出した時なぜかわからないけど手が震えるような緊張感を感じたそうです。それ以来、おうちのご商売砂糖やさんの配達などを手伝うのが嫌で、よく図書館に逃げ込んでいたそうです。星の一生やマヤ文明の本などがお好きで、江戸川乱歩や芥川龍之介(98%)の本などをよく読んでいらしたそうです。で、やはり小学生の頃から算数理科が得意だったそうです。高校時代は古本やさんめぐり。数学にますます興味が湧き難しい本もいっぱい古本やさんで買われたそうです。高校卒業後お父さんからは家業を継ぐように言われ大学進学も反対されたそうですが、一回だけそれも名古屋大学ならという条件で受験させてもらったそうです。英語が苦手の益川先生、英語は捨ててその他の教科を万全にして臨んだそうです。三月の受験に備えて1月中は一日15時間くらい勉強して人生で一番勉強したのがこの1ヶ月だったそうです、2月は体調を整えたとおっしゃったのです。で、体調を整えるために映画には行かなかった(風邪をもらうから)と思ったらなんと映画に行ってリラックスして体調を整えたというお話でした。ちょっと普通の人とは違います。見事一発で合格し入学後英語の成績を聞いたら200点満点で30数点だったそうです。

会場には高校生もたくさん来ていて「自分の進路ややりたいことが決まらないのですがどうしたらいいですか?」という質問が出たのですが「あこがれとロマンをもつこと」とおっしゃいました。野球が好きならイチローの真似をすればいい。人から勧められるものではなく自分の好奇心やロマンに身をまかせることが大事だとおっしゃっていました。
打ち合わせの時に研究が行き詰まったり悩んだりしたことは?とお聞きしたら一言「僕は悩みません。うまくいかないのは成功例だというお話。本当にポジィテブな明るい先生でした。
今は琵琶湖の西岸の雑木林の中のおうちで大音響でクラシック音楽をお聴きになるのが一番のお好きな時間という益川先生。
最後に益川先生からは「本の向こうには知らない世界がある」というお言葉を頂きました。知らないことを知る、まさにこれは読書の醍醐味ですね。先生の
おかげで久しぶりに芥川龍之介の「羅生門」を読み返し「マンガでわかる素粒子物理学」という本も買ってみました。

コメント
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